乳房の葉状腫瘍について
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葉状腫瘍について

乳房葉状腫瘍は比較的乳房のまれな腫瘍で、全乳房腫瘍の1%未満とされています。葉状という名前は、腫瘍細胞が葉っぱのような構造をとって増殖することに由来しています。かつては葉状肉腫とも呼ばれていましたが、これは乳癌系統の腫瘍(上皮系の腫瘍)ではなく、肉腫系(間葉系の腫瘍)の腫瘍であることを意味しています。

大部分の葉状腫瘍は[廟と考えられており、稀に悪性の葉状腫瘍があります。一部はその両者の中間(ボーダーライン)に位置すると考えられ、ボーダーダイン病変と表現されます。 ↓◆↓のいずれの病変も比較的早く増殖し、いずれも手術(腫瘍を切除すること)が必要と考えられています。

葉状腫瘍はどの年齢にも起きることがありますが、40代の女性に最も多く、良性はものは若い年代、悪性の腫瘍は、年配の方に多いという特徴があります。

葉状腫瘍の特徴の特徴をもう少し掘り下げて記述します。葉状腫瘍の病理組織学的な特徴は、上皮系細胞と間葉系細胞のそれぞれの成分の増殖がみられることです。
それらは前述のように良性、境界病変、悪性と病理組織学的に分類されてきました。しかし乳がんと違ってこのような病理診断は必ずしも転移、再発の診断の確実な予測につながりません。悪性と診断されていないのに、臓器転移をきたしたりする場合があるからです。治療の原則は完全な外科切除(腫瘍を確実に切除すること)です。通常は1cmの余裕を持って腫瘍を完全切除します。通常は乳房の部分的な切除が行われます。
しかしながら、局所再発率が高く、また悪性葉状腫瘍の20%程度が肺などに血行性転移をきたします。再発のリスクファクターとして、不十分な外科切除、間質の細胞増殖や異型性などが指摘されています。放射線や薬物療法の効果は明確でなく、術後の補助療法としては日常の臨床では勧められていません。なお男性の発症は極めて稀です。

葉状腫瘍治療のポイント

A 病理診断(良性、境界病変、悪性)と患者さんの術後経過(予後)に不一致が見られ、病態の解釈が難しい。

B 1cmの余裕を持って腫瘍を完全に切除することが治療の原則

C 臓器転移をきたす可能性があるのは、悪性または境界病変と診断された場合

D 薬物療法、放射線の役割は限定的である(臨床試験以外では術後補助療法としては行わない)   

E 線維腺腫(乳房の頻度の高い良性腫瘤)との鑑別が術前には困難な場合もあり、その際は切除により最終診断を確定させる場合もある  

  (以上 2017年記載)


葉状腫瘍の画像写真(マンモグラフィーと造影MRI)



葉状腫瘍について

葉状腫瘍は楕円形のやわらかい腫瘍で、2〜3ヶ月単位で比較的速く大きくなることを特徴としています。触診所見、超音波所見、マンモグラフィー所見はいずれも良性腫瘍の線維腺腫と酷似しており、診断は病理組織検査(切除または針生検)に基づきます。30代〜40代の女性に好発しますが、必ずしも年齢は限定されていません。葉状腫瘍は乳腺組織を構成する上皮細胞と間質細胞のうち間質細胞から発生します。ちなみに上皮細胞が悪性化すれば乳癌であり、間質細胞が悪性化すれば肉腫となります。このため葉状腫瘍は肉腫の系統に属します。(かつては葉状肉腫と呼ばれていました) 葉状腫瘍は病理組織所見により悪性葉状腫瘍、ボーダーライン葉状腫瘍、良性葉状腫瘍の3つに分類されます。

治療について外科手術が基本になります。乳癌と違って放射線、ホルモン療法は無効であり、抗癌剤治療にも限られた効果しかありません。このため初回治療は通常手術による腫瘍の完全切除が原則となります。全身麻酔で手術を行い4日程度の入院が平均的な経過となります。術後の後遺症はほとんどありません。葉状腫瘍全体でみると95%以上の人が治癒するため、治癒率が75−80%程度の乳癌と比較するとかなりたちの良い病気といえます。

遠隔再発について葉状腫瘍をすべて含めると(良性、ボーダーライン、悪性)5%以下の確率で肺などに遠隔再発(致命的になる)します。いわゆる悪性葉状腫瘍と診断された場合は20%程度の方が遠隔再発します。一方ボーダーライン葉状腫瘍もまれに遠隔再発するため必ずしも良性とは言い切れないため、このように命名されています。このように葉状腫瘍は比較的たちの良い病気ですが、例外があるため必ずしも安心できないところがあります。遠隔再発と診断されてからの平均生存期間は2年6ヶ月です。

局所再発について最終的に葉状腫瘍の約20%が局所再発します。初回治療から局所再発までは平均2年程度と報告されています。またリンパ節に転移することはまれであるため、リンパ節を切除する手術は行いません。このため完全な局所切除が初回治療の原則となります。(腫瘍が大きければ乳房全摘手術が必要となることもあります。)局所再発は通常再手術により治療可能(治癒する可能性も高い)ですが、局所再発が遠隔再発の引き金になる可能性も完全には否定できないため、初回手術での腫瘍の完全切除が重要と考えられています。

(以上 2012年記載)


文責 虎の門病院 乳腺内分泌外科 川端英孝


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