チリ、広がるFTAネットワークとビジネス機会(上)



講師自己紹介

 

私は200210月からサンチャゴ駐在員としてチリに5年半ばかり過ごし、この3月に帰国致しました。帰国すると開発途上国の開発支援の部署に配属され、つい最近までアフリカ開発会議(TICAT4)の仕事をしていました。

本日はチリ広がるFTA(自由貿易協定)ネットワークとビジネス機会というタイトルで話をさせて頂きます。本日の参加者の方はチリに駐在したあるいはチリをご承知の方が多いので、お手元資料のはじめの部分は省略し、早速本論に入ります。

 

現在チリの締結するFTA状況

 

チリは積極的に諸外国とFTAあるいはEPA(経済連携協定)などを締結しており、米州・欧州地域はほとんど完結。オーストラリアとは527日に合意し、マレーシアやベトナムなどと共同研究会というように、残っているのはアジアという状況である。

またFTAと同時並行で二重課税条約を進めようとしているが、こちらの方は米州やヨーロッパとも協定は承認されていない国がある。FTAがモノの流れの自由化を対象とするのに対し、租税条約は投資案件に対する利益送金への課税や技術供与に対すロイヤルティ課税など資金の流れを対象にしたものだが、こちらはなかなか進んでいない。

FTAFTA以外の経済補完協定などの貿易協定が進んでいるので、FTA等の締結国からの輸入は2002年時点では40%程度であったが、2007年には90%にまでに広がり、今やチリに輸入されるものは、基本的にはFTA等の締結国からの輸入である。

 一方チリからの輸出は2002年には締結国向けが20.8%であったが2007年にはこれも91.2%にまで増加している。

 

日本からチリへの輸出

 

 チリと日本の貿易は2002年が底になっており、2002年はチリの世界貿易の成長率も下がっていた時期であるが、ここから輸出入共に順調に拡大を続け、200793日に日本との間でEPA(経済連携協定)が発効し、貿易は若干増えている。これはEPAの効果のみでなく、チリ通貨のペソが高くなり、チリ向けの自動車輸出が増えていること、また資源がらみの鉱山機材の輸入も増えているのも影響している。

月次ベースで日本からの輸入を前年同期比で表したグラフは数値が2006年から揃っているが、月次ベースでみると、EPA発効前は大体1億ドルベースであったが、発効後は2億ドルベースになり、今年20081月から6月はトレンドとして明らかに輸入は増えている

 

チリから日本への輸出

 

 EPA発効前は月間56億ドルで推移していたが、発効後は若干増えている程度。チリから見ての輸入の伸びに比べて輸出の増加は余り顕著でない。

さらに詳細に個別の品目で対日輸出額がどう変わったかを、対世界の輸出額の変化の中で、対日本のシェアがどう変わったかを示すグラフを見てみる。本来は数量ベースで見たいのですが、金額ベースで表されたこの表でも傾向は掴めると思います。

 農水産畜産品は2006年と2007年はあまり変化してない。どちらかと言うと対世界に比べて、対日輸出のシェアは低下している。

 銅は価格が増加していることもあるが、数量、金額、対日シェア共に増加している。

但しこれも一概にEPAの影響とも言えないところがある。

 フェロ・モリブデンは明らかにEPAの影響で増えているのではないかとみられます。EPA発効により3.3%の関税が即時撤廃となったため、163.1%の増加となっています。

 

 対日輸入

 

 消費財の輸入は増えているが、対日輸入シェアは低下しています。この要因としては、今年は霜の害があったので、アルゼンチンからの生鮮食料品の輸入が増えたため、対日シェアは相対的に低下しました。また原産地証明の取得に時間が掛かるようになったという面も影響を与えているという声も聞きましたが、手続き面での問題があったかも知れない。

 中間財・資本財は増加している。これもEPAの効果かと言うと、必ずしもそれだけでもない。中間財はアルゼンチンからのLNGの供給制限が2004年から始まっていて、チリは元々発電燃料やガソリンの需要があり、これまではエネルギー燃料の輸入はメルコスールから輸入していたが、最近はアメリカ、カナダ、韓国からも輸入が増えている。日本からも少し増え始めている。20062007年です。

資本財も鉱山用車両、建設機器などが増えている。

 チリの主要輸入品目を金額ベースで抽出して4半期毎に表したグラフを見ると、  対前年比で伸びたものは燃料、ディーゼルトラック、大型乗用車、ジェット燃料、ダンプカー、セメントクリンカー、自走式作業車。数量ベースではプリンター用トナー、インクカートリッジ、ビデオカメラも増えています。

 

EPA発効から日本とのビジネスはどう変わったか

 

EPA発効は企業が判断する一つの要因にすぎないが、ビジネスの変化を列挙すれば次のものがあげられる。

○メーカーの拡販―新しい製品の導入

○日本メーカーによるチリ市場への参入

チリ現地法人による日本ブランドの取り扱いの模索

○対日食品輸出ビジネスの強化

○日本企業による輸入取引先模索

○現地法人設立

○チリ企業の買収検討

○チリ企業による輸出取引先の模索

チリの国民性としては日本とのEPA発効による関税削減で日本製品がどの程度安くなるのか関心を寄せているが、後日紹介する日本産業技術フェアで詳しく紹介するが、我々としては日本とのEPA発効により、今まで輸入できなかった新製品や新技術が輸入できるようになり、新技術導入により消費者の購入ラインナップが広がり、新技術導入によるチリ産業の競争力強化にも寄与する点を強調している。EPA発効による新製品・新技術紹介の場が日本産業技術フェアという宣伝をしている。

チリの代理店を買収して、代理店化するケースも見られる。

日本産業技術フェアへの出展勧誘を通じて分かったことだが、日智商工会議所会員60社余りに対して、日本ブランドの商品を扱うチリ代理店は非常に多い。またチリの代理店は小規模から大手までいろいろあり、チリの代理店は基本的に同一商品分野の専門代理店となっており、いろんな国の同一商品を取り扱うところもある。200以上の数の代理店があるが、大体しっかりしている。

 

EXPO JAPON 2007

 

昨年9月のEPAの発効を機会に、102日から6日まで日本大使館の支援を受けて、日智商工会議所とJETROの共催で見本市を開催した。今まで輸出していないものをチリに出してみようという目的もあり、中にはジョーバやプラズマ・テレビ、70インチの液晶テレビなども出品した。

日本の会社のマイアミの現地法人にも参加を呼びかけたこともあり、参加企業42社、延べ入場者数は22,503人。と盛況を博したが、この要因として次のようなものがある。

 ○品質のいい商品の輸出(日本からの)

○プレスが取り上げた(EPAの発効の直

後)、12位の新聞社、ル・メルクリ

オは8ページの紙面を割き、テル・セ

ラもほぼ同様。

○主要テレビ局が取り上げた事

一方チリ政府のトップの方、大統領や官

房長官を招待したが、残念ながら来場されず、最後に鉱山大臣が来てくれ、全国農業協会(SNA)も見えた。企業の皆様が素晴らしいブースを出してくれたので、チリ人にはいい印象と満足感を与え、アンケート結果では9割以上が来年もやって欲しいとの声であった。

 

EPA発効による日本とチリのビジネスの変化

 

 箇条書きに列挙すれば

○チリ企業買収による水道事業への参入

 これまで日本企業が進出しなかった

 分野

○銅資源確保に向けた投資の活発化

○エネルギー・鉱業・食品部門への機械機器受注の活発化

○日本メーカーによるチリ市場向け製品供給元の見直しの可能性

○日本メーカーによる製品供給ロジスティック見直し

○日本企業向けサービス・ビジネスの活発化

 

日本からの投資実績

 

チリの期待は日本からの投資とそれに伴う技術移転であるが、現在のところはチリの市場が小さいため。資源食糧関係以外は難しい状況にある。

日本からの投資実績は20073,253万ドルでチリの世界からの投資受け入れ総額のわずか2.4%。 但しこれには第三国経由の投資が反映されていないが。

チリ政府が投資統計として発表しているのは、外資法600号に基づいたものである。外国企業がチリに投資する場合、チリ政府と契約した上で、実行したものは、チリ政府の投資保護を受けられることになるが、この案件が外資法600号によるものとして、部門別にも詳しく統計が出されている。

ところで最近はチリとのFTAEPAに投資条項が含まれ、その中で投資保護がなされているので、もはや外資法600号はいらないのではとの意見もあり、外資法600号の存在意義が問われているのが、私が今年帰国する頃の前の状況であった。

とは言うもののこれまで74年以来この統計が機能してきており、日本からの投資を部門別に金額で表したものが74年からの累計として出されている。これによると総計に占める日本の割合は総計で見てチリが世界から受け入れた投資総額のわずか2.89%に過ぎない。

日本の投資の内訳を見ると高い分野は

林業(木材チップ) 世界全体の7.29

製造業(木材)同様に世界全体の3.08

鉱業       同様に6.75

商業(現地法人の販売)同様に5.10

投資の少ないものは電気・ガス・水道・

サービス、通信(南米全体でも同様の傾

向)であり1%未満である。

 この点先述の水道事業向け投資は特筆

ものである。

日本からの投資が増えない理由は人口が少なく、国内市場が少ないため現地生産にあわないという点が挙げられる

 


チリ、広がるFTAネットワークとビジネス機会(下)
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