ヒグラシの夏・青梅

ヒグラシ鳴く青梅の夏

ここ青梅の高台に越してきて今年で十年目になりました。ここに来る前は青梅市
の多摩川べりに15年住んでいましたので、青梅に住み着いて25年になります。

青梅市でも旧青梅市内は江戸時代から宿場町(青梅宿)であり、その時代の旅人
は新宿を早朝に発ってから十里を歩いて青梅宿にやっと着き、疲れを取ってまた
甲斐の国塩山を目指したのでした。

青梅の旧市街地は多摩川上流部の三角州にあり、真ん中を多摩川の清流が流れ、
両岸は山々に囲まれているため、人が住む場所は限られています。
従って殆ど空き地や休閑地がなく、昔から先祖代々住んでいる人が多く、この土
地にしかない苗字を持つ人も多く、また青梅弁といわれる方言もあります。

でも、れっきとした東京都です。
近年では駅前商店街は寂れる一方で、店舗も閉店するところも多いのですが、一
方では「昭和レトロ」の町として観光地として宣伝しており、休日には多くの観
光客が訪れるようにもなりました。

現在私達が住んでいるところは、多摩川左岸の中腹にあるJR青梅駅より、更にイ
ロハ坂を上った高台にあります。恐らく青梅市内では標高が一番高いと思われま
す。
青梅駅のひとつ手前は「東青梅駅」ですが、JR青梅線は東青梅駅からは単線にな
り、青梅を過ぎて、青梅線の終点「奥多摩駅」までひたすら上り線路であります。

ここはなんといっても夏の涼しいところが取り柄です。高原の避暑地のような場
所でもありますから、日中は結構気温は高くても回りを森で囲まれていますから、
湿度が低く、昔過ごした田舎の夏を彷彿させるところです。

春先から夏ごろまで朝は沢山のウグイスが鳴きます。
庭の「はなみずき」の樹で早朝から「ホーホケッキョ」と大きな声で鳴かれて目
が覚めてしまいます。

夏の夕暮れともなるとヒグラシが合唱をはじめます。

幼年時代は福島の田舎で育ちましたが、蝉はあぶら蝉かみんみん蝉、にいにい蝉
が殆どで、ヒグラシの鳴くのはめったに聞けませんでしたが、ここに来て驚いた
のは、ここの蝉はヒグラシしかいないことでした。
ですから、日中は蝉は鳴かないのです。

今年は庭の花壇の花木にヒグラシの抜け殻が沢山ぶら下がっていました。
街育ちの家内は初めてみるもので珍しがっていましたが、蝉の幼虫は地中で何年
もすごしますから、ここに来てから住み着いた連中なのでしょう。

ヒグラシは日本に住む蝉の仲間では最高にいい声です。
ヒグラシは朝夕に鳴きます。雄と雌の交尾の合図です。
聞いていると、呼んでいるのに対してきちんと返答が返ってきているように聞こ
えます。

今年は6月から鳴き始めていて、ちょっと早い感じがします。
梅雨がいったん明けても涼しい日が続いたせいで、みんな土からでてきちゃんたんでしょうか?

ヒグラシはちゃんと気温の変化を捉えていて、日が沈む前にヒグラシが鳴き始め
る晩はとっても涼しいのです。

「今日はヒグラシが鳴かないねえ・・・」というような晩は青梅でも珍しい寝苦
しい夜がやってくるのです。

日中でも夕立が来る前に急激に気温が下がったりすると、ヒグラシが鳴き出す事
もありました。

遠くで「カナカナカナ・・・」と鳴くヒグラシの声は物悲しく、寂しげです。
目の前の樹で鳴くときは案外大きな声で「カカカカカ・・・・」と聞こえます。

日が沈みきると寝てしまうのでしょうか、ぱたりとなきやみますが、たまに深夜
に遠くでカナカナナカ・・・・と鳴いているのを聞くこともあります。

人の感性は視覚聴覚から入り込む要素はありますから、涼しげなヒグラシの声を
庭先で聞いていると、それだけで涼を誘います。 
多分ヒグラシが鳴いている夕方は間違いなく湿度も低くて涼しいのです。

7月26日(日)は都内は35度にもなり、さすがに青梅も30度を越えて暑い一日で
した。
6時を過ぎたころでしょうか、まだ日没前ですが、ヒグラシがあっちでもこっち
でも一斉に鳴き出しました。
とっても、涼しい心地よい風が我が家の狭い庭先にも吹いてきました。
思わず、冷えたグラスに一杯日本酒を注いでデッキに出ました。

レノ伍長も日中の「ハッハハッハ」の長いべろも引っ込んで涼しげな顔で、南の
森の方面から聞こえてくるヒグラシの声に聞き入っていました。

今夜はきもち良く眠れそうです。


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