チリ、広がるFTAネットワークとビジネス機会(下)



日本から見たチリの位置付け

 

 チリのメリットは

 ○限定的な国内市場と資源が豊富で世界

的な食糧生産適地

 ○資源・食糧の輸出余力

 ○拡大を続ける資源・食糧確保投資

 ○ポテンシャルの高い資源食糧産業向け

資機材・エネルギー供給ビジネス

 チリのデメリットは

 ○限定的な国内市場規模

 ○限定的な日本の対チリ輸出

 ○輸出伸び悩みによる対チリ投資頭打ち

 

 製品によっては市場規模が大きいものもあり、個人所得が高いチリはテスト市場としての魅力もある。すなわち日本製自動車にとっては中南米有数の市場となる。なぜならばチリは完成車の輸入市場だが、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンでは比較的安い車種を現地生産しており、日本からの完成車輸入が少ないためである。

 市場規模は小さいが、チリがビジネスをしやすい国と言われるのは、代金回収率が高いことである。これはチリの独占的な信用調査会社DICONによる信用状況が整備されているためである。DICONの信用情報は個人、法人を問わず誰でも入手することができる。極端な場合DICON調査による未払いを理由に銀行員が解雇されたケースもある。

また輸入統計が常に公開されており、(CIF価格、時期、数量など)判断がしやすい。チリは製造業がないので、輸入をしやすくして、輸入品同士を競争をさせ、自国民の購入コスト削減を目指している。

 欧米・アジアとのFTA締結で成長するのは輸出産業向けの資材、すなわち鉱山用の機械、加工食品製造用の機械などである。

 

エネルギー・プラント需要が急増

 

アルゼンチンからのLNG輸出削減によりエネルギー提供の問題、電力発電の形態の多角化、再生エネルギーの利用、小型の発電等の分野の需要が出てきている。

 

対アジア資源供給基地

 

銅・モリブデンなど資源関連、今までのビジネスは原材料、コモディティはあまり利益率が高くなかったが、市場環境の変化により、川上のビジネスチャンスが増えてきており、この傾向は一過性のものではなく構造的なものではないかという意見もある。

 

投資傾向 活発化する鉱業・エネルギー投資

 

 チリ資本財組合の200712月〰2011年までの投資計画額は534億ドルとなり、1年前(200612月〰2010年まで)のものに比較し54%の増加となっている。

特に、エネルギー部門(電力部門)が伸びている。

○チリ北部メヒジョネスLNG受け入れ

基地建設、

○チリ中部キンテロLNG受け入れ基地

建設、

○アイセン水力発電プロジェクト、アイ

セン送電プロジェクト。

この南部のプロジェクトは環境団体による反対の動きがあり、実現には疑問詞がつく。(パイネ国立公園内に送電線が走っている反対派のポスターが出回っている)

 

南米のプラット・フォームとしての潜在性

 

 南米大陸のプラット・フォームの観点として日本企業にとって関心があるのは、アンデス横断回廊として、現在取り上げられているものは、如何にしてアンデスを越えより東に市場化が図れるかである。

 

○中央アンデス横断道路計画(ロスア

ンデス・メンドーサ)

  ○アグアネグラ・トンネル建設計画(コ

キンボ・サンファン)

  ○ペウエンチェ国際道路舗装計画(タルカから

  ○南部アンデス横断鉄道整備計画(ビ

   クトリア・ラス・ラハス)

日本がチリを南米諸国のプラット・フォームとして使う、欧米企業の事例としては次のようなものがある

○管理部門をチリに集中させる。

○チリを中心とする通信網と、教育水準

 の高い人材の活用しチリに拠点を設置する。

○チリには財閥の資本力がある上、電力、

通信分野では他の南米諸国に比べて早くから民営化が進んだ経緯からチリに地域拠点を設置している。

 

イキケ・フリーゾーン

 

チリが各国とFTAを締結していく中で、イキケ・フリーゾーンは存在意義がなくなってしまうのではないかと私は考えていたが、今年の1月、あるいは2月だったか、に行った見たら、驚いたことにすごく急成長していることが分かった。

2007年の指標をみると対2002年比で次のようになった。(因みに2002年を基準としたのは、この年からチリは世界各国とFTA締結を急激に進めた年であるから)

○イキケ・フリーゾーンへの搬入金額は119.9%増加

○ショッピンモールの販売面積は19.8%増 

○入居企業数 18%増加

○株価は1,185%増

○対日自動車搬入額は、中古車が中心に

458%の増加(日本の自動車リサイクル

法の導入で、中古車の処理方法として、

中古車輸出がなされているが、ボリビアは主要な輸先。

○対日機械輸入額342.7%増

主として鉱山用

イキケ・フリーゾーンはZOFRIが管理しており、ZOFRIが経営している倉庫がある。卸売機能が確立しており、中に輸入業者が沢山入っていて、フリー・ゾーンはボリビアの問屋街の趣になっている。この拡大の理由としては、フリー・ゾーン、ということよりも経済特区的メリット(法人税17%が免除)によるものとみられる。またメルコスール向けやペルー向けを除きFTAの規定でゆけば加工して、付加価値をつけて原産地証明がとれればチリ産として扱われる点がある。

 

安全な食糧供給基地

 

○多種多様な食品、農産物とその加工資材

に期待ができる。

○南半球の地中海性気候

○日本と同じで、四囲が隔絶されており、

安全な食糧を生産するベースがある

○温帯性の作物

今後の課題はより付加価値をつけ、ブランド化を図ることであろう。チリの企業家は非常に熱心で、在任中に3回のセミナーを開いたが、いつも会場には300名もの参加者が集まり、強い関心を示していた。

 

 

 

質疑応答

 

チリの小売業について

(問)チリの小売業はどうなっているか

(答)チリの小売業は構造からすれば2強(センコスッドとファラベラ)。あとは中堅どころのデパート。

 センスコッドは元々スーパーであるがホーム・センターや百貨店まで展開している。

 ファラベラはもともと百貨店。チリ国内でセンコスッド熾烈な競争を繰り広げながら、アルゼンチン、ペルー、コロンビアにも進出。

センコスッドはユダヤ系。今後ウォールマート・メヒコを抜いて中南米1位になろうという野望をもっており急成長している。経営者にはカリスマ性がある。面白い取り組みをしており、新しいカードを導入し、チリ国内外を問わずセンスコッドグループすべての店でもつかえるようにして、客の囲い込みを図る計画。外国の店も含めて一括調達によりバーゲニング・パワーを持とうとしている。あとは中小の業者で、小さな店がどこでも、ほとんど同じようなものを売っている

 

イキケのフリー・ゾーン

 (問)ボリビア向けの商品をイキケのフリー・ゾーンで扱っているといわれたが、    アリカに持って行って加工をしているのでないか

 (答)アリカとタイアップしているという関係はない。 アリカではGMの製造拠点として、イスズのピックアップ・トラックを組み立てていたのが一番の事業であったが、2008年の上半期には組み立てを止めるといっていた。イキケは問屋街であり、アリカまでは距離がある。イキケのブリー・ゾーンの場所が窮屈になると、アルト・オルテンシオという少し北部で、自動車の保管地域を拡大したいと考えているようだ

 

チリのモノ・カルチャーとしての性格

 

 (問) チリは前から銅のモノ・カルチャーであることが、産業の競争力の強化を阻害しているような状況にあると聞いているが、現在でも輸出総額600億ドルの内、銅が400億ドルにまで上っている。FTAの締結により貿易が伸び、倉庫や輸送分野が伸びているのかと見てもあまり数字にあらわれていませんが、プロチリの活動の影響か、産業構造の中でインダストリーの分野が発展していなかったかなという印象である。FTAの効果なのか、プロチリの活動の影響かは

、判りませんが、その点どのようにお考えですか

 

(答)金額ベースでは最近の銅価格の高騰が影響している。それを割り引いて考えると銅以外の分野も伸びてきているように思う。アメリカとのFTA締結後に、繊維は一時的に伸びた。しかしアメリカが中米とFTAを締結したため繊維分野は中米に取って代わられた。木材は伸びてきたが、アメリカとの関係では2007年のサブ・プライムローンのおかげで住宅建設が停滞し影響を被っている。食品加工は順調に伸びてきている。プロチリは指標として非伝統産品の輸出振興をやってきており、輸出額の増加というより輸出企業数の増加も重要な指標になっている。食品加工の多様化の例では、

オリーブ・オイルが輸出商品に成長した。

 

南米のプラット・フォーム

 

(問)プラット・フォームとしての問題ではパナマ運河のコストが高いというが、  アンデス横断道路計画は具体性を持っていますか

(答)ロスアンデス・メンドーサ間で元々あった鉄道をリハビリするという計画はあるが、入札がたびたび延期されている。一方タルカ・ペウエンチェの国際道路計画は、チリ政府が独自で進めているが、全然進んでいない。ロスアンデス・メンドーサ横断道路にはチリも興味があるが、チリは一般的にアンデス道路が整備されるとアルゼンチンからより安い農産物がアジアに供給できるようになるというデメリットも考慮しており、必ずしもインフラ整備に賛成というわけではない。

コキンボ・サンファンのアグアネグラ・トンネル計画は、チリ国内での移動距離が短いので、チリ側の地域開発という側面ではあまり恩恵を受けない。このようにアンデス横断道路については、チリにとってポジティヴな面とネガティヴな面の二面性がある。

チリとして力をいれているのは、最も産業に遅れてい第7州の振興という目的もありタルカ・ぺウエンチェスの国際道路計画である。

 

以上

 

 


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