ジョルジュ・スーラ〜デジタルの草分け


  ぼくの日記をこうしてウェブ上にアップすることができるのも、みなさんにアクセスして読んでいただけるのも、UP・DOWNのソースがデジタル化(数値化)されることによってコンピュータに(共有)言語として認識され、インターネットという世界共有の電子のテーブルに転載できるから。

 コンピュータといえば、ハンガリー生まれのアメリカ人数学者ジョン・ノイマン(1903〜1957)がその生みの親として、広く知られています。しかし物量の転載速度を革命的に促進させた「デジタル」(単純な数値記号への置換)という発想を最初に「実現」してみせたのは、フランス人画家のジョルジュ・スーラ(1859〜1891)だと言われています。このことは、ほとんど知られていません。
ジュルジュ・スーラ「アニエールの水浴」(allposters)
 スーラは分類上では印象派の画家に入りますが、写実主義から画想を発展させた他の画家たち(モネやルノワールなど)と違い、主観性ではなく客観性を追究し、科学的な側面から「光」を捉えました。これはスーラが、広く認識されている印象派の画家たちと決定的に異なっている点で、自然を「円錐形・円柱形・球形」という幾何学の3つの要素で捉えた最初の画家ポール・セザンヌに類似しています。
 スーラはキャンバス上に「絵の具で光を作る」ことを思いつきました。その視点から想起したのが光の科学的性質。あらゆる研究所を当たった彼はやがて光と色の関係に注目し、何度も実験を繰り返したのち、「波長」という光のトリックを究明するに至ります。

 見える光も、見えない光も、じつは波長によっていくつもの色に分けられています。通常ぼくたちの見る光は、波長の異なった光が混じり合うことで生まれます。例えば緑と赤の光が混じり合って黄色に、青と赤の光が混じり合って紫に、青と緑の光が混じり合って水色に見える、という具合です。

 この視覚混合と呼ばれる科学理論に、スーラの表現したいと考えた絵のヒントはすべて秘められていたのでした。絵の具の場合、色を混ぜれば混ぜるほど明るさを失って暗くなりますが、光の場合は、混ざれば混ざるほど光度を増していきます。この光の性質を利用してスーラが考え出したのが、一点一点を筆で落としていく「点描画法」という手法。絵の具をパレットの中ではいっさい混ぜないで、原色を細かい点で並べます。

 例えば、一見(混ぜて作られた)紫色を塗っているように見えても、近くに寄ってみると、それは赤・青・黄色・白などの無数の「点の並び」なのです。つまりスーラは、それぞれの色が発する光が「眼に届いたとき」どのような色に混合されるのか、それを計算して描いていたわけです。スーラのキャンバス上に落とされるこの「独立した一点一点」は、コンピュータにおける「物量のデジタル化」そのものです。

 スーラは他の印象派の画家たちから非難を浴びながら、黙々と科学を追求することによって、それまで誰一人なし得なかった「キャンバス上に光を解放する」ことに初めて成功しました。

 スーラの光を輝かせる工夫は、点描画法のほかにもう一つ「補色」があります。補色というのは、隣り合わせに置くとそれぞれの色を引き立てる色のことで、この補色関係にある色を使うと絵の鮮やかさは増大します。二つの色を並べてみても、補色と同系色では色の鮮やかさが違います。スーラはこの仕組みをテキストではなく、リュクサンブール宮の図書館に足しげく通い、ドラクロワの絵から「体験的洞察」によって見い出しました。これも特筆すべき点です。

 しかしながら、恐ろしく根気の要るこの「点描画法」は作業の過酷さゆえ、ジョルジュ・スーラの寿命を縮めたといわれています。彼は10年あまりの創作活動ののち、31歳の若さでこの世を去りました。

「ジョルジュ・スーラ」〜美の巨人たち
 視覚混合と補色の特集はこの番組で詳しく放映されました。

2001.12.27


[ スーラ ]

● 世界初光学活かす点描画そしり受けても印象極め
● 点と点コンピュータに先駆けむデジタル絵画視覚を解きて








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