アイリッシュ・シチューはお好きですか?

 




  自由惑星同盟軍が誇る、奇蹟のヤン、魔術師ヤン、稀代の謀神(違う)こと、ヤン・ウェンリーはワケの分からない出来事にそーとーアタマをヤられ

  ていた。
  「…あの、あのね、ちょっとシェーンコップ」
  「なんでしょう?提督」
  皮肉気な口元がイカす要塞防御指揮官は困惑気味に邪魔をするヤンの手を簡単にそれとなく排除しながら、本当に邪魔なズボンとパンツを剥ぎ取った。
  「ちょっと!一体なんなんだっ?!」
  羞恥で真っ赤になって丸見えの下半身を必死で隠そうとするが、それは背後から伸びて来た両手にバンザーイさせられた。
  「ヤン、アイリッシュ・シチュー企画だ」
  冷静な声はキャゼルヌであった。
  「は?なんです、それ?」
  肩越しに不機嫌な視線を投げるが、要塞事務総監は至って真面目顔で首元のスカーフでヤンの両手首を一括りに縛り上げた。鬼だ。
  「ちょっ!やめてくださいっ!!」
  「お静かに、提督。泣こうが喚こうがアイリッシュ・シチュー企画ですから」
  「そうだ、アイリッシュ・シチュー企画だ」
  ヤンの手首を括るスカーフはベッドのパイプに結ばれ、シャツ一枚とネクタイと靴下だけのヤンの姿を見下ろしながら攻め二人はニマニマしながら服

  を脱ぎ始めた。


  「だから!一体なんなんだ
―――ッ!!」

  説明しよう、アイリッシュ・シチュー企画とは最低条件が3◯という夢の企画である。

  「↑わかったか?」
  観念しろ、とばかりにキャゼルヌはヤンのパイロットシャツの釦を外し始めた。
  「ああ、事務総監殿、シャツの釦は2個ほど残しておいた方が萌えでしょう」
  とゆうわけで、腹部あたりの釦は残された。萌えを探求する不良中年は片方の靴下を半分ほど下げた。萌えというよりマニアックだ(趣味なので気に

  しないでください)
  「最低条件が3◯ならば、プラスαでなにかあったほうがいいんだろうな」
  どこまでも冷静なキャゼルヌは恐ろしい事を言い出し、ヤンは顔面蒼白になった。
  「そうですな、もう一人呼ぶか、玩具か、小道具か、見物人か、それとも外か」
  「4◯か…面倒だな(作文するのが)玩具はありきたりだしな」
  なんか真剣な会議が始まりヤンは叫んだ。
  「どれもイヤだッ!!」
  「お前に拒否権はない」
  ほんと鬼なキャゼルヌはきっぱり言い切った。お父さん、ここぞとばかりに鬼畜発動中。
  「ああ、そうだ、士官学校ネタはどうだ?」
  「却下です」
  不良中年を無視でキャゼルヌの萌え語りが始まった。
  「まず、ローターを埋めて授業に出させる。我慢出来なくなったヤンは俺に縋り付くが、仕事中だからと、そこいらの学生を銜え込む様にいう。ここ

  で3◯だ。だが、物足りないヤンは俺の目の前で自慰をして必死にお誘い。どうだ?」
  お父さん、鬱屈し過ぎです。
  「却下と言っただろうが」
  自分排除の気配を感じ取り、シェーンコップの眼付きは、お前がこの企画から外れろ、と云わんばかりに鋭い。
  「そんなモブよりもイゼルローン要塞攻略のご褒美で私以下ローゼンリッターで閣下を美味しく頂く方が間接インパクトでしょう」
  コプヤンでリンヤンでブルームハルトヤンという珍しさ満載。プラスαなくても大丈ー夫。
  「却下だ」
  チタンフレームの奥から鋭い眼光を無視して、不良中年は萌えプランを語った。
  「原作を取り入れた要塞攻略ならストーリー的にも無理はないでしょう。そして快楽の蜜を知った提督はローゼンリッターの中でも一際テクと持久力

  を持つ私をことあるごとに誘惑し欲望のままに身を任せ、シャンプール攻略でローゼンリッター×ヤン」
  「お前さん、この企画のこと判ってるのか?3◯にストーリーは関係ないし、ストーリー性のある3◯がまず書けん!!早い話しヤってりゃいいんだ。

  本人はそのつもりだ。ストーリー性を求めるなら、青いカナリヤが啼いてくれるだろうさ」
  お父さん、ぶっちゃけて下さいまして、ありがとうございます。
  開き直りにヤンは溜め息を吐いた。
  「…そうですか。アイリッシュ・シチュー企画は判りました。この際諦めました。でも私にだって希望があります」
  「ご希望とは、ローゼンリッターですか?」
  「士官学校だろう?」
  「どれも違います。あの…3◯なら…その…ビュコック提督とメルカッツ提督がいいなぁ…なんて…」
  「…………」×2
  なんだその薄ら頬染めの可愛い顔は。
  もじもじヤンの萌え語り。
  「だって、その…二人とも紳士そうだし、痛い事とかしなさそうだし、温かそうだし…」
  もじもじしすぎて、反応してんじゃないかと思うヤンにキャゼルヌは半ば呆れた。
  「待て待て、年齢を考えろ。まず勃たんぞ。企画倒れもいい所だ」
  「勃ちますよ!イきますよ!!各2票ですよ!!」
  キャゼルヌのツッ込みにヤンは全身全霊で否定した。
  「…………」×2
  微弱にショックな二人。
  「ああ、もういい、こんな展開だと二日目のアイリッシュ・シチューだ」
  サラッとエロでなく、ドロッとギャグ。
  「そうですな。サラッとヤりますか」
  「まずは王道からだな」
  3◯で王道と云えば、上のお口と下のお口攻め。こういった時だけ意気投合の二人はいそいそと体勢を整えた。
  「ちょっ!ぅぐ…ッ…!」
  まずは上のお口にキャゼルヌ侵入。まったく躊躇いがない。さすが鬼畜発動中、容赦なし。
  「歯を立てるなよ、いくら不器用だと言っても銜えて吸って舌を絡めるくらいできるだろう?」
  「……ふ…ぅ……ん……ッ」
  更に頭を押さえ込まれ、奥に捩じ込まれる。苦し気な吐息がヤンの鼻梁から漏れた。
  シェーンコップはうつ伏せ状態のヤンの腰を高く掲げ、ひっそりと隠れる蕾を剥き出しにした。ソコは苦し気に喘ぐ様にヒク付いている。親指の腹で

  襞を撫でると、ヤンの背中がピクッと震えた。
  「いきなりは閣下もお辛いでしょうから、じっくり慣らしましょう」
  どっかの鬼畜と違って優しくしますよ。
  低いバリトンが蕾に触れると、ねったりと唾液の絡んだ舌が、くにゅり、と入り込む。
  「んん…っ!!」
  生暖かく柔らかな感触が耐え切れず、ヤンはきつく目を瞑り、息を飲む咽頭の奥でキャゼルヌの陰茎を締め付けた。先端が締め付けられ、快楽にキャ

  ゼルヌは短い息を吐いた。
  「いいぞ、もっと締め付けろ」
  よくできたと、癖のある黒髪を撫でると、苦しさに眉目を寄せた濡れた漆黒の瞳が見上げて来た。縋る様な瞳に映りキャゼルヌはゾクゾクとした。自

  分の中に、これほどまでの嗜虐心があることに驚くが、是総て『アイリッシュ・シチュー企画』と満足・納得で、ヤンの頭を両手で掴んで揺り動かし

  た。
  こういったときだけ息が合う二人は、タイミングを合わせてそれぞれの動きを激しくさせていく。
  内部まで唾液で濡らしたシェーンコップは舌を引き抜き、2本の指で蹂躙を始めた。
  先走りの液と唾液が混ざった水音と、そして蕾からも内壁の粘膜を溶かす激しさで責められ、耳の奥に響く淫靡な水音にヤンは恥ずかしさにおかしく

  なりそうだった。それも快楽であると、ヤン自身が物語、先端からは透明な液をシーツに滴らせていた。
  「…ぅ…ぅん…っふ…ッんン
――ッ」
  節ばった太い指の先が前立腺を穿ち、ヤンはワケが分からないまま真っ白い閃光の中に到達した。身の裡を走り抜ける鋭い快楽になす術がなく、僅か

  に銜え込んだ陰茎に歯が当たった。
  「
―――くっ!」
  限界でもあったキャゼルヌは陰茎からビリッと走る衝撃に呻き、一拍持ち堪え、ヤンの狭い口腔奥で果てた。器官に勢いよく流し込まれヤンは、果て

  た直後とあって、無防備に飲み込んだ。陰茎を抜かれた唇は戦慄き、ヤンは発作の様な浅い呼吸を繰り返した。蹂躙していた指も抜かれると、支えを

  失った躰は哀れなほど呆気なくベッドに伏せた。
  しかし、本当に哀れで済むなら『アイリッシュ・シチュー企画』は要らない。(ごめんで済むなら的)
  「さぁ、次は私の番です」
  口元にシニカルな笑みを浮かべた不良中年は胡座を組み、軽々と弛緩したヤンの躰を持ち上げた。
  「…ひ…ぃ…ッ!」
  指とは比べ物にならない堅く逸り立つ太い陰茎が、果てた余韻で朧なヤンの意識と躰を引き裂く。まともに呼吸が出来ないヤンは全身を強張らせ、半

  ばまで埋め込まれた陰茎をその口で締め付けた。
  ヤンの両脚は間接限界まで開かれ、震えながら窄まる蕾が良く見える。
  「おい、ヤン、締め付けるのは全部銜えてからにした方が、お前さんの為だぞ?」
  どこか揶揄う口調のキャゼルヌをヤンは精一杯睨み付けたが濡れた瞳では効果がなく、単に煽るだけだとキャゼルヌは仕方なさそうに苦笑を漏らした。
  「さっきの礼だ」
  萎えたヤンをキャゼルヌは銜えた。
  しかしお父さんはどこまでも鬼畜であった。
  「あぁ
―――ッ!」
  強く吸い上げられ、快楽を感じるよりも苦痛が勝り、埋め込まれた陰茎を更に締め付けながらヤンは逃れようと腰を揺り動かした。
  畝り締め付けられ、シェーンコップは些か不快気に眉を寄せた。ここは、鬼畜には鬼畜でお返しするのが礼儀だろう。口端に不遜な笑みを讃えシェー

  ンコップはヤンの脚を解放し、その両手で胸の突起を弄くりながら前立腺を目掛けて衝き上げた。
  「ヒ…ッ!あ、やぁッ!!」
  溜まったもんじゃないのはヤンだ。一気に沸き上がる快楽は息苦しい程で、精神を削られていく。神経は剥き出しとなり、内部で荒れ狂う逞しい陰茎

  の脈動と自身に絡み付く舌の動きまで如実に感じ、狂いそうで漏れる嬌声は享楽の悲鳴だ。
  「だ、めッ!あっイっちゃうっはっぁンッ!放してッ!」
  そう言いながら、ヤンはキャゼルヌの頭を立てた膝で押えていた。
  「おやおや、閣下は躰の方が正直ですね」
  熱く畝る内壁の襞に熱の籠ったシェーンコップの声はいつもより低く、耳元で囁かれるとその熱が頭の中に伝染してきそうだった。
  ウソはいけませんね、とシェーンコップは熱を孕み、ぷっくりとした両の胸の熟れた果実をギュッと摘まみ上げた。
  「
―――ぁああ…ッ!」
  ツキンッとした痛みが最後の引き金となったのだろう、ヤンはビクビクと躰を震わせながらキャゼルヌの口腔内で果て、果てた衝撃で締め付けられた

  シェーンコップも一際強く衝き上げ、内壁の奥の奥で勢いよく放った。
  「…ふ…ぁ…ぁ…」
  ヤンは内蔵の粘膜にまで濡れた感覚に怯えた様な啼き声を小さく漏らした。銜えたままのキャゼルヌは小さな声と共に果てたばかりのヤンは震えたの

  を感じ、搾り取る様に強く吸い上げた。
  「ンッ!」
  ビクッと震えたヤンはとうとう力尽きた様に意識を手放した。
  口移しで自分の放ったものを飲ませてやろうと思っていたキャゼルヌは当てが外れ、仕方なくティッシュに出した。丸めてポイ。
  ぐてっとしたヤンを二人は思案気に眺めた。
  「さて、どうするか?」
  一発で終わったらアイリッシュ・シチューの名折れである。

 


  「ここはゴスロリ猫耳・猫尻尾ですよ!」

 

 

  アッテンボロー登場。

  「………」×2

  だから4◯は面倒だと二人の消え去れ!みたいな視線を受け、アッテンボローはムッとした。

  「なんでしたらセーラー服でもイイですよ」

  「…………」×2。

  …いいな、セーラー服。

  …いや、猫耳・猫尻尾も捨て難い。

  そんな声が聞こえたのか、コスプレイヤーのアッテンボローは偽悪的な笑みを浮かべた。

  「じゃぁイってみよ――ッ!」

  ヤル気に拳を振り上げ、ポポンッ!とドロンッ!


  なんでもアリなアイリッシュ・シチュー企画ならではのご都合展開で、背景は夕暮れの学校の体育館倉庫。


  埃を被ったマットに群がる学ラン。

  「ははっお堅い文化部の部長さんがこんなにセーラー服が似合うとはビックリだ!」

  モブ1の説明的な台詞が狭い倉庫に響いた。

  「記念に写メ撮ろうぜ」

  モブ2の提案にモブ3は携帯を取り出した。

  急展開過ぎてヤンは頭が付いていけなかったが、伸ばされる魔の手からヤンは慌てて逃げ出そうとしたがモブ1と2に押えられた。

  「やめっ!」

  「おら、暴れんなよ、可愛い黒縁眼鏡がずれちゃったじゃん」

  モブ3はヤンの眼鏡を直した。

  「もっと可愛くしてやるよ」

  モブ4は猫耳のカチューシャをヤンに装着した。

  「おお!良く似合ってる!」

  余りの可愛さに沸き上がるモブ達。膝上の短いスカートから覗くナマ脚は必死に抵抗し、スカートが捲れていてモブの鼻息は荒い。


 

  「ちょっと待て」


 

  お父さんの鶴の一言で、モブ達はピタリと静止。ヤンはホッとしたが、作り物の様なモブ達は硬直していて抜け出せない。

  「あの、ちょっと、退かしてくれませんか?」

  ヤンのお願いは全員シカトで、キャゼルヌとシェーンコップはアッテンボローに詰め寄っていた。

  「なんでモブなんだ?」

  「必要ないだろう」

  「いや、その、このあとモブから先輩を助けて、俺とヤン先輩のラブストーリ展開…?」

  疑問符を付けて誤摩化すが、却下、の一蹴りにされた。

  「セーラーと云ったら、教室だろう」

  キャゼルヌの独壇場。


  数学教師アレックス・キャゼルヌは仕事を終え、職員室を出た。そして、夕暮れの廊下に一人の長い影に気付く。

  「キャゼルヌ先生、数学で判らないところがあるんですが…」

  …なんで私はこんな台詞云ってるんだ?

  アイリッシュ・シチューだから。

  「ヤン・ウェンリー、またか。仕方ない、教室に行こう」

  そして二人は校舎の奥まった3年A組へと歩いていく。

  「俺の授業はそんなに判り辛いか?」

  「いえ、なんていうか、その…」

  下校中の生徒と数人と、軽い挨拶を交わしてながら擦れ違う。よくある風景だ。

  そして教室に着き、音を立ててドアが閉まるとヤンはキャゼルヌに抱き付いた。

  「…だって、先生が気になって …授業に集中出来ないんです…」

  …先生が嫌いで声も聞きたくないんです、の間違いじゃないのか?

  白ける心中とは真逆に、ヤンの声は既に熱を帯びていた。

  …ほんと、この企画って私以外に都合いいよな。

  仕方ありません、アイリッシュ・シチューですから。

  判ってるくせに、と胸に額を擦り付け、拗ねた声で甘えるヤンはキャゼルヌの太腿に下肢を押し付けた(高校生ヤンなので身長差あり。セーラー服で

  も男の子です。なんで?と思っちゃダメです)

  キャゼルヌは癖のある黒髪を見下ろし、口元に意地の悪い笑みを浮かべた。

  「まったく、数学で判らない所があるって云っておきながら、もう、か?嘘は感心せんぞ」

  「…意地悪ですね。でも、判らない所があるのは嘘じゃないんですよ?」

  不貞腐れた様にチロリと見上げてくる黒い瞳の縁をキャゼルヌの親指の腹がなぞり、あまやかな刺激にヤンは気持ち良さそうに目を細めた。

  「じゃ、ご褒美は勉強のあとだ」

  「………」

  ぷーと頬を膨らませたヤンはキャゼルヌから躰を離し、乱暴な手付きで机に座り、数学の教科書を広げた。

  その様子にキャゼルヌは笑いを噛み殺しながら、ヤンの隣の席に着いた。

  「ここです」

  「ああ、これか。これは…うんたらかんたら…」(数学ってなに?美味しいの?の、もちっ子です)

  キャゼルヌの説明でヤンは、ああ!と納得した。

  「じゃあ、これを解いてみろ」

  ヤンの手からシャープペンを取り、キャゼルヌはノートに3問の問題を書いた。

  先程の説明で理解を得たヤンは一問目を解いていく。そして、正解かどうかキャゼルヌを見遣り、教師は満足げな笑みを返した。そしてヤンが2問目

  に取りかかると、キャゼルヌの眼の奥にこれまでとは違った光が燻りだした。

  「…ほら、約束の褒美だ」

  「あ…っ」

  スルリとスカートの中に差し込まれた大きな掌が下着越しにヤンを撫でた。たったそれだけで、ヤンは熱を取り戻し、シャープペンを強く握り締めた。

  「…ん…っ…はっ…ぁ…」

  「お前は集中力が足りん。これも集中力の勉強だ」

  どこか愉しそうな声がヤンの思考を侵していく。

  先端から滲み出た快楽の雫で薄い布は湿り、形を変えたヤンを下着の上から擦り上げながら2問目を解くよう強要する。

  与えられる快楽の中に繊維の不快感を覚え、ヤンはシャープペンを持たない手でユラユラと妖しく蠢くキャゼルヌの手の甲に掌を重ねた。それは行為

  を止めるものではなく、直接触れて欲しくて、こっち…と下着の中へと促した。

  「だめだ」

  弱々しい掌と乱れる掠れた吐息に嗜虐と憐憫が刺激されるが、キャゼルヌは前者を取った。すぐに甘やかしては教育にならない。

  「…キャ…ゼルヌ…先生…ぇ…」

  中途半端な快楽に苦し気に濡れる黒い瞳は懇願するが、キャゼルヌは指先でノートを叩いた。それが返事であることは明白で、乱れる呼吸で艶やかに

  湿った唇をヤンは噛み締めた。

  ヤンは細く喘ぎながら、快楽に揺れる思考の中で必死に問題を解いていく。一問目よりも難度の高い問題で、ヤンは途中の計算式を間違えた。

  「違う」

  「ひぁッ!」

  昂り、物欲しそうに濡れた自身をギュッとを握られ、ヤンは仰け反り甲高い悲鳴を上げた。

  「…あ…ぁ…っ…」

  痛みの余韻はキャゼルヌの蠢く掌によって、じくじくと悦楽へと代わりヤンはノートに額をつけた。繰り返される熱い吐息で紙が湿っていく。

  「ほら、さっき教えてやっただろう」

  そんな自分の様子を意に返さない教師の声が恨めしく、どうしてこんなに意地の悪い男から離れられないのか、自分でも不思議に思いながらヤンは精

  一杯睨み付けた。

  溜まらない快楽に涙が零れそうな瞳の縁を優しく撫で、キャゼルヌはもう一度説明した。判ったか、と訊くとヤンは小さく頷き、震えるシャープペン

  で解いていく。ノートに綴られたヨレた数式は正解を導きだした。

  「よし。正解だ」

  キャゼルヌの言葉にヤンはホッと安堵の息を漏らした。それは問題があっていたことに対してであり、これから与えられる快楽に対してだった。

  ヤンの望み通り、教師の掌は下着の中に潜り込んだ。ザリ…ッと布に隠れた黒い茂みが摩擦で音を立てる。神経が過敏になっているヤンは聞こえない

  筈の音が頭の中で響き、誘う様な吐息を漏らした。

  「…は…ぁ……ぇ…?…んぁッ!」

  キャゼルヌの掌はヤンの望み以上の望みを叶えた。直接触れて欲しがったヤン自身を通り越し、更に奥にある蕾に襞を指の腹で弄くる。

  「こっちだろう?」

  襞は、問い掛けに応える様にヒクヒクと収縮して指先を内部に誘い、誘われるままに人差し指は潜り込む。先走りの雫で多少は湿っていたが潤いは絶

  対的に不足していた。薄い皮膚が引き攣る感覚に、ヤンは苦痛と快楽の狭間に落とされた。

  「んんッ…い…いた…キャゼ…ル…ッ…せ…ん…っせぃ…」

  痛みに頑になる閉じた内壁を抉じ開けられ、逃れようとヤンの腰が揺れ、椅子の脚が床と擦れる歪な音とか細い啜り泣きが二人だけの教室に響いた。

  課外授業の背徳感が膨らみ、キャゼルヌは苦笑の様な自嘲のような曖昧な笑みを小さく漏らしたが、言葉にしたのは更にヤンを追い詰めるものだった。

  「お前のココはすぐに馴染むだろうよ。それよりも三問目だ」

  根元まで埋め込んだ人差し指は熱く熟れていく内壁の様子を克明に教師に教えた。怯えた様に小刻みに震えていたソコは、ヤンの呼吸に呼応して徐々

  に緩やかに内部全体が蠕動しいく。

  痛みをやり過ごしたヤンは躰の奥から沸き上がる快楽の熱で逆上せた様に視界がボヤけていた。何度か瞬きを繰り返し、ほんの少し視界が明けると漸

  く三問目に取りかかった。

  生徒が問題を解く時間は、教師には手持ちぶたさだ。キャゼルヌの指はすっかり熟れて畝る内部を玩具に弄んだ。内部の粘膜が熱く溶けだし、埋め込

  まれた指が動く度に淫靡な水音を漏らした。

  「…ぁ、はっ…ぁん……」

  滑った水音と抑えられない自分の喘ぎ声が恥ずかしい。ヤンは全身が灼かれた様に熱くなっていくのを自覚した。

  羞恥と制御する術のない快楽でヤンの肌は薄紅色に染まり、セーラー服から覗く鎖骨と癖のある黒髪に見え隠れする項はしっとりと湿り意味深な光沢

  を放った。毎回のことだが、痕を残したくなる衝動をキャゼルヌは押さえ込んだ。

  どのくらいの時間が経ったのだろうか。内部を蹂躙する指は三本に増えているので、かなりの時間が過ぎたのだろう、漸くヤンはシャープペンを置い

  た。

  「…で、でき…ま…した…」

  最終的な刺激を与えられずに生殺しの状態が長く続き、ヤンは泣いていた。手の甲で流れた涙を拭い、鼻を啜る小さな音にキャゼルヌはバツが悪そう

  に髪を掻き上げた。そして、良く出来た、とヤンの黒髪を撫でた。

  「っ!」

  もう堪え切れず、ヤンはキャゼルヌの胸に縋り付いた。

  キャゼルヌは自分にしがみつく生徒の震える背中を摩り、その生徒の内部を蹂躙していた指を抜いた。

  そしてスラックスを緩め、自制心で押さえ込んだ陰茎を解放した。途端に逸り立つ陰茎を目にし、ヤンは恍惚と笑みを零した。

  「後始末が面倒だからな」

  キャゼルヌは背広の胸ポケットからゴムを取り出し、己の陰茎に被せた。先端の太い部分にゴムが被さると、ヤンが悪戯を思い付いた様な笑みを浮か

  べた。

  「ねぇ…先生…着けてあげるから、今日は先生の家に行っていいですか?」

  唾液を乗せた舌で唇を舐め、挑発する様に眇められた漆黒の瞳は映る目の前の男を底のない奥へと引きずり込もうとしていた。しかし、その目元には

  恥じ入る様な初心な紅潮が見られ、キャゼルヌは子供の精一杯の背伸びに苦笑した。

  「生徒を家に連れ込まないのが俺の主義だ」

  片手は慣れた手付きでゴムを器用に装着し、もう片方の腕はヤンの腰を引き寄せた。

  「…本当に意地悪ですよね」

  拗ねた口調でヤンはキャゼルヌの太腿を跨いだ。

  ゴムの表面には薄くローションの膜があり、陰茎から溢れる先走りの液よりも滑りは良く便利ではあるが、感じる体温と力強く逞しい脈動がワンクッ

  ション置いて伝わる感覚がヤンは好ましくなかった。

  「…あぁ…ぁんン――ッ!」

  それも、腰を掴まれ、一気に埋め込まれれば、すぐに気にならなくなる。

  途轍もない熱量と質量が躰の奥から膨れ上がり、嬲られ燻り続けた快楽が発火して弾けそうになりヤンは全身でキャゼルヌにしがみついた。そして、

  これから齎される激しい律動によって得る快楽への期待でもあった。

  「…先生…?」

  埋め込んだまま動かないキャゼルヌを不思議そうに、強請る様に見上げる。ゴム越しといえども、その昂る脈動は筋の動きさえもヤンに伝えているの

  に。

  キャゼルヌはズレた眼鏡を直し、胸ポケットからもう一つゴムを取り出した。

  「お前も着けろ」

  「え?」

  意味が判らず、ヤンは小首を傾げた。

  「ここをどこだと思ってるんだ?教室だぞ」

  後始末が面倒と言いたいようだ。

  射精時の開放感が減少するのでヤンはゴムを着けたくなかったが、手渡されたら逆らえない。渋々とスカートを捲り、逸る自身に嫌々ながらゴムを被

  せる。

  キャゼルヌはヤンの背中を支えながら、自分を銜えながらゴムを被せるヤンを眺めた。ヤンの手付きは覚束ず、見ていて愉しい。なにより、セーラー

  服というのが倒錯的で溜まらない興奮を呼び起こす。

  「…っ……ふ…っ…ぁ…」

  細い糸の様に絡み付く視線は、ねったり…と舐められている様でビクビクと震える。その所為で、余計被せ辛い。大人しくしていない自分の一部にヤ

  ンは泣きそうになった。

  「早くしろ。このままじゃ、お前も辛いが俺も辛いんだぞ?」

  咽頭の奥から漏れる嗤いが更にヤンを追い詰める。半分程被せたが震えが収まらない指ではこれ以上できそうになかった。

  「…キャ…キャゼル…ヌ先…生…ぇ…も…できっな…っ…」

  無意識に揺れてしまう腰にヤンは限界を訴えた。キャゼルヌは、まったく仕方のないヤツだ、とワザとらしく溜め息を吐いた。

  「いいか?片手で、ちゃんと握っていろよ…?」

  数学を教えるように、ゆっくりとした口調にヤンはなにも考えずに小さく何度も頷いた。運動の苦手な成長途中の五指が言われた通りにキュッを自身

  を握り込む。その様子は自慰のようにキャゼルヌの眼には映り、陰茎から脳髄にかけ異様な興奮がゾクゾクと走った。沸き上がる熱を短く鋭い呼気で

  逃がし、キャゼルヌは自分よりも一周り以上細いヤンの腰を両手で強く掴んだ。

  刹那。

  「ひィッ!!」

  前触れもなく始まった激しい律動にヤンは肺までもが潰された気がした。容赦のないキャゼルヌの責めは激烈な痛みと快楽を齎しヤンの思考を混濁さ

  せ、止まることなく甲高い嬌声が教室に響く。

  「…おい、声を抑えろ。外に聞こえるぞ」

  熱を孕む上擦った声は、辛うじてヤンの耳に入ったようだ。キツく眼を瞑りながらも小さく頷き、言われるままにのろのろと掌を口元に運んだ。

  「…ふ…ぐ…っ…んっ…ん――ッ!!」

  籠った喘ぎは不鮮明で余計に苦しそうだ。閉じた瞳からは息苦しさと快楽の涙がポロポロと零れ、早く楽になりたいと内壁は陰茎を締め付けていた。

  畝り、緩急を付け、纏わり付くヤンの内部にキャゼルヌの息は荒くなり、そしてそれ以上に律動は激しくなっていく。数式の様に正確に的を絞り、狭

  い前立腺を間違えることなく何度も射抜く。

  「んあッああ――ぁッ!」

  激しさに耐えかねたヤンは嬌声を抑えられず、口元を覆う掌は意味を成さない。

  淫靡に淀む教室の空気を裂く悲鳴にキャゼルヌは苦笑を漏らした。限界が間近の内壁は薄いゴムまで溶かすほど細かな収縮を繰り返し、より激しさと

  力強さを求めた。

  ふと見下ろすと、ゴムが外れないよう押えていたヤンの手は無意識に上下に動いている。快楽に対して驚くほど素直な生徒に、キャゼルヌは教師とて

  褒美を与えた。

  「ひぁ――ッッ!!」

  先端で前立腺を抉られ、恐ろしほどの快楽がヤンを襲い、堅くて太く逸り立つ陰茎に最奥の奥まで引き裂さかれたヤンはガクガクと躰を震わせ果てた。

  膝の上で揺れる振動と果てた衝撃で搾まる内壁にキャゼルヌは息を詰め、己を解放した。

  「はっ…はぁ…あ…」

  濡れた唇は快楽の強さに赤みを増し、乱れた吐息で更にしっとりとしていた。

  「…ヤン…」

  朧の黒い瞳を覗き込み、キャゼルヌは涙で濡れたヤンの頬を優しく掌に包んだ。

  「…ン…」

  果てたばかりでヤンの神経は剥き出しになっており、些細な刺激にも過剰に反応した。

  二人の吐息は快楽の余韻で未だ熱を持っていた。乱れた呼吸は近付き、吐息は重なり、唇も重な―――

 


  「これ、おかしいですよッ!」


 

  らなかった。

  アッテンボローが無理矢理割り込み、ヤンとキャゼルヌを引き離した。

  「……なにがだ?」

  元数学教師は乱れた髪を面倒くさそうに掻き上げた。悪びれもしない態度にアッテンボローはムッとした。

  「なに一人で楽しんでるんですかっアイリッシュ・シチューは3◯が最低条件でしょ!!」

  そんなアッテンボローに、どーしようもないな、と言わんばかりにキャゼルヌは深い深い溜め息を吐いた。

  「これからがお前の出番だったんだぞ」

  「は?」

  「いいか、シナリオはこうだ。俺とヤンのセックスを盗み見ていたお前は帰宅途中のヤンを捕まえ、お得意の『前から好きだったんです』とヤンに告

  白し、あーたらこーたら」

  「………」

  ぺらぺら喋る胡散臭いシナリオライターにアッテンボローは思った。絶対、今!思い付きやがった!

  「そして、若いお前達の為に俺が大人の玩具の使い方を直々に教えてやるってシナリオだったんだ」

  それを邪魔しやがって。

  アッテンボローは不快気に睨み付けてくるキャゼルヌに肩を竦めた。

  「いやいや、騙されませんよ。最初っからそんなつもりなかったくせに。アンタの口先三寸には士官学校の時から何度も騙されてんスよ。てか、お得

  意の『前から好きだったんです』って、なんスか?俺の必殺技みたいな言い方しやがってホントむかつく。いっときますけど、アテヤンの方が支持率

  高いんですからね」

  「その支持にはアテヤン絡みのキャゼヤンが大いに関連しているのを判ってるのか?」

  「まぁ、そこは否定しませんよ。アンタの腹黒さが腐女子の妄想を掻き立ててるんでしょうよ」

  二人は声を荒げることはなかったが、その分、沸々と静かなる怒りが感じられた。


 

  アッテンボローが企画に乗じて積年の恨みを晴らしている時、ヤンは怠い躰を引き摺り、漸く官舎に戻った。

  「……ただいま…ユリアン、すまないが紅茶を淹れてくれないか…今日は酷く疲れたよ…」

  「ヤン提督、なにかあったんですか?」

  顔色は良くないし、歩くもの辛そうだ。

  心配そうに見つめてくる被保護者にヤンは曖昧な笑みを零した。

  「…うん…まぁ…ね…」

  まさかアイリッシュ・シチュー企画のことを話せる筈もなく、ヤンは言葉を濁してソファに座り込んだ。ジャケットを放り投げ、スカーフを緩める頃

  に、すでに準備が整っていたのだろう紅茶の良い芳香がキッチンから香ってきた。

  ここにきてヤンは漸く力を抜くことができた。躰中に蔓延した倦怠感は最高潮に達し、ヤンはうつらうつらと瞼を揺るがした。

  「はい、紅茶です」

  茶器の微かな音にヤンは意識を浮上させた。

  「あ、ありが……」

  何故か隣に座るユリアンにヤンはちょっと驚いた。ユリアンは良く出来た子で、対人との距離感もちゃんと保つ良い子だ。

  …まさか。

  いやいや、ないない。アイリッシュ・シチューは18禁だ。ユリアンはまだ16歳だ。対象年齢外だ。

  なんとか自分を納得させ、ヤンは紅茶の湯気に顎を浸した。

  「ああ…いい香りだ。癒されるよ」

  茶葉の香りをじっくり堪能し、ヤンは柔らかな笑みをユリアンに向けた。ユリアンも嬉しそうな笑みを浮かべ、空になったカップをヤンの手からそっ

  と取り上げた。

  「…僕、もっとヤン提督を癒して差し上げますね」

  「じゃ――

  ブランデーたっぷりの紅茶を、と続けようとしたがヤンは途中で固まった。16歳の少年の掌は太腿から中心へと撫でているのだ。

  「ちょっユリアンッ!」

  慌ててヤンはユリアンを押しやるが、突然上から振って来た低い声にヤンは振り仰いだ。

  「まずは一番疲れている場所を元気にさせることだ」

  「あの…」

  「はい、准将」

  「え?!」

  なんで君が居るの?とソファの背凭れに肘をつけて凭れているシェーンコップに問い質そうとしたが、器用なユリアンの指は素早くスラックスを緩め

  一番疲れているヤンを取り出したからヤンはビックリ。

  「これがヤン提督の…ああ、なんて可愛いんだろう……提督、僕、頑張りますから」

  「やっ!ユリアンッやめないかっ」

  叱咤する様に声を上げるが、床に膝を付けたユリアンはチュッチュゥッと音を立てて吸い上げ、そして、ピチャピチャと舌を這わせていく。

  「ぁっ…やめ…ユリアン…もう…やめ…て、っくれ…」

  掠れた声と、徐々に頭を擡げるヤンにユリアンは背筋がゾクゾクして来た。体験したことのない高揚感にユリアンは夢中になった。もっとヤンに感じ

  て欲しいし、ヤンを感じたい。ユリアンは半ば反応を示すヤンを銜え、吸い上げた。

  「あっ!ああっ、あ、あ、ッ!」

  ヤン妄想で手コキはお手の物のユリアンであるが、口での奉仕は初めてのことで加減が掴めず、ましてヤンのとなれば興奮は一塩で夢中でしゃぶり付

  いていた。

  はっきりいってヤンには痛いだけだった。どんどん力を失っていくヤンにユリアンは焦り、取り敢えず吸って・吸って・吸いまくった。

  「ぃっ痛ッ!痛い、ユリアンッ!」

  あまりの痛さにヤンは泣いていた。見かねたシェーンコップはヤンの側に座り、涙を零す瞳の縁を親指で拭った。

  「仕方ありませんよ、坊やは初めてでヘタなんですよ」

  不良中年の低い声は優しくヤンを諭した。グズッと鼻を啜るヤンは、だったら企画終了しろ!と嗚咽を押えて文句をぶつけようとしたが、先に口を開

  いたのはシェーンコップだった。

  「…ですから、保護者であるヤン提督が見本を見せてあげればいいんですよ」

  皮膚の硬いシェーンコップの掌はヤンの黒髪に差し込まれ、横に引き倒した。ヤンの目の前にはスラックスを盛り上げる、シェーンコップのアレ。

  シェーンコップはいそいそとスラックスを緩めると、ご自慢のアレを取り出した。体積が増した陰茎は薄い皮膚を限界まで伸ばし、ドクドクと脈打つ

  筋をあからさまに見せ付けた。

  「さぁ…提督」

  ヤダよ、と内心でゲンナリしてしているヤンであるが、そこはアイリッシュ・シチュー。

  悪魔の様な低音に操られ、ヤンの両手は逸り立つ陰茎をそっと包み、その先端に怖ず怖ずと舌を伸ばす。僅かな窪みからじわりと滲み出た独特の味が

  する先走りの液が舌を刺激する。不味いと思う味覚よりも、その味をしめている内部が疼き、それに伴いヤン自身もピクッと震えた。

  「…ちょっと舐めただけで反応するなんて、ヤン提督って淫乱なんですね」

  黒ユリ発動。

  含んだ笑いの被保護者の言葉責めにヤンは羞恥で耳まで赤く染めた。

  …あぁぁ、違うんだ、ユリアン。

  アイリッシュ・シチューだからだと言い訳をしたいが、ヤンの舌は猫の様にペロペロと美味しそうに陰茎を舐めるのに忙しく言葉にならない。

  …うぅ…もういやだぁ。

  シクシク泣いてもアイリッシュ・シチュー。これで総てが許される、素敵な企画。ビバ・アイリッシュ・シチュー!

  そんなこんなで、全長をくまなく舐め終えたヤンは一旦舌を離し、てらてらと卑しい光沢を放つソレをヤンは口一杯に頬張った。

  「…ふ…ぅ…っ…」

  大きな陰茎は先端だけでヤンの口腔を一杯に満たした。括れに舌を押し付け、動かせるだけ動かすと、シェーンコップの鼻梁から快楽を乗せた溜息が

  漏れた。そして先端から溢れた雫はヤンの唾液と解け合い、僅かな隙間から溢れた。それを追う様に横銜えに根元まで唇を滑らす。

  ユリアンは一連の動きの些細なことまで見逃さないよう、じっと見つめていた。ヤンの舌はねったりと張り付く様に根元から先端まで裏筋に沿って這っ

  ていく。

  「ヤン提督の舌って、もの凄くイヤラシいんですね」

  下肢から聞こえる筈のユリアンの声が耳の奥で聴こえ、ヤンはギュッと眼と瞑った。脈打つ陰茎に躰が疼き、そしてユリアンの言葉に恥ずかしさに躰

  の芯まで灼かれる。それは顕著に現れ、触れられてもいないヤンは快楽の雫を滴らせていた。

  小動物の様に、快楽と羞恥で震えるヤンをシェーンコップは黙って見下ろした。その口元には愉し気な笑みが刻まれ、灰褐色の瞳に熱が籠っている。

  被保護者の目の前で部下の陰茎を舐め、その被保護者に言葉で嬲られるヤンは哀れであり、そして愛おしくもある。

  シェーンコップは再び自分を銜えるヤンの癖のある黒髪を撫でた。

  ユリアンは見よう見まねで、先程のヤンの動きをヤン自身に施した。

  「んっ!」

  直情的な熱が電流の様に背筋を駆け上り、仰け反りそうになる頭をシェーンコップは押え付け、喘ぐ為に開いた咽頭の奥に陰茎を捩じ込んだ。

  「ぅんン―――ッ!」

  声を出して熱を吐き出せない精神的な苦痛と強引に捩じ込まれた肉体的な苦痛に襲われ、ヤンは嫌々と頭を振った。頭を押え付けられている為、それ

  は些細な動きで、癖のある髪が僅かに揺れた程度だった。

  「コッチの準備もしましょうね、提督」

  シェーンコップはもう片方の掌でヤンの背中を撫で下ろし、良く気が利くとヤンが自慢するユリアンの手によりヤンのスラックスと下着がずらされた。

  曝された臀部の中央にシェーンコップの中指は侵入した。蕾を指の腹が撫で、ヤンの背中は僅かに跳ね上がった。

  「んぅ――ンッ!」

  もうほんと勘弁して欲しくて、ヤンは僅かな抵抗を示すが頭はシェーンコップに押えられたままで動かすこともままならず、せめてと、ヤンはユリア

  ンの頭を離そうと亜麻色の髪に手を伸ばした。しかしそれは力なく、ユリアンは髪を撫でられている気がした。僕もっと頑張ります!と声に出さずに

  応えたユリアンは頑張った。

  頑張って欲しい所はそこではないヤンは、激しくなる舌の蠢きと絶妙な吸い上げに咽頭の奥で喘いだ。果ててしましたいがユリアンの口に出すのは躊

  躇われ、ヤンは必死に耐えた。その震える咽頭に締め付けられた陰茎は悦び、ヤンの口腔から唾液と先走りの液が溢れ出た。息が苦しく、自身から広

  がる快楽も苦痛に近く、狂いそうだ。

  愛おし気に蕾を撫でていた指は襞の震えを堪能し、ゆっくりと花開かせる為に侵入していく。中は熱く熟れていた。溶けだした粘膜は指に纏わり付き

  動かす度に湿った水音を奏でた。

  その旋律に誘われる様にユリアンは顔を上げた。そして、まじまじと蕾を見つめ、うっとりと溜息を漏らした。

  「…すごい…ヤン提督の。まるでシェーンコップ准将の指を操ってる様に入り口がヒク付いてる…」

  褒められても嬉しくないヤンは情けなさに泣きたくなった。いっそ、銜えているシェーンコップに噛み付いてやろうかと思った。

  察したシェーンコップは先手を打った。

  「坊や、ヤン提督の片脚を持ち上げてみろ。…良く見えるぞ」

  良く見たいユリアンは言われた通り、ヤンの肘裏に手を掛け持ち上げた。体勢のきつさにヤンは呻き、ユリアンはハッとした。

  「すみませんっヤン提督…っ」

  ヤンは、謝るなら脚を降ろしてくれるなり、企画終了して欲しいと思った。

  「僕、ちゃんとヤります!!」

  そう言って、ユリアンは再びヤンを銜えた。

  …ユリアン…。

  やってほしいところはそれではないヤンの心は滾々と涙を零した。

  器用で要領のよいユリアンは短時間の間で目覚ましく上達していた。

  「…ふぁ…ん…ぅ…ふ…」

  快楽に緩んだ内壁を見逃さず、シェーンコップは指を増やしていく。

  ユリアンの聴覚はヤンの鼻梁から漏れる喘ぎを漏らさず聞き取り、視覚は3本の指を飲む込む蕾を捕らえていた。

  …ああ、もっ!

  限界だった。

  震える背中と強張る内壁にシェーンコップは口元を吊り上げ、指の抽出を激しくし、指を折って粘膜を削った。

  「――――ッッ!!」

  稲妻の様に鋭く突き抜けた快楽に、ヤンは大きく躰を震わせ、果てた。息を飲む咽頭は陰茎を締め付け、躰を震わせる振動で歯が当たり、息を詰めた

  シェーンコップはヤンの口腔で耐え抜いた自身を解放した。勢いよく迸るそれをヤンは否が応でも飲み込むことになった。苦し気に噎せてるヤンの背

  中を摩り、ヤンの顔を覗き染んだユリアンの一言。

  「ヤン提督、とても美味しかったです」

  一滴残らず美味しく頂いた彼の笑顔は、この場に相応しくないほど晴れやかだった。被保護者の輝かしい笑顔が眩しすぎてヤンは頭痛がして来た。

  「提督…僕の飲んでくれますか…?」

  哀願されても困るヤンはユリアンが眼を逸らしたが、ユリアンはじーとヤンを見つめた。哀願と云う名の質の悪い脅迫である。

  「…提督…」

  ウルウルのダークブラウンの瞳が迫り、ヤンは引き攣る唇でなんとか言葉を紡いだ。

  「…いや、その、もう、お腹一杯で…」

  「では、こちらで」

  「へっ?!」

  突然の浮遊感に襲われ、ヤンは間の抜けた声をあげた。シェーンコップがガバッ!とパカッ!とヤンの躰を自分の腿に乗せ、両足の筋が浮かび上がる

  ほど大股開きにさせた。

  ひぃぃ〜、と情けない悲鳴のヤンであったが、ユリアンも相当情けなかった。自分の為に開かれた、夢に見続けた桃源郷のご開帳に鼻血一歩手前まで

  頭に血が昇った。

  「提督…っ!」

  ユリアンは急いでベルトを外し、ちょっと待って、とヤンの制止を聞かずに鼻息荒く先端を押し付けた。

  「ああッ!!」

  狭い肉の狭間で終わり開かれる予感にヤンの躰は過敏になっていた。

  しかしそこは初体験のチェリー・ボーイ。強い締め付けと畝る熱さに、先っぽ半ばの瞬殺。

  「……………」

  「……………」

  「……………」

  居たたまれないユリアンは羞恥と情けなさに真っ赤な顔を俯かせ、10秒くらいは保つのではないかと思ったシェーンコップも流石に同情を通り越し

  呆れ、ヤンもなんとも微妙であった。

  気不味い沈黙に耐えかねたユリアンは嗚咽を漏らし始めた。

  「…ぅ…ぅぅ…提督ぅ…ごめんなさい…ごめんなさい…」

  マジ泣きにヤンは焦った。

  「ユッユリアン、謝ることなんかないよ?初めての時は良くあることだよっきっと」

  「いや、流石に先っぽ瞬殺はないでしょう」

  せめて全部埋めるくらいは保たなくては。

  慰めも台無しな不良中年の余計な一言にユリアン、ガビーンで更に泣き出し、ユリアンの肩を撫でていたヤンはシェーンコップを睨み付けた。

  シェーンコップは大袈裟に肩を竦めてみせ、仕方なさそうに溜め息を吐いた。

  「では、坊やの後学の為に小官が一肌脱ぎましょう」

  視界がぐるりと回り、ヤンは寝室の天井をみた。

  「まずはスタンダードの正常位」

  「ひ…ぁあ…っ!」

  あれ?と思った次の瞬間、とんでもない堅さと質量を誇るシェーンコップの陰茎に貫かれ、先程瞬殺されたユリアンの精液で濡れた蕾は熟れた果実が

  潰れた様な音を鳴らした。

  「根元まで埋めたら、馴染むまで少し待つ」

  ベッドに正座のユリアンはメモ帳片手に真剣に頷いていた。料理教室?

  「その間、キスや首筋、胸に愛撫をすると馴染むのも早くなる」

  講師のシェーンコップは衝撃にきつく結ばれたヤンの唇に舌を這わせて湿らせると、下唇を甘噛みし、軽く引っ張った。自然と唇は薄く開き、肉厚の

  舌が優しくも強引に抉じ開ける。

  「…ふぁ…ぁ、ん…っ」

  重なり、絡み合う舌をわざと見せ付ける。頬を包み固定していた掌はスルリ…と首筋を撫で下ろし、もう片方の手は乱れたパイロットシャツに忍び込

  み、充血した胸の突起を嬲る。そこはすぐにツンと尖った。

  唾液が混じり合い、淫靡な水音を奏でる口付けを解き、シェーンコップの唇はヤンの口端から零れた唾液を追った。

  「…ぁ…っ」

  その僅かな動きに伴い、内部を占領する陰茎が角度を変え、ヤンは声を漏らした。

  悩まし気に顰められたヤンの顔を食い入る様に見ていたユリアンは、快楽を受け入れつつあるヤンの媚態に腰が重く疼いた。萎えていた陰茎が正座の

  中で起立していく。ダークブラウンの瞳は爛々と輝き、正直コワい。

  「提督の中は非常に分かり易く、馴染みだすと内部全体が畝り出し、細かな襞が震え、入り口はガッチリ逃がさないよう締め付ける」

  講師に詳細な説明に受講者は生唾ゴックンで、食い入り過ぎて前屈みに視姦。

  「本当だ…凄い震えてる…中も…入り口も准将のをギュウギュウに締め付けてる …」

  中も、ってどんな視力だ。ほんと怖いよ。

  「…やぁ…見ないで…ユリア…ン…」

  恥ずかしくてヤンは腕を交差させて顔を隠した。それって、頭隠して尻隠さずですから。

  「馴染んで来たら、始めはゆっくり動く」

  根元まで埋めた陰茎はゆっくり半分ほど引き抜き、そして先端で内部を探る様にゆっくり埋めていく。それを何度か繰り返し、徐々にスピードを上げ

  浅く深く穿つ。快楽が沸き上がり、全身に広がり、ヤンは熱い躰から少しでも熱を散らす様に喘いだ。それでも快楽は蓄積されていき、逸り立った先

  端から溢れ出た雫で鵐に濡れていく。それは蕾にまで達し、シェーンコップが動く度に卑猥な水音とスプリングの軋む音の二重奏が室内に流れた。

  「前立腺は大概ヘソの裏側にある」

  「ヒッ!」

  見事ピンポイントを当て、ヤンはビリビリと電流の様に走り抜ける快楽に仰け反った。突然のことでヤンは抑えがきかなかった。

  「おっと」

  果てる前兆の震えを見逃さず、シェーンコップはヤンの根元を締め付けた。途端に逆流する熱にヤンは身悶えた。

  「…っ…シェ…ン…コ……」

  ヤンは濡れた瞳を大きく見開き、信じられないと愉し気に口端を吊り上げる男を見つめた。

  「レクチャーは始まったばかりですよ、提督。それに、少し我慢なされば、もっと気持ち善くなりますから」

  節ばった逞しい指はヤンの臙脂のネクタイを引き抜き、それで縛り付けようとした。

  「やっ!や…だ…っ!」

  なにをする気が察したヤンは顔色を変えた。快楽に上気した頬に青みが射す。ユリアンはハラハラしたが、受講者である以上手出し出来ない。

  抵抗をするヤンを容易に往なし、シェーンコップは鋭く衝き上げた。そして、苦痛の悲鳴を上げるヤンが暴れだす前に深く強く穿った。

  「ああ―――ぁっ!!」

  その衝撃はヤンの焦点を失わせるほどだった。

  「…ドライ・オーガズムって言ってな、射精しなくてもイけるんだ」

  覚えとけ。

  その証拠に内壁は細かく震えながらくねる様に内部の陰茎を締め付けた。熱く絡み付く襞に達しそうになるのを耐えながらシェーンコップは説明した。

  「はいっ!」

  教え甲斐のある受講生は利発な返事をした。

  「正常位でも、こうすると角度が変わり、更に深部まで侵入できる」

  シェーンコップはヤンの両の膝裏に手を掛け、膝頭がベッドに沈むくらいヤンの躰を折り曲げた。完全に男の躰が覆い被さり、一点に体重が掛かる分

  深く陰茎は沈む。

  「…ぅ…ああっ!」

  躰が堅いヤンにはきつい体勢であるが、確かに、ほぼ真上から貫くそれは確かに先程より奥に感じられた。その分、快楽も深まり、果てれないヤンに

  は拷問の様な快楽であった。

  「この体位の利点はヤン提督にも繋がっているのが見えることだ」

  そんな言葉に薄目を開けてしまったヤンは本当に丸見えで、羞恥で身を焦がした。

  「やぁ…っ!」

  ヤンは逃げる様にシーツの上で足掻いたが下半身は押えられている為、上半身を半ば捻るくらいにしかならない。そして、その行為は内部に埋め込ま

  れた陰茎を自ら動かすことにも繋がり、ヤンはシーツにしがみついた。

  白いシーツは泣き濡れる瞳から零れる涙と唇から溢れる唾液、そして堰溜められた快楽が渦巻く体が纏う熱い汗で乾いていたシーツが湿気っていく。

  「…ぁ…も…ゃ…いや…ぁ……」

  か細い声を漏らすヤンの堅く握られた掌は細かく震え、快楽が浸透していることを示していた。

  緩く振られた髪がシーツに当たり、乾いた音を立てるが、それすらも淫靡に響き、ユリアンは下肢が重く疼いた。余裕のない少年は餓えた咽頭に無理

  矢理唾液を流し込んだ。もし今、自分がヤンを組みしいていたら本能のままに衝き上げていただろう。

  経験豊富で余裕のシェーンコップは、なにがいやなのか、明確に言わないヤンに口端を吊り上げた。

  「お嫌なら、ユリアンと代わりましょうか?」

  「えっ!?」

  驚いた声を上げたのはユリアンだった。しかも眼がヤる気で爛々、ユリアン自身もビンビン。

  そのビンビンに二つの視線が集中した。

  「どうします?」

  「…ふぁ…っ…」

  軽く揺すり、シェーンコップは自身のサイズをヤンに知らしめ、明らかにサイズ違いのモノで満足するのかと、言葉もなく問い掛けた。

  「…い…じわ、る…っ」

  ヤンはなけなしの意思を総動員し、シェーンコップをギュッと締め付けた。ヤンの応えにユリアン、ショック。しかし睨む先は白兵戦の師匠だ。恨み

  籠った視線も鼻先で吹き飛ばす不遜の男は、受講生は大人しく指銜えていろと見遣り、少年の手にしたメモ帳は一瞬にして死ね死ね団のメモ帳になっ

  ていた。

  本の僅かな時間のやり取りであったが、ヤンには身を焦がす長い時間で無自覚に腰が揺れている。意識をヤンに戻したシェーンコップは、レクチャー

  を忘却の彼方に追いやり、激しく動き出した。

  「ああ―――っ!」

  内部の粘膜を削る陰茎にヤンはシーツの上で背を仰け反らした。擦り上がろうとする躰を上から抑えつけ、前立腺を目掛けて全体重をのせる。ポイン

  トを貫かれ、ヤンは掠れた悲鳴を上げ、虚ろな瞳を濡らし、四肢の末端までをも大きく震わせた。塞き止められた先端から少しの精が勢いよく飛び出

  した。しかし、そんなものでは渦巻く快楽の解放とはならず、暴れ狂う畝る熱はヤンの思考も神経も削り、なにもかもが底なしの暗闇に飲み込まれた。

  「―――ふっ…!」

  搾り取る様に締め付けながら吸い付く襞にシェーンコップは呻きに似た声を漏らしたが奥歯を噛み締め耐えた。そして、萎縮を極める内壁を陰茎で何

  度も強引に切り裂く。

  「ひ…ぃ…っ…!」

  暗転した意識が今度は真っ白い中に堕とされた。熱の解放を許されなければ、意識を手放すことも許されない。呼吸すらもままならない快楽は既に快

  楽とは呼べず、苦痛の嵐にヤンは為す術もなく翻弄された。掠れた喘ぎはか細く、蹂躙される蕾が漏らす卑猥な粘る水音の方が音は大きい。

  快楽の限界値を超えたヤンの瞳は怯えた様に見開き、揺さぶられる度に虚ろな瞳からは雫を零し、戦慄く唇はいっそ哀れなほどだ。

  灰褐色の双眼の奥には獰猛な光が宿り、シェーンコップは息を荒げながら穿ち続けた。白と黒の世界に堕とされ続けたヤンは、男の嗜虐心を煽る戦慄

  く唇で絶え絶えの懇願を漏らした。

  「…も…ひぅ…ひ、ぃ…ゆ…っ…ゆるし…っ…」

  喘ぎ過ぎて涸れた声には嗚咽が混じり、漸くシェーンコップは征服欲を満足させた。

  「―――くっ!」

  一際深く、有り得ない深さで、耐え続けた精を解放した。耐えた分シェーンコップ自身も息苦しくもあったが、この瞬間の解放感が堪らない。

  「――――ッッ!!」

  身の裡で身震いする陰茎にヤンは声のない悲鳴をあげた。内蔵の粘膜が熱い精で灼かれる。なにもかも手放したいが、狂った様に駆け回る熱に気絶す

  ることを拒まれた。

  ヤンの肘裏を押えた掌から力を抜き、シェーンコップは天井を仰ぎ、解放の余韻を心地良く吐き出した。ヤンの神経同様に内壁は未だピリピリと細か

  な収縮を繰り返しているのが、これまた気持ち善く、啜り泣きの様な嗚咽混じりの可哀想なヤンの呼吸音も耳に心地良い。なに気に鬼畜発動の不良中

  年であった。

  イイ汗かいた不良中年を一瞬睨み、ユリアンはシーツに投げ出された震えるヤンの指先を心配そうに撫でた。

  「提督…提督…?」

  耳慣れた声に放心していた濡れた瞳の焦点が徐々に合い、ヤンは触れられた指先を辿りユリアンに視線を移した。

  「………」

  縋るような瞳にユリアンの心臓が跳ねた。

  「?…提督?」

  濡れた唇がゆっくり動き、なにか言いたげな様子であった。もう一度、ヤンは繰り返した。

  「…は…ず…し…て…?」

  唇の動きを真似たユリアンは漸くなにが言いたいのか察し、ヤンの身を苛む臙脂のネクタイに慌てて手を伸ばした。

  「ヒ、ニャッ!!」

  ヤンの躰は突然大きな痙攣をし、聴こえた嬌声の違和感にユリアンは驚いた。

  「…え…?」

  しかもネクタイが何故か黒い。


 

  「…絶対、猫耳猫尻尾は外せない…」


  

  陰鬱とした低い声が響き、振り返るとヤツがいた。

  「………アッテンボロー提督…」

  憔悴しきり、人相が様変わりしているから目印のそばかすがなければ亡霊にしか見えない。

  積年の恨みを晴らし、見事返り討ちにあったアッテンボローは亡霊のようにフラフラとベッドのヤンに近付いた。

  「…ぁ…ぁあ…ッテン…ボ…ロ…っ…」

  突然、太く堅く冷たいナニかが内部に現れ、それも細かな振動をし始めたのだ。その振動に合わせた様にヤンの躰も震えだし、信じられないほど見開

  いた黒い瞳には士官学校時代から見慣れた後輩のどこか影のある笑みを映した。

  「…先輩、知ってます?雌猫って、もの凄く淫乱なんですよ?」

  アッテンボローはヤンの髪にそっと猫耳をつけ、はい雌猫完成、と笑みを深めた。

  「雄が一回イく間に何度も一人で善がり狂って、バンバン卵子を排出するんですって」

  だらか一度の出産で何匹も子供を産むんです。

  口調は優しいが、バイブから伸びた猫の尻尾を模した端を強く引っ張った。ソレはヤンに巻き付いており、自身を締め上げられたヤンは身の裡を満た

  す快楽の熱に肺を潰され、ヒュッと仰け反った咽頭から空気を吐き出した。

  「雌が色情狂なら、付き合う雄も相当なモンでしてね…」

  一旦言葉を区切った後輩が不気味で、ヤンは自由の利かない躰で仰向けからうつ伏せに体勢を変え、シーツを手繰り寄せて逃れようと足掻いた。

  「…雄のアレって、こうなってるですよ」

  「ニャァ――ぁあッ!!」

  細かな刺が柔らかな粘膜に刺さり、カッ!と灼ける痛みが四肢の末端まで電流のように走った。足掻いた為に尻尾が緩み、壮絶な痛みに萎えるのでは

  なくヤンは一気に弾けた。放たれたソレは勢いが良くシーツに音を立てたほどだ。

  「…ほんと、猫みたいっすね、先輩」

  丸めた背中を小刻みに震わせるヤンの黒髪を優しく撫でるアッテンボローの口元は歪に歪んでいる。

  愉し気に咽頭の奥で笑うアッテンボローにユリアン、ドン引き。いくら黒ユリでも、ここまで非道にはなれなかった。なにがあって、こうなったのか。

  ユリアンは呆然とアッテンボローを見たが、その視界の隅に気不味そうに佇むキャゼルヌが映り、顧みた。

  「………」

  まさか。

  「…………」

  やり過ぎた。

  鬼畜発動中でお父さんはイジメ過ぎたのだ。まさか、こんなことになるとは思わなかったので、壁に向かって反省。

  「…キャゼルヌ少将、責任とってアッテンボロー提督を止めて下さいよ」

  「……」

  いやー流石にあそこまでコワれると俺でも無理だな、なんて笑って誤摩化すのは許さない物騒なユリアンは正確にブラスターの標準をキャゼルヌの額

  に当てていた。

  見えない光線を払い、キャゼルヌは一応後輩を諌めた。

  「おーい、それ以上ヤるとヤンに嫌われて泣くのはお前だぞー」

  遠くから投げかける小声は全く役に立たない。

  こんな時こそ腕っ節の不良中年とユリアンはシェーンコップを探したが、彼は既に居なかった。心身ともにスッキリしたシェーンコップは余韻を台無

  しにする事務総監とバッティングしたくなかったのだ。


  ベッドの上では猫プレイ絶賛続行中。

  「ほら、猫はミルクが好きでしょ?」

  愛おし気に撫でていた掌は黒髪を掴み、シーツに溜まったヤン自身のミルクを目の前に突き付けた。

  「………っ…!」

  イヤイヤと力なく揺れる黒髪を見下ろしたアッテンボローは、バイブから伸びる黒い尻尾を引っ張った。飼い始めたペットの躾は、最初は厳しくなけ

  ればならない。

  「ヒッぎ…ぅッ!」

  無数の細かな刺は粘膜を鋭く削り、灼熱の痛みに悲痛な悲鳴が肺から押し出されたが、それは半分ほどでしかなかった。尻尾を引っ張られると同時に

  頭を強く押さえ込まれ、ミルクの溜まったシーツに悲鳴の半分が吸い取られた。

  「好きでしょ…?」

  耳慣れない、昏く冷たい声にヤンは痛みと恐怖に縛られた。

  ただ怯えて震える背中に焦れたアッテンボローはヤンに聴こえる様にワザと大きな舌打ちをした。焼け爛れた過敏な内壁はバイブに力が込めれるのを

  敏感に察し、ヤンは強張り震える舌をなんとか必死に動かした。

  紅く熟れた舌に、白い粘液。赤と白のコントラストにアッテンボローは満足気に眼を細めた。

  震える湿った吐息に混じり、唾液と粘液が絡む水音がどうしようもなく男の嗜虐心を募らせ、それは下肢を重く疼かせた。震える湿った吐息を繰り返

  しながら従順にシーツを舐める姿にゾクゾクと背筋が熱くなり、アッテンボローの征服欲を満たしていった。

  「…いいコの先輩にはご褒美をあげますよ」

  欲を孕む、いつもより低い声が不吉に脳裏に張り付いた。ヤンは嫌な予感に、良く知る、見知らぬ男を顧みようとしたが、それは叶わなかった。

  「ぁあ―――ッ…やっあっあっ!!」

  壊れた様にバイブは暴れ回り、身の裡から響くモーター音が剥き出しの感覚にべったりと張り付く。幸い刺は消えていたが、先程まで無数の刺に蹂躙

  され傷付いた内壁には到底耐えられるものではなかった。苦痛という快楽にヤンは末端まで犯された。悶える躰は、それでも腰を男に差し出し、懇願

  する様に揺れ、先端からは止めどなく溢れる快楽の雫が糸の様にシーツに垂れている。

  「はは、ほんと先輩って雌猫ですよね」

  愉し気に囁き、多少丸みの少ない臀部を、アッテンボローは可愛い可愛いと掌で撫で回した。

  「――んぁッ…あ…は…っ…」

  快楽に燃え盛る躰にはヒヤリとした掌にも過敏に反応し、内部で逸り返った硬質の先端が前立腺を抉り、過度な快楽に神経を擦り減らしてたヤンは呆

  気なく果てた。

  切なく揺れた細い腰にアッテンボローの笑みが深まる。

  「俺が一回イく間に、ヤン先輩は何回イくのかな…?」

  震える背中に覆い被さり、アッテンボローは耳元で囁いた。同時に、少し開いていた太腿をピッタリと合わせられ、ヌルリ…とした先端が蕾の襞を撫

  でる。

  「…ゃっ…ゃめ…ッ…」

  今だ暴れ回るバイブで一杯の内部に挿れられるのではないかと恐怖に駆られた咽頭から細い悲鳴が漏れた。

  「やだな〜そこまでしませんよ」

  いっそ不似合いなほどカラカラとアッテンボローは笑ったが、信用ならない言葉にヤンは息を詰めた。

  「…ァ…ッテンボ…ロ…ッ…こん…な…やぁ…」

  漏れそうになる喘ぎを必死に抑え、ヤンは肩越しに覆い被さる男を見た。悩まし気に寄せられた眉の下には、涙で濡れて艶めく睫毛に縁取られた快楽

  に揺らく深遠の黒い瞳。

  濡れた瞳に魅せられたアッテンボローは、ゴクリと唾液を嚥下し、乱れた呼吸を繰り返す唇に自分のそれを寄せた。

  「あっ…ぁ…んっ…はっ…ぁ…っ…」

  内部を責め立てるバイブは間断なく快楽を与え、抑え切れない嬌声を上げたヤンは力なく首を振った。キスしようとした唇に癖のある湿った黒髪が掠

  める。タイミングを逃したアッテンボローは内心でつまらなさそうな舌打ちをした。

  身を捩ったヤンは喘ぎながらアッテンボローの下で仰向けに体勢を変えた。そして、快楽に震える手で男の掌を蕾に導いた。

  「…せんぱ…い…?」

  緩慢な動きに合わせて揺れる空気はねっとり…と淫蕩であった。

  「…抜い…て…お前が欲し…いんだ…」

  「………」

  欲を孕む熱い言葉にアッテンボローの頭は一瞬真っ白になった。唖然と動かないアッテンボローに焦れたヤンは脚を動かし、布越しに滾る陰茎に膝頭

  を軽く押し宛て、スス…ッと脛で愛撫した。

  「…挿れて…お前のコレでメチャクチャに私を溶かして、グチャグチャにして…」

  マジっすか――ッッ!?…アッテンボロー、心の叫び。

  到底ヤンの口から出たとは信じ難い言葉にアッテンボローは思わずイってしまいそうになった。てか、頭に血が上り過ぎて鼻血が出そうで慌てて手で

  押え、なんかフゴフゴしながら、もう片方の手でバイブを抜き取った。興奮し過ぎて力加減が上手くいかず、思わず乱暴になってしまった。

  「ああ―――ッ!!」

  甲高い悲鳴にアッテンボローの血の気が引いた。

  「あっす、すいませんっ!」

  土下座の勢いの後輩にヤンは怠い躰に鞭打って上半身をゆっくり起き上がらせた。

  「…………」×2

  下を向いていたアッテンボローには見えなかったが、黒い瞳の奥にある冷たい光に傍観者のキャゼルヌとユリアンの背筋に悪寒が走った。ドSスイッ

  チが入ったようだ。

  「…アッテンボロー……」

  そっと肩に触れる掌に促される様に顔を上げたアッテンボローの視界はすぐに反転し、視界に天井が映った。

  「…え?」

  ヤンはアッテンボローの軍人らしく筋肉の付いた腹部に跨がっていた。下から見上げるヤンは唇に婉然とした笑みを浮かべていた。ゾッと寒気が走る

  色香だ。

  「…お、襲い受け…?」

  しかし、どこか笑っていない眼にアッテンボローは嫌な予感した。

  「…よくもやってくれたなぁ…」

  …めっさコワいんですけど。

  怖くてアッテンボローは目を逸らした。

  「あの…でも…これ…アイリッシュ・シチュー企画ですし……」

  中型犬は両耳をへたれて、おっかなびくびくしながら言い訳を口の中で呟いた。

  「ふーん…じゃナニしてもいいんだよねぇ…」

  「……」

  ナニしていいのは攻めで受の先輩ではないんですけど…とは命が惜しいアッテンボローは言えなかった。

  じゃ、ヤることヤッたし俺帰るわ、と静かに退場しようとしたキャゼルヌの背に黒く硬質な冷たい視線が突き刺さる。あとで責任取ってもらいますか

  らね、の視線だ。

  「…………」

  オルタンスには黙っててくれ。パパ一生のお願い。

  語る男の背中にヤンは、彼らしからぬ笑みを零した。にやり、下僕決定の美しくもドン黒い微笑に、ユリアンの眼にはキャゼルヌの背中が一層物悲し

  く映った。

  「…ユリアン…」

  「ッ!?」

  お前も他人事ではないよ、と言外の意味を耳打ちされた様な艶めいた声にユリアンはビクッと身を竦めた。恐る恐るヤンに視線を移すと、いつものヤ

  ンの様に柔らかい笑みで、おいでおいで。

  …うう…コワいよ…。

  手招きされては逃げることができず、ユリアンは鼻を啜りながらベッドに赴いた。

  「…ユリアン、ユリアン、こっち」

  ここ、とヤンは自分のすぐ傍を指差した。

  「………」

  柔らかな笑みを讃え、名前を二回繰り返されたユリアンは死刑執行台に昇る気持ちでベッドに乗り上げた。

  …どうしよう、どうしよう…。

  ユリアンは、えぐえぐ…と小さな子供の様に泣きだした。

  「…ごめんなさい…っ…ひっく…ごめんなさい…ヤン提督…」

  ヤンは困った様に溜息を漏らした。

  「ユリアン、なにをそんなに泣くんだ?」

  ポロポロ涙を零す、まだ青年になり切っていない頬をヤンをそっと掌で包んだ。その温かさにユリン案はブワッと安堵の涙を吹き出した。

  「僕…僕…罰としてアテユリとかユリアテとか強要されたら、怖くて…吐きそうなほど嫌で…」

  …俺の方が吐くっつーのっ黒ユリめっ!

  なに気に本性発揮の被保護者の皮を被った被害者面にアッテンボローは口元を引き攣らせた。

  「…ばかだな、そんなこと、あるわけないだろう…?ココをどこだと思ってるんだい?」


  紅茶提督総受け、一つ穴主義サイト。


  「↑だよ」

  ヤンはにっこりと花の様な笑みを浮かべた。その柔らかそうなほっぺたには怒りマークがはっきりくっきり張り付かせていた。

  「……………」×2

  黒い笑みに、二つの意味で突っ込み辛い二人は視線を逸らして押し黙った。

  「…だから、ユリアン…」

  「へぇぁっ?!」

  …僕ですかっ!?

  …そっちかよっ!

  素っ頓狂な声を上げたユリアンは四つん這いで躙り寄る猫耳ヤンの妖し気な微笑に思わず仰け反った。

  「てってて、ていとくぅウ?!」

  狼狽える被保護者の首にヤンはスルリ…と両の腕を絡ませ、笑みを深めた。

  …うあっダメだっ鼻血出そう!!

  グラングランで悶々のユリアンは鼻血と一緒に白いのも出そうな勢いだった。

  そんな余裕のない青少年に代わり、我こそが大人の余裕で持って襲われよう!とアッテンボローは見本の様な挙手をした。

  「ヤン先輩!」

  「ステイ」

  冷たい視線の一言。

  「………………」

  まるっと犬扱いに掲げた手が虚しくダレる。

  …もしかして――――

  俺、おあずけ?

  怒らせちゃったからね。

  諾々と滝涙の後輩を放置プレイのドSは誘い受けよろしく意味深な笑みを漏らし、若く滾った雄芯に下肢を擦り付けた。

  「あ…っ…」

  ネチャ…ッとイヤラシい音が耳の奥に響き、走る快楽にユリアンの背が跳ねる。

  若く素直な反応をヤンは楽しむ様に、クスクス…と咽頭の奥から笑みを零した。

  余裕のないユリアンは気付かなかったが、指銜え状態のアッテンボローは漏れ聴こえたヤンの笑いが冷えきっているのに気付いた。

  …あ―――

  お仕置きだべぇ〜〜、なんて嗄れた声が聴こえる。

  放置プレイの自分も哀れだが、ユリアンにも同情してしまう。

  …でも、まだ俺よりはいいよな、絶対。

  なんと言ってもヤンからのお誘いだ、無理難題吹っ掛けられても断然イイと羨ましがるが、いや〜それはどうかな〜?




  寝室から漏れる恐怖の絶叫。…紅茶提督でないのは確かな事だった。



 

 

 

     終わり。


 

 

 

 

  後日談。


  「シェーンコップ…今夜、君の部屋に行ってもいいかな…?」

  ふとした瞬間、何気なく呟くヤンにシェーンコップは一瞬目を瞠った。

  「………」

  そのさり気なさはまるで秘め事の様で、思わず探る様にヤンを見つめてしまう。その視線にヤンは居心地悪そうに片方の肩を竦めた。

  「…ダメ…かい…?」

  上目遣いでお強請りする上官にシェーンコップは惚れ惚れする笑みを浮かべた。

  「とんでもありません。嬉しい限りですよ」

  滑る様な所作でヤンの手を取ると、その甲に口付ける。唇を触れたまま、頬を染めるヤンに視線を向け、シェーンコップは口元の笑みを深めた。

  じゃぁ、あとで、とヤンは恥ずかしそうに頬を染谷や俯き加減の猫背でその場を離れていく。

  その背中を見送り、シェーンコップは優美に己の顎を撫でた。

  …勝った!

  やはり鍛錬し続けたテクは酒池肉林の中であっても、いや、だからこそ真価を発揮したのだ。比べてみれば歴然としたテクの違いにヤンは堕ちたのだ。

  ふふふ…と、気色悪い笑いを漏らす薄ら頬染めの気色悪い要塞防御指揮官に誰もがドン引き。


  そして運命の、今夜。

  シェーンコップは、物珍しそうにキョロキョロするヤンの背中を抱き締めようと腕を伸ばした。

  「かっ…」

  「あ、ねぇ、キッチンはどこだい?」

  「…は?」

  ヤンとキッチン。あまりにも似合わない組み合わせは百戦錬磨の不良中年をも唖然とさせた。

  「お腹空いたろう?これ、持って来たんだ」

  手荷物の中から両手鍋。珍しく荷物が大きいなと思ったら鍋とは思わなかった。

  …まったく――

  いつも予想外の事をやってくれる。

  それも魅力の一つなのでシェーンコップは苦笑した。

  「提督の手作りですか?」

  「うーん、手作りと云えば手作りかな。オルタンス夫人との共同作品さ」

  柔らかい笑みを浮かべ、ヤンは案内されたキッチンで鍋に火を掛けた。少しすると、湯気と共に腹の虫を誘う美味しそうな香りが鼻腔をくすぐる。

  「とても美味そうですな。楽しみです」

  ラブラブ新婚生活なキッチン模様にシェーンコップは上機嫌だ。

  「中身はなんです?」

  ヤンの背後に立ち、シェーンコップはコトコトと揺れる蓋に手を伸ばした。

  「…アイリッシュ・シチューだよ」

  肩越しに顧みるヤンの漆黒の瞳が艶やかに眇められ、シェーンコップは息を飲んだ。

  「…それは、とても楽しみです」

  乾いた咽頭から低い音を漏らし、ヤンを後ろ抱きしたシェーンコップは癖のある黒髪がかかる首筋に唇を落とした。

  くすぐったいよ、とクスクス…とヤンは機嫌良く笑った。そして、シェーンコップをダイニングテーブルへと追いやった。台所エッチも魅力的であっ

  たが、ラブラブ新婚生活にシェーンコップも大人しく席に着いた。

  ヤンは危なっかしい手付きで両手でスープ皿を持ち、シェーンコップの前に置く。

  「どうぞ」

  にっこり笑顔だ。シェーンコップはこの後の展開を想像するとニヤケそうになる口元を必死に堪え、極めて紳士面で微笑み返した。



  時を同じく、キャゼルヌ家でも夕食だった。

  献立はアイリッシュ・シチュー。

  「…………」

  タイミングが良すぎて、キャゼルヌは微妙に複雑であった。しかしオルタンスの料理は絶品で、食欲を誘う香りは、やはり美味そうだ。

  「あなた、どうぞ召し上がれ」

  妻はいつもの笑顔だし、娘二人はおいしー!と大絶賛で、考え過ぎかとキャゼルヌはスプーンを持った。


  ところが――――


 

  「……うっ?!」×2

  マズイッ!とんでもなく不味いッ!!一体どんな魔術を使ったら、この美味しそうな香りがここまで不味くなるというのかッ!?

  場所は違うが、シェーンコップとキャゼルヌは同じ事を思った。

  もう生きるのが嫌になるほどの不味さだ!!


 

  「たくさんあるから、全部食べてね」(魔術師と白魔術師)

  完食しないと許さないよ、の、にっこり笑顔で脅迫。



 

 

  アイリッシュ・シチューはお好きですか?



 

 

終わり     





 

2010/11/15   

 

小ネタの大半は某日のアフターで盛り上がったネタです。

ワケが分からなくてスミマセン。でも書きたかったんです…orz