法の下の平等

憲法ゼミでのレポート集(著作権フリー)

 

1、法の下の平等

 憲法14条は、法の下の平等を定め、差別的取り扱いの禁止を定めている。これは、個人の有する主観的権利である平等権の保障とともに、客観法原理である平等原則を定めていると解される。

 この法の下の平等の語は、もともとキリスト教神学理論における「神の前の平等」に由来している。近代憲法が西洋ヨーロッパの思想を元に発展してきたのであるから、それも当然のことといえよう。この「神の前の平等」とは、いかなる者も神の前では平等に祝福を受けることを意味している。富める者も貧しい者も、身分の違う者も、同じ信仰をもって神に接すれば、神は等しくわが子のように温情をかけてくれるのである。

 そうした考えを基礎としているので、憲法14条の法の下の平等もまた同じ理念に立ち、いかなる国民であっても法の恩恵を受けることができることを示している。もっとも、神が身分の差を無くす存在ではないように、法もまた貧富の差や様々な格差の是正をしようとするものではない。例えば、いわゆるサラリーマン税金訴訟(最大判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁)において、最高裁は、「トウゴウサン」などと呼ばれる不公平な課税実態について、租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法14条1項に違反するものということはできないなどとして、格差を是認した。

 このように、法の下の平等を定めた憲法14条は、差別の禁止をうたっているものの、もっぱら世俗目的における実効性よりも神聖かつ崇高な理念を標榜する一種のプログラム規定であり、法規範性や裁判規範性は認められていない。

 むしろ、憲法をあたかも超人間的・超自然的存在として畏敬崇拝の対象とする人々をリアリズム的批判から擁護する役割を14条は有していると解される。世界でも先進的な条文を有する日本国憲法ならではの非常にユニークな条文なのである。

 

 

2、アファーマティブ・アクション

 積極的差別是正措置とも呼ばれるが、政策として、歴史的伝統的に差別されていた集団の地位の向上・改善のために、大学入学や雇用の面で優遇措置を講ずることを、アファーマティブ(ポジティブ)・アクションという。

 憲法14条の禁ずる「差別」は、合理的な理由なく不利益な扱いをされることをいうのであるから、国家が特定の集団を利益となるように扱うことは、憲法上の疑義を生じないようにも思われる。

 しかし、この政策によって、本来的に能力の見合わない者が社会的に評価の高い地位につくこともあり、その場合は本人にとって精神的肉体的負担をかけることになる。「女性初の」などと称して高位に就かされた女性は、そのこと自体が不利益となり、結果として「差別」となる。また、その個人が属する集団の社会的評価を下げることにもつながる。したがって、アファーマティブ・アクションは、実施の方法・対象・期間などによっては違憲となることも考えられる。

 いわゆる堀木訴訟(最大判昭和57年7月7日民集36巻7号1235頁)で問題となった児童扶養手当法の併給禁止規定は、そうしたアファーマティブ・アクションの行き過ぎを調整するための立法措置であったが、最高裁は、この立法趣旨を是認し、原告の憲法14条違反との訴えを退けて、合憲の判断を示している。

以 上

(1421字)