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10 二十一時十三分。山城家 果と父・匠は無言で夕食をとっていた。 「・・・」 「・・・」 今日の晩御飯はオムライス。家族全員が好きなはずのその料理も今日は何の効力 も発しない。果がふざけてケチャップで描いた『たっくん』が、むしろ重い。 「・・・果」 「ん?」 沈黙に耐えかねたのか、それとも思いつめたのか、匠がスプーンをテーブルに置 いた。 それを見て何か察したのか、果もスプーンを置いた。 「・・・」 「・・・」 沈黙 「・・・」 「・・・何?」 「・・・華は、襲われてはいないだろうか?」 「相手の男に失礼だよ父さん」 果は正直というか、考えなしというか、とにかく口が悪い。その一言が匠の平常 心を吹っ飛ばした。 「相手の男がヤクザだったらどうするんだ!?華はまだ17歳で穢れを知らないん だぞ!?」 バン、と机を思い切り叩き、匠は声を荒げた。スプールが小さくカタカタと揺れ る。 「手塩にかけた一人娘がそんな馬の骨に・・・」 「俺はいない存在かよ」 果のツッコミを華麗にスルーし、匠は勝手に妄想を膨らませていった。 「パパ、殺人罪で捕まるかもしれん」 どうやら華のぶっ飛んだ思考回路は父親ゆずりらしい。 そもそもヤクザが高校にいるのだろうか。 その疑問を、果は心の奥にそっとしまった。優しさではない。ただ純粋に、黙っ ていた方が物事が面白い方向に進むからだ。 「まぁ、姉貴も一応女の子だしね。危険ちゃ危険だね」 「ひょとして食べられてたりして」 匠の顔が一瞬にして蒼白になる。が、果は匠の様子に気付かない振りをしてその まま続けた。 「そのままできちゃった婚?みたいな?」 匠は何か言おうてしているが、声が出ていない。金魚みたいに口がぱくぱくと動 いているだけだった。 「は・・・華が14歳の母に・・・」 「年齢詐称してますよ」 匠は果のツッコミを聞いてすらいなかった。今にも倒れそうなぐらい顔を蒼白に して、「嘘だろ・・・」と呟いていた。 冗談だよ。 果は知っていた。 そんなこと、絶対にあり得ないということを。 果は知っていた。 華は勝つためなら手段を選ばないことを 果は知っていた。 華が中学校で伝説になっていることを 果は知っていた。 華の中学校時代あだ名を 果は知っていた。 華は人見知りが激しいので根暗と思われがちなのだが、実はそうではない。 【2組の病院送り】 あの時入院した西藤と剛田の鼻はちゃんと元に戻ったのか。 懐かしい二年前のあの日を思いだし、果は小さく笑った。 「果!華を助けにいくぞ!!」 「えー・・・」 大丈夫だと思うんだが、まぁいいか。 果は溜息をつくと、オムライスにラップをかけた。 back top novel top next |