放浪の画家 佐藤 溪の心象録

1918〜1960。 (本名:忠義)
画家。詩人。川端龍子に師事。召集され戦中は外地で軍隊生活。
終戦後画壇に戻るが馴染めず、自転車とリヤカーで作った箱車で全国を放浪。


                  
【心象録】

★ 耳で視て眼で聴き口で考えているような表情をしていること。

★ 絶えず呼吸の快感を意識していること。

★ 胡魔化されてはいけない。堕落が化粧すると幸福に見える。

★ 須らく高貴なる精神の認識にあって常に身を隠しつ ゝ天を撃つこと。

★ 身は常に一種の敗者たるべきこと。しかも狼のごとく身を隠しつ ゝ天をうか ゞうこと。

★ 人はときとして自分の目的や羨望しているものがどんなにガラクタなものであるか一
   度振り返ってみるがい ゝ。

★ 人間はおたがいに生きようとする病人である。



 > 由布院美術館(佐藤 溪の美術館)

2001.12.16




放浪の画家 佐藤 溪の詩

(「佐藤 溪 詩画集/どこにいるのか ともだち」 から )


【ともだち経】* どこにいるのか ともだち ……… 中略 ……… しゅっせしてぼくをばかにしている ともだち それでも ともだちは ぼくのともだち うれしい ともだち ……… 中略 ……… まだいきているのか ともだち さみしいよ ともだち 【津軽海峡にて】 ルンペンをしながら北海道を廻ってきたのだ 絵を描きながら詩をおもひながら だがそんなことはどうでもよさそうだ 重要なことは どこでもニコニコしながら 手を振ってさよならしたことなのだ 【他人を軽蔑せず】 他人を軽蔑せず つまらないハカリゴトをめぐらさず 成功しても自分を英雄だと思わず チャンスを失しても悲観せず 時機にめぐりあっても得意になってのぼせず 高いところによじのぼってもこわがらず 火の穴に落ち込んでもみんな夢の中の出来事だと云い 目をさましても心配することがなく ものを食べるのも自由であり 呼吸はまろやかなほほえみでくりかえし 無理して生きようと死を相手にもがいてみたってしょうがないし 天のままに来 天のままに行く だから自分の故郷を忘れることがなく 自分の落着き先を追及する必要もない 受けても有難度う 落しても有難度う いつも性器が心の本体と離れることがないので 異性を求めず嫌いもせず やむなくば「ママさんダイジョウビ」と言い あらゆることを自然のなりゆきにまかせ 容貌は清らかでひたいは広く 冷え冷えと涼しいことは秋のようでもあり ほのぼのとあたたかいことは春のようでもあり 喜ぶのも怒るのも春夏秋冬に合致し どんなものごとに対してもうまくかなっており 誰もその奥底を知らず その様子は高くそびえているが崩壊するに至らず やることは遠慮深いがさほどへり下りもせず 直立独行して角があるが コチコチでなく のびのびとしているようであるがファファでなく 茫漠としていかにも興ありげに見えるかと思えば 湧き出る水がたまったようになごやかで親しみやすく 木の茂った島がこんもりとしているように気格がどっしりしている はなはだ寛大のようであり はなはだ高慢チキのようでもある 大変おしゃべりのようでもあり 又どんな話でも話そうとは思わないようすでもある このような人は雲気に乗じ飛龍を御して四海の外に遊ぶ 【忠 告】 私が忠告するのは いくら責めてもまだ白状しない罪人みたいに いつまでも柳の下の泥鰌を狙っていて つまりものごとは始めっからちゃんと決まっているのに しつっこく あきらめ悪くて 噫々じれってえなあ もういやだと思うことならキッパリとよせばいいのに 変にウロチョロと気を廻して 果ては未成年のくせに童心を失い 初手から妙にねじれて自尊心のみ強く 清貧に甘んずるなどと断言はしては居るが 口ばっかりで やらなければいいのに コツコツまだやっている 第一可笑しいよ 下劣なくせに尊大ぶったり 弱いくせに強がったり 世の中からは村八分にされてるのも気が付かないで 依頼心は更に強く どうにもならないところの人間的温度を 制圧したり 単なる 火事場泥棒か 胡間之灰の部類のくせに もって難解なる芸術と称する「偽れる盛装」 なんかに夢中になり 哲学なんていう故事にとらわれて 骨皮筋右エ門的剣豪となり 果てはチンバで変梃子な友人共と交際し キャキャ言ってるうちに歳をとってしまい シマッタと思ったときには もう手遅れで 嘘みたいな生活の根本から 世にも不思議なその真髄とやらを 語ってもらいたくないばっかりに           一九五七年四月六日 宇都宮にて 散文詩草稿                          佐 藤 忠 石 注)忠石は、佐藤 溪のもう一つのペンネーム(雅号)


由布院美術館 (マピオン「ともだち あし湯」紹介)
由布院美術館 (大分県由布院にある佐藤 溪の美術館)
*「ともだち経」は、『佐藤 溪 詩画集』をはじめて見た図書館内の別の事務局資料庫からわざわざ出してもらって再度閲覧したさい、覚え書きとして、部分的に手書きで写したものなので「…中略…」としていますが、むろんそこにも詩が入ります。この詩は佐藤 溪の性格をよく反映していて、胸につまるものがあります。


2002.01.10







 アート file

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