ふたりで三脚!
 
 
 
  3
 
 異変が起きたのは、それからしばらくしてからだった。
「一、二、一、二……」
 少年の声。
「一、二、一、二……」
 少女の声がそれに唱和する。
 だが、どこか弱々しい。
「どうした、声が出てないぞ!」
 そんなことを言っていたのもつかの間。
「うわっ!」
 走っている途中で、二人は尻餅をついた。
 と言うより、少女が急にうずくまったのだ。
「なにやってんだよ、マユミ……!?」
 怒鳴りつけようとした少年が驚きに言葉に詰まった。
 少女の顔色が、そろそろ暮れ始めた夕日の下でも分かるほど青ざめていたからだ。
「マユミ……?」
「あっ、コウちゃん、ゴメンね、転んじゃって……」
 よろよろと立ちあがろうとするが
「ふぅ……」
 気分の悪い様子で、そのまま座りこみ、さらには地面に横たわってしまう。
「ま、マユミ!? どうしたんだ!?」
 とりあえず少年は自分と少女の足をつないでいるロープをほどいた。
 あわてて少女の顔をのぞき込む。
「マユミ……」
「コウちゃん……」
 血の気がないと言えるほどに白かった。
「ど、どうする!? とりあえず、水でも持ってくるか!?」
 少年は、息が上がるほどに取り乱していた。
「ううん、大丈夫……それより、練習……続けよ?」
 少女が息をついて立ちあがろうとするが
「バカ! なに言ってんだよぉ。寝てろって」
 少年が押しとどめる。
「う、うん……」
 少女も、かなり辛そうだった。
 少年は、混乱しきっていた。
(ど、どうしたらいいんだ!? 救急車とか、呼んだ方がいいのか?)
「誰かーっ!」
 少年は、とりあえず声を上げてみたが、他に練習している人もなく、気が付いて駆けつけてくれる先生もいない。
「マユミ……」
 少女は目を開けているのも辛そうに喘ぐばかりだ。
「い、今、何とかしてやるからな」
 少年は後ろを向くとかがみ込んだ。
「マユミ、背中……乗れるか?」
「え?」
 少女が苦しげな声を上げる。
「だから、おんぶしてやるって言ってんだよ。どうだ!?」
「う、うん……で、でもわたし……重いから……」
「そんなことないって! いいから乗れよ!」
「うん……」
 少女は、気分悪げにしながらも、少年の背に身体を預けた。
 少年は、たしかに自分以上はあるであろう少女の体重をグッとこらえて立ちあがると、歩き始めた。
「大丈夫かよぉ、マユミ……」
「う、うん……」
 少女はそっと目を閉じる。
 その目からは、涙がこぼれ落ちていた。