Wish【 4 -A-B.聞かない。 】

 

 私は、ヒカルを想って、空を眺めていた。

 「はぁ…」と、溜息が出る。

 そろそろ戻らないと……。いつまでもこんなトコロでいられないわ。

 澪ともちゃんと、話をしなくちゃ……。

 そう思って、顔を上げた瞬間に、私は名を呼ばれた。

 

「天音っ!!」

 

 え?

 突然の声に、ドキッと心臓が跳ねる。

 「ヒカ、ル??」

 私は小さく名を呼ぶと、ヒカルに駆け寄った。

ど、

 「どうしたの??」

 走ってきたのか、息が上がっているヒカルに、私は目をパチクリとさせた。

 「ヒカル? 何か、あったの??」

 慌てた様子で、私はドキリとする。

 ま、まさか澪が人間じゃないってこと、知っちゃったの!?

 「ヒ、ヒカ―――」

 「天音、一人?」

 え?

 周りを見渡すヒカル。なに? 澪のことで走って来たんじゃないの??

 「うん」

 私は、戸惑いながらヒカルの問いに頷いた。

 「なんか男がどうのって、澪から聞いたんだけど?」

 っえぇ!? や、澪ったら!!

 「あ、あぁ、うん。まぁ、ね。いやぁ〜私もいがいと、モテるのかもね?」

 私はワザとふざけて笑う。

 どうせ、焼きもちなんか焼いてくれないし、隠しても仕方ないし。

 ふざけるくらいがちょうどいいもの。

 なぁ〜んだ。もう。分かっちゃった。コイツ、カラかいに来たんだ。

 どんな物好きだって、見物? 失礼なヤツ。

 ってことは、なんだ。澪のことは、まだ知らないんだ……。

 どうしよう。澪のこと、ヒカルに言った方がいいのかな………。

 でも、言ったらきっと傷つけるわよね………。

 「――――音?」

 …え?

 「天音!」

 っあぁ!

 「な、なに??」

 やばい。考え込んじゃった。

 取り繕うように笑う私に、ヒカルは、気まずそうに問いかけた。

 「天音はさ、どうして人間になろうと思ったんだ?」

 「え?」

 ドキッと、心臓が跳ねた。

 ばぁ〜か。ヒカル。言えるわけないでしょーが。

 「何よ〜急にぃ。別に深い意味は無いんだって。ヒカルがいないと、つまんないでしょ? カラかえないし? だから、ヒカルが人間になるなら、なってもいいかなぁ〜って思ったの」

 「そ、っか……」

 ヒ、カル?

 少し安心したように、ヒカルがつぶやく。

 なんか、変だよ。どうしたの???

 「ヒカル、何かあっ―――」

 「なぁ、天使に戻らねぇか?」

 っえ!?

 私の言葉を遮り、突然の誘い。

 え? ちょ、ちょっと……待って。

 い、

 「意味が分からないですけど」

混乱する私に、ヒカルは続けた。

 「そんな理由で人間になったんだったら、天使に戻ってもいいだろ?」

 はぃ? ちょ、ちょっと待って。

 そんなって、なによ。ヒドイ言い方しないでくれる?

 それって、なに??

「澪と二人でいたいのに、二人っきりになれないから、邪魔者排除ってこと?」

 思わず眉間にシワを寄せる私に、ヒカルは同じく眉間にシワを寄せた。

 「っ、ばっかじゃねぇの? んなわけねぇーだろ。澪は人間じゃねぇし、ココで俺とは付き合えないよ」

 え―――…

 「澪の事、知ってるんだ……。じゃ、なに?」

 ツキンと、心臓に痛みが走る。

 「澪と付き合いたいから、天使に戻りたいっての? だから私について来て、取り持てって??」

 それはまた、残酷な言葉だよ? ヒカル……。

 「え? いや、そうじゃなくって!」

 「そうじゃなきゃ、なによ」

 バカ。どうして、そんな簡単に酷いこと言えちゃうのよ……。

 鈍感って罪だよ、罪。ばか!!

 ジワッと、涙が浮かぶ。

 ヒカルのばか、ばか、ばか。私もばか。

 泣くな。泣いちゃだめだってば。

 思わず俯く私に、ヒカルのうろたえる声が聞こえる。

 「え? あ、ちょ、天音ぇ!?」

 ばぁか。なにうろたえてるのよ。 ってか、いいや。もう。泣いちゃえ。

 ヒカルなんか困って、うろたえちゃぇばいいんだっ。

 「ちが、えぇ? なんで泣くんだよ! ってか、俺っ!! 澪より、天音が大事みたいなんだけど!? どうしたらいい!?」

 ………っえ? ヒカル??

 い、今……

 「え? 今……な、んて、言ったの?」

 突然の告白に、私の涙も引っ込んだ。

 ホントに? え? ウソ??? これって冗談?? もしそうなら、タチが悪いわよ……。

 「っだから、俺――――…」

 ザァアァッと風が吹き、木々を揺らす。

 風の音と共に、聞こえたのは……

 

 「天音が好きなんだよ!!」

 

 と、まさかの、愛の告白。

 コレって、夢? 妄想!?

 ドキドキする心臓は、みるみる私の体温を上げてゆく。

 真っ赤になるヒカルはウソ偽りなく、本気だと分かって、その赤さに負けないくらい、私の顔も真っ赤になっていた。

 

 

 ビックリな元天使との出会い。

 澪はさしずめ、恋のキューピット??

 彼女に助けられたこの恋は、まさかの急展開で100年越しの恋を実らせた――……。

 

 

   END

 

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