最終話 淫…獣?
「くそぅ……何で俺が……」
結局、克己本人がカメラマンになっていた。
克己は苛立ちながら、ファインダーを覗いて快感に喘ぐ彩香の姿を捉えている。
彩香をベッドに手を着かせて、修司は後から侵入した。
「ふあッ……あ……はぁあ……」
突き上げる修司の激しい動きに、彩香のアップにしていた黒髪が振り乱されて解け、飾っていた生花がはらはらとベッドの上に零れ落ちた。
襟足を両肩が出る程大きく肌蹴け、そこから出された仄かに色付く背筋に修司の唇と舌先が這う。
上着を肘の辺りにまできつく下ろした。ロープ等無くても彩香の身体が締め上げられ、腕が全く動かせない。薄いキャミソール越しに豊かな胸が寄せ上げられている。
甘く切ない溜め息が漏れ、身体が撓(しな)った。
彩香と繋がったまま、修司の指先が内腿に滑り込む。
硬い凝(しこ)りの花芯に触れて、彩香が一際激しく淫らに反応する。
涙を流して感じている彩香のふっくらとした唇の端から、一筋の光る糸が流れ出た。
「ひぐうぅ! ぃやぁああ……」
我慢出来なくなり、突っ張っていた彩香の両腕ががくりと折れた。そのままベッドに突っ伏して、腰を天井に向かって突き上げた格好になる。
既に溢れた愛液は修司との何度目かの体液と混ざり合い、彩香の内腿を伝ってベッドに滴り濡らしていた。
身体を更に激しく打ち付けて、克己に聞えるように態と淫靡な音を立てる。
カメラを構えている克己の鼻息が荒くなった。
が、肝心の箇所が彩香の衣類に隠れて映せない。
「はあぁああ……うくっ……」
彩香を淫らに昂らせて行く修司は、更に激しくベッドを軋ませた。
気が付けば、克己はカメラを置いて、いつの間にか彩香の悩ましい肢体を食い入る様に肉眼で追い掛けていた。
(掛かった!)
修司の眼が克己の様子を見逃さない。
克己が生唾を呑み込み、喉がごくりと大きな音を立てる。
「……犯(や)りてぇ……」
思わず呟いた。
彩香と既に何度も絡んで到達している修司が羨ましく思えている様だ。
既に克己の分身は痛い程に膨張している。
彩香から口移しで貰った薬が効いているのか、修司は思っていたよりも消耗が感じられ無かった。
実際に消耗しているのに感覚だけを麻痺させるだけの薬なら問題だが、この薬はどうやらそうでは無さそうだ。
修司は仰向けに寝かせた彩香の白い両脚を抱えて『く』の字に折り曲げさせた。
細い足首を自分の肩に掛けて繋がり、そのまま上体を支えて起こす。両腕を彩香の背中でクロスに交差させて肩を掴み、しっかりと肌を密着させて抱き締めた。
「きゃ……あ、あ、んあ……」
身体が流れない様に固定され、更に奥深くへと修司が侵入する。
「ぁん?」
いきなり彩香は修司の解いていたネクタイで、背後から克己に目隠しされた。
「ああん……」
修司に五感を狂わせられ、少しの刺激でも感じてしまう彩香が敏感に反応した。
「これで少しは区別が出来ねぇだろ?」
克己が笑って彩香を抱き竦た。汗で湿った豊かな胸をキャミソール越しに乱暴に持ち上げて揉みしだく。
「きゃ? はぁあ……あ、あぁ……」
切ない溜め息が漏れ、白い喉が仰け反った。
珠の様に噴出した汗が、滑らかな肢体をラインに沿って流れ落ちる。
艶やかな黒髪の先から雫が滴った。
「撮影……するのじゃなかったのか?」
肩で荒い息を吐きながら、顎を伝う汗さえ気に留めず修司が訊いた。本来の目的とは別に、夢中になり掛けていた獲物を克己に横取りされた気分になる。
「もういい。それよりも賭けないか?」
「何を?」
「この女が、俺とお前を区別出来るかどうかってことさ」
克己はニヤリと厭らしく笑うと、彩香のキャミソールを力任せに引き裂いて胸を曝け出すと、容赦なく貪り付いた。
「っ痛! ……あぁあっ!」
強く噛む克己に、目隠しされた彩香が鋭く反応する。
修司を締め付けていた彩香が、更にきつく締め付けた。
一瞬、彩香が本気の戦闘モードに入る臨戦体勢の兆候を窺わせる。
「くうっ! ああッ!」
(ヤバイッ!)
慌てて修司は彩香を離した。彩香との余韻で分身がズキズキと疼く。
「何だよ、もう退いちまうのか? 賭けにならないぞ?」
修司に代わって克己が彩香を責め、彩香がそれに応えた。
肩で呼吸を整えながら、修司は目の前で克己に乱される彩香を見詰めた。
(区別ぐらい出来るだろ? フツーに)
外見上、筋肉隆々の克己と細身の修司とではタイプが全く違っている。喩え目隠しをされていても、彩香が細身の修司の身体を間違える筈が無い。
修司は内心反論したが、じきに克己の言った言葉のイミが解かった。
敵味方の双方から同時に責められて、彩香は本気の戦闘モードになれるのか? なったと仮定しても、彩香にそれが判断出来るのか……?
「うぐっ……」
カメラマンの男が倒れた。悠里に墜されていたのだ。
「うふふ……まだまだよぉ〜」
相変わらず、悠里は陽気だ。まだ他に誰か居ないかと頭を巡らせて、自分の獲物になりそうな相手を探している。
その悠里の視界に、彩香の相手をしている修司と克己が飛び込んだ。
「あぁん〜せぇ〜んぱぁ〜いい、悠里もおぉ」
童顔がニコニコ笑いながら這って近寄って来る。
表情とは別に、悠里の腰はガクガクと大きくブレて歩行出来ない状態だった。
どうやら悠里の身体は彼女の意思に上手く付いて行けていない様子だ。
「う、うわっ、片山クンっ? よ、止せ!」
彩香と一時的に離れてフリーになった自分が狙われていると覚った修司は怯んだ。逃げ出そうと思ったが、克己に弄ばれている彩香がまだ膝の上に居る。
「えっち、しちゃって下さぁ〜い」
こんな時にまで敬語を使う悠里が可愛く思えたが、彼女の要求を呑んでいる場合ではない。修司は彩香との何度目かの快感に、既に限界が近付いていたのである。
正直、薬が効いていても軽い眩暈に翻弄されていた。このままでは確実に自分が『昇天』してしまいそうだ。
「ちょ? うわっ、もがっ? 止めてくれ! 片山クン〜!」
悠里が大きな胸で修司の顔を挟み、押し倒した。
流石に背筋が冷たくなり、恐怖を覚える。
「ぐわっ? ……」
修司が悠里に気を取られている隙に、目隠しをしたままの彩香が本気を出した。
信じられないほどの凄まじい締め付けに、それまで激しく腰を振っていた克己が悲鳴を上げ、全身を硬直させる。
薬か、それとも催眠術でも掛けられのだろうか? 自分の意思とは反対に克己の分身は時間の経過と共に、益々感度を昂めて彩香の肢体を貪った。
彩香の薄っすらと開いた口から、ピンク色の舌先がチロチロと上唇をなぞる。
「ふっ……」
目隠しをされたままの彩香が、艶かしく微笑んだ――
* *
「彩香さぁん、胸おっきー、触っちゃっても良〜い?」
「いやぁ〜ん、悠里ちゃんの方がもっと大きいわよぉー」
きゃっきゃとはしゃぐ明るい声が別室から漏れている。
修司のマンションの風呂場で、二人の女が身体の汚れを洗い流していた。
「ねぇ〜え、せぇ〜んぱい。一緒に入りましょ?」
「ヤダ」
浴室のドアから頭を覗かせた悠里の暢気な声を、不機嫌な修司が跳ね返す。
いつの間にか悠里の症状はもとに戻っていたが、修司に対する呼び方だけは変わらなかった。
しかも行き掛かり上とは言え、彼女は自然な形ですんなりと二人の間に溶け込んでしまっている。
目の前のテーブルには、三人が水分補給したビールやコーラ、スポーツ飲料等の空き缶がごっそりと山積にされていた。
修司は更に、栄養剤の小瓶を専用の細いストローで飲んでいる。
(……ったく、自分達がどんなに危なかったのか解からねぇのかよ……)
ボヤキながら、自宅のパソコンに向って上司への報告書を作成していた。
克己に指示されて行ったホテルでの記録は予め報告していたので、既に上司からの承認を得て修司達が居たと言う情報は改竄済みだ。
修司達はあの後、所轄が踏み込む前に克己達を残して立ち去っていたのだ。
(いや、マジ危なかったのは俺の方か……)
修司は克己達が撮影したカメラのメモリが置いてあるパソコンの傍に視線を落した。勿論、自分と彩香の分と、先に襲われて撮られてしまった悠里の分だ。
それにしても……である。
修司は浴室で騒いでいる二人を思って気が滅入った。
――悠里に、公私に亘って彩香と修司の秘密を知られてしまったのだ。
彼女を今後如何扱えば良いのか、考え倦(あぐ)ねて困ってしまう。
幸な事に、悠里はどうやら修司を慕ってくれている様子だ。少なからず多少の無理は訊いて貰えそうな予感はするが……
「あーっ、いいお湯だったぁ」
「ん、ねーっ」
ご機嫌で出て来た二人の姿に、修司がギョッとしてリビングのソファから思わず腰を浮かした。
「ん、なっ……何て格好だよッ!」
出て来た二人はフェイスタオルで髪を拭いてはいるものの、他は一糸纏わぬ姿だった。
「えー、だってこれから修司との約束ぅ……」
「せぇ〜んぱい! くすす……さっき、彩香さんから聞いちゃいましたよぉ?」
悠里が嬉しそうに言った。
「……」
彩香との契約まで知られてしまった。
(何でそんなコトまで教えてるんだ?)
これでは彩香の方が先に契約違反をしているではないか?
「じっ、冗談言うなよ! 二人共、さっさと『ちち』仕舞えよ!」
(まだヤリ足らないってーのか?)
彩香に『容赦』の文字は無いのか?
真剣に自己の身の危険を感じて泣きそうになった。同時に彩香の凄まじい回復力に恐れをなす。
「あらん、約束は約束よ? なら、『契約』って言った方が良いかしら?」
彩香は言葉で修司を追詰めて拘束した。
「契約だって? ソッチが先に違反……」
彩香は最期まで修司に言わせなかった。
軽く殺気を籠めて睨む。
「ひ、ひいい……」
彩香の視線に射抜かれて腰を抜かしそうになった。
そして、全裸の二人がにこやかに微笑みながら、向かい合って修司を挟み込んだ。左右の頬に彩香と悠里のナマの胸が、素晴らしい弾力を伴って押し付けられる。
修司はドン退きしながらボソリと呟いた。
「……ケダモノ」
淫 獣 U (完)
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