第三章:ALMA望遠鏡への期待

 

(ALMA望遠鏡によって何をするのか、何が分かるのか)

  この天文台が出来る事により、我々のやりたいと思っている事はいろいろありますが、大きく分けて次の三つの事になります。

  1.天の川銀河がどうやって生まれて来たのかの解明

  2.惑星誕生のプロセスの解明、特に地球みたいな惑星が生まれるプロセスはどのようになっているのか

  3.惑星に生まれる生命、或いは生命のようなものに至るプロセスの解明

 

(昨年の冥王星騒ぎ)

  天体の問題が十大ニュースとして取り上げられ、マスコミを騒がすような事は余りありませんが、昨年は冥王星問題が取り上げられました。

私もあのプラハの会議に出席致しました。

有史以前から太陽系は太陽、月、惑星(水・金・火・木・土)という事であり、時々彗星が飛んで来るというものでした。次にコペルニクスが1616年に発表した地動説は地球も惑星である事を発見したものです。それ以後は望遠鏡の発明進化、惑星の軌道の解析方法が深まってそれに伴い、新しい天体の発見(天王星・海王星)がなされました。

  更に写真乾板による撮影技術が取り入れられ、1930年に冥王星が発見されることになります。また最近ではCCD(高感度センサー)による撮影の発明等の技術的発展により、沢山の冥王星に似た天体が発見されて来ています。(これを我々は“広がる太陽系”と呼んでいますが、実は太陽系が広がっているわけではなく、我々の太陽系への理解が深まっているという事です。)中でも冥王星よりも大きな天体(エリス)が見つかった事により、冥王星を惑星として特別扱いするのかが問題となって来ました。すなわち冥王星と同様な物体すべてを惑星とするのか或いは冥王星を惑星の範疇から引き下ろすのかという問題が提起され、この問題に解決を着けたが、昨年のプラハの会議です。

しかし、この結果から冥王星を学校の教科書から外してしまうという方向でなく、太陽系の理解が深まり冥王星のような天体が沢山見つかり出してきて、冥王星はそのような天体の一つであるという形で教育を続けて頂きたい。

  その先に何が在るのかという事になると、彗星が何処から飛んで来るのかという軌道の元を辿ってみると、太陽系の果ての辺りにどうも彗星の巣みたいなものがあるという認識になっています。これはまだ観測する事が出来ていない、我々は想像する段階にしかありませんが、多分このような形になっているのではないかという想像をすることが出来るようになって来ています。これも沢山の彗星を観測し、その軌道を調べる事により初めて明らかになって来たのです。ただ直接観測して捕らえられたものではありませんが、我々の太陽系に関する理解が深まっているわけです。

  

(惑星の定義)

  そこで惑星の定義は何だったのかと言います。

   1.太陽の周りを回っている

   2.自分の重さで丸くなれるほど丸い

   3.似たような天体がその天体の軌道の側を回っていない。

   この3つの定義によって太陽系の中の惑星を定義するという取り決めになりました。

この定義に照らし合わせてみると、冥王星は3.の点においてこの定義を満たしていないという事になりました。

 即ち1)冥王星は海王星の軌道をクロスしている。

2)冥王星と海王星の回転周期が2:3の共鳴関係にある。

これは冥王星の運動は海王星によって支配されているという事を意味していることになり、冥王星は一つの独立した惑星というより、別のカテゴリーに属するものであるという認識に至りました。

 

 

 (現在の太陽系の捉え方)

   太陽・水・金・地・火(地球型惑星―石ころと金属で出来ていて周りを大気が取り巻いている)・小惑星・木・土・天王星・海王星(巨大ガス惑星)、冥王星・彗星。このうち巨大ガス惑星とされていたものが巨大ガス惑星(木星・土星―中心に芯があり、ガスが取り巻いている)及び巨大氷惑星(天王星・海王星―中心が氷であり、ガスが取り巻いている)に分類された。

   冥王星と彗星の区別はどうなのかというと、冥王星はほとんど氷の塊であり、この点でも彗星と同じです。この点も冥王星が惑星の仲間から外れているのです。

   

 (天体の誕生)

   星が生まれる時には、

1)ガスの雲が自分の目方でつぶれ始めます。

2)ガスが濃くなり、落ちてくると回転が速くなり星の近くになると円盤を形成します。(降着円盤)

3)円盤を経由して中に物が落ちて行く。落ちて行く時に角運動量というスピンを逃すために円盤の中からジェットの形でエネルギーを逃がします。

4)円盤の中にあるガスと固体成分(地球とかを造る素)が円盤に沈殿して行き、土星の円盤は非常にフラットですよね、そのリングのところに石ころが沢山出来、衝突合体し、大きなもの程、重力(引っ張る力)が強いので他の小さい塊を吸収してどんどん大きくなって行く。このようにして微惑星が出来上がります。

5)それが成長して行くと回っている軌道の中で一番大きいものが出来上がる。冥王星はそうではなかった。

冥王星は海王星というその軌道の中で一番大きなものにたまたま2:3の共鳴で食われなかった残骸として残っています。しかし大部分のものはその軌道の範囲にある最大の天体に落ちて行く。落ちて行くとどうなるのかと言いますと

(原始惑星の誕生とガスの消失)

   地球のような天体は重さが十分大きくなっていない。例えばヘリウムを入れたガス風船を空中に放すと、中に閉じ込められているヘリウムガスは風船と共に上空に昇って行きます。そのうち風船が破裂するとヘリウムガスは更に宇宙に迄昇って行きます。これは地球がヘリウムガスを繋ぎとめるほどの重力を持っていないからです。しかし重力の大きな惑星である木星や土星はヘリウムや水素を繋ぎとめる事が出来ます。宇宙は水素が殆どですから、木星や土星のような巨大ガス惑星が出来るのです。只惑星が回りにあるガスをかき集めてしまうまでガスが残っているかという時間的な問題があり、芯が成長するタイミングとガスが逃げて行ってしまうタイミングは追いかけっこみたいなもので、最終的にどのような天体が出来上がるのかが決まるわけです。

   そういうことが実際に起きているのかどうかという事をこの電波望遠鏡で観測するのです。

 

(太陽系外に惑星を探す)

    最近、11年前ですが、画期的な発見がありました。すなわち惑星はもはや太陽系内のみにあるのではなく、太陽系外にもあることが発見されました。

惑星をどのようにして発見するかと言いますと、

1)惑星を直接見る方法がありますが、この方法は非常に難しい。

例えば太陽と地球の光の明るさを比べると10桁も違うので、遠くから見ると太陽があまりにもまぶしくて、地球はその影に隠れて全然見えません。だから直接見るという試みは今のところ成功していません。

実際用いられているのはブラック・ホールの探し方と同じような次の方法です。

2)中心星が惑星に揺すぶられるのを測る。中心星の周りを惑星が回っていると、周期的にぐらぐらと少しだけ揺すぶられるように見える。(位置のずれ、速度のずれ等)

3)中心星が惑星に隠されて暗くなるのを見る。たまたま星の前を惑星が横切ったりする場合、星の光度がわずかに変化する。

4)背景の星が惑星の重力レンズで明るくなるのを見る。

1995年にペガサス座の51番星の周りに、質量が木星の約半分で中心星からの距離が0.05天文単位(1天文単位とは太陽と地球間の距離)の位置にあり、中心星の周りを公転している物体(惑星)を発見しました。我々は非常に驚きました。なぜなら我々の理解では木星のような巨大な惑星は太陽から非常に遠い距離にあるので、温度が低くて、水も氷になり、石ころになるので芯も重くなる。従って、周りにガスを纏うという進化を考えていたからです。

其の後も惑星の発見が続いており、2007年1月13日現在では179個の惑星系の中に、合計209個の惑星(21個の惑星系に複数の惑星を確認)が見つかっています。

このような研究の進化が見られたのには1つは他の星の周りのガスの様子を電波で観測する方法、また1つの方法は太陽系自体の過去を調べるというアプローチでやってきました。しかし太陽系の過去を遡るというアプローチではサンプルが1つしかなく、サンプルが1つという事はそれが普遍的なメカニズムで起こったのか、たまたま起きたのかの区別がつかない。この事がこの研究を非常に難しくしてきました。

ところが新しい観測によって沢山の惑星系が見つかって来ましたので、惑星系とはどんなものなのかという事がだんだん明らかになって来ました。

 

(相次ぐ惑星の大発見)

  日本でも岡山にある望遠鏡を使って惑星を発見しておりまして、太陽よりも何倍も大きな星の周りに木星の何倍もある惑星が地球軌道よりも内側をぐるぐる回っているのを見つけております。最近惑星に関する発見がどんどんなされて、重さもだんだん地球に近づいて来ています。

    1)地球の6倍位の質量(小さい)の惑星。2005年6月。先に述べた惑星の見つけ方からも分かるように、小さい惑星は見つかりにくいのです。

    2)3つの太陽を持つ惑星

3)生命体生存可能範囲にある惑星(温度が水の液体状態を可能とする)

    サンプルが沢山集まって来ているので、理論天文学の分野では統一的な惑星系形成シナリオが考えられています。

 

   中心に星があるが、その周りに出来る円盤が重い惑星は芯がすぐに成長するので、その時点ではガスも沢山あるので、ガスを纏うことが出来る。つまり円盤が重いと木星型の惑星が沢山出来る。反対に円盤が軽いと成長に時間が掛かって、ガスがそのうちになくなってしまい、全部がガスに取り巻かれていない地球型の惑星になる。その中間が太陽系になる。

 

しかしながらこの理論は実証する方法がないので、我々が今造ろうとしている望遠鏡を使って観測して行くのです。すなわち出来上がった天体を見るのではなく、形成過程の天体を観測するのです。電波の望遠鏡では冷たいものを観測出来ますから、ガスも見えます。塵の成分も見えます。ガスのスペクトル線を測る事でガスの運動も分かります。回転しているのか、噴出しているのか、ガスの量も分かります。そこで円盤が重いのか軽いのか、ガスがなくなっているのかまだあるのかを逐一調べる事が出来ます。そうすると隣の星の周りで今出来つつある惑星系が太陽系のようなものなのか、全く異なって木星のような惑星ばかりなのかが分かり、太陽系のようなものの出来る確率を知る事が出来ます。

すると我々の住んでいる太陽系のようなものが宇宙の中でどの位普遍的に存在するのかという事に対し答えを与える事が出来るようになると思います。

 

生命がどのように出来るのかを考えるのは非常に重要なものだと思います。

 

     最近アストロバイオロジーという新しい学問の分野が出来てきました。これは総合的な学問です。

 

宇宙と生命)

   アストロバイオロジーという学問は総合物理学で次の分野から成り立っています。

  1.天体物理学(天文学者の領域)

     惑星がどのようにして出来るのか、その中で地球みたいなものはどのような確率で出来るのか、住む事が出来るような星が出来るためにはどうするのか(水が液体として存在している、公転軌道が安定している等)電波の観測によっていろいろな分子の持つ声紋をキャッチする事が出来ます。電波のスペクトルを測る事に

よってそこにどのような分子がどの位あるかを探る事が出来ます。従って対象の天体に何が含まれているかを知る事が出来ます。

宇宙にはアルコールやアセトアルデヒド、アンモニア、酢酸、又グリシンというアミノ酸の一種も見つかっています。このような分子が殆ど真空の処で生成されているのです。

  2.惑星物理学

     大気や海洋の起源

  3.星間化学

     宇宙における分子の合成

  4.生物学

     地球における生命の誕生。原始的な生命体

  5.其の他

 

  大気中に含まれる水のスペクトルは電波を吸収するので、厄介な物でありますが、水はまた電波と親和性がよく、電波も発信しています。

例えば生命体の生存に必要な水の存在は火星では極冠、上空の水の雲の動きをキャッチする事が出来ます。それ以外の星にも水がどのような状態で存在するのかを電波望遠鏡で調べることが出来ます。 

 

(宇宙人はいるか)

  宇宙人のいる星の数は次のような数式で表されます。

   星間通信を出来るほどの文明を持つ星の数=

   銀河系で1年に生まれる恒星の数(ALMAの望遠鏡を使えば判ります)

   x 惑星系を持つ恒星の比率

   x 生命の誕生と進化に適した惑星の数

   x 生命が実際発生する惑星の比率(係数はほぼ1でしょう)

   x 発生した生命が知的生命になる比率、これは生物学の領域です。

   x 知的生命が星間通信できる文明を持つ比率

   x そのような文明の寿命

実際宇宙人探しをしている研究者がいますが、宇宙人はこれまで見つかっておらず、それほど多くないと思われます。

私はこの下線を引いた部分を疑っております。

我々が通信を出来るようになって僅か100年位です。

我々宇宙に多くの惑星がある事は分かっています。また地球によく似た天体の数は非常に限られています。

 

(結びに代えて)

  我々が生きている宇宙は星とか惑星で出来ています。

我々の身体は水素だけでなく、炭素、酸素などを含んでいますがこれらは宇宙が始まった頃にはなかった。ビッグバンの時には水素とヘリウムそして極く僅かのリチュウムしかなかった。そして星が生まれて死ぬ、

星の内部での核融合反応を経て私達の身体を形成する炭素・酸素・窒素或いはカルシウムとか鉄とか銀とかが合成されたのです。

  我々は少なくとも一度は星の中にいたのです。地球もそうですけれどもヘリウムでなく、石ころで出来ています。元々なんかの星の中で合成された物が一旦外に出て、それが固まってここにあるのです。それは宇宙の進化を反映しています。

  我々はこの硬い物の上に乗ってはいますが、その昔柔らかかった頃、宇宙を漂っていた頃、皆様と私は地球に降って来る頃まではお互いにかなり離れた処に居たんだと思いますが、体の中は複雑に分かれていますが、形成のプロセスを電波の望遠鏡で探って行きたい。現在我々は天の川銀河という渦巻状の銀河の端っこの処にいるわけです。又、普通星は集団で生まれるのですが、たまたま太陽という一人ぼっちの星の周りに我々地球が生まれた。これが必然なのか、偶然なのかこれに対し我々は未だ明快な答えは持ってはいませんが、必然である可能性があります。惑星系が出来て来る中にどういう種類の惑星が出来て来るのか、これも回りにどれだけのガスがあったかによってコントローされます。

  我々が知りたいのは天体の進化と宇宙の多様性がどうやって起きてきたか、数多ある分岐を経てここにあるのですが、ここに辿り着く奇蹟がどの位の確立で発生するのかということを是非この望遠鏡を使って解き明かしたい。

  この天体の進化と共に物質自体も進化して来たわけですが、最終的には生命に至る物質の進化自体についても出来るだけ具体的な答えを見出して行きたいと思っています。

  完成までには未だ時間がかかりますが、状況につきましては出来るだけこのような講演会を通じて、また計画のホームページを通じてご紹介して行きたいと思っています。

 

 

 

(完)


協会ホームに戻る