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日本のたばこ政策を決定的にした総論としての条文
第一条
この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原材料としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
「たばこ税税収は国家財政にとって重要、葉たばこ農家の保護も重要。喫煙の有害性および社会的損失に目をつぶってでもたばこ産業の発展と税収確保のため、国民にたくさんたばこを吸ってもらうことを目的に制定した」ということである。外圧としてのたばこ規制枠組み条約を受け入れるまでは実効的な広告規制はほとんど行われず、公共の場の禁煙に至っては、健康増進法第二十五条による努力義務規定のみで罰則付きの規制は消防法など他の条文で法制化されている部分を除き全く強制力を持った法が存在しない。
たばこ事業法は財務省管轄であり、厚生労働省や環境省など健康福祉を前提にする官庁の管轄ではない。あくまでたばこ税税収が主で喫煙と健康の問題は副・従の関係なのである。少なくとも先進国で財務省がたばこ諸問題を管轄する国など存在しない。他省庁が規制を求めても、調査のための予算請求をしてもそれを財務省は潰してきた。他省庁が権限を握っていればもっと状況は改善できていた。
また、民営化されたとはいえ2008年時点でJTの株式の50.02%を財務省が保有している特殊会社であって、歴代社長は生え抜きである木村宏および本田勝彦を除き財務省出身者が占めている。JTを天下り先として温存したいとの思惑は明らかである。この弊害を解消するには、第一条の条文改正とJTの完全民営化が必須のものになる。
法律制定後アメリカからの外圧があった?
当時、日本のアメリカに対する出超による貿易摩擦と、アメリカ国内の喫煙規制による消費減少分のカバーのためアメリカのたばこ会社が政治献金によりたばこ輸出促進を政府に求めていたのが重なり、政治的圧力によって日本に要求を飲ませた。法律制定時点で外国たばこに90%の関税が課せられていたのを後に撤廃、日本国内での外国たばこ会社の営業活動自由化に至った。この時点で一定の広告規制等を行っていれば喫煙率・たばこ販売数量はもっと抑えこめていたはずである。それができなかったのも、「たばこ産業の健全な発展」を前提とする条文が原因である。
たばこ事業法と葉たばこ農家の関係
第三条
日本たばこ産業株式会社(以下「会社」という。)は、毎年、その製造する製造たばこの原料の用に供しようとする国内産の葉たばこ(以下「原料用国内産葉たばこ」という。)の買い入れを行おうとする場合においては、すべて、あらかじめ、会社に売り渡す目的をもってたばこを耕作しようとする者(以下「耕作者」という。)と原料用国内産葉たばこの買い入れに関する契約を締結するものとする。
(1〜3略)
4 会社は、第1項に規定する契約に基づいて生産された葉たばこについては、製造たばこの原料の用に適さないものを除き、すべて買い入れるものとする。
1985年に専売公社は民営化となったが、国産葉たばこは原則全量を買うことがたばこ事業法で定められている。国産葉たばこの買い入れコストは高い。(外国産と比較して約3倍)つまり、民営化と同時にJTが原料葉たばこをすべて海外から調達するようになれば葉たばこ農家は廃業するか転作するしか道が無くなる。だから第一条にある国内産の葉たばこの〜〜という記述はそれを表している。
なお、たばこ規制枠組み条約では、第十七条でたばこ産業関係者への経済的に可能な転業支援(転作も)を促進する旨規定されていて、現に減反政策と耕作者の高齢化によって耕作人員・面積・生産量すべて民営化当時より大幅に減少している。
国や政治家は約1万3000人(2007年度、JTのサイトによる)の耕作者の利権維持に走るばかりでなく、喫煙及び受動喫煙の害から国民を守ることを前提にする法改正をすべきであるし、耕作による収益を上回る転作・転業支援金を支給することによって彼らの生活に悪影響が出ないようにするための資金を国は出すべきである。
たばこ事業法とたばこパッケージへの注意表示
第三十九条
会社又は特定販売業者は、製造たばこで財務省令で定めるものを販売の用に供するために製造し、又は輸入した場合には、当該製造たばこを販売する時までに、当該製造たばこに、消費者に対し製造たばこの消費と健康との関係に関して注意を促すための財務省令で定める文言を、財務省令で定めるところにより、表示しなければならない。(後略)
2 卸売販売業者又は小売販売業者は、前項本文の規定により製造たばこに表示
されている文言を消去し、又は変更して、製造たばこを販売してはならない。
1972年に「健康のため吸いすぎに注意しましょう」、民営化後1990年に「あなたの健康を損なう恐れがありますので吸いすぎに注意しましょう」とパッケージ横面に注意にさえなっていない表示を行ってきた。これは偽装であった。たばこ規制枠組み条約批准後は2005年より以下のように表示が変わる。(たばこ事業法施行規則三十六条に基づく表示)
「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページhttp://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.html
をご参照ください。)」
「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。疫学的な推計によると、喫煙者は心筋梗塞により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページ(略)をご参照ください。)」
「喫煙は、あなたにとって脳卒中の危険性を高めます。疫学的な推計によると、喫煙者は脳卒中により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページ(略)をご参照ください。)」
「喫煙は、あなたにとって肺気腫を悪化させる危険性を高めます。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページ(略)をご参照ください。)」
「妊娠中の喫煙は、胎児の発育障害や早産の原因の一つとなります。疫学的な推計によると、たばこを吸う妊婦は、吸わない妊婦に比べ、低出生体重の危険性が約2倍、早産の危険性が約3倍高くなります。(詳細については、厚生労働省のホーム・ページ(略)をご参照ください。)」
「たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。喫煙の際には、周りの人の迷惑にならないように注意しましょう。」
「人により程度は異なりますが、ニコチンにより喫煙への依存が生じます。」
「未成年者の喫煙は、健康に対する悪影響やたばこへの依存をより強めます。周りの人から勧められても決して吸ってはいけません。」
かつてより具体的にはなっているが、あなたにとって〜〜の原因の一つ、といった婉曲的表現は本当は表示さえしたくないという消極性が伝わってくる。ホームページのアドレスを示している。ではアクセスしてみよう。ここ
……ものすごく何がしたいのかわからないレイアウト。ページ下にあるたばこと健康の方が具体的でわかりやすい。
条約では第十一条でパッケージ表面の30%以上を使用して表示を行う、画像・写真を含めることができる、となっており50%超でかつグロテスクな写真で表示を行っている国が出てくるなか日本のやり方は甘い方である。また、JTや国は、マイルドセブンが商標にあたることから、健康に対する害がライト・マイルドと誤認させるような表示を禁止することを条約草案でつぶした経緯がある。上にも書いたとおり、ライト・マイルド、これらの表記は偽装である。
たばこ事業法とたばこ広告
第四十条
製造たばこに係る広告を行う者は、未成年者の喫煙防止及び製造たばこの消費と健康との関係に配慮するとともに、その広告が過度にわたることがないように努めなければならない。
過度にわたることがないよう…過度であるかないかの尺度も定めずに(業界の自主規制のみ)このような条文で実質的な規制を何も行ってこなかったのである。1990年代に、銘柄広告は成人喫煙者に銘柄を変えてもらうためにするのではなく、未成年者に喫煙願望を持たせるため・ニコチン依存によって一生涯の顧客になってもらうためにするということがアメリカのたばこ会社の内部資料から明らかになっている。
専売公社時代は、外国たばことの競合がなかったことから広告も大々的に行われてはいなかったが、関税が撤廃され外国たばこのシェアが大きくなってくると広告合戦となり街中に銘柄広告があふれてしまう結果を招いた。また、1970年代後半から80年代中期までたばこ販売本数が約3000億本であったのに対し、その後96年にピークを迎えるまで販売本数が増加した背景には、こうした未成年者に対する広告の効果が現れていると考えられる。
その後たばこ規制枠組み条約批准によって大きく規制がかけられたが、依然として全面禁止にいたらず「例外」として存在する広告が実質街中にあふれたままである。それは、日本たばこ協会自主基準(註:PDFファイル)にあるとおり、
1.新聞はたばこ会社1社当たり年12回まで、およびスポーツ新聞などは制限なし
2.雑誌は例外多し、かつてより掲載量は減っている。
3.公共の場での広告は行わないがたばこ販売場所(自販機含む)・喫煙所での広告は残存 である。
3が特に問題である。特に自動販売機はそれ自体が広告塔の役目を果たしている上2006年時点で全国に約56万台も設置されている。販売店での広告、これはコンビニの店内を見ていただければわかる。レジの前は2個パックライター付のたばこや販促POPであふれている。喫煙所での広告、たとえば鉄道車内での広告はなくなったが駅ホームの喫煙所にはしっかり銘柄広告が残っている。町のたばこ屋に直接つけられている広告も残存している。……どこが公共の場での広告全面禁止なのか。それとも、店は「私的な場所」という屁理屈で適用除外をしているのか?
莫大な資金力を持つたばこ産業は、あるところで広告規制がかかるとその資金を別のメディアや販売促進に切り替える手法で対抗してきたので、広告規制を実効的なものにするためには全面禁止にしなければ意味を成さないのである。また、JTが盛んに行っているマナーの名を借りた間接広告も同様である。
たばこ事業法とたばこ自動販売機
たばこ事業法の通達改正により、現在日本たばこ協会などが普及を進めている「taspo」等成人認証付以外の自動販売機は2008年7月以降認めない見込みである。中高生の常習喫煙者の7割以上が自動販売機で漫然と購入できているという事実に対してずっと形式上の未成年者喫煙防止キャンペーンなどでごまかしてきたが、たばこ規制枠組み条約にある「未成年者が購入できない自動販売機のシステム化」を満たさなければならなくなった以上財務省としても黙っていられなくなったということだが、900億円を超えるとされる導入コスト、年間100億円に達する見込みのランニングコストを負ってでも人の手を介さずにたばこを売ることができる自販機を廃止しないという産業側の思惑が今後どのように具現化するのかは未知数である。
たばこ事業法と受動喫煙防止のための公共の場の禁煙について
これらの問題について制限・禁止する条文なし。あくまで業界自主規制・健康増進法による努力義務規定・国がガイドラインを示すのみである。
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