妖しい少女ナオミを生んだ旧家解体
― 谷崎潤一郎 「痴人の愛」 ―

 耽美派・谷崎潤一郎の小説「痴人の愛」は、つぼみの年頃の少女を身うけし、自分好みな女に仕立てようと思い立った男が、あべこべに、「性の奴隷」のように飼い馴らされてゆくお話。

 映画「マイ・フェア・レディ」のイライザや、文豪エミール・ゾラの生んだナナ(「居酒屋」「ナナ」)を想起させる奔放で妖しい少女ナオミの姿は、“ナオミズム”という流行語まで作りだす社会現象を巻き起こしたほど。 (「痴人の愛」は過去に3度ほど映画化)

 密室で繰りひろげられるマゾヒスティックな転調劇「痴人の愛」には、女の白い体にエロスと色彩を呼び起こすデビュー作「刺青」や、偏愛的性をつづった晩年の「鍵」「瘋癲老人日記」などにも通じる女性への徹底した拝跪愛があり、それによって、登場する女性たちが普通なら「いやよそんなの!」といって拒んで終わりそうなところを、根気づよく口説いて作品を成功させているような印象を受けます。

 「痴人の愛」は谷崎潤一郎が関東から関西に移り住んだ最初の住まいをモデルに書かれた作品とされておりますが、その神戸市東灘区の旧邸が今年の夏、所有者の意向で取り壊されることになったということです。  news=「痴人の愛」生んだ家解体へ 谷崎潤一郎旧邸=リンク消滅

 これを受けてNPO法人「谷崎文学友の会」では、貴重な財産を多く人たちに見てもらおうと、4月1日〜2日の両日、解説者を招いてここ(旧邸)を一般公開するようです。

 ちなみに谷崎作品では、鶴子・ 幸子・ 雪子・ 妙子 の4姉妹をめぐる「細雪」も、みずからの住まいのあった芦屋(倚松庵)を舞台にしており、作品にでてくる洪水の場面は、実際に豪雨に見舞われたときの体験をベースにしていて、描写も詳細です。

芦屋市谷崎潤一郎記念館
谷崎潤一郎旧邸・鎖瀾閣=NPO法人:谷崎文学友の会

2003.03.17 







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