Wish【 3 -A.気配を感じた。 】

 

私は背後に、気配を感じた。

思わず振り向いた瞬間、バチッと合う大きな瞳。

想像もしていなかった存在に、私は目をパチクリとさせる。

だって、誰が想像する?

私とヒカルのすぐ後ろで、女の子がしゃがみこんでいるだなんて……。

 

え? なっ!?

「えぇ!?」と、私が驚いて声を上げると、ヒカルもその女の子に目線を落して、声を上げる。

「えぇえぇっ!!」

 ヒカルの驚きが、普通より大げさに感じた私は、思わず目線を向ける。

 女の子に釘付けになるヒカルの目。

 赤くなる、ヒカルの顔。

 …え………。えぇ!? ピンッと働く女のカン。

 私は直感的に理解して、直ぐに女の子へと、目線を戻した。

 ドクンと音をたてる心臓。

 この子だ―――……。

キュッと、見えないことをいい事に、私は両手を握り締めた。

 ヒカルが好きな子は、きっと…ううん、きっとじゃないわ。絶対そう。

 間違いなく、この子だ――……。

 女の子は、「まさか私に気がつくなんて」と、はにかんだように笑った。

 気がつくなんて、って………。

 だって、真後ろで立ち聞きって、潔すぎでしょう……。

 この子、変わってる。

 チラリとヒカルに目線を移すと、何よ。もう。

 情けないなぁ。緊張してるみたいで、ヒカルは固まってる。

 だけど目線は相変わらず、女の子をとらえたままだし、分かりやす過ぎんのよ。

 ばか、ばか、ばぁ〜かっ。

 っっとにもぉ。しかたないなぁ……。私が、話しかけてあげようか?

 仲良くなれるキッカケ、作ってあげようか??

 グルグル複雑な気持ちを抱え、考え込んでいると、女の子は嬉しそうに笑って口を開く。

 「あのっ!」

 「「え?」」

 突然、話しかけられて、私もヒカルも思わず声を上げた。

 直ぐに女の子は続ける。

 「私と、お友達になって下さいっ!」

 ……はぃ?

 えっと……とも、だち???

 いきなりのお願いに、私は混乱。

 そんな私の隣で、「喜んでっ!!」と、ヒカルは即答していた。

 そりゃぁ、まぁ。そうでしょうとも……。

 なんとまぁ、しまりのない顔をしているんだ。

 しかも、「いいよな? 天音」と、飛び切りの笑顔で私に話を振るんだもんなぁ……。

 なによ、ヒカル。なんで、そんなにいい笑顔??

 「もちろん」と、私は笑顔で返す。

 私も、どーしてココで笑顔っ!!

 なんだか、ちょっと悲しくなった。

 友達暦や、気持ちを隠してきた期間は、やっぱりダテじゃないことを実感。

 笑顔のお面が、顔に張り付いたみたい。

 バカみたいよ。お面の下の素顔は、泣きたいのを必死に我慢しているのに……。

 おかしいわよね。

 

 

    *  * 

 

 

 あの日、友達になった女の子。もとい、ヒカルの想い人の名前は、蒼井 澪(アオイ ミオ)といった。

 正直に言えば、ちょっと変わった女の子だと、私は思う。

 真後ろで立ち聞きする、潔すぎよさ。

 しかも、気付かれるなんて思っていなかったと言うのだから、変わってる人だと言われても仕方ない。

 背は私よりも小さくて、小動物みたいな澪は、肩より少し短い髪が、くせ毛でクルクルしてて、お人形さんみたいだ。

 この子が、ヒカルの好きな人か……。

 私と、やっぱりタイプが違う女の子だなぁ……。

 ジーッと私が、澪を見つめていたものだから、澪は目をパチクリさせて、笑った。

 「なぁに? 天音ちゃん」

 「え? あぁ、ごめん。なんでもない」

 やっばい、見過ぎちゃった。

 直ぐに我に返って、私は笑って誤魔化した。

 ヒカルはあからさまに見つめる私に、ヤキモチ焼いているのか、「天音、見すぎ!」と、不機嫌そうに、続ける。

 ふぅ〜ん……。あっそう。なによ。

 私は何だかムカついきて、ワザと澪に抱き付いた。

 「きゃぁ」と、澪が驚きの声を上げて、私はヒカルに『いいでしょ〜』って感じに、見せ付けてやる。

 ふぅ〜んだぁ〜。

 「可愛いから見てただけだもぉ〜んっ」

 「あま、まままっ!!!」

 「天音って呼びたいのぉ〜? あら、あら、あらぁ〜?? 言葉になってませんよぉ〜。ヒッカルくぅ〜ん」

 笑顔を作り、テンションを上げた。

 ワザとカラかう。ワザとふざける。

 全て嘘で、強がり。

 気付いて。気付かないで……。

「天音ぇえぇっ!!」

 ヒカルは両手を浮かせて、悔しそうに、そう言った。

 その手持ち無沙汰の両手はきっと、私のように澪を抱きしめたいんだろうね?

 「天音ちゃーんっ!」

 え?

 突然の澪の声に、私はハッと、目線を落した。

 「く、くるしいよぉ〜」

 げっ……。

 「ご、ごめぇん!! 澪!!」

 しまった。私ってば、つい腕に力を入れちゃってた……。

 私は慌てて、自分の腕の中の澪を解放する。

 すると澪は、「ははっ」と、笑った。

 「天音ちゃん、ナイスバディー!」

 なっ!?

 「親父みたいな事、言うんじゃないわよっ!!」

 顔を赤らめ、突っ込む私に、「脂肪だろ?」と、ヒカルのツッコミ。

 な、なんだとぉっ!!

 「コロスッ!!」

 殺意を込めた、眼差しでヒカルを睨みつけると、ヒカルは「冗談だってば」と、ふざけて笑う。

 「冗談だぁ〜!? 成敗してくれるわぁー!!」

 私もふざけて、悪乗りする。

 するとそんな私の言葉に、「ごかんべんをぉ〜」と、ヒカルは気合入れて言うもんだから、黙ってやり取りを見ていた澪が我慢できずに笑い出した。

 澪は「っぷはっ!」と、ふきだしたかと思うと、「あははははっ」と、お腹を抱えて笑い出す。

 私たちも、何だか可笑しくて、一緒になって笑った。

 あぁ〜あ……。もう、何だかなぁ〜……。

 やっぱり結局、こんな感じになっちゃうのか。

 私とヒカルはいつもこうだもんなぁ。

 男とか、女とか、色っぽい関係にはなれなくて、馬鹿みたいに、ふざけあうだけ。

 そんな私たちを見て笑う澪、楽しそうに笑う澪は、笑顔が良く似合うなぁって思った。

 嘘つき笑顔の私とは、違うんだもん。

 澪は、いい子だと思う。初対面なのに、何だか波長が合うって言うか……。不思議よね?

 でも、どうしてだろう? 澪は、どうして――……。

 どうして、私たちと友達になりたいと、言い出したんだろうか……。

 初対面で、なかなか言えない事だともうけど……。

 

 

A.澪に、聞いてみる。

B.聞かない。

 

 

 

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