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Wish【 6 -B-A 】

 

 私の体は震えていた。

 澪は、私とヒカルの話を聞いたんだ。

 だから澪は、こんな事になってるんじゃないの?

 「私の、せいだ――……」

 私は小さく、震えた声で呟く。

 どうしよう。どうしよう。私、私―――……。

 ユックリと、私は階段を下りて2人に近づいた。

 無言でいるヒカルに、私の心臓はドクンと音を立てる。

 「ヒ、カル? 澪、は? 気、失ってるだけ、だよね?」

 「……………」

 や、だ。どうして黙ってるの?

 「ヒカルッ!!!」

 思わずヒカルの体を揺らすと、ヒカルの腕の中でグッタリと、まるで人形のように、澪が揺れにまかせて動いた。

 う、そでしょ?

 発作? 打ち所が悪かった? どうしてこんな事に??

 澪の頬に残る涙のあと。その理由は、ヒカルには分からない。

 だけど、私には分かる。なぜ、こんなことになったのか、その真実を告げていた。

 やっぱり澪は、私とヒカルの話を聞いてしまったんだ。

 澪は優しいから、罪悪感を感じて、ショックを受けて――……。

 や、わた、私……私のせいだ―――……。

 大好きな澪。大好きなヒカル。不幸にしたのは、誰? わ、たし??

 「っあぁ……わた、私…や、ヒカル、ごめ――…私が、澪、殺し――…ごめ――…」

 上手く言葉に出来なくて、私は目の焦点が合わない。

 様子のおかしい私に、ヒカルは名を呼んだ。

 「あ、天音?」

 「ごめん、ヒカル。ごめ、ごめんなさい。澪、私、どうしたら――…」

 「あま――」

 「澪、澪が――」

 「ちょ、天音! しっかりしろよ! どうしたんだよ!!」

 ヒカルは声を大きく、私の言葉を遮った。

 私の瞳に、涙がたまってゆく。

 シンッと沈黙。

 「私、ヒカルが、ヒカル好きだったの……」

 「え――……?」

 私の言葉に、ヒカルは息に近い声を上げた。

 ごめんなさい。ごめんなさい……。

 私がヒカルを好きなせいで、今回の事件を招いた。

 潔く、もっとはやくヒカルの元から去っていればよかったのに――……。

 「今日、澪にソレを見透かされて、カッとなって、ヒドイこと言ったの。私……、澪は、病室飛び出した私を、きっと澪は心配して――…っ…それで、きっと会話を――……」

 震えて、言葉が上手く発せられない。

 だけど、心にある強い思いは1つ。

 だめ、私は澪を死なせない。こんな死が、あっていいハズない!!

 私は手の平をギュッと握ると、涙を拭った。

「今なら、間に合う……」

 勢いよく立ち上がり、私はヒカル目を落とす。

 「天音?」

 「私、澪を探すわ!」

 「え――……な、それって―――」

 私はコクリと頷いた。

 「天使に戻る。魂を探すには、天使に戻らないと」

 眉間にシワを寄せるヒカル。

 ヒカルの腕の中には、目を閉じ、じ、まるで眠っているような澪。

 その大切な存在を助けたい。

 ヒカルを不幸にもしない。

 そんな顔しないで。

 「私は、別に人間になりたかったわけじゃない」

 「え?」

 「だから、いいの。戻っても」

 「あま――――」

 「半分であろうとも、天使が人が死ぬキッカケを作るなんて、あってはならない事よ? 急がないと、澪の魂はさまよってしまう。予期せぬ死は、リストに載らない。ヒカルは、ココで澪の体を守ってて。誰かに見つかって大事になる事は避けたいから」

 私は階段を駆け上がると、一番上で振り向いた。

 最後だから、もう1度姿を見たかった。

 寂しいけど、天使にもどっちゃったら、澪の記憶からは私は消えちゃう。

 ヒカルは天使の血が流れてるから、私の事は忘れない。だけど、もう私はヒカルに会えない………。

 私は、澪を連れ戻したら、ヒカルに会わずに、天国へ帰るつもりだから……。

 だって、届かない想いを、こんな形で言ってしまうだなんて……。合わせる顔なんか、無いわ。

 「ばいばい。ヒカル。いつか、おじいちゃんになって命の終わりが来たら、私が迎えに来てあげるね」

 なんとも言えない表情のヒカルを見て、私は苦笑すると前を向いた。

 澪……。今すぐ行くから。待ってて。

 私は、屋上の青空の下で、ユックリと、契約の指輪をはずした。

 指から離れた銀の指輪は、美しい羽となり宙に舞う。

 キラキラと日の光を集めるように、舞い上がる羽は、私の背へと集まり、白き大きな翼となった。

 懐かしい感覚に、私は深呼吸して、息を吐く。

 「急がないと!」

 私はそう呟き、地に着く足を離して、空を飛んだ。

 人は死んで直ぐ。

 自分の体の傍にいるか、何処かへ無意識に飛ぶ事がある。

 直前まで私やヒカルのことを思っていたのなら、初めて出会った場所に、いるのもしれない――……。

 

 

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