第7話 バレちゃった?…2
「そう言えば、眼鏡が君のすぐ傍に落ちていたんです。もしかしたら、君のじゃないかなって思って。取って置きましたけど、心当たりは無いですか?」
「えっ? 眼鏡あったの? あたしの眼鏡ぇ〜」
何か元気ナイなぁーって思ってたら、眼鏡の話題を振ったとたんに急に復活っつ???
彼女、眼鏡のコトが気になって、それで元気が無かったのかな?
それとも眼鏡は単なる『呼び水』で、実は俺のモノを観ちゃってショック受けてたせいだったりして?
……?
いや、このコトは深く追求しないようにしておこう。
自分的には標準だと思っているけど、追及しちゃって彼女からショックな言葉を聞きたくないし、女の子に向って聴くような内容じゃないよな?
っても、さっきは思いっ切りぶん殴られたけど……
彼女は女の子……だと思う。
連れて帰る途中、何度か胸が肩や背中に当たってた。柔らかくて、俺の身体の触感にはナイものだし。チョー気持ちよかったなぁー。
俺は氷ノウで左頬を冷やしながら、下駄箱の上に置いていたピンクのフレーム眼鏡を取りに行って、顔が自然と緩んでいるのに気が付いた。
氷ノウって言ってもナンのコトは無い。単にビニール袋に氷水を入れただけのものだ。直接肌に押し当てて冷やしているものだから、冷やし過ぎて左頬がジンジンして痛いくらいだ。
俺が手にした眼鏡が見えていないのか、彼女は眉間を寄せ、大きい眼を細ぉ―――くして、戻って来る俺の手元を睨んで……いや、見詰めている。
その表情と猫耳姿がピッタリと嵌ってる。後は猫のヒゲを着ければ、猫娘の完成だな……と思った。
冗談は置いといて……彼女、俺と同じくらい視力が悪そうだなぁ。
ツイデに俺もなのだが、眼鏡を取ると顔を顰めているように見えて、人相が悪くなるらしい。
なら、何故コンタクトレンズにしないのか?
そんな金があれば、今ここで苦労なんかしてないって。
それと理由はもう一つ。
眼鏡との因果関係は不確からしいけど、眼鏡を外した俺って性格が変わる……らしいんだ。
だから風呂に入る時でも眼鏡を手放せないでいる。
次第に彼女との距離が近付くに連れて、細めていた猫目の彼女は、元のかわいいパッチリお目々に戻った。
眼をパチパチと瞬く度に扇げそうな長い睫毛はツケマツゲ? それとも本物なんだろうか?
「あっ、それはあたしのぉー。あったんだぁー、よかったぁ〜〜〜、アリガトー」
「はい」
俺は彼女に折り畳んでいた眼鏡を差し出した。
「落ちていましたから、レンズに傷が付いていなければいいんですけど……」
俺は彼女の眼鏡を掛ける様子を見守りながら、レンズの事を心配する。
「あ? あ……ああ大丈夫。傷なんか付いて……ってぇえええ―――っつ???」
「はぁ?」
眼鏡を掛けて顔を上げた彼女は、俺の顔を見るなり驚いた表情を凍らせてドン退きし、息を乱して咳込んだ。
「けほっ、けほけほ……んんぐわぁ―――きっつ、君っつ!」
「はい?」
なにその『んぐわぁ―――』って?
復活したってコトなのかな?
そして彼女は俺に向かって人差し指を一本立てる(中指ぢゃないぞっつ☆)。
「君、さっき『土岐正宗』って……言ったよね?」
「はい」
それがなにか?
「……」
「?」
彼女はそれっきり、引き攣った笑顔を浮べて暫らくの間フリーズした。
「どうかしたんですか?」
「え? い、いやぁ別に深い意味は無いの。深い意味は……あははは……」
彼女は乾いた笑いを披露してくれる。
なんだか薄気味悪いんだよねー? 塞ぎ込んだかと思えば、急にハイになっちゃってさ? しかも彼女今『思いっ切り不審者でぇ〜す!』って顔してる。
「で、キミの名前は?」
「あに?」
「あに? って……名前ですよ。名前。なんて呼べばいいのか判らないし」
キョトンとして言い返された。
俺、何か聴いちゃイケナイコトを聴いちゃったのかなぁ?
女性に歳やスリーサイズを訊ねるのはNGだと知っていたけど、こっちから名前を聞いちゃダメなのだろうか???
彼女はほけっ☆ として俺を見上げたが……
やがて横座りに崩していた足を引き、背筋を伸ばしてきちんと正座をし直した。
「あたし、美弥(みや)。ヨロシクね? マサくん」
「あっ、はい、こちらこそ宜しくw」
……?
って、なんで釣られて俺までが、正座なんかしてるのさ?
しかも『ヨロシクね?』だなんて……まさかココに居座る気ではないだろうか?
俺としては半分もの凄く嬉しいけれど、半分もの凄く困ってしまった。
だって、彼女は猫耳女のロボットじゃなくって、モノ本の人間の女の子……なんだぞ―――っつ!
……それにしても……
――猫みたいな名前だなぁ……
ソレが彼女の名前に対しての、俺の第一印象だったんだ。
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