
| 追悼 塚本邦雄〜水銀伝説の終焉〜 |
全篇短歌で彩られている寺山修司の「黄金時代」という1冊は、オープニングの「現代百人一首」が全体の3分の1を占め、残りの3分の2のほとんどが「寺山修司と塚本邦雄の短歌対談」で占められていたと記憶しています。解説を書いているのは、寺山修司を世に送り出した中井英夫氏。 歌壇の時系列でいえば、先んじた塚本邦雄は寺山修司の兄貴分に当たりますが、自分よりすこし遅れてゴウゴウたる賛否の嵐の中にすっくと登場したこの若い10代歌人の最高の理解者のひとりであり、その後、短歌の世界を飛び出して、演劇・映画など幅ひろいフィールドで大車輪の活動を展開するようになってからも、ずっと注目しつづける肉親のような存在でもありつづけました。それだけに、寺山修司の40歳代での他界には、少なからぬ動揺もあったろうと思います。 6月上旬、その塚本邦雄氏が亡くなりました。ヨーロッパの文学や文化にも精通していた氏のことですから、まずは寺山修司荘に顔でもだして再会をよろこびあい、ひょっとすると、海の向こうのクリエーターたちともすでに談笑しあっているころかもしれません。 ※ 塚本邦雄(つかもとくにお) 1922年滋賀県生まれ。歌人。 歌集 : 「水葬物語」「装飾楽句」「日本人霊歌」「水銀伝説」「緑色研究」ほか多数。 2005.07.12
後 述) 寺山修司の「黄金時代」は、現代百人一首と各歌人論および塚本邦雄論のほか、「一字」と書くと二字である、ではじまる「一字手稿」などの手稿シリーズ、中原中也などを論じた詩人論、それに自伝抄「消しゴム」などを収めた「詩歌論集」ですね。訂正しておきます。
塚本邦雄 短歌 〜大学ノートから〜
みずうみに水ありし日の恋唄をまことしやかに弾くギタリスト 安息日。花屋のずるいマダム、掌に鋏ふり唄ふ音痴のキリエ 夫人への招待状の封蝋はとけたまま、馭者のゆくえが知れぬ 天国荘養老院に今年死者皆無 牛肉いろの煙突 喜劇最後まで笑はずに出て来しわが鼻の尖ばかり雪降る 髪油つめたく額ににじめり自らの葬りの備へひそかにすすむ *髪油…はつゆ *額…ぬか 日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも 少女死すまで炎天の縄跳びのみづからの円駈けぬけられぬ 医師は安楽死を語れども逆光の自転車屋の宙吊りの自転車 欲望をみなもととして変電所までむらさきの電線けぶる 体育館まひるの吊環二つの眼盲ひて絢爛たる不在あり *盲ひて…しひて われより死うばえる医師よ浴槽に脚を岬のごとく並べつ 檸檬風呂に浮かべる母よ夢に子を刺し殺し乳あまれる母よ 象牙カスタネットに彫りし花文字の マリオ 父の名 ゆくさき知れず |
| 寺山修司の世界〜虚空〜 |
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