Wish【 6 -A-A 】

 

 シンッと静かになる部屋。

 私は、体をヒカルに預けたままで、ヒカルは心配そうに私に目線を落とすと、静かに沈黙を破った。

 「ちゃんと説明しやがれ。どういう意味なんだよ」

 静かに問いかけるヒカルの声は、ふざけたいつものヒカルじゃなくて、攻撃的に思った。

 「何だ? ヒカル、ちょっと喧嘩ごしじゃないか」

 「いいから、言えよ」

 声のトーンを低く、ヒカルは続け、アオはそれに静かに続けた。

 私は遠くなるような意識を、つなぎとめるように、2人の会話を聞いていた。

 どんどん、気持ち悪くなってる……。なんなの? これ……。

 私は遠くなるような意識を、つなぎとめるように、2人の会話を聞いていた。

 「蒼井澪は、死んでいるんだ。せっかく天国にいけるのに、その権利を拒み続けている」

 「し、死んでって……ちょ、ちょっとまてよ。だって、人間は霊体に触れることは出来ないんだぞ? なのに、おかしくねぇか?」

 2人の会話を黙って聞いていた私は、ヒカルの言葉に納得していた。

 その通りだと、思う。私はベタベタと澪に、抱きついたりしていた。

 だけど、あの通行人の嫌な目線は何だったのか……。

 タダ単に、私とヒカルが馬鹿やっていたせいだと思っていた。

 だけど……。だけど、もしも普通の人間に、澪の姿が見えていなければ、それはそれでつじつまが、合ってしまう……。

 頭の中でグルグル考える私は、視界がボンヤリとぼやけてきた。

 目が、シパシパする。もう、目、つむってしまっても、いいかな……。

 私は、どうしてしまったんだろう……。

 ヒカル、ごめんね。心配かけてるよね。大丈夫?

 私をかかえ、動揺を隠せないヒカルは、声が震えている。

 アオはそれとは正反対に、冷静に続けた。

 「馬鹿か? お前。半分人間、半分何だ? 天使だろうが。その力が宿る器なんだから、霊体に触れられても、おかしくはないだろう? 今だって天使の俺が見えるのは何故だ? 半分天使だからだろうが」

 「そ、それは……。で、でも!! それと、天音にどんな関係があるって言うんだ!?」

 「馬鹿やろうが」

 呆れたように、アオが短く言い放つ。

 ヒカルは、あからさまに眉間にシワを寄せると、「ハッキリ言えよ」と、言い返した。

「このままだと、天音は死ぬぞ?」

 え―――……??

 「な!?」

 ヒカルは私に目線を落とすと、支える手にギュッと力を込める。

 顔を上げ、アオを見つめながら、ヒカルは続けた。

 「死ぬって、どういうことなんだ?」

 「天音は、蒼井澪と一緒にいる事によって、精気を奪われてるんだ。このままだと、死ぬことになる」

 「ま、待てよ! じゃぁ、どうして俺は平気なんだ!!」

 声を大きく、取り乱すヒカルに、アオはまた呆れながら続けた。

 「お前、天使の力量知ってるのか? 天音とお前とじゃ、力がちがうよ」

 「それが、なんだよ!?」

 「ほんっとに、馬鹿だな。お前だって平気なわけじゃない。このままだと、いずれ死ぬ事になるんだぞ?」

 「どういう意味だよ」

 「今は、半分天使だからこそ、その霊力がお前の身を守ってる。だけど、天音を見てみろ? 人間なんて、霊にとりつかれりゃ一発だ。だが、半分天使だった天音は霊力で持ちこたえていた。なのに今じゃ、その霊力すらも残っていない。蒼井澪に奪われたせいだぞ? このままだと、死んでしまうぞ」

 「し、死んでしまうって、そんな……じゃ、どうすればいいんだよ!!」

 「とりあえず、今は天音に天使の力を、分け与えるしかないだろ?」

 「分け? 分け与えるって、どうやって……」

 イマイチ理解出来ないヒカルを見て、アオは少し笑い、私とヒカルに近づいた。

 「ヒカル、お前には無理だよ。お前の霊力は、他に分け与えれるほど残ってなどいない」

 ソッとアオは、ヒカルから私を離し、私を抱きかかえた。

 不思議そうにヒカルは名を呼ぶ。

 「アオ?」

 「……怒るなよな?」

 「え?」

 ソッと、私の唇に温かさが降ってきた。

 「な―――っ――……」

 ヒカルの驚きが聞こえ、徐々に私の体に力が宿ってく。

 動かす事も、支える事も辛かった体が動き、私は直ぐに現状を理解した。

 な、キス!?

 「やっ!!」

 私はドンッと思わず、アオを突き飛ばす。

 鈍い音をたてて、アオはしりもちをつくと、声を上げた。

 「って!!」

 すぐにヒカルが続ける。

 「アオ、お前何やってんだよ!」

 「怒るなって言ったろ? ってか、」

 フッと、アオは笑うと立ち上がる。

 「どうして、お前が怒るんだ?」

 「な――……」

 私は、なんだか、この場がちょっと張り詰めたように感じた。

 なんなのよ。

 眉間にシワを寄せる私に、ヒカルを無視して、アオは目線を向ける。

 「もう平気だろ?」

 「え?」

 「俺を突き飛ばせるくらいだから、平気だな?」

 あ、え? あ――……

 「ごめっ!!」

 思わず頭を下げて謝ると、私は指先で、まだ感触が残る唇に触れた。

 直ぐに頭を上げると、私は続ける。

 「で、も、どうし――」

 「力を分けただけだって。キスは、有効的な手段だから」

 っ………。だからって、どうしてヒカルの前で―――……。

 見られたくなかった。

 例え、ヒカルが私を友達にしか思っていないとしても、見られたくなかったよ……。

 「そんな事よりっ!!」

 え?

 ヒカルが突然、口を開く

 そんな事? ヒカルにとっちゃ、そんな事??

 そりゃ、そうか。ふぅ〜んだ。なによ。ばか……。

 私の気持ち、知りもしないで……。でも、そっか…。そうだよね。

 「ごめん、ヒカル。澪が心配だよね?」

 「あ……う、ん」

 頑張って笑った私に、ヒカルは短く相づちをうって、目を伏せた。

 え?

 「ヒカ――」

 「おい、アオ。どうすりゃいいんだ?」

 

 ヒカル?

 ヒカルは私の言葉を遮って、アオに会話を振る。

 「どうも、こうも無い。蒼井澪に会うのはおススメ出来ない。けど、出来れば成仏させてやってくれないか? あの子は俺が案内する筈だったんだ。なのに、拒み続けられて、ホトホト困ってる」

 私と、ヒカルは顔を見合わせる。

 そして、お互いにシンクロするように頷くと、私は静かに口を開いた。

 「私に、澪と話をさせて?」

 だって、私が話さないと……。

 倒れたのは私。元気な顔を見せる事も、必要でしょ?

 私のお願いに、ヒカルは一瞬、言葉を詰まらせ、「分かった」と、「だけど、俺も傍にいるから」と、続けた。

 なによ、ヒカルってそんな心配性なんだ?

 私って、体が丈夫だから、この100年、損したみたい。

 仮病の一つくらいして、心配してもらえばよかったわ……。なんて、出来やしないけどね。

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