3.問答無用

 

 

「今夜は月がきれいだねぇ。」

「あぁ。」

雨乾堂の縁側で浮竹と二人、酒を飲みながら月を眺めていた。

今夜は本当に月がきれいだ。

 

 

「そう言えば、京楽、京の隊主会の後に元柳斎先生に呼ばれていたようだったが、何かあったのか?」

「いや、ちょっとねぇ・・・。」

 

 

『京楽、わしは先日奇妙な噂を耳にしたのじゃが、あまりにも奇妙すぎるのでな。お前に確認しておこうと思ったのじゃ。』

『・・・それはどんな噂なんだい、山じい。』

『それはのう、お前と・・・』

 

 

「・・・らく、京楽!」

「え?あぁ、どうしたんだい、浮竹?」

「どうしたもこうしたも、お前、どうかしたのか?そんなに元柳斎先生に言われた事を気にしているのか?」

「何言ってんのさ。そんな訳無いじゃないの。僕がそんな事、気にするとでも思っているのかい?」

浮竹は理由を言ってもらえないのが、気に入らないようだ。

「・・・そんなに気になるの?」

「・・・お前はそんなに俺に隠し事をしたいのか?」

ハァ・・・。浮竹は妙な所で細かいんだから。

 

 

「解ったよ。実はね・・・。」

 

 

『僕と浮竹が付き合ってるって?』

『そうじゃ。まさかそんなことは・・・あるまいな?』

山じい・・・そんなに霊圧放出しないでよ。外で人が騒ぐ声が聞こえるじゃないの

『ところで山じい、その噂、何処で聞いてきたの?』

『長次郎がな。『耳にした』と言ってわしに伝えてきた。』

・・・今度絞めに行こうかな。

『・・・この噂、本当だと思ってるの?』

『いや、違うのなら良いんじゃがの。隊長格同士、しかも男同士となれば、それは護廷十三隊の中で大変な騒ぎになるからのぉ。』

『・・・僕らはすごく仲が良いけど、まさかそんなではないよ。』

 

 

今は・・・ね。

 

「で、そんなことを話していたのか。」

「あぁ、そうだよ。」

浮竹・・・君の霊圧が結構怖いよ。

「・・・れだ。」

「へ?」

「誰がそんな噂を流したんだ!」

「お願いだから僕にきかないでよ。」

「いや、ちょっと待て、まさか、まさか・・・。」

 

 

「まさかお前じゃないよな?」

 

 

・・・早いお察しで。

「・・・なんでそう思うの?」

「この前寝言で『浮竹、僕と付き合ってくれ』って言ってたぞ。」

あぁ、あの時は夢を見た気がしたからねぇ。

「・・・もしも僕だったらどうするの?」

浮竹は、少しだけ考えた。

 

 

「・・・でも、お前じゃないんだろう?」

 

 

優しいね、浮竹は。

でも、僕は君が欲しいんだよ。誰にも渡さぬように・・・ね。

 

「・・・さぁね。それより浮竹、その噂、本当にしないか?」

 

 

「は?・・・正気か、京楽。」

「だって君も寝言聞いたんだろ?」

「・・・あれはただの夢なんだろ?」

「・・・僕の願望さ。」

あ、ため息ついてる。やめてよ、もう我慢の限界なんだから。

 

 

「それは・・・まずいんじゃないのか?」

「・・・何故?」

「だってほら、俺とお前は男だぞ?」

「じゃあ君は僕のことが嫌いなんだね。」

「そうは言って無いだろう?」

あ、言葉に詰まった。やっぱりそうなの?

 

 

「俺は、お前の事が嫌いじゃないけど、それはだなぁ・・・。」

僕は少しずつ、浮竹に近寄る。本人にも解らぬように。

「じゃあ、何なの?」

顔がすれすれまで近づいた。気付いた浮竹が、すかさず身を引く。

「・・・俺にとってお前は、そばにいて当たり前な存在なんだよ。」

「なら一緒になっても結果は同じじゃない。」

「そこまで近いのは考えられん。」

あ、今の言葉ショックだな。それにもう、我慢の限界。

 

 

「浮竹、今のは僕でも傷つくよ。」

 

 

僕は浮竹の背中に手を回し、体を引き寄せる。

「なっ!?」

浮竹が離れようともがくけど、僕は絶対に逃がさない。

「そこまで拒絶されるとは思わなかったよ。」

「だから!そうじゃないんだ・・・。」

浮竹は本当に困ってしまったみたいだ。俯いてため息をつく。

「お前を縛り付けてしまいそうで怖いんだよ。」

 

 

思っていなかった言葉に僕は驚いた。

「じゃあ君は、僕の事が・・・?」

「あぁ・・・好きだ。なんで俺はこんな中年親父のことを・・・。」

「僕が中年なら君だってそうじゃないの。でも・・・あいがとう。」

そう言って、僕は微笑んだ、浮竹が、やっと顔を上げてくれる。

可愛いなぁ、もう。

 

 

僕は思わず、浮竹の唇に自分の唇を重ねた。

 

 

「?!・・・お前今・・・何を・・・した?」

「相愛祝い♪」

浮竹は顔を真っ赤にして身を震わせている。

「・・・まえなぁ。俺の許可もなしにそんな事・・・。」

「ん?いいじゃない、僕ら付き合うんだから♪」

「そういう問題じゃない!」

浮竹は立ち上がると、刀を取りに行った。

「え、ちょっと待ってよ、そ、それはないでしょう?」

 

 

「問答無用!!」

 

 

『ギャァーーー!!!』

僕の声が、聖霊廷内に響く。

 

 

後日、僕は浮竹と付き合いだしたのだが、触れることを許されない

スタートとなってしまった。

 

 

「誰のせいだと思ってるんだ京楽ー!!」

 

 

 

 

7.31