第22話 抜くっ?
まさか美弥が居座っていたとは……俺は美弥の行動に意表を突かれて呆れるやら、どう反応して良いのやら……で、ちょっとだけマイペースな美弥が、その……なんて言えば良いのか……気になる存在になってしまったみたいなんだ。
いつの間にか、俺の心の片隅にちょこんと居付いてしまった女の子……もとい、オネエサン。
あ? 俺の脳内で美弥のイメージが、掌サイズのちっちゃいバニーガール姿になってるよ。それにしても、美弥ってばナカナカのプロポーションなんだよなぁー。なに着ても似合ってしまうし。
『ちったぁ女に興味持てよ。頭に浮かぶリストが、野郎の名前しか無いってのは寒過ぎるぞ?』
今日、会社で狩野先輩にそう言われていたばかりだったから、これってタイムリーだよなぁー。
俺の心は、まるで目当ての女の子からメアドをGETした……みたいなラッキーに回り逢えて小躍りしていた。だって、カノジョ居ない歴を今までずっと更新中だったから。
だけどそろそろ時間切れ。バイトの時間だ。
ずっと俺の帰りを待っていてくれていたのかも知れない美弥には悪いけれど、この辺りでお引取り願わないと。
「美弥さん?」
「あに?」
俺は動かしていた箸を止めると、俺が作ったオムレツを美味そうにあむあむ食っている美弥に視線を送った。
なかなかの食いっぷりに、思わず見惚れてしまう俺。
「ひょっとして、独りなんですか?」
「んぇ? ヤダなぁーマサくんってば。一人だなんて、見りゃ判るっしょ?」
「……いや、そうじゃなくって……」
俺は、独り暮らしなのかと訊ねたツモリだったのだけど……今が独りだってコトくらい、誰だって判るでしょ?
言葉が足らなかったんだなと反省して、俺はもう一度美弥に訊いてみた。
「聞き方が悪かったですね。俺は美弥さんが独り暮らしなのかどうかを聞いただけです。ご家族と一緒なら早く帰った方がいいと思ったから……」
「独り暮らしだよー。マサくんが心配しなくっても大丈夫だもんねー?」
「☆……」
美弥は屈託の無い笑顔で、ニッコリと俺に微笑んだ。
あ、ナンか今、クラッと眩暈がした気がする。俺は思わず手にしていた茶碗と箸をテーブルに置き、眼鏡を外してゴシゴシと眼を擦った。
うん? 美弥が二重に……二人に見える?
……って、思ったら、眩暈は気のせいじゃ無かったし。
正座して、卓袱台ミニテーブルに向かっていた俺の視界が、ぐらりと斜め方向に傾いた。
あっつ、ヤバっ……!
そう思った時には手遅れで、俺は美弥の目の前で崩れるようにして倒れてしまったんだ。
「きっ、きゃぁあああ―――っ!!!」
美弥の悲鳴が遠くから聞える。それだけ意識が遠ざかっていたんだ。
俺、マジでやべーな。貧血だろうか? いや、しかし……この心地好さはナンなんだ? ……なんて自分の症状を頭の中で冷静に分析しているし。
ああ、そっか。今朝は美弥のお陰で殆んど寝てなかったんだったっけ? 会社では主任の事が気になってしまって、居眠りドコロじゃなかったし。
ううう……美弥ぁあああ〜〜〜どうしてくれるぅうううっ!!! これからバイトに行かなくっちゃなんないのに、行けないじゃないかよぉー。
「マサくんっつ! ど、どうしたのぉおおお??? ねぇ、ねぇ、ねぇえええ〜〜〜ったら〜ぁ〜!」
薄っすらと開けた俺の眼に、美弥が箸を放り投げ、慌てて俺に向かって四つん這いでずざざと近寄付いて来たのが映った。何かのオカルト映画みたいに思えて、ちょっと美弥が怖かったりする。
一旦立ち上がって俺に近寄れば、白衣の裾を俺から覗かれるとでも思ったのだろうか? だけど、四つん這いの格好も、仰向けに倒れてしまった俺の視界からは拙くない?
チラリと美弥を見ただけだったのに、俺の視界は、美弥のハッキリクッキリと陰影が付いている胸の谷間を捉えていた。
うぉあ? デカッツ☆ 胸に尻があるぅ!!!
重力に多少素直になっている美弥の胸は、重そうなDカップに近いC? ……あれ? 何で俺、女性下着の規格なんか思い浮かんでんだろ???
「マサ……くん?」
もの凄く心配していた美弥の表情が、俺を見るなり強張った。
「はい?」
美弥は口元をキュッと引き締めて、若干の嫌悪感が拭えない表情を浮べたまま全身を戦慄かせている。
「……」
美弥の視線の先は俺の顔を通り越して、下半身のある一点に集中していた。
『うわぁー見るなぁー』って、思わず言いそうになってしまった……
今朝と同様、またしても俺は美弥の胸元を眼にして、仰向けになって倒れた俺の身体は素直に反応して、ある一点だけ重力の法則に逆らって元気になっちゃっているし……こんなに身体が睡眠を要求しているのに、コイツだけはぁあああ〜〜〜!
ソッチの要求してるのかぁあ???
「あ、いやその、きっつ、気にしないでください」
『頼みますから、そっとしておいてね?』的な意味合いを含めて、俺は頬を赤らめた。
既に身体は睡眠不足。その上朝っぱらからイッパツ抜かれちゃってるし、普段忙しくて抜き慣れていない俺だ。ココで抜かれたら意識がぶっ飛んで、俺絶対に起きられなくなっちまう。
バイトがぁあああ〜〜〜、時給がぁあああ〜〜〜!!!
「マサくぅ〜ん」
美弥が鼻に掛かった甘える声になる。
「ち、ちょっと待ったっつ!!! こっ、ココは放置でお願いしますから! ねっ?」
身のキケンを感じてしまい、俺は情け無くドン退きして怯えながら、美弥に頼み込んでしまった。
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