華と樹



8

夜の九時を過ぎた頃、山城家に一本の電話が入った。
「は〜いもしもし」
けたたましく鳴り響く電話に出たのは山城果。果と書いて「まさる」と読む。華の一つ下の弟である。
『もしもし!?果!?』
「なんだ姉ちゃん?どしたの?今どこ?九時過ぎてるよ?帰んない気かこの不良娘」
『テメエに言われたかねぇよこの馬鹿息子。話聞け』
「はいはい」
『あのね、今学校にいるんだけど―・・・』
「学校!?勉強熱心なのはよろしいがちとやり過ぎではないですか!?」
『聞け人の話を!!』
「はいはい」
『今学校にいるんだけど!閉じこめられたの!』
「なんで?」
『話せば長くなるんだけど―・・・』
「三〇文字以内でまとめて」
『寝過ごして停電して鍵閉められた』
「二十八。さすが姉ちゃん」
『ありがとう』
「閉じこめられたの?大丈夫?きのう呪怨見たばっかじゃん。超スリリングじゃね?」
『あー、まぁ友達と一緒に閉じこめられたからね』
「・・・友達いたんだ?」
『鼻に落花生詰めるぞこんにゃろう』
「アメリカンジョークよお姉様」
『だからね、迎えに―・・・』


がちゃ


「ただいま〜」


「あ、お帰り父さん」
『あ、お帰り父さん』

「あれ、華は?」
「学校で肝試ししてる」
『ちげーよ』
「肝試し?仕方ないなぁ。ほどほどにしとけよ?最近は不審者多いからな。夜道は襲われないようにするんだぞ?」
「夜道で人を襲わないように気をつけろだってさ」
『襲わねーよ』
「果、逆」
「ま、とにかく晩御飯どうする?」
『いやだからね、人の発言はちゃんと真面目に聞こうよ?』
「ん?」
『だからー・・・』


「おーい果。華は独りで学校にいるのか?」

「んな訳ないじゃん。あの姉ちゃんだよ?」
「それもそうか」
『うっせーよ』
「お父さんにそんな口聞いたらだめだろ不良娘」
『二年前のお前にそのまま返すよバカ野郎。姉を敬え。そして話を聞け』
「聞いてるよ。閉じこめられたんでしょ?」
「閉じこめられた!?」
「あれ?父さんに言ってなかったっけ?」
『アンタ自分で肝試しって言ってただろ』
「大丈夫なのか!?」
「大丈夫でしょ。友達もいるって言ってたし」
「友達!?男か!?」
「え!?そうなの姉ちゃん!?」
『・・・あー。いや・・・うん・・・』
「男だって」
「・・・!!」
「あ、父さんが目ぇ開けたまま失神した」
『お前が単刀直入に言い過ぎなんだよ』
「手塩にかけた娘が・・・どこぞの馬の骨と肝試しなんて・・・恋の予感じゃないか!!」
「許しませんよそんな破廉恥な!!」
『黙れアホ共!だからぁ、学校にむかー・・・』

「・・・ちょっと待って。何か臭くない?」


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