第35話 メイド姿っ?




    「あー、若しくは似たような服装ってありますか?」

    「あ、あるにはあるけど……」

    「?」

    どうしたんだろ? 

    そんなに呂律が廻らないくらい酔ってはいない筈なのに、彼女は耳朶まで真っ赤になってモジモジする。

    俺、何かヘンなコト言ったのかなぁ?

    「あの、この格好ヘンかしら?」

    彼女はフレアスカートの裾を摘んで、ピラン☆ と捲った。

    ああっつ! 惜しい! ココからは見えそうで……見えない角度だ。

    「え? い、いやそんなコト無いです。よく似合ってますよ?」 『確かめたいコトがあるんだってば……』俺はその言葉を口にはしないで、心の内に秘めておく。「だけど、服が破けちゃっているじゃないですか。どうしたんです?」

    「え?」

    彼女は俺の言葉に反応して、不思議そうな顔をした。そして何か言いたそうな様子で小首を傾げる。

    「あの……眼のやり場に困っちゃうから……早く着替えて欲しいんですけど……」

    真っ赤になっている彼女を見ているうちに、俺までがだんだん気恥ずかしくなって来た。コレって感染(うつ)るものなんだろうか???

    「う……うん。そ、そうだよね? チョッと待っててネ?」

    「はぁ……?」

    彼女は赤面したまま若干躊躇いの表情を浮べたが、決心したのか、やがてスックと立ち上がって、奥の部屋に消えた。

    ……俺、彼女がそんなに困るようなコトを、言っちゃったのかなぁ?

    俺はメイドの使用人が大勢居た昔を思い出し、彼女の反応を比較して不思議に思った。

    彼女が『美弥』なのか、そうでないのかを手っ取り早く調べるのに、メイド服を着てもらえば判るような気がしていたんだ。

    あー、でも判らなかったらどうしよう???

    って、単にそれだけを知ろうと思っただけなのに――


    なんで浴室からシャワーの音が聞えて来るんだよぉー???


    一体、彼女はナニをするツモリなんだろう……?


    「おっ待たせぇ〜♪」

    「う、うわぁ……」

    リビングの入り口で立ち止まった彼女は、シャワーを浴びて濡れたままの髪から雫をパタパタと落としながら、バスタオルで身体全体を包(くる)んでいる。

    思わず腰を浮かして逃げの体勢になる俺。

    バスタオルからは、湯に温められてホンノリ桜色に染まったフトモモが、殆んど超ミニの状態になって、にゅ☆ と出ていた。

    見た目『下には何も着ていないぞ状態』に、俺はバスタオルを剥ぎ取った彼女の姿を妄想して逆上(のぼ)せそうになった。

    「あー、なにそのHな視線はぁ」

    「な、なななナニ言っているんですか? いや、その姿じゃなくって……」

    彼女は頬を上気させながら、フフッと上品に吹いた。

    「うん。判ってるよ? メイドさんの姿でしょ?」

    「あ? 下に着てるの?」

    もしかして?

    「うん」

    な、なぁーんだ。ザンネン……

    いっつ? いや、そうじゃなくって……

    俺の言葉を肯定した彼女に、若干期待を裏切られたような気にはなってしまったが……な、なぁーんだ。ちゃんと着てくれていたんだぁー。

    そっかぁー、そーだよなぁ……ザンネンだ。

    取り敢えず落ち着こうと、彼女から視線を逸らせて、冷えた発泡酒を一息大きく呷った状態で、彼女と再び視線が合った時だった。

    「じゃあ〜〜〜ん!!!」

    彼女は嬉しそうに元気良く、俺に向かってサッとバスタオルを大きく左右に拡げた。

    「ぶ―――ッツ!!!」

    「いやぁ〜ん、汚さないでぇ〜、コレしか無いんだからぁ〜」

    驚いた俺は、口に含んだ発泡酒を思いっきり吹いてしまい、吹いた酒が彼女の方に飛び散った。

    そして俺にも……吹いた酒が、はっ、鼻に……入った……イタタ……☆

    逆流した酒に、鼻の奥がツーンと痛んで涙眼になってしまった。


    彼女は超ミニのメイド用フリフリエプロンを着用して……着用して……着用して……でえええ〜〜〜っつ? エプロン……だけっつ???

    しかも、何気に真っ赤なリボンでエプロンの上から身体をラッピングっつ???

    右の胸の上辺りで、ちょうちょ結びって……ナンだよそれぇえええ〜〜〜???

    「あ、あのっ……」

    「ハイ?」

    「エプロン……」

    「メイド用のねッ?」

    ドン退きしながら恐る々訊ねてみる俺に、彼女は細い肩を竦めると、ピンク色の唇を窄めてキュートにウインクしてくれた。

    「……だけですか?」

    「う?」

    俺の言葉に、彼女は小さく萎縮して、両腕を胸前に引き寄せると、両の手を握って口元に持っていった。またその仕草が俺的にイケていてグッと来る。

    「生憎、これしか無かったのー。似合わないかしら?」

    「い、いいい、いや、あの、あのですね、似合うとか似合わないとかって、そーゆーモンダイじゃなくって……」

    彼女、もしかして、ナンか誤解……してるぅー?

    真っ赤になってはにかみながら……それでいて彼女は大胆にもその無防備な姿で徐々に俺ににじり寄って来た。

    ああっ、声が上擦って、口の中がヤケに乾く。




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