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11 二十一時三十三分 私、山城華と山岡樹は、 駅にいました。 実は我が山城家に電話をした後、いっくんと私は奇跡の出会いを果たした。 警備員の千崎さん(56歳 男性)が来てくれたのだ。 何故もっと早く来てくれなかったのかというと、停電になった直後に巡回しようとしたらしいのだが、この世の者とは思えない大絶叫が突然校舎に響き渡り、恐くなったらしい。貴様それでも警備員か!! しかも話を聞くからに大絶叫の主は私だ。衣を裂くような乙女の悲鳴を怖がるなんて…失礼にも程がある! と、多少憤慨はしたが結果的には千崎さんのおかげで助かったので、許してあげた。 そして帰り道、私は遠慮したのにいっくんが「送る」と言って譲らなかった。 『いーよいーよ。大丈夫だって。誰も私なんか襲わないよ』 私が冗談まじりで言うと、彼は呆れたようにこう言った。 『華、物好きだっているんだよ?』 ・・・うん、そうだね、忘れてた。世の中には色んな人いるもんね。 少しばかり侮辱されたような気もしたのだが、まあ彼に悪気はないのだろうと思い、許してあげた。 そして、彼のお言葉に甘えて現在に至る、という訳なのだ。 「次の電車いつ?」 腕時計で時間を確認していた私に、いっくんが尋ねた。 「四十一分。もうすぐ」 いっくんは「そっか」とだけ言って空を仰いだ。 「腹減ったな・・・」 彼の何気ない一言が、自分を申し訳ない気持ちにさせた。学校に閉じ込められたとはいえ、私がいなかったらここまで遅くはならなかっただろう。 「ごめんね」 罪悪感に駆られ、私は小さく謝った。 「ん?」 いっくんがこっちを向く。私は目を反らした。 「何か言った?」 「別に何も」 電車が来るまであと五分。 私もいっくんも、互いに話題がない。 「あ、来た」 電車のライトが見え始め、駅が明るく照らされる。 「あのさ、」 電車の音に掻き消されそうなぐらいの小さな声で、いっくんがぽつりと呟いた。 「ん?」 私がいっくんの方を向く。いっくんもこっちを向いた。 電車が停まり、扉が機械的な音を立てながら開いた。中から疲れた顔をしたサラリーマンやOLさんが出てくる。入口の近くに立っていた私達はとても邪魔だった。 しかし、私もいっくんも、動かない。 「あのさ、華」 「うん?」 私は首を傾げた。いっくんは微かに戸惑い、何かを言いかけ、 「・・・やっぱいいや」 「え?」 なんだ? 「え?何?何言おうとしたの?」 続きが気になり、いっくんの袖を引っ張ると、いっくんは笑って言った。 「まだ華には早いや」 「?」 いっくんは携帯で時間を見て、 「入らないと置いてかれるよ」 私の背中を軽く叩いた。 なんだか釈然としないまま電車に乗り込み、私はいっくんの方を振り返った。 「いっくん」 「ん?」 途端に自分が彼に何を言おうとしたのか判らなくなった。ここで『呼んでみただけ〜☆』なんてほざいたら自分で自分にローリング・ソバット(技名)をかけてしまいたくなるだろう。 弱った私は瞬間的に頭をフル回転させ、 「今日はありがとね」 右手でキツネを作り、コンコンとやった。 いっくんは一瞬キョトンとした表情をしたが、 「どういたしまして」 嬉しそうに笑った。 プルルル、と音がして扉が閉まった。いっくんがひらひらと手を振り、私も振り返した。 電車がゆっくりと発車し、いっくんが視界から消えた。 また、明日。 ◇◆◇◆ 手を降ろし、席に座ろうとして、そして気づいた。 私の背後で石化している父と弟に。 「!?」 驚いて思わず後ずさりしてしまった。っていうかいたのなら声ぐらいかけろ。と、いうか何で固まってるのか。 「父さん、果、迎えにきてくれたの?」 私がそう尋ねると、果がポツリと呟いた。 「姉ちゃんて、あんなのが趣味なんだ・・・」 は!? 「何が!?」 私が聞き返すと、果は「何でもない」と言って父さんと一緒に座席に座った。 「・・・いや、姉ちゃんが無事だったんだ。ヨカッタヨカッタ」 果がカコカコと中国人形みたいに頭を揺らした。 父も、ヨカッタヨカッタと、果と同じように呟いていた。 「・・・父さん」 「なんだ?」 「帰ったら、酒飲んでいい?」 「・・・今日だけならな」 2人はそこで思い切りはぁぁと溜息をつき、ガックリとうなだれた。 「??」 まさか彼らが私といっくんの仲を誤解しているなどと知る由もない私は、不思議そうに父と弟を眺めながら帰宅したのだった。 ・・・後にこの勘違いが大事件を生むのだが、それはまた別の話だ。 back top novel top |