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1 出会いもきっかけも、全て些細なことだった。 私、山城華が彼、山岡樹と出会ったのは高二のとき。 茶髪にピアス、着崩された制服。彼はあからさまな不良だった。おまけに彼は煙 草まで吸っているらしく、フラリとどこかに行って帰ってきたときにはほのかに 煙草の香りがした。その度に自分と彼は住んでいる世界が違うのだと漠然と思っ た。 対して私は、人見知りが激しいので友人も少なく、校則を破る勇気すら持ってい ない『根暗』タイプだった。 そんな相反する私達は、二年生になって同じクラス、あまつさえ席が前後になっ てしまった。 廊下側の端。前から四番目と五番目。彼は山岡。私は山城。そりゃそうだろうな 。 二年生に進級した初日は青ざめた。正月に100円出して願った『平和に一年が終 わりますように』が叶わなかったと思った。 神様、叶えてくれないのなら100円返してください。 ケチなことを考えながら、そうやってよく一人で悶々としていた。 ◇◆◇◆ 入学して一ヶ月もすると、大体クラスのグループは固まってくる。 私達のクラスを大きく分けるとするならば、イケイケなグループと、真面目なグ ループと、あと少数民族。 私は論外で少数民族だ。それでいい。どうかイケイケグループに目をつけられま せんように。それだけ願ってた。 彼も少数民族だった。少数民族というよりは一匹狼か。休み時間は煙草を吸いに 行くか睡眠かで潰していた。社交界デビューしないのか。勿体ないな。イケイケ 一の美女、佐藤さんがこの間『かっこいい』て褒めてたのにと、何故か私が憤慨 した。 彼は不良だったが授業は真面目に出ていた。そうだよね、授業料勿体ないもんね 、と一人で納得していた自分は、素晴らしい間抜けだったと思う。 彼は授業には出ていたがよく物を忘れてきていた。一日に必ず一教科は忘れてい たと思う。家がそんなにちらかってたのか?と、私の中で七不思議の一つに数え られたのは言うまでもない。 容姿は不良、態度は不真面目。当然彼は先生に目をつけられ、何かしら嫌味を言 われていた。しかし彼はそんな先生達のダイヤモンドダストに特にダメージを受 けた様子もなく、逆ギレもせずにただひたすらボンヤリとしていた。 五月に入った頃だ。ある日、彼は珍しくうたた寝をしていた。 時間は五限目。授業は英語。そりゃ眠いよね。 彼は頑張ってた。たまにフラフラと体が揺れたと思ったら突然ガクンと頭が下が り、そのショックでガバっと跳ね起きて慌てて体制を立て直していた。 私は後ろの席でそんな彼を応援した。頑張れ!あと三十分!と、いう感じで。 しかし遂に限界がきた。ゆっくりと体が前のめりに沈んでいき、彼は安らかな眠 りについた。それは授業終了十五分前だった。 頑張れ山岡君!立て!立つんだ!立つんだジョー!ってあれ、間違えた。起きろ !先生来るよ!はりーあっぷ!山岡君!はりー・・・ 「おい」 「・・・へ?」 私はがばっと身を起こした。クラスの視線がこちらに集まっている。 「・・・」 目の前には、先生。 「・・・」 「・・・」 無言の見つめ合い。 どうやら私は彼につられて寝てしまったらしい。 「・・・山城」 「はい」 クラス全体が固唾を飲んで見つめてきた。この先生は授業はつまらないくせにキ レるとやたら恐い。私の野性の勘で予想するに、相当怒ってる。マジギレ五秒前 くらいだ。 「俺に何か言うことはないのか?」 これで下手なコメントをしたら間違いなく殺られる。嫌だ、個人的にはもう少し 生きたい。 「・・・」 どうする山城華。ここでどうコメントしたとしても勝ち目はないぞ。 一秒にも満たない間にグルグルと考えを巡らせ、そして私は。 「・・・先生」 「なんだ?」 「・・・山岡君も寝てます」 ゴメン。山岡君。 top novel top next |