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アンドロメダ・アルベダムの預言書、
彼の言ったことは現実になった。
戦争の事だけが。
「ナスタチウム・・・」後ろから声が聞える。
「コルチカム」俺は驚いて振り返った。
「ミカエラ・ミスミとはぐれた・・・此処で彼女からの連絡を待とう」
「ああ」
俺達の居る場所は、廃墟に満ちた高層ビルの一室の中だった。アメリカは何故参戦してしまったんだ。 日本だって耐えれば此処までの損失は無かっただろう。 オレンジ色の長い髪の毛が俺の額に風のせいで視界をとぎらせた。 何故アメリカ出身なのにこんな髪の毛の色をしているのだろうか。 それは良く分からない。
ボーッとしていた、
そして、突如地響きが起こった。
俺とコルチカムは近くの壁に這いつくようにして体制を整えた。地面は裂くようにして割れていく。自然の力は人間が防げることなんてない。 揺れはあっと今に収まった。しかし外は悲惨な状態であった。
「怪我は無いか?」
「まあ、何とかね、コルチカムは?」
彼はうんざりした様子で、「へーき」と言った。俺はただ彼のうんざりしてた表情を見て安堵するばかりだった。
*
森の深く、私は相手の国の兵士と戦闘の真っ只中だった。 また、次々と倒れていく人。兵士達は何もなすすべも無く倒されていく。
それを私はただ見ているだけだった。
今は世界は戦争をしている。 また人類最上の死者が出るだろう。 食糧不足。支援不足。新型ウイルス感染。生物兵器。全てが原因となり始まってしまった。何故こんな愚かなことを人類は繰り返すのだろうか。
私は片手に持ったライフルをずっと握り持ったまま爆音の鳴る戦場の真っ只中に居た。 戦争参戦国はアメリカ、日本、イギリス、フランスと様々だ。中国と北朝鮮は当等出てきたというところ。 全ての国の軍が壊滅するタイミングを計らったのだろう。しかしそれは誤算に終わった。 アメリカはそれを裏をかいて詠んでいた。流石といえるものだ。相手の国はあっという間に壊滅危機に陥っている。それが過去に戻れば・・・戦争なんて始まりはしなかったはずなのに。 いいや違う。金融危機に陥り、その後の莫大的な崩壊により全てが狂ってしまった。 今更とめるなんて満更でもない。すぐあの世逝きだ。
今私が居る場所はマイアミだ。早く終われば良い。こんな戦争。 そして、今私は敵軍の男の目の前に立っていた。 もう終わっている、ただ軍が違うだけなのに自分の国同士のもの同士で激突している。 そもそも、仲が悪い地方同士だから仕方が無いのだろうけど。
「アードレッチ、そろそろ退いたら良いんじゃない?」
彼は残酷な笑みで私を見た。そして拳銃を取り出し、自分のこめかみに当てた。
そして、後ろからアードレッチの部下だろうか、その部下が「駄目だあぁぁぁ!」と叫ぶ声が聞えた。
私は彼を見つめている。彼はただこめかみに拳銃を当てたまま私を見る。
「自殺?」
「うん、そうだよ。君等のカス軍に殺されるんだったら自殺で名誉となりたい」
「馬鹿馬鹿しい・・・」
「アードレッチ中佐!」
「俺はもう、女神に見捨てられたんだよ」
彼は拳銃の引き金を引いた。部下は泣き叫び狂う。
銃声が鳴った。火薬の匂いがする。いや違うだろう。きっとこれは幻臭だ。 死んだ。 地面に倒れ、彼は笑みを残していたままだった。
「アードレッチ中佐!」
ボロボロに、傷だらけになりながらも彼は必死にアードレッチの肩を揺さぶった。
彼の遺影を抱き、部下は走り去って行った。私は何も言わなかった。 カス軍・・・。 それだけが、唯一の心残りだった。
「ミスミ」
名前を呼ばれた。振り向くとカチャッと音がしたのがわかった。敵なんだ、きっと。
「誰?何の用?」
「C'est la défaite de votre pays」
-それは、あなたの国の敗北です-
フランス人・・・?どういう事?そしたから此処はもう・・・。 一目散に走り出した。生憎相手の弾倉は尽きていたようだ。 仲間達が居ない。It
is very a
thing! 一人になってしまったがこれは好都合なのかもしれない。一人で居れば必ず標的になることは無い。 団体で居れば何人かが必ずはやられる。 しかし空軍は何をやっているのだろうか、動きがさっきから可笑しい。 無線を繋げることにした。
『何だ』
「ナスタチウム?!今何処に居るの?」
『丁度ビルの中に立てこもってる。「Ich
quäle das
Schwache!」うほっ、ドイツの奴等なかなかやるなあ』
「・・なんでマイアミが襲撃を受けるのよ」
『知るかよ。都市の住民狙いなんじゃないのか?それよりミスミこそ何処に居るんだ?』
「案外あんたの近くに居るかも!」
『おーし、じゃあ待ってる、オーシャンカンパニービルの26Fの議長室だ』
「了解」
すぐに無線を切ってロイの居るビルへと走って向かう。此処からだとあのビルまでは最低でも20分はかかる。それまでに生き残れているかどうか、が問題ね。 全く・・・戦争を起こすだなんてどうにかしているわ。それに核兵器まで出すなんてとんだ食わせものばっかり。 ダダダダダ、と機関銃が音を立てている。その音を掻き消すかのように兵士達のうめき声などが聞えてくる。それだけで鳥肌は凄くたつ。 足が重くなる。きっと心の中の怖さからだろうか。やはり人間は人間でしかない。 テクノロジーにたよりすぎ、失ってしまったものに気が付かなかった結果なのかもしれない。
暫く走っているとようやくマイアミのビルの建っている中心部に来た。 オーシャンカンパニービルの26Fの議長室。遠いかもしれない。ロイの無線から聞えた「Ich
quäle das
Schwache!」弱者虐め・・・戦争なんて、終わらせたいのに。 誰か白旗を揚げてくれないのだろうか。そしたら簡単に終わるのに。
「ヒュー!居た居た♪」
「ナスタチウム!」
ビルの入り口から飛び出してくるナスタチウムともう一人、コルチカムがいた。安堵の息。 とりあえず、三人一つじゃなきゃ生き残れない。
*あの戦争の日から二週間経った今、
「ねえ、いい加減ミカエラって呼んでくれない?」
苛立った様子でミカエラはナスタチウムに問いかけた。しかし彼は泥で塗れた顔面をハンカチで拭きながら呆れ半々に言った。
「苗字は嫌か」
「五年間も居るのに苗字は流石に嫌」
ふんふん。そうか。分かったよはいはい。
だけれどさ、俺もいい加減君に「ナスター」ってあだ名で呼んで欲しいんだけれど、言うと変な反応食らうからやめておこうかな。ああ、辛い辛い。
隣でコルチカムは欠伸をして水分補給をしている。
俺等は思考錯誤をしてここまで生き抜いてきたわけだけれど、食料もいつ尽きるか分からない。
おまけに風呂も無いから不潔な状態だ。生きている人間は略兵士達だろう。
マイアミは壊滅、ボストンやニューオリンズ、各国も壊滅危機だ。ジャズが好きなミカエラにとって、ニューオリンズはどれだけ愛しかったのだろうか。
俺は空をじっと眺めた。紅い紅い夕日が丁度見えた。今、俺等三人は上からの指示を待つことにしていた。しかしもう殺されているのではないのだろうか。
「ナスター、考え込み?」
何だ、コルチカムか。少し残念な気もした。
「ああ」
「夜は寒い・・・どこかからか、布団とか持って来ようぜ」
「ある意味自殺行為だよ?」
ミカエラは顔を顰めて冷静に言うが、コルチカムは気に食わないような顔をして「じゃあ三人で押しくらまんじゅうでもして暖まれって言うのかよ」と言った。
それに彼女は黙り込んでライフルを強く抱き、窓の右側の壁に寄りかかる。
廃墟となったビルはコンクリートの塊としかなかった。ひんやりと冷たいコンクリート。
汚れ、破けた軍服を気にするようにミカエラは紅い夕日の光を浴びながら気にしていた。
俺はコルチカムの肩を叩いて「じゃああそこの廃墟の布団屋でも行こうか」と言うと、ミカエラはこっちを振り向かずに「気をつけてよね。まだ他国の兵士が居るかもしれないんだから」と言った。
俺は「ああ」と言ってコルチカムと一緒に廃墟となったビルの一室を出た。
「バーカ・・・ほんと、男って分かんない」
私は一人になった。廃墟となった冷たいコンクリートの壁に寄りかかりながら、ボソリと呟いた。 きっと、聞えなかっただろう。
*
廃墟の町を俺等は2人で用心、警戒しながら進んでいる。こっちからだと徒歩で約10分くらい。
まあまあ大丈夫だな、っていう範囲だ。それ以上だともう命の保障は無い。 というか、戦争もう終わったよな。それで世界は殆どのものを失ってしまった。
結果はどれも同じだ。テクノロジーの進歩の故にこんなことが起きてしまったのだから。 音楽が鼓膜の中でゆれた。何の音楽だろうか。
コルチカムにも聞えていたみたいで、辺りを警戒しながら進む。しかしどうしても音源が見つからないのだ。
「ねぇ・・・時間って戻せると思う?」
後ろから声が聞えた。俺とコルチカムは素早く小型機関銃を不向きに声のした方にへと向ける。
しかし、その者の正体は、小さな女の子であった。左腕に抱いた熊のぬいぐるみ。それが印象的だった。俺は銃を下げ、一歩下がる。
「戦争のない時代へとか?」
フッ、と馬鹿げたな餓鬼だ、と言いたげなコルチカムがそういう。
金髪で、聖母マリアのような瞳をした女の子は此方へと近寄ってくる。俺らは一歩ずつ、女の子が近寄ってくるたびに引き下がる。
もし、この餓鬼に爆弾が埋め込まれていたりなんかしたらどうする? 俺等はすぐにあの世逝きだ。近寄るなんて事をしてみろ、自殺行為だ。
「ええ、そうよ」と13歳に満たない女の子は言った。
「行こうぜ、時間の無駄だあ」
「ああ」
俺は小さな女の子を見て、前を向きなおした。すると女の子はボソリと、「夢みたいでしょ?でもね、出きるんだよ。わたし、知ってるもん」と言った。
その言葉はどこか、俺等を試すような感じだった。
「いい加減にしないと撃ち殺すぞ」
「やめろ。そんな事したらどうする?同じアメリカ人だぞ?」
「チィ・・・・」
不満そうなコルチカムをよそに、俺は背を小さくしてマリアみたいな美しい瞳をした女の子に問いかけることにした。
「教えてくれないかい?」
女の子は嬉しそうに「うん、良いわ」と言った。
だが此処で喋るのはあたまりにも無防備だ。布団を持ってビルにまで連れて行って話を聞く事にした。ついでに食料も補えなくてはならない。
そして、いつの間にか、聞えていた音楽は聞えなくなっていた。
*
部屋の中に入ると、すぐにミカエラは予想通りにライフルを女の子に向けた。 太陽はいつの間にか落ちていて、夜の月に照らされながらライフルを掲げたミカエラはとてつもなく魅力的であった。 あ・・・・そんな事考えてる場合じゃなかったな。事情説明説明。
「誰?その子は?」
「分からない、偶然道端で・・・」
「ロリコン紛いなことするよな、本当。俺はきちんと反対したんだけれどよ」
なんていうと、「お前のやることなんてお見通しさ」ナスタチウムはギラリと睨んできた。 俺はそんな事しないってぇのに。むしろお前だろうが。何キレてるんだよ馬鹿野郎。
「喧嘩はやめてよ、大人なのよ、あんた達」
「はあ・・・」俺とコルチカムは同時に溜息をつく。満更でもないほど最悪だ。
「貴女、名前は?」
「マリア」
道理で、聖母マリアみたいな瞳をしているわけね、名付け親を深々と尊敬する。 私なんてミカエラ。・・・もう、何だか疲れた。御腹もすいたし。
「それで、マリアは何を知っているの」
うわあ。俺が説明する前に聞いてるよ。 やっぱり女の勘は侮れないな・・・。ああ、恐ろしい。
「世界の時間を戻す方法」
彼女は真っ青になって床にバタンと倒れた。マリアは慌ててミカエラの隣に座り込んで「大丈夫かな・・・」と呟いた。 マリアは左腕に抱いた熊のぬいぐるみを持ったまま気絶した彼女の傍に寄り添っていた。
だが、俺には聞えた。彼女、マリアのその次の一言葉、
「戦闘は避けられないけれど・・・」
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