ふたりで三脚!
 
 
  1
 
 夕暮れのグラウンド。
 カラスが数羽、鳴きながら校庭を横切っていって、その影が時を告げるように地面をえぐっていく。
 もう5時だ。
「遅ーい!」
 少年の怒声が、グラウンドに響き渡る。
「ホラ、もう一回だ!」
 見れば、少年は一人ではなかった。
 同じくらい、いや、少し彼よりも大柄と言えるくらいの少女が一人。
 二人の片足は紐で結ばれ、二人は肩を組んで走っていた。
 いわゆる、二人三脚というやつである。
 二人は、それぞれ身軽なTシャツとジャージという姿だった。
「一、二、一、二!」
 細身の少年のキビキビとした声。
 いっぽう、
「い、一二、一二……」
 どちらかと言えばぽっちゃりとした少女は、声を出すのも辛そうだ。
「あっ……」
 少女のほうがよろけた。
 つられて、少年もバランスを崩し、その場に二人して倒れ込んでしまった。
「もーっ、またかよ!」
 少年がイライラとした声を上げた。
「運動会まで、あと三日しかないんだぞ! こんな事じゃ、リレーで三組に勝てないだろ!」
「う、うん……ゴメンね……」
 怒鳴られた少女の方は、恐縮するばかりだ。
「さあ、もう一回!」
 促されて、立ちあがって走りはじめる。
 Tシャツの下で、少女の胸はゆさゆさと動いて、いかにも走りにくそうだ。
 すぐに、またバランスを崩してしまう。
「うわっ!」
「あっ!」
 今度は、勢いづいていた少年が、前に転がってしまった。
 足の紐に足を取られたのだ。
 あわてて手をつくが、
「イツゥーッ」
 小石でも刺さってしまったらしい。
「だ、大丈夫?」
 少女があわてて患部を見ようと手を取るが
「大丈夫だよっ!」
 少年が振り払った。
「あ……」
 少女がうなだれる。
「とにかく、今日はもう終わりにしようぜ。俺も疲れたし、マユミも疲れただろ?」
 少女はこくんと頷いた。
「ランドセル、取ってくる!」
 少年が、校舎の方へ走っていく。
 その後ろ姿を見ながら、
「明日は、今日みたいじゃないからね、コウちゃん……」
 少女がポツリと呟いた。