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3 私は大の甘党だ。甘ければ大抵のものは食べられるし、逆に卵焼きは砂糖で味 つけしてくれないと食べられない。好きな食べ物はお菓子、嫌いな食べ物はピーマン。どうやら私の味覚は3歳の時点で進化を止めたらしい。 お菓子好きの私は毎日お菓子を食べていた。飴やチョコは、帰りの電車の中での安らぎとなった。そのせいなのか私は糖分中毒になったらしく、定期的に糖分を摂取しないと落ち着かなくなってしまっていた。 そんな私は鞄にお菓子を常備していたわけで。 「・・・あるよ?」 「ちょーだい」 彼はそれだけ言うと右手を私の前に差し出した。貰う気満々だ。そこまでやられたらあげるしかしょうがないではないか。 「・・・何味がいい?」 「苺」 いちご まじすか。 不良の生徒が、根暗の女に苺の飴をねだってはいけませんよ山岡君。 心の中でソフトにツッコミながら、私は飴の入った袋を取り出した。 「はい」 袋を彼の前にかざし、選ぶように促した。すると彼は中を覗き込みながら、 「苺どれ?」 取れと言いますか。 しかし、彼に対しての罪悪感が半端なくあったため、私はちゃんと中から苺の飴を探し出した。 「ありがと」 彼は端的にそれだけ言うと、再び席に着席した。 また静かになった。どうしよう。何か話し掛けた方がいいのか?いやそれはウザいか。っていうか山岡君は別に怒ってなかったよね?なかったよね?というか私がチクったこと知らないのか?知らないんだろうな。よかった。殴られなくてすんだ。 彼がカリカリと問題を解いているのを、後ろからぼんやりと眺めた。安心して気が抜けたせいでペナルティプリントの存在はすっかり忘れてしまっていたのだ。 袋を裂く音がした。早速食べるらしい。 「飴好きなの?」 一瞬、誰に言っているのかわからなかった。 口が半開きの間抜け面をそのままで彼の背中を眺めていると、彼がいきなり振り向いた。 「山城さんて飴好きなの?」 ・・・。 ・・・・・・。 ・・・あ。 「わ、私?」 ああ、咄嗟だったので声がひっくり返ってしまったぁ!かなりカッコ悪い。コイツだっせーププッって思われた!! しかし彼は私の予想に反してマイペースだった。 「うん」 スルーですか。良かったが少し切ない。なんだこのプチ思春期。 「・・・好きだよ?」 気を取り直して彼を見た。相変わらず彼は私を無表情で見つめていた。私のなけなしの勇気が吹き飛んでいく。 「そうなんだ・・・」 私のその返答を聞き、彼は明後日な方向に視線をずらして何かを思案し始めた。その角度で佇まれると、耳のピアスに光が反射して眩しい。無意識のうちに目を細めた。 外から音は聞こえるが、脳が認識してくれない。静寂の中にいるような気がした。目を閉じればそのまま夢の世界へ行けそうな、そんな空気。 「俺さ、今禁煙中なんだ」 突然彼がそう言った。思わず彼を凝視すると、私を見ずにぼんやりとどこかを眺めていた。 「今日で二日目なんだけど、煙草がないとすっげーイライラすんの。気がつくとライターいじってるし。煙草吸おうとしてポケットの中探したりするし」 あ、 そういえば父さんが禁煙宣言したとき大騒ぎになったっけ。ニコチンが辛いって言ってた気がする。可哀相に、山岡君。君も辛いんだな。 そう思って頷いていたら、彼が急に「だからさ」と言ってきた。 「だからさ、俺が煙草なしで生きられるようになるまでの間、飴くれない?」 ・・・。 ・・・自分で飴買えばいーじゃん。 それが顔に出たのか、彼は微苦笑を漏らした。 「コンビニ行ったら煙草買いたくなるから」 ・・・えー? それでもなんだか釈然としない私に、彼は言った。 「英語の笹井先生ってさ、六時には帰るらしいよ」 ・・・笹井? 「ペナルティ、間に合わないんじゃない?」 彼がチラリと私の机に広がったプリントを眺め、クスリと笑った。 「・・・あ!」 あの先生って笹井っていうのか!やばい、プリント真っ白だよ!あと三十分もない のに! 一気に顔から血の気が引いていくのがわかった。 「プリント写す?」 彼が優しく私に問い掛ける。目の前でヒラヒラとプリントをなびかせてきた。答 えは全部埋まってる。 欲しい。 「タダとは言わないよね?」 ・・・卑怯 back top novel top next |