Wish【 4 -A-B.聞かない。 】

 

 フト、感じた疑問だった。

 別に深い意味もなければ、タダ単になんとなく、わいた疑問で、私は「ま、いっか」と、笑う。

 私、神経質になっちゃってるのかな。

 初対面からずっと、何だか波長が合うってしまう私たち。

 素敵な笑顔の澪は、私から見ても柔らかく、まるで天使のような人に見えた。

 だから、ヒカルが惹かれたのが分かちゃうし、澪もヒカルに惹かれちゃうんじゃないかって、心配してしまった。

 心配って……まぁ、そんなの変だけどさ。

 だって私は、ヒカルに、想い人を探す協力をすると、言った。

 その澪が現われた今、私がすべき事は、なに??

 2人を、取り持つことなんじゃないの?

 2人を―――……。

 ズキズキと、心臓に走る痛み。

 私って、何なんだろうね。私の願いはヒカルの傍にいる事で、だけどヒカルは、私とは別の、女の子の傍にいたいんだ。

 向かう先が違う気持ちは、永遠に結ばれない……。

 それでも友達な私は、きっと変わらずヒカルの傍にいられるだろう。

 それは私の心からなの願いだったハズ……。なのに、どうして??

 私は、自分が欲張りだったんだって、分かってしまった。

 ヒカルを独占したい私がいて、澪なんか、いなきゃいいのにって小さく思う私がいて、その汚い心に気付くたびに、私は自己嫌悪で苦しくなっていく。

 ヒカルの傍にいること。

 隣にいられることが、幸せだったハズなのに、傍にいると苦しいなんて、可笑しいね。

 昔みたいにヒカルと二人でいることが当たり前じゃなくなる毎日。

 私たち3人は、出会った公園で会うことが日課になり、その日々は、思い知らされ続ける毎日になる。

 3人でいる時の、ヒカルの幸せそうな顔。

 私には向けられない、澪への笑顔。

 その全てが、私を苦しめる。

 だけど、それでもヒカルの隣にいたくって、それでもヒカルの笑顔を見つめていたくって、私は今のポジションにすがりつく。

 演技派女優バリの強がりには、鈍感なヒカルは気付かない。

 気付かないことにホッとして、ちょっとくらい気付いてよと、たまに心の中で言ってみる。

 でも、実際にそうなったら、あり得ないくらい戸惑うことは目に見えていて、私ってほんっと……バカみたいよね?

 どんなに苦しくて、傷ついても、結局は、今の状態が一番なんだって、私は思っているんだから。

 

    *  *    

 

 「天音ちゃん?」

 え? あ――……

 「なに?」

 ボーッとしていた私に、澪が名を呼んだので、私は慌てて、笑顔を作る。

 バカね。ボーッと考え事なんて、澪に失礼じゃない。

 今日はヒカルが少し遅れていて、今現在、私は澪と2人きり。

 初めは何気ない会話をしていたんだけど、澪の可愛い笑顔を見ていると、『ヒカルはこの笑顔にトキメクのかぁ』なんて思えてきて、いつの間にか、目線をそらせて、1人悶々と考え込んでしまった。

 どうしたら澪みたいになれるのかな? とか、澪のいいとこ知るたびに私が魅力の無い子みたいで切ないなぁなんて。

 ダメダメな私。シッカリしなくちゃ。

 「天音ちゃん。ゴメン、ね……」

 え――……。

 ドクンと、跳ねる心臓。

 気まずそうに続ける澪に、私の顔は引きつった。

 「や、な、なに? 澪ってば突然」

 もしかして、私の気持ちがバレてしまった?

 ヒカルが好きだと。

 もちろん私は、澪も好き。だけど矛盾するように、そんな澪に、嫉妬してる私もいる。

 そんなことが、もしかしてバレてしまったの??

 ソレとも、なに?

 もしかして澪もヒカルが好きだとか、そうゆうこと??

 一瞬の間に、洪水のように湧き上がる不安、不安、不安

 どうしよう。どうしよう。と、グルグル頭が混乱して、私は言葉が続かない。

 澪は静かに続けた。

 「天音ちゃんも、ヒカル君も、いつもこんな場所で退屈だよね?」

 え? はぃ?? あぁ!!

 「やだ、そんなこと!?」

 私はホッと胸をなでおろし、笑って続けた。

 「なに言ってんのよ。いいわよ別に。私もヒカルも、この公園はお気に入りなんだから」

  「でも、他にも行きたい場所とかあるでしょ? 行ったこと無い場所にも行きたいでしょ??」

 え? み、お……???

 私は、澪の言葉に、違和感。

 行ってみたい場所や、行ったこと無い場所は、私もヒカルもたくさんある。

 だけど、どうしてソレを澪が分かってしまうのか、よく分からない。

 普通そういう会話を、人間同士でするものなのかな?

 目をパチクリさせる私に、澪はフッと笑った。

 「でもね、もう少しだから」

 「え?」

 「だから、もう少し付き合ってね」

 ニッコリ笑顔の澪に、私は操られるように、コクンと頷いた。

 でも、イマイチこの会話の意味が分からない私は、続ける。

 「ねぇ、澪? あの―――」

 

「すみません!」

 

 え?

 私の言葉は、見知らぬ人の言葉によって遮られた。

 振り向くと、ソコには知らない男の子。

 え、だ、誰??

 目をパチクリさせる私と澪の前で、その男の子は続ける。

 「話を聞いてもらえませんか?」

 え? 話?? えっと、誰に?

 私はチラリと澪を見ると、澪は笑った。

 「天音ちゃんにお話だよ」

 はぁ!?

 「澪かもしれないじゃないっ!!」

 思わず声を上げた私に、男の子はキョトンとすると、笑った。

 「面白い人ですね」

 「は?」

 男の子の言葉に、私はあからさまに顔を引きつらせる。

「話、ココで今、聞いてもらってもいいですか?」

 え? ちょ、何??

 「ココって、その話は人に聞かれてもいい話なの?」

 「え? だって……」

 私の問いに、男の子は周りを見渡すと笑う。

 「他に人はいませんよ。いても、けっこう離れた距離にいるし、会話は聞こえないと思います」

 な、なに言ってるの?

 いくら澪がちんまいからって、ソレはあんまりでしょ!!

 「ココに、人がいるじゃないっ!!」

 私が澪を指差すと、男の子は目をパチクリとさせて苦笑。

 「そこまでして、僕の話は聞きたくないんですか?」

 え? なに、言って――……

 男の子の言葉は意味が分からない。混乱する。

 何が言いたいの??

 その、疑問の答えは、直ぐに知らされた。

 

 「誰も、いないじゃないですか」誰も、いないじゃないですか」

 

 え―――……。

 私は自分の耳をうたがった。

 誰も、いない??

 バッと後を振り向くと、確かに存在する澪。

 バチッと目が合った澪は、苦笑した。

 その、苦笑の意味は??

 

 

 

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