第13話 ケント参上?(彼女サイト)
トッキーの素顔って初めて見たわぁ〜〜〜。やっぱカワイイ。
つーか、彼の総てを見ちゃったわん。
見た目も中身も……普段の『ちっちゃいの』……も可愛かった。
えへへ……もお、感触まで確かめちゃったし。
しかも、彼が社員規則に違反して二次収入を得ていただなんて……どーりでね。昼真っから居眠りばっか遣っているから、おかしいなぁーって思っていたのよね?
まあ、それでもキチンと定時には業務を完了する所が、トッキーの凄いトコロなんだけろうけど、一応あたしも上司だし注意指導するトコロはチキン……いや、キチンと遣っておかないとね?
あたしはこの有利な立場に、にやりとほくそ笑んだ。
トッキーが規則違反してるのを知っているのは、多分、きっとあたしだけ。
黙っていてあげてもいいけれど、どうしようっかなぁー?
そいでもって、トッキーは未だにあたしの正体が判っていないんだもの。
ヅラ被ってコスプレしてたって……フツーなら、もおトックにあたしが誰だか気付いているハズなんだけど、あのとーりの超鈍感……なのよね。
まさか自分の目の前にいた女が、自分の上司だった……だなんてトッキーなら絶対に思わないんでしょうね。
あたしとトッキーとは五歳違うけど、……ホラ、あの……なんだっけ?
年上女房は禁の……あら、違った。金のワラジを履いてでも探せって言うじゃない?
プロのスポーツ選手には、結構年上奥さんが居るし。
あたしと背が同じくらいってのがチョッとだけ引っ掛るけれど、ハイヒールを履かずにガマンすればいいってコトで。
今年こそ、あたしカレシが……出来そうかも〜〜〜?
あたしはもう一度部屋の鍵を手にすると、くふふと笑った。
確か、トッキーのこのマンションって……市駅のスグ近くだったよね?
この鍵さえあれば、狭い駅構内のロッカールームともオサラバだわ。今までは着替えに困っていたけれど、トッキーの部屋ってゆー大きなフィッティングルームもゲットしたし。
……
……
……
だけどスコシ気懸かりな事があたしの頭に浮かんできた。
仕事とバイトを掛け持ちで夜中まで遣っていて、それで身体が……持つのかな?
あたしはもう一度、カモイに掛けられているコンビニの制服に視線を遣した。
そう言えばさっきの冷蔵庫、カラッポだったわ。
トッキーなんでそんなに貧乏してるの?
ウチの会社のお給料だけじゃ、遣っていけないってコトかしら?
幾らなんでもそれは絶対に在り得ない。
トッキーは一人暮らしだし、ついこの前だってボーナスが出たトコロじゃない。金額だって不足はナイはずだわ。
そう思って、心当たりを探っていた時だった。
インターフォンが可愛らしい音を立てる。
どきっ!
あたしは正座したまま飛び上がった。
ま、まままさか借金の取立て屋さんじゃないでしょうね? いやぁーん、身体で払えって言われたらどうしよう〜〜〜。
オロオロしていたら、またしても呼び出しが……
ど、どどどうしよう。
と、とにかく宅急便とかだったら受け取りくらいはしてあげられるもんね。
あたしは忍び足でコソコソと玄関のドアに近寄って、覗き孔からそぉ―――っと外の様子を窺った。
「……?」
「こちらは土岐正宗さんのお宅ですかな?」
「ぴっつ!?」
あたしはビックリして息を飲んだ。
向こうも覗き孔からこっちを覗いてたんだもの。
や、ヤダ……もしかしなくっても取立て屋さんなのぉ?
「私はケントと申します。こちらに土岐さんと言う方がお住まいと伺いまして、参った次第でございます」
張りのあるバリトン調の声がドア越しに聞こえた。
ナンだかもの凄ぉーく丁寧で上品そうなオジ様みたいだけど、誰だろ?
つか、そーっとドアに近付いたのに、何であたしが来たのが判ったのぉ?
このオジ様、タダモノじゃないわ。
借金の取立て屋さんだったら、居留守を使おうと思ったけれど、どうやら違うみたいだし、居留守をしようにもあたしが此処に居るのがバレちゃっているから、出て行くしか他に方法が無さそう。
でも、一応は防犯対策として、ドアチェーンは必須よね。
「は、はひぃ〜〜〜」
あたしはドアチェーンを掛けて、開いた隙間から外を恐る々覗いた。
「あ、あのっ……」
外で待っていた男の人は、スラリとした長身で、この暑いのに黒いスーツを涼しげに着こなしている六十代前後の紳士だった。頭は白髪だけど、もの凄く綺麗な白髪のオールバック。こんなオジ様の事を、ロマンスグレーって言うのかしら?
うーん、ロマンスグレーって白髪交じりのナイスミドルを言うから違うわよね。この人の場合、真っ白だから、言わないか。
細い切れ長の眼が、モト美形だったってコトを物語ってくれているもの。
あ、駄目っつ。この人もあたしの守備範囲。
って、我ながら一体何歳までが守備範囲なのかしらと、自分の事なのに首を捻ってしまった。
「土岐さんのお宅で間違いありませんでしょうか? お嬢様?」
オジ様は口元を緩めると、あたしに余裕の表情でニッコリと微笑み掛けてくれた。
カァ―――っと顔が熱くなる。
「は、はい……」
お、おおおお嬢様だなんて、そ、そんなぁ〜〜〜。
いやぁ〜ん。そんなに微笑んじゃ駄目ぇ〜。
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