リランとお姫様

 

遠い遠い、国のお話。

深い森に1人で女の子が暮らしていました。

女の子は綺麗なブロンド髪に、真っ白な肌。

ピンクローズのような頬に、海のように綺麗な瞳の持ち主で、

あまりにも美しいものだから、

人々には『お姫様』だと言われておりました。

そして遠い町にまでその存在は知られていたのです。

『わがままなお姫様』と、してですが―――・・・・。

 

お姫様の噂を聞きつけた若者たちは、町で一緒に暮らそうと誘います。

ですがお姫様は言うのです。

「ずっと私の傍にいてくれなきゃ嫌よ。」

いいでしょう。そう若者が言うと、さらにお姫様は続けます。

「あなたもココで暮らしてくれなきゃ嫌よ。ココは私の家だもの。」

それはできないという者もいれば、いいでしょうと了解する者もいました。

いいでしょうと言う者にお姫様は続けます。

「なら、今、あなたの一番大切なものを私に差し出しなさい。」

と、言いました。

お姫様のわがままに、若者たちは諦めました。

だけど中には本当に自分の金銀財宝を持って来て、

「これが一番大事なものだ!」と、言う若者もいたのです。

お姫様は言います。

「あなたの大事なものはコレなの?」と。

「そうです。」と答える若者にお姫様は続けます。

「では、この森にある金銀財宝より美しいものを持ってきて。」と。

このお姫様のわがままには皆、答える事が出来ませんでした。

こんな森に金銀財宝より美しいものはあるのかと皆は頭を悩ませましたが、答えを出せる者はおりませんでした。

 

 

ある町では、そんなお姫様の噂でいっぱいでした。

町一番のお金持ち。

町一番の力持ち。

町一番の秀才。

町一番の背高のっぽ。

たくさんの若者たちが森へ出向き、そして1人で町へ帰ってきた。

町で一番の名を持つ若者がだめならば、

僕なんてダメだと、この村の他の者たちは諦めてしまっていたのです。

そんな中、1人だけお姫様に会いに行こうと思っている若者がいたのです。

その若者は皆にこう呼ばれておりました。

 

とりえの無い男。

なんでも一番最後(ベベ)。

ベベのリラン。

 

リランは言いました。

「僕もお姫様に会いたいなぁ。」

皆は言います。

「何のとりえも無いお前がか?一番の名を持つ男で無理なのに、

お前なんかがお姫様と一緒に暮らせるわけがない。」

だけどリランは森へ向かうのです。

 

 

森をズンズン進んでいき、いつのまにか夜になってしまっていました。

大きな満月がキラキラ輝いており、木々を銀の光で照らしています。

ずっと奥まで進んで行くと、木の小さな家が見えてきました。

その家の前に立って、リランはドアをノックします。

 

コンコン。

 

「はい。どなた?」

可愛らしい声がして、家の中からお姫様が出てきました。

リランは美しいお姫様に一目で恋におちてしまいます。

お姫様はリランに言いました。

「お前も、私と一緒に暮らしたいの?」

リランは頷いて「はい。」と答えます。

お姫様はリランに言います。

「ずっと私の傍にいてくれなきゃ嫌よ。」

リランはまた頷いて「はい。傍にいさせて下さい。」と答えました。

するとお姫様は皆に言ってきたわがままをリランに言うのです。

「あなたもココで暮らしてくれなきゃ嫌よ。ココは私の家だもの。」

リランはニッコリ笑って頷きます。

「こんな素敵な緑に囲まれて、お姫様と暮らせるなら喜んで。」

お姫様は続けます。

「なら、今、あなたの一番大切なものを私に差し出しなさい。」

その言葉にリランは黙ってしまいました。

お姫様は言いました。

「大事なものを持たない人間が、人を大事にできるでしょうか?

お前はきっと私を大事にすることは出来ないでしょう。そんな人と

一緒に暮らす事は出来ません。」

するとリランは言いました。

「お姫様。大事なものなら御座います。

ですが今先ほど、僕の大事なものは、お姫様。あなたになりました。

お姫様を思う気持ちはどうやって差し出せばいいんでしょう?

それに一番大事なお姫様を、お姫様自身に差し出すことは不可能です。」

お姫様は皆と違う答えのリランに驚きました。

そして最後のわがままを言うのです。

「では、この森にある金銀財宝より美しいものを持ってきて。」

リランは森を見渡しました。

お姫様は思います。

金銀財宝が一番だと感じる者に、

この森でずっと私の傍にいれるはずが無いと。

そしてリランも、この答えは答えられないのだろうと思うのです。

森をグルリと見渡してリランはニッコリ笑うと、

手のひらを上に向けて小指側をぴたりとくっつけて、

手のひらで小さな器をつくりました。

「お姫様。ここに水をそそいでください。」

お姫様は水を注ぎます。

すると、どうでしょう・・・

リランの手のひらにできた小さな泉には光り輝くお月様が浮かんでいます。

「お姫様。これが一番綺麗なものです。

キラキラ銀の光がこの森全体を輝かせています。

空のお月様は手に届かないけれど、こうすれば手の中に…。」

そう言ってリランはニッコリ笑いました。

お姫様も笑いました。

誰一人として見た事のないお姫様の笑顔は、

お月様の光に照らされて、それはそれは美しかったそうです。

 

そして深い深い森の奥。

リランとお姫様は幸せに暮らしました。

今日もお月様は優しく、2人を包み込むように光り輝いています。

 

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