口付けは、本当に優しくはなかった。

  「…っ…ぅんっ……ぁ…んッ…」

  狭い口腔の隅から隅まで激しく侵され、合わせた唇の角度を変える度に漏れる乱れた呼吸すらも奪われる。

  ミュラーの片方の掌は下肢を目指し、もう片方はシャツの釦を一つ外したが、その手間が惜しく、もどかしさに引き裂いていた。

  霞む意識の中で弾き飛んだ釦にヤンは驚いたが、口端から零れた互いの唾液を追うミュラーの舌の感覚に乱されていく。

  「…ぁっ…ぃ…っ…んぅ……ふ…ぁ…」

  胸の突起を摘まれ、捏ねられた。抑えられないと言った言葉通り、力加減のないそれは愛撫と呼ぶには痛みが勝っていた。

  「…あ…ぁ…は、んっ…」

  なのに、痛みのあとからジワリと別の熱が滲み出る。執拗に責められ、先端に熱が収束していく。そこはぷっくり赤く熟れた果実

  となりミュラーは夢中になって貪った。腫れて過敏な薄い皮膚は舌の表面の僅かな凸凹や湿ったミュラーの息遣いまでも如実にヤ

  ンに伝えた。布越しにヤンの様子を窺っていたミュラーの掌はじんわりと熱を籠るのを感じていた。

  「…あ…あ…あ……っ……!」

  脚から力が抜けていき、洗面台の縁から滑り落ちそうになった。気付いたミュラーは下着ごとヤンのパジャマを毟り取り、洗面台

  に乗せた。臀部から伝わるひんやりとした冷たさに身を震わせるヤンの片脚を開かせる様に持ち上げ、急激な快楽に戸惑うヤンに

  喰らい付いた。同時に、視界の端にやけに目に付いたハンドソープに左手を伸ばし、白色の滑りを帯びた二本の指は硬く閉じた蕾

  を傷付ける事なく根元まで埋め込む。

  「あぁ―――ッ!!」

  快楽というにはあまりに激しい快楽がビリビリと電流の様に四肢を走り、ヤンは仰け反った。白い閃光が走るが、異物感に果てる

  には至らなかった。

  ミュラーは内部の熱さや狭さを堪能した。指先で柔らかな媚肉を撫でると、全体がくねり締め付け、舌でヤン自身を愛撫すると、

  内部は震えながら緩むのを感じた。何度も繰り返すうちに、激しさを増す愛撫にヤンは翻弄され、ミュラーの耳には快楽を孕む熱

  い吐息が届けられた。指を三本に増やし、内部でバラバラに動かすと、銜えたままのヤンが先端から快楽の雫を零していくのが判

  る。

  …甘い蜜の様だ。

  舌が蕩ける甘味にミュラーは陶然と、そしてもっと欲しくて啜る様に吸い上げ、もっと蜜を零すよう指の抜き差しを激しくさせた。

  「ああ―――ッアッ…んッ…んぁッ…!」

  痛みと快楽が織り成す激しい畝りに翻弄され、視界が滲んでも白い光は灯されたままでヤンは明るさにまで苛まれ、思考の一部が

  麻痺していた。目を閉じる、という単純な事も考えらず、腕で視界を覆う事も浮かばないほど、ヤンは混迷していた。縋る様に砂

  色の髪に絡み指先から腕の付け根まで震え、感覚も遠い。

  煌煌と灯る天井の照明から逃げる様に俯いたヤンは咽頭の奥で引き攣った悲鳴を上げ、身を竦めた。恥ずかし気もなく脚を広げた

  己の下肢が映り、それも衝撃ならば、銜え込んだままのミュラーの砂色の双眼と眼が合った事もだ。

  ギラギラと異様な昂りをみせる砂色の双眼。

  …ああ―――

  手負いの獣だ。何かに怯えて、なにかに餓えている。

  生と死の境界に立つ戦闘中でも、ミュラーはこれほどまでに本性を剥き出しにした事はなかった。闘争本能よりも『公人』として

  の理性を働かせ、生存本能よりも『指揮官』としての役割を放棄する事はなかった。

  誰も知らない彼の本質だ。知る権利を得、引き出す事のできた事にヤンは言い様のない愉悦を得た。切なくなるほど雄弁な瞳にヤ

  ンは愛しさを感じずにはいられなかった。

  餓えているのなら与え、傷付いているのなら癒し、怯えているのなら安らぎとなりたい。

  「……おいで…」

  ふわりとした柔らかな笑みを浮かべ、ヤンは腕を広げた。

  幽遠に広がる濡れた漆黒の瞳に吸い寄せられる様にミュラーはヤンの胸に顔を埋め、深く長い安らぎの吐息を漏らし、ヤンは胸に

  擦り寄る砂色の髪を梳き、鍛え抜かれた逞しい首に腕を絡めた。

  満たし、満たされる抱擁を暫く堪能し、どちらともなく、互いの口付けを強請った。触れては離れ、離れては触れる口付けを何度

  か繰り返し、食する様に吸い付き、口付けを深めていく。舌の柔らかさや唾液の絡む水音は二人の意識と躰を昂らせ、ミュラーの

  滾った陰茎は先端から溢れる先走りの雫でその茂みまで濡れ、ヤンの内壁は埋め込まれたままの指を促す様に蠢いた。

  指に絡み付く内壁の襞に誘発され、ミュラーはそっと指の腹で内部を弄り始めた。

  「……ぁ…ん…はぁ…っ…ぅ…ふぁ…あぁ…」

  ぴくんっぴくんっと小動物の様に肩や太腿を震えさせるヤンに愛しさが募り、ミュラーは熱心に愛撫を施した。

  慣れていない所為かヤンは敏感で過敏な反応を返した。熱に浮かされ汗ばむ肌は艶めき、舌と掌で触れれば粟立ち、燻る甘い芳香

  に肺まで蕩け、悩まし気な喘ぎは耳の奥は痺れ、艶やかな媚態に指先の末端までゾクゾクと震える。細胞の一つ一つが燃え盛りミュ

  ラーは夢中になった。

  執拗なまでの愛撫に渦巻く熱に耐え切れず、ヤンは下肢を揺らしてミュラーの陰茎に自身を擦り付けた。プルプルと震えるヤンを

  陰茎で擦ってやると腰に脚を絡めたヤンは全身でしがみつき、咽頭に詰まったような悲鳴を上げて果てた。

  「………ぁ…ッ…」

  解放の余韻に弛緩した躰を支え、ミュラーは本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。恥ずかしくヤンは顔を逸らした。癖のある黒髪の

  隙間から見え隠れする耳が真っ赤に染まっていて、可愛くてミュラーは口付けを落とし、囁いた。

  「…良かった…感じてくれて…」

  「っ」

  恥ずかし気もなく、恥ずかしい事を口にするミュラーが堪らなく恥ずかしくて、引きかけた熱が一気に噴き上がる。単に羞恥と言

  うには甘美な痺れを伴っていた。

  いつもより低い声に惑わされる。ヤンは拗ねた様に下唇を噛み、ミュラーを上目遣いで睨み付けた。潤んだ瞳では効果はなかった

  ようで、年下である筈のミュラーは大人びた苦笑を口端に乗せるだけなのが、なお悔しいと思う。

  …声に――

  声にさえも反応してしまうほど自分は余裕がないと言うのに。

  ヤンが思うほど、ミュラーに余裕があるわけではない。努めて冷静に振る舞わなければならないほど、彼は追い詰められていた。

  「……ん…っ…」

  ヌルリ…と腹部に陰茎が擦り付けられた。果てたばかりで過敏な肌はそれだけで震え、まるで粟立つ肌理の細かさを堪能する様に

  何度も擦り付けられ、陰茎はまだ熱い白濁を纏った。

  「……私も――――

  濁された言葉にヤンは無言で小さく頷いていた。

 

  床に直に寝かされ、背中に感じるフローリングの硬さにヤンは身じろいだが、場所を移動する事はどちらも口にしなかった。

  正面の明るい蛍光灯の元で広く厚みのある掌によって脚を開かれ、恥ずかしさに瞼を閉じるが蛍光灯の灯りに視界は赤く染まり、

  薄い瞼を透過してミュラーの輪郭が朧げに見える気がした。せめて電気を消して欲しいと思うが、蕾に滑る先端が押し当てられる

  と、餓えるミュラーに早く与えたくなった。気持ちとは裏腹に蕾は緊張しキュッと入り口を閉まる。ヌルヌルとした先端が何度も

  円を描く様に擦り付けられ、ヤンは自分が緊張している事に気付き、何度も深い呼吸を繰り返し、力を抜く様に勤めた。

  頃合いを見計り、ミュラーは動き出した。ハンドソープが潤滑油の代わりとなり亀裂はないが、指とは比べ物にならない熱量と質

  量のそれを受け入れるには、やはり苦痛を強いられ、内蔵が迫り上がる異質な圧迫感にヤンは顔色は青みを増していく。

  「…ぅ…くっ……っ……ぁ…ぅっ……っ……」

  苦痛はヤンばかりではなく、きつい締め付けにミュラーも苦し気に息を詰め、眉を顰めた。

  漸く先端を埋めると、ミュラーは一旦動きを止め、ヤンも長い呼吸をする余裕を得た。緩やかな呼吸と共に痛みと強張った体から

  力が少しずつ抜けていく。

  ミュラーは異物感に耐えピクピクと震える蕾の襞を見つめた。その魅惑的な収縮は己を奥へと引き込もうとしている様にも映り、

  貪りたくなるがグッタリと萎えたヤンに抑え、長い指をヤンに絡めた。

  「…ぁ…っ…ん……ふぁ……ぁあ……」

  緩やかに直情的な快楽が沸き上がる。その影響は内壁にも及び、少し締め付けが緩んだ。

  ヤンの様子を窺いながら、ミュラーはゆっくり腰を進めていく。熱く狭い媚肉に包まれながら、思考の片隅で冷静な自分がいた。

  獣は未だ鎮まらず唸り続けているが、制御できないほどではない。これが荒ぶる前触れであると察し、ミュラーは殊更ゆっくりと

  喜びと快楽、ヤンの艶やかな媚態を堪能した。快楽の雫を溢れさせる先端の窪みを親指の腹で愛し気に撫でると、あまやかに震え

  た吐息を漏らし、内壁から快楽を伝えてくる。色付いた胸の突起を優しく摘むと、もっとと強請る様に微かに腰が揺れた。

  「…ああ…凄く……素敵だ…」

  悦を含んだ感嘆の呟きが恥ずかしくてヤンはどうしていいか判らなくなり無意識に身を捩っていた。僅かな動きであったが、内壁

  も畝り、細かな襞の震えは密着した陰茎にダイレクトに伝わり、ミュラーの熱い息遣いが更に乱れた。齎された快楽に陰茎は力強

  く脈打ち、きつく閉ざした視界の中で荒い息遣いとドクドクと鳴り響く鼓動が妙に生々しく意識に張り付き、しっとりと濡れたヤ

  ンの唇から熱を孕んだ吐息が止めどなく零れた。

  「……はぁ…っぁ…ぅ…ぁは…っ…あ…あ……っ…」

  奥へ奥へと、もどかしいほど、ゆっくりと時間を掛けている所為か脈打つ筋の動きすら感じ、ヤンは堪え難い羞恥に身を焦がした。

  「…も…も…っ…だ…め……」

  明るい照明に晒され、繋がるそこにミュラーの視線を感じ、快楽と羞恥の熱が混沌と混ざり合う灼熱の熱さに気が狂いそうになる。

  僅かに残る理性を自分では手放せないのが、ヤンには耐えられなかった。どうせならば、なにも考えられないほどの快楽で貪って

  欲しかった。

  小刻みに震える小さな声にミュラーは苦し気に眉を顰めた。首に縋る指先が懇願する様にギリギリと爪を立てる様子になにを望ん

  でいるのか察したが、ミュラーは頷く事はできなかった。

  「…もう少し…あともう少し……」

  諭す様に宥める様に繰り返されるが、なにを意味しているのか判らないヤンは苦し気な嗚咽を漏らしながら緩く頭を振った。

  癖のある黒髪がゆらゆらと揺れ、ミュラーの垂れ下がった前髪を掠める。髪先を掠めていた黒髪はやがてミュラーの額を掠めてい

  た。

  「………全部…………」

  ミュラーは影の奥にあるその場所へと視線を下げた。

  「……全部、入ってる…」

  根元まで、余す事なく。誂えた様に、ピッタリと繋がった。

  この上ない歓喜にミュラーの表情は恍惚と蕩けていたが、思考をも苛む圧迫感にヤンはそれどころでなかった。細く長い呼吸を繰

  り返す。片脚が下ろされたが感覚は遠く、意識を保っているかも危うい。

  爪を立てたまま硬直したヤンの指を丁寧に解き、ミュラーはその指先に口付けを一つ落とした。指先の感覚にヤンは僅かに俯いて

  いた顔を上げた。ボンヤリとした瞳を縁取る、涙で濡れて艶を増した睫毛に口付け、ミュラーは愛し気に、嬉しそうに眼を細めた。

  ゆらゆらと水面のように揺れる視界にミュラーの嬉しそうな顔が浮かび、ヤンはほんの少し口元に笑みを浮かべた。心なし、青醒

  めた顔色にも血の気が少しづつ戻っていく。呼吸の度に痛みが和らいでいき、ヤンな改めて自分の気持ちを知った。

  クスリ…と小さな音を漏らすヤンにミュラーは愛おしそうに問い掛ける。

  「なんですか…?」

  声を出すのはまだ辛いヤンはそっと視線を伏せて、なんでもない、と言葉なく伝えた。

  気にはなるが、逡巡したミュラーは追求せず、絡めた指先にもう一度口付けた。

  「…ほら…ここ…わかりますか…?」

  「……?」

  指先を導かれる。

  「―――ぁあッ!」

  刺すような鋭い痛みが走った。挿入に時間を掛けたおかげで裂傷は免れたが、いつ裂けてもおかしくないほど広げられた蕾は神経

  が剥き出しで、触るか触らないかのほんの僅かな刺激にも敏感だった。先端を熱した鋭い針で刺されたかのような激痛にヤンは身

  悶えた。

  「く…っ!!」

  痛みに萎縮した蕾の締め付けは喰い千切らんばかりで、ミュラーはそうそうに果てそうになるのを奥歯を噛んで耐えた。だが、痛

  みから逃れようとするヤンは身を捩り、本能的に異物を排除しようと狭い内部は奥までギューッと搾り込まれ、内壁の襞は痛みか

  ら細かく蠕動した。

  「……っぅ…く……っ!!」

  それは、一つに繋がった歓びも、胸の奥底から穏やかに滲み魂まで満たす幸福感も、なにもかも真っ白に吹き飛ばすほどの快楽だっ

  た。

  「はぁ―――ッはっ―――ぁっ!」

  強烈な白熱の閃光はミュラーの意識を有り得ない速さで呑み込み、破裂しそうなほどの心臓も乱れた呼吸も総て、一旦、完全に停

  止した。

 

 

  幾夜も待ち望んだ解放の歓びに禍々しく顔を歪めた獣は雄叫びを上げる。

 

 

 

  咆哮は狭い室内の空気が震わせ、ヤンはギュッと眼を瞑った。予想していた。覚悟もしていた。まるで別人のようなミュラーに、

  それでも縋る先は彼だった。

  「っひ――――ィッ!!」

  肉付きの薄い臀部に獣の指先が喰い込み、激しい律動に何度も悲鳴は上がり、咽頭の奥が擦れる。指先の末端まで灼かれる痛みに

  耐え、ヤンは必死にミュラーの首にしがみついた。

  「あっあぅっああ――――ッ!!」

  労りのない律動に、衝き上げられる度にとんでもない激痛に襲われるが、自我も理性もかなぐり捨ててまで求められる歓びを、確

  かに感じる。肉体も精神もなにもかも貪られ、無になる快楽。身の裡深くに芽吹いたそれは揺さぶられる度に砂色の花を予感させ

  る蔦を伸ばし、ジリジリと焦がす熱を持って絡み付き、快楽と苦痛は同等となり、ついには快楽へ傾いた。

  「ッンぁあッ…ひっ…ぃい…ッ…ああ―――ッ!!」

  二人の腹部で擦られたヤンは快楽の雫で濡れそぼり、卑猥な水音を奏で、甲高い悲鳴には甘い余韻が引いている事をミュラーは聞

  き逃さなかった。襟足に走る爪の痕からヤンの快楽の大きさが伝わってくる。陰茎から溢れる先走りの雫で内壁は柔らかく蕩け、

  緩急を繰り返し底知れぬ快楽へと堕とされる。喰らうつもりが、喰われる気がし、一層激しく揺さぶり抉り込んだ。

  「ぁぁあ―――――ッッ!!」

  一瞬にして全神経がカッと燃える快楽に限界まで背を撓らせ、一際甲高い嬌声を上げヤンは果てた。細胞という細胞が灼かれ萎縮

  し、前立腺を貫いた陰茎をこれまで以上に締め付け、心臓を握り潰されたかのような凄まじい快楽に咆哮を上げてミュラーも達し

  た。溜め込んだ欲は一度の放出では足りず、余韻にヒク付く内壁に促され二度三度と続けて吐き出したが、満たされぬなにかを燻

  らせ完全には萎える事はなかった。

  「……ふぁ…っ…ぁ…は…ぁ……ぅ…んっ…」

  初めて前立腺を抉り込まれたヤンは許容を越える凄まじい快楽に意識が吹き飛とんでいた。濡れて薄く開いた唇は喘ぎと共に透明

  な雫を零し、全身を覆う張り詰めた神経は僅かな刺激をも拾い集めた。感覚が剥き出しの内壁は脈打つ度に放たれる熱い奔流を敏

  感に感じ取り、縋る力もなくして床に落ちた指先は沸々と沸き上がる快楽に床の上を無意識に彷徨った。

  「はぁ…っは…っ…ッ!」

  ピクピクと痙攣する内壁にミュラーは乱れた呼吸を整える余裕を奪われ、快楽に涙する朧な黒曜の瞳に魅せられる。自分の呼吸音

  が耳の奥で反響し、脱水症状を引き起こした様に頭の片隅が痛い。無理矢理に唾液を飲み込んでも渇きが癒えるどころか痛みが増

  すばかりだった。薄く開いたヤンの唇から溢れた唾液こそが砂漠の中のオアシスのようで、獣が水面を舐め取る様にミュラーはそっ

  と舐めた。

  「はぅ…っ…」

  ビクッと感電したかのような鋭敏な反応は内壁にも連動し、増々ミュラーを締め付けた。口腔でフワリと広がる甘美な味覚と締め

  付ける快楽は男を虜にした。唇を合わせたまま角度を変え唾液の一滴、零す吐息までも貪り、凝り固まった胸の突起を指で摘んで

  弄るとヤンは鼻梁から啜り泣くような吐息を漏らした。可愛いくて、可愛くて、ミュラーはもっと聴きたくなった。もう片方の掌

  でヤンを包み込み、強弱を付けて揉むと、口腔一杯に甘やかな喘ぎで満たされ肺まで浸透した。身悶えるヤンの腰の動きに合わせ

  てミュラー自身も腰を動かすと、堪らずヤンは首を振り、口付けから逃れた唇は甲高い声で啼いた。

  「あッ…ああっぁンッ…ああ…ッ!」

  甘く蕩けた余韻を引く苦し気で艶めいた啼き声にゾクゾクと背筋が震える。自然とミュラーの口端は吊り上がった。

  仰け反った首筋に舌を這わせ、浮かび上がった汗で咽頭を潤し、火照った象牙の肌に鮮やかな紅い華を散らした。肌を刺す刺激に

  もヤンは過敏に反応を示し、一つ咲かせる事で一つ得る満足感に夢中になっては至る所にキスマークを刻み付けていく。

  じわじわと広がる熱は躰の奥にまで浸蝕していき、まるで獣に嬲られているようだが、感じるのは恐怖ではなく堪らない快楽です

  ぐにでも熱を吐き出したいが、果てるには中途半端だった。

  「…ひっぅ…ッ…や…ぁ…あ…あ…っ……も……っ…」

  執拗に弄られた胸の突起は赤く熟れ、弾けそうなまでに脹れて尖り、ジンジンと痛むような快楽を下肢へと蓄積させたが決定的な

  快楽を得られずヤンは啜り啼きながら懇願した。

  ポロポロと零れる涙に庇護を、惑わす媚肉に嗜虐心がどうしようもないほど膨れ上がり、上半身を起こしたミュラーは力なく震え

  るヤンの脚を抱え直し、ゆっくりと腰を使い始めた。柔肉の粘膜を陰茎の先端で削り、ヤンの腰を円を描く様に操り、半分ほど引

  き抜き、またゆっくり埋めていく。抜き差しに伴い、真っ赤に熟れた蕾から放った白濁が音を立てて溢れる様が生々しく、いやら

  しさに昂った。激しく貪りたい欲望と焦らし狂わせたい欲望が混在し、動きは緩やかだが力強い。

  「ぁっ…ああ…ッ!」

  悩まし気な表情で、イヤイヤと癖のある黒髪が床の上で踊る。引き抜かれる時は先端の括れの圧迫に内壁が擦られる感覚が堪らな

  く、埋め込まれる時は内蔵までもじりじりと迫り上がる感覚に悶えた。

  快楽に苦しみ婉然と悶えるヤンに支配欲が満たされ、昂揚感は戦場の勝利感をも凌駕し、ミュラーはじっくり堪能した。嘗てない

  ほど五感が研ぎ澄まされ、陰茎に絡み付く襞の微細な動きも、蕾からはみ出た真っ赤に熟れた媚肉がプルプル…と震える様子もミュ

  ラーは見逃さなかった。柔肉に隠された小さな痼りを先端で軽く擦るとヤンは背を撓らせ、仰け反った首筋から甲高い嬌声を漏ら

  した。

  「ああぁ―――――ッ!!」

  その場に止めようと蕾がギュッと締め付け、内壁は快楽に震え蠕動した。日に焼けていない木目細かな肌は躰の中の許容以上の熱

  を溢れさせ、汗で濡れて艶めいた。ビリビリと快楽の電流が末端まで伝達され、足の爪先まで綺麗に突っ張った。

  「―――ッ!」

  刺すような鋭い快楽にミュラーの思考に白熱の閃光を走らせ、奥歯を噛み締め果てるのを耐えた。肉を挟んだ様で鉄が錆びたよう

  な独特の味がしたが、快楽の余韻に浸り緩急を付ける内壁にどうでもよくなる。

  「…ここが…善い…?」

  ピクピクと跳ねるヤンは先端から雫を散らして答え、素直に強請る内壁にゴクリと咽頭が鳴る。ミュラーはヤンの膝の裏を押上げ、

  床に着くまでヤンの躰を折り曲げ、伸し掛かった。

  「…ぅあっ……ん…っ…」

  肺が押し潰され、息苦しさにヤンの意識は浮上し、覗き込むミュラーをしっかりと映した。砂色の双眼は爛々と底光りし、ゾクッ

  と背筋が熱く震える。

  …ああ―――

  これから、喰われるのだ。総てを。

  「……ミュラー…て…とく……」

  甘美な陶酔が沸き上がり、うっとりと名前を詠み、ヤンは捧げる様にミュラーの背中にしがみ付き、どんなに激しく責められても

  離れない様にミュラーの腰に脚を巻き付かせた。

 

 

 

 

  後はもう、なにもかもが有耶無耶になった。二人を分つ肉体的な感覚も曖昧に溶けて蒙昧で温かな闇の奥底へと、ただ堕ちていく

  感覚に互いを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     □     □     □

 

 

 

 

 

 

 

 

  翌日のミュラーは酷く落ち込んでいた。頭上に分厚く重そうな暗雲が伸し掛かっているのが視えるのは気のせいではないだろう。

 

  体調不良によるヤン・ウェンリーの欠席。

 

  事務管理部からヤン情報が漏洩し欠席届けの理由の欄には『風邪』と記されていることも広まった。

  つまりは、風邪引いちゃった恋人が心配なのだ。丸っと分かり易い。分かり易いだけに鬱陶しく、その日一日部下にも疎遠にされ

  た砂色提督。

  しかし、それは嘘であった事が、その日の内に明らかとなる。

  ミュラーは定時と共に去り、疾風も驚く速さで薬局に駆け込んだ。

 

 

  「すみません、コンド◯ム下さいっ!!」

 

 

  いきなり必死な形相でTPOを弁えない大声に困っちゃった店員は、とりあえず売り場に案内し、そそくさと逃げようとしたが、

  ガッチリ掴まった。

  ミュラーは必死だった。またもヤっちまった中出しだ。

  場所がドレッシング・ルームですぐそこにシャワーがあっても後始末しなかったためにヤンはお腹痛くて目が覚めた。

  硬いフローリングをものともせずに寝こけているミュラーの身体に半分乗り上げているような体勢でしっかり抱き締められていて

  はどうにもできない。素っ裸の密着で下半身が特に気持ち悪いし、どんどんお腹は痛くなるしでヤンは最悪だった。

  一晩中啼かされ続けた咽頭が痛くて大声を上げれないのもあってか、何度呼んでもミュラーは起きない。

  疲れているのは、判る。途中から記憶が曖昧だが、そのまま寝こけるくらいだ、肉体の限界に挑戦したのだろう。でなければベッ  

  ドに移動するくらいの気遣いはする筈だ。

  ゴムなし中出し抜かず3発の路地裏ヤり逃げという最低な初エッチの次が最悪の『ヤりっぱなし』では、気持ち良さそうな寝顔に

  余計に腹が立つというもの。もっとデリカシーがあると思ったが、思い返せばパンツ2枚セットも実はツーサイズ違いだった。流

  石に今後のお付き合いを考えたヤンはお腹痛いのもあり、再び漆黒の女王降臨で『離せ』の一言で飛び起きたミュラーだった。密

  着状態で急に動かれ、身体中痛いヤンの機嫌が更に下降したのは言うまでもない。起死回生で看病のためにミュラー自身も休むつ

  もりだったが、無言で官舎から追い払われた。

  今後が掛かっているミュラーは、そりゃもう必死だ。コレとコレは、どう違うんですか?ジェルでかぶれることはないんですか?

  あ、肌質はきめ細やかで、痕が付きやすんです。肌、弱いんでアレルギー物質の一番少ないのはどれですか?あ、あと裂傷によく

  利く刺激の少ない軟膏も…とかなんとか。

  余談だが、後日その店のスタッフルームに『バ☆カレシ要注意』の張り紙が張られていた。

  この薬局は元帥府から近い場所にあり、日用雑貨やちょっとした食べ物も取り扱っている。帰宅途中や残業組の買い出し班の利用

  が多く、アレな売り場で、どーでもいいよ…とゲンナリしている店員にあれこれ訊いている(さり気なく惚気トーク混入)砂色提

  督の目撃情報は瞬く間に広まった。

 

 

 

  翌日から更なる嫌がらせを受ける事になる。

 

 

 

 

 

    終わり              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとゴタゴタがありまして、砂色夢街道はヤケッパチの力技です…。

ごめん、ミュラー。できれば、もっと格好良く、そしてケダモノ臭くしたかったよ…本当に…orz

砂色夢街道…またリベンジし隊。…再来年あたりに…。

でも、どんだけ頑張っても、やっぱMAX40%!むしろMAX40%の為なんだけどね!!(爆笑)

薬局ネタは飛び散ったギャグ脳の一つです。薬局の黄色いビニール袋からコン◯ーム(メーカー別5箱)が出てきて『実はバカだったんですね』って

またも漆黒の女王降臨だと思います(爆笑)

暫くお預けだよ!

 

今回、チョコたんには大変お世話になりました!チョコたん、ありがとう!!T▽T/