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透明戦士デュラハンマン
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五分後。
体中包帯だらけのタクヤは、再び彼の部屋でユウラと向かいあっていた。
「それで何、この子のことは、本当に知らないって言うのね?」
包帯が巻かれていて喋れないので、モガモガと頷くタクヤ。
「自分は昨日、道場から帰った後、疲れちゃっててすぐ寝たから、不適切な行為はしていない、と」
また頷くタクヤ。
「じゃあ何なのよ!」
「一つだけ言えることがある」
タクヤは包帯を取ると、不敵な笑みを浮かべながら言った。
「何よ」
「この子は、とっても寝付きがいいということだ!」
その顔に、容赦なく拳がめり込んだ。
「でも、確かに昨日あんたが道場から帰ったのは遅かったしね。それは分かる」
「だろ?」
「じゃあ、何なの?」
「何だろう?」
首をかしげる二人。
その耳に、可愛らしい声が届いた。
「うーん」
二人は、今はシーツをかぶせられている少女の方を見た。
少女が、目を覚ましたようだ。
小さな口であくびをすると、目を閉じたまま、ネコのように伸びをして、身体をゆする。
シーツが落ちた。
少女は、輝かんばかりの白い肌をしていた。ふくらみ始めたばかりのように見えるその胸には、愛おしいほどに桃色の……と、しげしげと少女の身体を見ていたタクヤにユウラの目つぶしが
入る。
少女が目を開いた。まつげがずいぶん長い。つぶらな瞳はこぼれ落ちそうだ。
「おはようございます」
少女は、一糸まとわぬ姿を恥じる様子もなく、正座をすると手慣れた様子で挨拶した。
「あ、おはようございます」
思わず挨拶を返してから、
「ねえっ、あなた、何なの!?」
ユウラは詰め寄った。
すると、少女はニッコリと微笑んで言った。
「わたくしは、これからタクヤ様にお仕えする者です」
「やっぱり!」
「いや、違うんだって!」
いきり立つユウラを何とかいなしながら、タクヤは少女に話しかけた。
「な、なあ、頼むよ。俺はこう見えても生命の危機にさらされてるんだ。本当のことを言ってくれ」
「言いました」
「だって、俺とあんたが話すのは、今が初めてじゃないか?」
タクヤの言葉を聞いた途端、少女の表情が曇り、目からはポロポロッと涙がこぼれ落ちた。「そんな……」
「え、ええっ!?」
「ようやくお会いできたのに、そんなお言葉……」
「お、おい、泣かないでくれよ……」
タクヤが狼狽すると、少女は急に涙を止めて言った。
「嘘です」
「嘘かよ!」
「あんた、何なのよ!」
少女は、くすっと笑って言った。
「私は、赤陰恭吾(けいご)様から使わされたものです」
「オヤジのっ!?」
「えっ……タクヤのお父さん……?」
二年前に行方不明になった、タクヤの父の名前に、驚く二人。
そんな二人を見て、少女は微笑みながら言った。
「とりあえず、朝ご飯をいただきながらお話ししましょう」
「どうぞどうぞ」
「タクヤッ! ……まあ、とにかく今は学校に行ってる場合じゃなさそうね。そう言えばあんた、名前は?」
問われた少女は、うっそりと笑ってこういった。
「血斬(ちざん)……と申します」
三十分後、ユウラの入れたコーヒーを飲みながら、三人はキッチンで向かいあっていた。
ユウラが険しい顔で口を開いた。
「にわかには……信じがたい話ね」
「私もそう思います」
少女がしれっと言う。
「あんたが言うな!」
「まあまあ」
噛みつかんばかりのユウラをなだめるタクヤ。
「それで……整理すると、つまりこういう事だな。俺にはとにかく、なんかすごい能力があって……それは、えーと……」
「異類婚姻(いるいこんいん)、によるものです」
「ああ、なるほど、ヒローコンパイね。それで、その力で世界を守んなきゃいけない、と」
「はい」
今は素肌にオーバーオールだけの少女がこっくりと頷く。
「おおー、すごいじゃないか! 俺はやるぜ!」
どうもぜんぜん話を聞いていないらしいタクヤ。さっきから何故かイライラしているユウラが、タクヤの後ろ頭に手を当てて、テーブルにガツンと叩きつける。
「すぐやる気になるな! あんたにある能力と言ったら、耐久力ぐらいよ! 大体ねぇ」
ユウラが眉をしかめて少女を睨みつける。
「マユツバなのよ! それで? そのためにはお祓いが必要だから五十万よこせ、とか?」
「そんな必要はありません」
少女は首を振ると、どこからか手袋のようなものを取りだした。ずいぶんゴツゴツしていて、派手な原色の装飾が施されている。
まるで、特撮ヒーローのオモチャに見えた。
「これを使うんです」
「何だそれ?」
「これは……」
少女が説明を始めようとした時、玄関のドアが勢いよく開かれる音がした。
「た、タクヤ、タクヤおにいちゃんッ!!」
息を切らした少女の声だ。タクヤはあわててキッチンを出た。
靴箱に寄りかかっていたのは、ピンクのランドセルを背負った、お下げの、少しぽっちゃりした女の子だった。
「マリちゃん!? どうしたんだ!? エミは?」
「それが……それが、大変なのぉ、学校に!」
「何ッ!」
タクヤが吠える。血斬が呟いた。
「来ましたね」
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