第5話 見られちゃった?(彼女サイト)




    ユニットバスに入っている彼はなかなか出て来てくれない。

    ってゆーか、多分あたしの切迫してる『尿意』の感覚が、周りに流れている時間を遅くカンジさせているのよね。

    え〜〜〜ん、どうしよう?

    あたしは寝転んでコロコロしたり、壁に向って逆立ちしたり、自転車漕ぎだって遣ってみた。

    だけど『尿意』は遠退くどころかドンドン近付いて来ちゃうし。

    「ふぅうう……」

    全身がフルフルと震えた。

    こっ、こんなに苦しまなきゃなんないだなんて……調子に乗って利き酒なんか……遣るのじゃなかったわ。

    あたしは思いっきり、済んでしまった事を後悔した。だけど後悔したって『尿意』は治まってなんかくれないんだもん。

    それどころか、さっきよりももっとおトイレに行きたくなって……がっつ、我慢が出来そうに……ないわっつ。

    あたしの頭の中は、真っ白な洋式トイレの便座しか浮かばなくなってしまった。

    このまま水音聴いたら、遣っちゃいそうっつ?

    あーん、乙女のピンチよーっつ!!!

    どうするのよう〜〜〜???

    必死になって考えたけど、外に出て……と、空き瓶に……てのは即却下。

    そんなコトするくらいなら、さっきの彼に見られた方がナンボかマシだわっつ! 

    きっと彼はビックリするだろうけど、なんのっつ! 後で口封じしておけば大丈夫だわ。彼、凄く純情そうだもん。

    だけどさっきから不思議に思っていたのだけど、彼のあたしに対するあの反応。

    ……なんであんなにオドオドしてんの?

    う〜〜〜ん?

    あたしは片手で頭を掻いた。

    指先に、猫耳のカチューシャが当たる。

    ん? ナニコレ?

    指先に、ふにゅふにゅと猫耳が当たった。猫耳はモチロン偽物(ダミー)だけれど、使用されているのは本物のラビット・ファー。柔らかくって気持ちイイ。

    そういや、シッポも着けていたわ。

    って……???

    っあ! 判ったぁあ―――!

    彼が驚いてしまったの、無理無いわ。

    あたしはそこに至ってヤッと『仔猫メイド』のコスプレをしていた事に気が付いた。

    通りで……彼があたしの事をキツネの襟巻きみたいにして運んでくれたハズだわ。

    あたしのコト、猫型ロボットか何かと勘違いしたのじゃなくって?

    だからあんなにドン退きしていたのよ。

    そう思うと、ナンだか妙に笑えて来た。

    笑えて来たけど……くくっ、笑えっつ……ない……よぉおうっ……

    あ―――ん! もぉ限界だわっつ!

    どうしよう? 

    このままドアを開けて『こんばんは〜☆』なんてニコニコして、彼が『あ、ど〜も〜』なんて言って……くれるワケないっしょ?

    「くくく……」

    いよいよ限界だわ。

    そ、そうだ!

    寝惚けたフリをしておこう! 

    コレなら後で突っ込まれても『何かあったの〜?』で惚けておけば済むハズだわ。

    ……無理かしら? 

    ええい! この際念の為に、プラス口封じで行っちゃおう!

    あたしは覚悟を決めて、彼が入っている小さなユニットバスのドアを一気に開けた。


    寝惚けたフリよ? 寝惚けたフリっつ!!!

    「ち、ちょっとキミ! 勝手に入って……」

    中に入ると案の定、彼が慌てて背中を向けた。

    ボンヤリとだけど、彼の裸……見ちゃったし。

    おっつ、男の人のナマのお尻って……初めて見ちゃった……コレって女の子と違って、四角いんだぁ。

    ……なんて観察している場合じゃなかったわ。

    あたしは目の前にあった便座に素早く腰を下ろした。

    「くううう〜〜〜っつ!!! 快感ンっつ!」

    臨界点を越えそうだったあたしの膀胱ちゃんが、一気に解放された。

    ああ……遣ってしまった。人前での用足し……

    だけど、彼に口封じしておけばいいのよ。

    口封じ……

    って、どんな?

    ……

    ……

    どうしよう……どんなコトすれば、彼は黙っていてくれるのかしらん???

    見た目純情そうだけど、実はもの凄いヤリ○ンでしたぁー……なんてコトになったらどうしよう……

    あたしは物理的苦痛から解放されたのだけど、今度はプレッシャーを感じて萎縮してしまった。

    え〜〜〜い、マズは落ち着けぇ〜〜〜!

    「くぁあああ〜〜〜☆」

    あたしは半分ナゲヤリになって気を緩めた。トタンに大きなアクビが出てしまい、大アクビまで彼に披露してしまう。

    えーん、こんなのじゃなかったのにぃ〜〜〜!

    「……」

    うう〜ん、彼ってば、退いてる。退いてるぅ〜〜〜!

    あたしはずっと寝惚けたフリを演じ切り、ユニットバスを後にした。


    今更『どうしよう』だなんて通用しないよぉー。

    要は、彼がこの事を口外出来ないようにすればいいんでしょ?

    それにしても、小柄な男の人だわね。

    あたしと身長が同じくらいだもの。

    同じ身長でも体格はダンゼン違っていた。スレンダーな体型のワリには、筋肉質。

    彼が自分の身体を鍛えていたのは確かだわ。

    うーん、ちょっとだけソソラレル?

    試してイタズラしちゃおうっか……?


    あたしはボンヤリとしか見えない眼で、彼がまだ居るユニットバスのドアを見詰めて、クスリと笑った。



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