第9話 HELP?




    俺の返事に、美弥は詰まらなさそうに『ふぅん』と鼻をならした。

    朝っぱらからナニ盛ってるんだよ?

    クドイようだが、俺は女の子とは付き合ったコトなんか無いし、だからと言ってゲイでも無い。

    ああ……夜のバイトは週に三回遣ってるけどね?

    会員制高級クラブのバイト。

    コレでも店ではソコソコ人気がある。

    不本意ながら『カワイイ』とかって俺的にはNGな反応だけど、登録料金が結構な金額だから、通って来るのは店に馴染みのセレブな紳士と淑女ばかり。

    俺は彼等の『息子』か『孫』みたいに扱われている。

    時々毛色が違う連中が立ち寄るが、仕事だと思って割り切れば触られたりするくらいはガマン出来るけど、深入りされないように本番STOPの制限を付けてるし、指名されても俺が相手を選ぶから、違反するような客とは今の所遭遇していない。


    「ねえ……」

    困った俺の顔を見るなり、美弥が口角を吊り上げて意地悪っぽくニンマリと笑った。

    「……」

    なんだか俺だけが純情しちゃっているみたいで、恥ずかしくなるよ。

    もしかして、俺の方こそ『今どき』から隔離されちゃっているんだろうか???

    そう思うと、なんだか余計に恥ずかしくなって、俯いてしまった。

    顔がもの凄く火照ってるから、きっと美弥には俺が真っ赤になっているのが丸見えなんだろうな。

    そう思うとチョッとイヤダ。

    「マサくんってさぁ、チェリーなの?」

    「な、何てコト言うんです? かっつ、関係無いでしょ? 美弥さんには」

    回答するのに困るよーな質問をするなぁ!

    美弥はフフッと笑って腰を浮かすと、フローリングの床に手を着いて四つん這いになった。

    猫耳メイド姿のコスプレ女は、まるで本物の猫みたいにしなやかな動きを見せて、そろりと俺にニジリ寄る。

    この落ち着いた余裕の構えは……絶対に年上だっつ! 

    美弥は見た目俺と同い年くらいかと思っていたが、どうやら違っているみたい。

    「ち、チョッと……美弥さん?」

    「なぁ〜にぃ〜?」

    猫みたいな返事をすると、今にも襲ってキスしそうなくらいに美弥は顔を近付けて来た。

    「ひっ……」

    俺は美弥を間近に感じてドン退きし、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

    お互いの鼻が接触しそうなくらいの超至近距離から、大きな瞳で見詰められた。

    美弥が放つ仄かな息遣いと体温、そして微かに漂う甘い香水が、俺の視覚と嗅覚を鈍らせる。

    くらっつ☆ となった俺は、慌てて顔を後ろに引きながら上体を反らし、視線を落としてギョッとした。

    美弥の胸が重力に従って、メイド服から谷間が強調されている。

    むっつ、胸が……お、おおおっぱいが、尻になってるぅ〜〜〜

    近過ぎる美弥との距離に、眼を剥いている俺の心臓が大きく波打った。

    あ? ナンだか股間が……

    ヤバイ!

    元気になる俺の相棒を、正座している両膝で必死に押さえ付けてるけど、ルームウェアのスェットじゃ美弥にバレるのも時間の問題……かも?


    「あたしもだけどぉー、マサくんも眼悪いんだぁー」

    美弥は俺の変化にマダ気付いていないみたいだ。

    そしてニコニコしながらそろりと俺の黒縁眼鏡に手を掛けた。

    「っあ? や、止めてくださいよ!」

    乱暴に顔を美弥から逸らせたら、眼鏡は俺の動きに付いては来なかった。

    美弥がシッカリと持って放さなかったからだ。

    どうしよう! 

    眼鏡外したら性格が凶暴に……性格がぁあああ……

    間違って美弥を襲っちゃイケナイと思い、美弥から出来るだけ離れようとした俺は、正座していた状態から斜め後ろに大きく身体を引いた。

    仰向けに寝転がりそうになった上体を支えようと、片膝を立てて両手を後ろ手に着く。

    ……って?

    「あ? あれ?」

    ボヤケた視界には、俺の眼鏡を掴んだ状態でフリーズしている四つん這いの美弥がいた。

    「? どしたのぉ?」

    大きな眼をパチクリさせ、不思議そうな顔をする。

    「え? あ……い、いや、何でも……ないです」

    つか……変わんないじゃん?

    眼鏡を取られた俺に、変化は全く無かった。

    ああ、そう言えば性格が変わるのって、興奮して気が立っている時だけだったっけ?

    ホッとしたのも束の間、美弥が俺の盛り上がったテントを見付けてしまった。

    「きゃあ―――!!! ナニこれぇ!」

    「は?」

    なにその嬉しそうな悲鳴は?

    『ナニ』……って俺のナニですが?

    俺は素早く上体を捻って、同時に立てていた片膝を内側に倒してうつ伏せになり、俺の動きに合わせて追い掛けて来る美弥の視線をガードした。

    「ねーねー、今のってナニ?」

    「う、うわぁ……」

    美弥はドン退きしてる俺に、覆い被さるように這って来た。

    そして、俺のパンツのゴム部分をグァシッツ☆ と曳き掴むと、下着ごと後ろから力任せに引っ張った。

    「あう!」

    相棒がスゥエットのゴムに引っ掛って、ブザマに半ケツ状態になる俺。

    ぐぐぐ……お、お助けぇえええ〜〜〜

    「な、何でも無いですぅうう! 錯覚ですっ! 美弥さんの見間違いですぅううう〜〜〜」

    「ウソ! 今の見せてぇ!」

    美弥は瞳を爛々と輝かせて、俺のスゥエットを引っ張った。

    あ―――ッツ! ゴムが伸びるし、相棒がぁあああ〜〜〜!!!

    「そ、そんなモノ見せられません!!!」

    つか、見せられるかあぁぁ!!!

    「いいからぁ〜」

    「い、いくないっ(良くない)!」

    ひぃいいい〜〜〜な、何て強引なんだよっつ!

    俺の客(ユーザー)だってこんなに強引な女は居ないよぉー。

    「大丈夫よぉ! 痛くしないからぁ☆」

    美弥はそう言ってクスリと笑った。

    って、違うだろっつ!!!

    その言葉はぁ!



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