スクリーン・オフ

 

 

 注意  士官学校ですが、エロが作文したくて細かい設定は考えてません。

 

 

 

 

  一縷の光のない闇の中で荒い呼吸音が大きく響いていた。

  狭い場所のように反響して微かにエコー掛かり、頭の片隅に張り付くそれに余計に息苦しさが増していくような気がする。

  「……せん…ぱい…?」

  不安に耐え切れず、ヤンは暗闇の中に視線を彷徨わせるが、なにも見えない。呼びかけに応えもなく、もう一度名前を呼ぶ。

  「…キャゼルヌ先輩…?」

  視覚を強制的に閉鎖させられた不安と緊張で鋭敏になった耳がくぐもった笑いを拾い、ヤンは恐る恐る手を伸ばした。指先を指先で

  搦め取られ、確かな存在感にホッと息を吐いた。

  次の瞬間。

  「あっ…!」

  絡んだ指先が痛む程に強く引っ張られた。後ろ髪を鷲掴みにされ、痛みに開いた唇を塞がれる。荒々しい口付けに舌先からピリッと

  走る煙草の名残りの苦味に不快な感覚にヤンは眉を顰めたが、押し付けられた下肢の硬い昂りにそれどころではなくなった。唾液が

  混ざりあう水音と息苦しさに、すぐに思考が圧迫され、ヤンは無意識に腰を揺らした。その途端に突き飛ばされ、脚の力が抜けかけ

  ていたヤンはあっさり後ろに倒れた。すぐ後ろはベッドであったので痛みはないが、キャゼルヌの豹変振りにヤンは不安になった。

  「…先輩…?…キャゼルヌ先輩…?」

 

  「服を脱いで、自分でヤってみろ」

 

  「え…?」

  声は聞き覚えのあるキャゼルヌなのに別人のようでもあった。確かめようとヤンは視覚を塞ぐ薄いレザーの目隠しを取ろうとしたが

  言葉で制された。

  ギシ…ッと微かなスプリングの音の後に、カチッとなにかの音を耳が拾い、嗅覚が紫煙の香りを嗅いだ。それはキャゼルヌの愛用の

  煙草の香りだった。記憶違いでなければ、正面にはソファがあった筈だ。

  「ヤン、早くやれ」

  「…………」

  ヤンは少しの間躊躇った。その間に催促はなかったが、ただゆっくりと紫煙が広がっていく。

  煙草の香りがじわりじわりと迫り、ヤンは怖ず怖ずとシャツの釦を外し始めた。視覚を奪われ、少ない情報でも、やはりキャゼルヌ

  なのだ。

 

 

  『たまには変わったセックスをしよう』

 

 

  そう誘われ、滅多に使わないホテルで待ち合わせた。普段はキャゼルヌの官舎で、外で食事といっても気さくなファミレスとかだっ

  た。借金ないだけマシの学生には場違いの上ランクのホテルでの食事に若干気後れしたがデートみたいな感じで、そわそわしてしま

  い、そんな自分にキャゼルヌは面白そうにしていた。食事を終えて、上の階層のこの部屋へと来た。勿論キャゼルヌも一緒に入室し、

  キャゼルヌが鍵を掛けるのを視界の端に映した。目隠しもキャゼルヌに渡された。

  ヤンは胸の奥に潜む不安を払拭しようと記憶を遡ったが、不安は拭い切れず普段と異なるキャゼルヌがどこか怖かった。そんな自分

  を見透かし、面白がっているような視線を感じる。

  強張る指先で小さなシャツの釦と悪戦苦闘しながらヤンはダメ元で目隠しを外すことを求めた。案の定許可は下りなかった。

  ヤンは密かに落胆の溜息を漏らし、言われた通りに服を脱ぎ、自身へと手を伸ばした。こんな状態でキャゼルヌの望む反応ができる

  のか、もしも出来なかったらどうなるのか、不明瞭な不安が紫煙のように全身に纏わり付くのを感じた。

  「待て」

  「…?」

  目隠しをしていたが自然と俯いていた顔を上げ、見えないキャゼルヌを見ようとした。

  「そっちじゃない」

  「え…?」

  意味が判らないヤンは習慣的に小首を傾げた。面白かったのか、微かに吹き出すような呼吸が聴こえる。

  「判らんのか?仕方のないヤツだな。じゃ、両手を出せ」

  「…………」

  拘束されるのではないかとヤンは無意識に手を引っ込めた。微かに軋むスプリングの音の後に、ヤンは思わず後退った。

  「そう警戒するな。なにもしやしない」

  優しく宥めるような声にヤンは口の中で、そんなことを言われても…と非難めいた文句を呟いた。

  「ぁ…っ」

  突然ひんやりとした粘度のあるものを脚の付け根に垂らされ、冷たさに陽に当たらない白い内股が泡立った。

  「ローションだ」

  教えるような優しい口調とは裏腹に強引に片方の手首を掴まれ掌にたっぷりとローションを掛けられた。同じようにもう片方の掌に

  も乗せられ、やっと意味が判ったヤンは口をへの字に結んだ。

  「…いくらなんでも悪趣味ですよ」

  鼻で笑うような音にクシャリと髪を一撫でされた後にソファの軋む音が聴こえ、言葉もなく続行を命じられた。こうなるとキャゼル

  ヌの言う通りにしないと後が怖い事を知っているヤンは仕方なく脚を広げ、ローションを蕾に塗り付けた。冷たさと羞恥に小さく息

  を飲み、指先で硬く閉じた蕾を解かしていく。

  「……っ…ぁっ……ふ……っ…ぅ…ん……」

  脚の爪先から細い糸のような視線で雁字搦めに捕われていく。倒錯的な歪んだ快楽が徐々に見え隠れしていき、ヤンは羞恥と自己嫌

  悪に苛まれたがキャゼルヌは容赦なかった。

  「指で広げて、中を見せろ」

  「…やっ…できっな…っ」

  目眩を起こしそうな程ヤンは激しく首を振った。やっと爪の先を喰い込ませた程度なのだ。

  「やれ」

  冷たく突き放され、ヤンは下唇をきつく噛み締めた。感情のない道具のような扱いに泣けてくるが、それでもヤンは従った。両方の

  人差し指を痛みに耐えながら第一関節まで埋め込み、力の入らない指先で無理矢理広げる。といっても、殆ど閉じたままでキャゼル

  ヌを満足させられないのは絡んだ視線で判った。

  「痛っぃ…もっむ、りです…ッ」

  「はっふざけるな。いつも俺のを銜え込んでるだろうが。それとも俺はその程度か?」

  「ちが…っ」

  「なにが違うって?説明しろ」

  「…せ…つめ…い…?」

  初めてのシュチュエーションに思考が飽和状態のヤンは理解できなかったようだ。

  「そうだ。お前の中に挿れた時の俺はどんな感じだ?」

  先程の吐き捨てるような冷たい声ではなく優しい声が掛けられ、ヤンは僅かな安堵を得た。ギリギリと締め付けられたような緊張の

  中ではそれだけでも十分だった。

  「…ぁ…せん…ぱいの…は…硬く、て太く…て…っ…あ…あつ…熱い…」

  思い出したのか、襞がヒクつき蕾は綻び、知らず知らずに指を少しずつだが飲み込んでいき、触れていないヤンは反応を見せ始めた。

  「それだけか?」

  促されるままにヤンは震える声で続けた。

  「…なが…くて…」

  「誰と比べてるんだ?」

  ヤンはふるふると首を振った。納得したかどうかは定かではないが、キャゼルヌはそれ以上追求はしなかった。

  「指で抜き差ししてみろ。いつも俺がしてやってるだろ?」

  小さく頷いたヤンはゆっくりと動かし始めた。絡み付く視線に羞恥を煽られ、ぎこちない動きは、やがて絡む視線の熱を感じてより

  大胆になっていった。

  「…ぁっ…はっ…はぁっん…っ…」

  ローションのヌメッた音が大きく響き出す頃にはヤンは先端から快楽の雫で自身を濡らし、大きく脚を開き腰を揺らめかせ、キャゼ

  ルヌの目の前で淫らな享楽に酔い痴れていた。

  蕩けたローションと快楽の雫は陽の当たらない太腿を卑猥に濡らし、シーツにはしたない染みを作った。癖のある髪はしっとりと汗

  の滲む肌に纏わり付き、喘ぎ逸らした首筋からは壮絶な色香を放っていた。閉じる事を忘れた口端から零れる唾液を啜りたい欲求が

  沸き上がり、キャゼルヌは無理矢理唾液を飲み込んだ。

  しかし独りでは限界があった。

  「もっ…だめっ…ください…っ…!」

  指では届かない疼く奥をとにかくどうにかして欲しくて、ヤンは悲鳴に似た懇願をあげた。

  「いいぞ、指を抜け」

  余裕のない、熱を孕む掠れた声がすぐ傍で聴こえ、両の膝裏を押し上げられる。蕾に滑る先端が宛てがわれ、電撃のような快楽と期

  待が駆け巡りヤンは大きく震え、蠢く襞は早くと催促する。

  「すぐにイくなよ。自分で握ってろ」

  「……ゃ…できな…」

  「やめるか?」

  「いやっ」

  聞き分けのない子供が嫌がるように振られた黒髪が頬に張り付き、キャゼルヌの舌がそっと梳く。そんな優しいとも言える仕草にヤ

  ンは口惜しさを感じずにはいられない。

  …そうやって―――

  いつも誤摩化される。それを容認する自分も末期であると、ヤン自身は気付かない。

  動かないキャゼルヌに観念したヤンは自身を両手で戒めた。これからどうなるのか判り、その指先は哀れなほど震えていた。可哀想

  だと思いながらも満足感にキャゼルヌはヤンが望む褒美を与えた。

  「ひぃ―――ッ!」

  先端がめり込んだと感じた瞬間、それは疼く奥の奥にまでも到達していた。解したといってもヤンの指では奥までは解れず、期待に

  僅かに緩んでいた内壁を一気に引き裂かれた衝撃は快楽とは言い難く、成長しきっていない細い首筋は限界まで反り返った。

  細胞という細胞が萎縮し、自らを戒める指先もキャゼルヌを包む内部も強張り戦慄いた。

  「くっ…!」

  きつすぎる締め付けに苦痛のような呻きを漏らすが、馴染むまで待つ余裕のないキャゼルヌは激しい律動で己の快楽を優先させた。

  「やっあっああ――――ッ!」

  受け入れる事に慣れた躰はすぐに快楽が苦痛を上回り、それ故にヤンは更なる苦痛に陥った。揺さぶられる度に出口を失った熱が苦

  痛と綯い交ぜに爪の先にまで渦巻き、蒙昧な闇が鋭敏な神経を灼き尽くそうとしていた。肌を流れる汗が冷たいのか熱いのかも判ら

  ない。

  身悶える様子にキャゼルヌの口端が吊り上がる。内壁の襞は縋るように吸い付き、蕾は懇願するようにギュッと窄まり、悲鳴のよう

  な甲高い嬌声が堪らない。肉体的な快楽と精神的な快楽に愉悦が咽頭の奥から漏れるのを抑えられない。激しく責め立てれば責める

  程、望む以上の快楽を得た。思考の片隅に張り付く獣じみた雄の息遣いに、これがお前の本性だと教えられ、キャゼルヌは己の本性

  を解放し、悲痛な嬌声とベッドの軋みを思う存分堪能した。

  「ぃ―――ッ!!」

  咽頭の奥に詰まったような声にならない悲鳴がキャゼルヌの耳を劈き、快楽の果てに極限まで萎縮した内壁に締め付けられた陰茎が

  最奥の奥で爆ぜた。

  ヤンの戦慄く唇は唾液で鵐に濡れ、細く長い呼吸は過剰な快楽に正気を失っているようだ。

  「ッ!」

  快楽が灯ったままの内壁は達したばかりの過敏な陰茎に絡み付き、息を整える間もなく熱がぶり返す。硬度と質量を増していく陰茎

  に内部は悦んで畝り、細かな襞は吸い上げるように締め付けた。

  淫らで素直な反応が可愛く、キャゼルヌはゆっくり腰を蠢かす。蕾は卑猥な音を奏で、放った白濁が陰茎に纏わり付きながら溢れ、

  細かく震える襞をいやらしく濡らしている。未だ自身を握り締めたままで、先端からトロトロ…と快楽の雫を垂らす哀れな様が雄の

  嗜虐心を駆り立て、覚束ない呼吸で『せんぱい…』と何度も哀願するのがなんとも愛おしい。

  「…ぁ…ぅ…っ…せ…ぱぃ…あ…ん……せんぱ…ぁ…い……」

  焦らし嬲られ、ヤンは譫言のように喘いだ。荒れ狂う快楽も辛ければ、細波のような緩やかな快楽も辛い。灼熱の快楽の海に溺れて

  いるというのに、指先だけは悴んだ様に寒さに凍えて思うように動かせない。

  涙に濡れた哀願は耳に心地良く、レザーの目隠しに沿って流れる涙をキャゼルヌは親指の腹で拭った。するとヤンは舌を伸ばし、掌

  を舐め始めた。小動物の様で可愛らしいが、その実、浅ましいお強請りにキャゼルヌは苦笑と共に呆れた溜め息を漏らした。

  …まったく―――

  そうやって男心をそそり、嗜虐心を煽るのだ。もう少し虐めてやろうと思ってしまうのは、やはりヤンの所為だろう。

  「ひぅっ!」

  雫を零す先端の窪みに指先を捩じ込むと、引き攣った悲鳴を上げながらヤンは全身を痙攣させた。萎縮を極める内部に締め付けられ

  愉悦が腰から沸き上がり、口端を吊り上げたキャゼルヌは力なく震えるヤンの片脚を肩に担いだ。

  「…あっ…んっ……んん――っ!!」

  侵入角度が変わると、感じ方も変わるらしい。陰茎の先端で内壁を削るようにゆっくり抉られたヤンはキャゼルヌの肩に乗った爪先

  をピンッと突っ張らせた。なにも見えない暗い闇の快楽は煉獄に身を投じている様で、ドロドロと体の表面にこびり付いては爛れ浸

  蝕される。ゆっくり内部を掻き回す蠢きに合わせてヤンは途絶える事のない嬌声で啼き続けた。意識を手放す事も許されない地獄に

  貶めた張本人と判っているが、媚びるに腰は揺れ、内壁は己を苛む陰茎に縋り付いた。

  出口を見失い熱く冷たい快楽に全身を細かく震わせ、神経という神経が焼け切れ、甲高い嬌声は次第に噎び泣く嗚咽に変わっていき

  男の耳を愉しませ、熱く纏わり付く内壁の襞と切々と訴えるように先端からは快楽の涙を零し続ける様子にキャゼルヌの嗜虐心が満

  足した。

  「もういいぞ」

  漸く得られた赦しに、だが強張る指先はただ震えるだけだった。

  「…ひっ…ぅ…せ…っぱぃ…っ…」

  外して、と幼い子供の様に泣き癪られ、流石にヤりすぎたかと自嘲のような苦笑を漏らし、ガチガチに強張った指を丁寧に外し、詫

  びるように優しく擦り上げた。

  「ああ―――ッ!!」

  愛撫というには簡単なものだがヤンには充分すぎる刺激で、限界まで背を撓らせ蓄積した熱を解放した。あまりにも溜め込んでいた

  為にビクビクッと痙攣する度に白濁を迸らせていた。

  それは内包したままの陰茎を締め付ける事にも繋がりキャゼルヌは内心で舌打ちした。

  …せっかく―――

  今度は優しくしてやろうと思ったが、そんな余裕などなくなった。煽るだけ煽っておいて本人は解放の余韻で気持ち良さそうにして

  いるのだ。人の気も知らないで、と言葉なく毒付く。ヤンが知れば、それこそ身勝手な言い分だと怒るだろうが、知った事ではない。

  キャゼルヌは少し意地悪気な笑みを浮かべ、力なく投げ出されたヤンの脚を抱え直した。

 

 

 

 

 

 

    □     □     □

 

 

 

 

 

  「…………よくもまぁ、ここまで好き勝手できますね…」

  未だにベッドから起き上がれないヤンは、シャワー後のスッキリ・サッパリのキャゼルヌを恨めし気に見遣った。

  至当な文句にキャゼルヌが意外そうに目を瞠ったので、ヤンはムッと唇を尖らせた。そしたら冷えたビールの缶が軽く押し当てられ、

  続ける筈の文句が塞がれた。

  「………こんなんで誤摩化されませんからね」

  ビールを受け取った時点で既に誤摩化されていると気付いていないヤンの不貞腐れた顔を肴にキャゼルヌ渇いたノドを冷たいビール

  で一気に潤した。

 

 

  そして満足気に、どこか意地の悪い笑みを浮かべるのだ。

 

 

 

 

終        

 

 

 

 

 

 2011/04/29

 

 

キャゼヤンでエロが作文したかっただけです。それだけです。