兄さまの苦手なもの

「兄さまは本当に甘いものが好きですね」
「ああ」

 現在、他家のガーデンパーティーにお邪魔になっているわたしたち。
 今さらの言葉に、兄さまも何を今さらとばかりにうなづく。
 わかってるよ。でも目の前で見せられるとつい言いたくなっちゃうんだよ。
 ガーデンパーティーにはお菓子だけじゃなくて軽食だってある。でも兄さまが手を伸ばすのは甘いものだけ。
 わかりやすすぎて、兄さまかわいいって叫びたくなる。

「お菓子やデザートで嫌いなものなんてないんじゃないですか?」

 だからわたしは、当然肯定が返ってくるものだと思ってそう言ったんだけど。
 兄さまは少しだけ考えるように視線を泳がせてから、首を横に振った。

「……いや、一つだけあるな」
「え? 意外です」

 わたしは素直に驚いた。
 兄さまといえば甘いものってくらいなのに。
 わしが何を考えているのかわかったのか、兄さまはばつが悪そうに苦笑する。

「酒の入った菓子は苦手だ」

 その答えも、意外なものだった。

「あれ? 兄さま、お酒は平気でしたよね?」
「ああ、それなりに強いほうだな」
「じゃあ、なんで苦手なんですか?」

 わたしの疑問は当然なものだと思う。
 お酒に強い兄さまが、お酒の入ったお菓子を避ける理由がわからない。

「酒と甘味は合わせるべきではないと思う。酒の癖が純粋に甘みを楽しむ邪魔をする。菓子を肴に、というのならわかるが、一緒にしてはいけない」

 兄さまの力説に、わたしは呆気に取られた。
 なんでそんなに熱く語ってるんですか、兄さま。
 お酒の入ったお菓子に何か恨みでもあるのかと、疑いたくなるくらいの力の入りようだ。

「……こだわりがあるんですね」

 結局、わたしはそれだけしか言えなかった。
 前世ではけっこう好きだったけどなぁ。ラム酒の入ったブラウニーとか、ブランデー漬けのフルーツパウンドケーキとか。
 まあ、好みは人それぞれ、だよね。


 いつも冷静沈着で完璧に近い兄さまは、甘いもののことになると、とたんに子どもっぽくなる。
 そんな兄さまも素敵、なんて思っちゃうわたしは重症だろうか?
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