アンリ・ルソー展/ルソーの見た夢 ルソーに見る夢

 シュールレアリズムという言葉を創った詩人ギヨーム・アポリネールと画家マリー・ローランサンのハネムーン(蜜月時代)を、熱帯の森の中に描いたアンリ・ルソー。作品を見た瞬間、鑑賞者を超現実の世界へトリップさせるその絵は、国境を越え、多くの人たちを静かに魅了してきました。
 藤田嗣治や松本竣介ら日本人アーティストにも影響を与えたアンリ・ルソーの世界展が、この秋開催されます。
●ルソーの見た夢、ルソーに見る夢─アンリ・ルソーと素朴派、ルソーに魅せられた日本人美術家たち
 会 期 10月7日〜12月10日
 会 場 世田谷美術館
 主 催 東京新聞社 NHKプロモーション ほか

【巡回展案内】
愛知県美術館 12月20日〜2007年2月12日
島根県立美術館  2007年3月9日〜5月6日

2006.09.19



新日曜美術館/アンリ・ルソー 日本人が愛した日曜画家

 ゲスト 美術家:横尾忠則  世田谷美術館:遠藤 望    2006年10月22日

 税を徴収するサラリーマン生活のなかで絵筆を取るようになったアンリ・ルソー(1844〜1910)は、49歳で仕事を辞め、画家としての生活に移行。日曜画家から本職の画家へ。しかし絵はいっこうに売れず、バイオリンを教えるアルバイトで何とか食い繋ぐ生活。

 いっぽう、美術学校などで基礎を学んだわけでもないルソーは、自己流で厳密に対象をキャンバスに写し取ろうとモノサシを持ちだし、モデルの寸法を測っては描いてゆくという手法を取りつづける。ところが、そうして出来上がった絵はおよそバランスを欠いた姿・構図で、怒ったモデルがキャンバスを破ったり、ときには銃弾を撃ち込まれたこともあるというありさま。

 それでもルソーは “わが道をゆく” で、相変らず、平面的でバランスを欠いた絵をせっせと描き続ける。出品するのは、お金を出しさえすれば誰でもが参加できるアンデパンダン展。稚拙だとする専門家の嘲笑と酷評は依然として変わらない。
「ルソー氏は目を閉じて、足で描く」 とか、
「まるで10歳の子どものなぐり描き」 といった調子。

 ルソーに大きな転機をもたらしたのは1889年、 45歳のときに開催されたパリ万博。とりわけ東洋の姿(風景)に魅了されたルソーは、それを作品に生かすべく植物園に通いつめ、南洋の密林をイメージさせる植物たちをたんねんにスケッチする日々を過ごします。この時期の地道な努力が、その後の傑作を生みだす原動力となりました。

 やがて時代の流れが、鉱脈のようなルソーの才能を見いだすことに。絶賛したのは、詩人のギヨーム・アポリネールと20歳代半ばの天才ピカソ。それまで被写体のほうが主役だった印象派の世界はそろそろ終焉期に入り、替わって台頭してきたのが、アートを幾何学的に捉えるキュービスムや、人間の内面・無意識を描きだそうとするシュールレアリズムといった描き手の宇宙観を主役とする画期的な新潮流。慧眼なアポリネールと、パイオニア・ピカソの広角な眼は、ルソーの革新性を的確に捉えていました。1908年27歳のピカソは、ルソーをたたえる夜会を開いたほど。このときルソー62歳。

 奥ゆきのないのっぺりした平面的な構図にもかかわらず、その世界には特異な4次元の空気がただよい、動きを秘めた登場人物たちが静かに配置されています。そしてしっとりと調和する絶妙な色のバランス。 衝撃を受けたのは、ヨーロッパの画家たちばかりではなく、浮世絵など伝統的に平面世界を育んできた日本の画家たちもそうでした。藤田嗣治、岡鹿之助、松本竣介、小出楢重、土田麦僊、小野竹喬、それに写真家の植田正治など、じつに幅広い。



 ≡ルソーとの出会い≡
 ルソーの絵を初めて見たのは、小学5年生〜6年生ころ定期購読していた美術雑誌「みずゑ」(美術出版社)の誌面。「眠れるジプシー女」か「蛇使いの女」か、あるいはそれらに類似した亜熱帯風のジャングルの絵だったと思います。それ以来(個人的には)ルソーの絵が特別ヘタだと思ったことがないので、喧伝(けんでん)される画力のなさというのがイマイチぴんとこないのですが、ルソーの場合はそうしたスキルの面より(但.しっとりした暗緑色や効果的な朱色の使い方に代表される色彩感覚のよさは格別)、描かれた世界のインパクトにこそ注意を傾けるべきだろうとおもいます。

 今でいう「へたうま」といったところ?? …… でもどこか童画じみたところは、パウル・クレーや日本の谷内六郎、あるいは版画の畦地梅太郎などの世界にも通低するファンタジックな抽象性があって、何度みても飽きない奥深さとドラマ性、それに楽しさがありますね。

2006.10.22



   Le rêve d' Henri Rousseau dit le douanier (仏)







 アート file

マン・レイ パウル・クレー エゴン・シーレ
ルネ・マグリット グスタフ・クリムト ジョルジュ・スーラ
ジョルジョ・デ・キリコ アンリ・ルソー展 ゴッホの災難.ゴッホ展
写真家ブラッサイの世界 生誕100年記念ダリ回顧展 葛飾北斎と安藤広重
東郷青児と竹久夢二 佐藤渓の「心象録・詩」 日本画家 松井冬子
日本画家 町田久美 束芋の「ヨロヨロン」束芋 イラストレーター 常田朝子
イラストレーター 田辺ヒロシ 古賀春江 シュールな童心 版画家 池田満寿夫の世界展
田中一村グラフィックな世界 写真家 植田正治 海外巡回展 青木繁 わだつみのいろこの宮
カオルコ個展 in NewYork 資生堂/香りと恋心〜バルビエ展 レオナール・フジタ展

 文 学 file

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