思い出させ屋
 
 
 
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「……ぁっ」
 白い髪の、細身の、背の高い、目のくもり氷みたいにきれいな人だった。
 どうしてそれがわかったかと言えば、するりと降りてきて、目をのぞき込んだから。
「一年は、ホントは十三ヶ月だって知ってた?」
「……いいえ」
 一言口に出せて、ようやく息が吸える。
 だから訊ねた。
「あなたが、思い出させ屋さん?」
「そうだよ」
 男はまたするりと身を離して、今度はゆさ子を見上げる位置に立った。
「忘れたことを、思いださせてくれるの?」
「そうそう」
 ゆさ子の顔がほころんだ。
「じゃあ、いっしょに来て!」
「いっしょに?」
 男がパチパチとまばたきをした。
「君が用事があるんじゃないの?」
「いいえ……その……」
 ゆさ子は口ごもった。
「私……あっ、ゆさ子って言うんですけど、じゃなくて、あの……友だち……が」
「うーん…………」
 思い出させ屋はニッコリ笑った。
「用事がある人は自分で来る。でなきゃ両手の親指を繋いじゃわなきゃならないんだけど」
 ゆさ子は、笑顔があんまり人なつっこいので、ゾッとする暇がなかった。
「いいよ、行ってみようじゃない。それで、友だちってどんな人?」
 月が冷たい空気の中で冴え冴えと光っているのに、この男の人は白いものを吐いていなくて、それはすこしも意外なことでなく、ゆさ子は頷いて、
「男の……人です。と言っても、十六歳で……私の、恋人……なんです」
 と言った。