困っちゃうな〜♪

 

 

 

 

 

 

  伸し掛かる重みと温もりを、いつから心地良いと思うようになったのだろうか?


 

  巧みな口付けで蕩けていく意識の中でヤンはぼんやりと思った。

  「……っ…ぁ…」

  口端から零れた唾液を追う舌とシャツ越しに躰を弄る少し硬い掌に乱され、疑問自体が霧散していき、替わりに背中に感じる

  仮眠室の固いベッドの感覚だけがやけに鮮明だった。

  「…だ、め…だ…」

  シャツ越しに胸の突起を舌と歯で嬲られ、張り付く生地の感覚にゾクリと腰を震わせながらヤンは灰褐色の髪に指を絡めた。

  シャツの替えがない事を思い出したのだ。

  「硬くなってますよ…?」

  「……ッ!」

  なにがダメなのか判っているが、気付かない振りをする意地の悪い男はスルリ…と下着の中に入り込んで半ば反応を示すヤン

  を軽く握った。同時に胸の突起も指先で捏ねられ、ヤンはビクリッと背を跳ねらせた。

  「…ぁ…ぁ…っ…」

  そのまま緩く梳かれ、腰から広がる快楽を知らしめる様にもう片方の大きな掌が躰のラインを下へと辿って行く。

  「…腰を上げて下さい…」

  耳元で囁かれる低い声に命じられるままにヤンは腰を浮かせた。僅かな隙間であったが手慣れた男の手管に掛かれば十分で、

  下肢が曝け出される。

  「…本当なら、もっと時間を掛けたいんですがね」

  シェーンコップから残念そうな呟きが漏れる。それもそうだろう。例によって、例の如く、時間がない。小一時間もすれば要

  塞最高実力者がこれ見よがしに分厚いファイルを持って怒鳴り込んでくるのだ。そんな短時間勝負だが、この機を逃すと暫く、

  いや、大分先になってしまうだろう。

  内心で嫌味ったらしいキャゼルヌの底意地の悪い笑みに毒付きながら、一分一秒も無駄に出来ないシェーンコップはヤンの躰

  を裏返した。

  「ぅあっ!」

  急な変化にヤンはビックリした声を上げた。

  「ちょっ、やっ…ッ…!」

  腰を引き上げられ、霰もない体勢に抗議する声は半ばで閉じた。双丘を広げられ、ネッタリ…とした感覚に襲われ、漏れそう

  になる声を枕を噛んで堪える。

  耳に張り付く水音が思考まで侵していく。陽に当たらない象牙の肌は沸き上がる快楽に赤みを増し、しっとりと湿り、小刻み

  に震えている。充分に濡れた蕾は誘うようにヒク付き、シェーンコップは舌を捩じ込んだ。

  「…っ…ぅ…っ…」

  噛み締めた唇から漏れる吐息は枕に吸い込まれた。それを、勿体ない事だとシェーンコップは思った。

  …そんなものに―――

  奪われるくらいなら、己が喰らいたい。

  嘗てない束縛欲に思考の隅で自嘲したシェーンコップは奪われた吐息を取り戻す事にした。

  舌先で内壁の襞を愛撫し、節ばった指を埋め込み、馴染む前に激しく穿つ。

  「ひぃ……っ…!」

  内部を圧迫する指はすぐに増え、荒々しさにヤンは息を飲んだ。唾液と絡んだ指は卑猥な水音を奏で、癖のある黒髪から覗く

  耳朶は羞恥で赤く染まっている。初々しい反応だ。なのに、ギュッと締まる蕾と逃げるように揺れる腰の妖婉さは『初心』の

  欠片もなく淫らで、何度抱いても新鮮で飽きる事がない。

  もっと乱れさせたい欲求に従い、震えて快楽の雫を零すヤンを掌で包むとシェーンコップは性急に扱いた。

  「ぁ…っ…あっ…ぁ―――ッ!!」

  一気に噴き上がる熱い波に逆らえず、細く甲高い悲鳴を上げてヤンは果てた。

  ビクビクッと痙攣する背中の揺れを愉しみ、シェーンコップはヤンの息が整う前に弛緩した躰を抱き上げ、胡座をかいた上に

  乗せた。

  「―――ぃっ!」

  解放の余韻を感じる間もなく、硬く熱い楔が根元まで埋め込まれた。その衝撃は凄まじく、見開いた漆黒の瞳の焦点を失わせ

  る程だった。

  「く―――ッ」

  戦慄く内壁は硬く閉じられ、滾った陰茎を鷲掴みされたようでシェーンコップの整った眉がきつく寄ったが、同時に未開の地

  を征服したような昂揚感に口端が吊り上がっていた。

  シェーンコップはきつい締め付けに吹き出た汗で張り付いた前髪を鬱陶し気に掻き揚げ、シャツが擦り落ちて露になった未だ

  痙攣が収まらないヤンの肩に唇を寄せると強く吸い上げた。

  「……ぁ…」

  ピリッとした刺激に朦朧としていたヤンの意識が浮上した様で、小さな声が漏れた。熱を帯びた声に誘われ、後ろからヤンの

  顎を掬った。

  「……閣下…」

  深慮深い漆黒の瞳は蕩け、しっとりと濡れていた。その瞳に映るだけで、シェーンコップはゾクゾクと背筋が泡立つ。欲を孕

  む低い低音にふとヤンの口元に柔らかな笑みを浮かんだ。

  「――――ッ!」

  限界だった。

  「…ぅんっ…ふ…んぅ…っ…」

  獣の様に口腔内を貪り、苦し気な吐息までも喰らい尽くす。力のない細い脚の膝裏に手にかけ、激しく揺さぶる。一度果てだ

  だけでは物足りず、すぐに求めた。甲高い悲鳴が耳を劈くが、歯止めにはならなかった。


 

 

  求めれば求めるだけ、咽頭の奥が渇いていく自身をシェーンコップは意識の遠くで自覚していた。












 

  ぼんやりとした視界。感覚もぼんやりしていて、ヤンはぼんやりと意識を漂わせていた。

  「……閣下?」

  「あ?…あぁシェーンコップ…」

  はんなりとした笑みにはまだ熱が籠り、言葉の余韻は艶めいていた。

  「…………」

  そんな風に煽られては折角必死に抑えた欲が頭を擡げそうになり、シェーンコップは盛大な溜息を吐いてやり過ごした。


  小一時間の短時間勝負は、正味40分でした。


  …なんが電波受信してんじゃないのか?

  ナイスタイミングで内線が鳴り響き、2発目不発の全くもって消化不良であった。

  あと少しすれば、これまたナイスタイミングで怒鳴り込んでくるだろうキャゼルヌの顔が過り、萎えたシェーンコップはヤン

  を壁に凭れかけさせ、温めたタオルで汗を拭った。

  「…は…ぁ…」

  心地良さそうな吐息が漏れ、萎えたと思った熱がふつりと込み上げ、脳内で悪魔をボコる妄想でなんとか理性を繋ぎ止める。

  絶対に有り得ない事だが、土下座で勘弁してくれ、まで妄想し(そこまで妄想しなければ収まらない)漸く気持ちを落ち着か

  せる事に成功。

  仕上げのスカーフを結び頃にはヤンの意識も戻っていた。手櫛で乱れた髪を整えてしまえば、先程までの甘く熱い時間が嘘の

  ように準備していた書類を取り出し、バッティングは気不味いからさっさと出てってくれないかな〜、みたいな雰囲気を出す

  始末だった。

  「………」

  流石にいい気分ではない。シェーンコップは殊更ゆっくりと支度をし、事後丸出し、でキャゼルヌを迎撃する事に決めた。

  その前に―――

  「閣下」

  「ん?」

  汚れていない上掛けの上に寝そべるヤンに覆い被さり、耳元で囁く。

  「今度の休日、デートしましょう」

  「へっ?」

  色気もへったくれもない素っ頓狂な声だ。だがここでめげてはいけない。

  「恋人はデートをするものですよ」

  「あっ」

  耳の裏側にキスマークを一つ。

  「約束の印です」

  紅い花に今度は軽く口付けを落とし、文句が出る前にシェーンコップは素早く立ち上がった。

  そしてナイスタイミングで襖パーン!なお父さん登場。上半身にシャツを羽織っただけの要塞防御指揮官の姿にチタンフレー

  ムの眼鏡の奥がギラリと光った。

  …貴様っあとで吠え面かくなよ!

  …吠え面とは今の貴方の事ですかね?

  山火事ボウボウの無言の闘い。




 

 

 

     □    □    □




 

  「……おい、ヤン」

  仮眠室から執務室に移動し、仕事の話しを始めたがヤンはいつも以上に上の空だった。

  「ヤン!」

  「あ、すみません」

  ぼー、とベレーごと髪を掻き混ぜるが、単に手癖の発動であるのは明らかだった。

  「シェーンコップか?」

  「……」

  ズバリ的中でヤンはバツが悪い上目遣いで先輩の部下を見上げた。

  「話してみろ」

  「…え、いやー…」

  話すと拗れそうでヤンは視線を逸らした。

  「は・な・し・て・み・ろ」

  「痛い痛い痛い!」

  グリグリ顳かみを抉られました。

  「実はですねー」 

  痛む顳かみを指先で摩り、観念したヤンはデートに誘われた事を話した。しかも盛大な溜息を漏らした。

  「なんだ、嬉しくないのか?」

  「…だって、恋人とかいうんですよ?」

  「…………」

  なんだ、その困り顔は?

  予想外の展開だ。

  「あー…なんだ、その、お前、シェーンコップのコトどう思ってるんだ?」

  「え?…うーん…セフレ…?」

  「………」

  疑問符が付いているのはヤン自身、シェーンコップとの関係に判断付かないからなのだろうとキャゼルヌは察したが、あんだ

  けヤっておいて恋人認定されてないとはシェーンコップに初めて心底同情した(不良中年にとっては屈辱)

  




 

 

  でも容赦しないけどね!!

 

 



終わり    

 


 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・いや、ほんとゴメンナサイ