「準め・・・必ず連れ戻してやるぞ・・!」

ところどころに包帯を巻いた長作が呟くように言う。
後ろでは正司がパソコンを弄っている。

「もう諦めないか、兄さん・・」

「いや、諦めるわけには・・」

『力が欲しいか?』

「な・・?」

正司の弄っていたパソコンの画面に、黒い服を着た男が映った。
男の口許しか映らず、正体は分からない。何も異常がないはずのパソコンに映る姿。

「お前は・・誰なんだ?」

『オレの名か?オレの名は     』

眩いばかりの金色の光が、長作と正司の視界を覆った。



第9話 動き始めた敵



「斎王・・そんな、どうして!?」

「いや・・・エド、とりあえず落ちつ・・」

「どうして上の階なの!?まだこのフロアに部屋残ってるのに!」

「・・・・一人のほうが落ち着くから、」

「僕もそっちに行く!!」

「いや、エド頼むから落ち着いてくれないか・・・」

廊下でなにやら騒がしいと思って万丈目が部屋から出ると、
向かい合って話している斎王とエドが見えた。同じく野次馬な十代に声をかけた。

「・・・何だ、アレ?」

「わかんねぇ。相当どーでもいい部類の言い争いだと思う。」

「奇遇だな、十代。俺もそう思っていたところだ。」

二人は顔を見合わせて、ハァ、と深く溜め息を吐いた。

「斎王!僕も三階に行く!」

「いやでも、ほら登録を済ませてしまったんだろう?
 とりあえず私も部屋の登録をしないと・・私の荷物は明日にならないと届かないから、」

「それくらい、むしろ僕の部屋に泊まればいいよ!」

「いや、エド・・・」

「嫌なのかい!?僕の部屋で寝るのは嫌!?」

「落ち着いてくれないか、とりあえず・・」

「そうそう、とりあえず落ち着けって。」

間に割って入ったのは十代だ。その後ろに万丈目もついてくる。
怪訝そうに斎王を見る万丈目の視線を感じて、斎王は苦笑した。

「意味分からないんだけど・・・どういうことだ?」

「斎王が部屋を三階にするって・・!」

「・・・それがどうした?」

「親友である僕を差し置いて三階で一人過ごすなんて!寂しいじゃないか、僕が!」

「お前かよ。」

ビシッ、とツッコミを入れる十代。万丈目は溜め息を吐いて、当の斎王は苦笑している。

「エド、一人の方が落ち着くし、占いの効率が上がるんだ、分かるね?」

「だけど、だけど・・僕は・・!」

「エド、分かってくれないか?部屋には互いに遊びに行けばいいだろう?」

「斎王・・・!」

微笑む斎王、それをキラキラと輝いた目で見るエド。
十代と万丈目は、呆然としてそれを見つめる。

「何だコレ?」

「さぁ?」

とりあえず問題は解決されたらしく、エドは上機嫌になって斎王の手を引く。

「じゃあ斎王、上の階へ行こうよ。僕が手順を教えてあげる。」

「あぁ、そうだねありがとう、エド。」

「さぁほら、こっちがエレベーターだからね。」

引っ張られるままに斎王はエドのあとをついていった。その時。

『ヒーロー諸君!敵が現れた、すぐに秘密基地に来てくれ!』

ブツッ、と放送が切れる音がしたと同時に、チッ、という舌打ちが聞こえた。

「・・・エド?今、舌打ち・・」

「え?そんな事はしてないよ、さぁ秘密基地へ行こうか、斎王。」

きっと君も気に入るよ、と言って、エドはまた斎王の手を引いた。
その後に十代と万丈目が続き、エレベーターに乗って下まで行った。



* * *



「Oh,やっと来たね。」

「・・・なんというか・・、」

「ねぇ斎王、素晴らしいだろう?」

「え?あ、あぁ、そうだね・・」

目の前の巨大スクリーン、パソコンの他、訳の分からない機器類。
ジムのいるデスク、段差を下に降りるためのスロープ、給湯室その他諸々。
地下に広がる秘密基地を、斎王は呆然として見回した。

「(何故こんなに広い基地を、地下に作る必要が・・・?)」

「それで、今日は何の任務なんだ?」

「そう、それだ。三沢、スクリーンに映してくれないか?」

「了解しました、博士。」

三沢がパソコンのキーボードを慣れた手つきで繰ると、スクリーンが明るく光った。
映し出されたのは道路の様子、逃げ惑う人々、そしてモンスター。

「道路で『クリバビロン』が暴れているんだ。急いで向かってくれ。」

「「ラジャー!」」

元気な十代とエドの声と、どことなく疲れた様子の万丈目。
そのギャップを見て、斎王はひっそりと万丈目を可哀想に思った。
三人が基地から出て行くと、ジムは斎王を見てニッコリと笑う。

「君は、空いている方のパソコンを使って三人を援助してくれ。」

「・・・わかった。」

スロープを降りて椅子に座ってみたものの、基本的に何をすればいいのか分からない。
パソコンを立ち上げて、データベースの中身を見ながら情報量の多さに圧倒される。

「(さすがは海馬コーポレーション、といったところか・・)」

「斎王、これを付けてくれ。」

「ん?」

三沢から渡されたのは、オペレーターがつけるマイクのついた通信機だ。
受け取って耳につけると、三沢がパソコンの画面に地図を表示させる。
もう一つ、上空から見ているであろう動画、そこには道路を歩く三人が映っている。

「これを見ながら、彼らの要請に合わせたオペレートをするんだ。」

「・・わかった、やってみるよ。」

「何かわからないことがあったら聞いてくれ。」

「あぁ、ありがとう。」

斎王が微笑みを返すと、三沢も微笑み返して自分のパソコンの方に戻っていった。
そして、斎王は自分の目の前に置かれたパソコンの画面に映る親友達の姿を眺めるのだった。



* * *



「っていうかさ『クリバビロン』ってなんだ?」

「知りませんよ、聞いてみたらどうです?」

「もうすぐ着くぞ。」

角を曲がったそこには十字路があった。放置された車は急いで逃げ出されたあとだろう。
真ん中にいたのは大きくて角をつけたクリボーだった。顔を顰める万丈目。

「・・・アレか?」

「可愛くないな。オレのハネクリボーの方が断然可愛い。」

「そんなこと誰も聞いてませんよ。」

的確なツッコミをしたエドは、デッキからカードをドローする。

「とにかく、早くやってしまいましょう。」

「そうだな。」

続いて万丈目もカードをドローする。耳元の通信機に話しかけるのは十代だ。

「三沢?モンスターの詳しい情報は?」

『攻撃力は1500、のようだな・・他に『クリバビロン』に関する情報はない。』

「1500か・・・楽勝ですね。」

「さっさと終わらせるか。」

既にカードをドローしているエドと万丈目が顔を見合わせて頷き合う。

「とりあえず、いったん切るぞ。また後で何かあったら連絡する。」

『あぁ、気をつけてな。』

『そうだね、怪我をしないように注意して。いってらっしゃい。』

「あぁ、行ってくる。」

ブツッ、と通信を切るとヒーロー三人は前を向いた。
角のついた、目つきの悪いクリボーがのそのそと歩いている。
・・先ほどの十代のセリフではないが、確かに、正直言ってあまり可愛くない。

「行くぜ、オレは『E・HEROスパークマン』を召喚!」

「僕は『E・HEROスパークマン』を召喚!」

十代の前には青の、エドの前には黒のスパークマンが現れた。
二人はくるりと互いの方を向き、睨み付け合う。

「真似すんなよな。」

「そちらこそ。」

「オレのスパークマンの方がカッコイイ。」

「何言ってるんですか、僕のスパークマンの方がカッコイイですよ。」

「じゃ、どっちのスパークマンの方が強いか勝負するか?」

「いいでしょう。」

にらみ合いながら口論をして、結局勝負になってしまう。
その毎度の光景を見て、後ろでこっそりと溜め息をついたのは万丈目だ。
大体、色が違うだけで効果は同じなのだから、勝負になんかならないだろうに。
そうは思うが、口を挟む前に二人は同時に攻撃していた。

「「行け『E・HEROスパークマン』!『クリバビロン』を攻撃!スパークフラッシュ!」」

セリフも指を差しながら言う仕草も、声の張り上げ方もまるきり同じ。
似たもの同士なのに何故こうも張り合おうとするのか。
そう考えながら、万丈目はまた溜め息を吐いた。幸せは逃げていくばかりである。

「ちょっと、僕のセリフ盗らないでくださいよ!」

「盗ってねーよ!エドこそなんでハモってんだよ!」

「あなたが勝手にハモったんでしょう!」

持ち主達の喧嘩を無視して、二体の『E・HEROスパークマン』は『クリバビロン』に攻撃を仕掛ける。
手から出した雷のような光の光線は、『クリバビロン』に当たって爆発した。

「あなたの所為でどっちが先に攻撃したんだか見てなかったじゃないですか!」

「お前の所為だろ!?」

「万丈目、どっちが先でした!?」

「両方同時だ。」

さもどうでもいいかのように(実際どうでもいいのだが)万丈目は言った。
エドと十代はその結果に納得がいかず、互いに睨み付け合っている。
戻ってきた『E・HEROスパークマン』は、その二人の目の前に立っている。

『クリクリー!』

『クリクリー!』

「クリクリクリクリうるさいですよ!精霊も仕舞っておけないんですかあなたは!」

「オレのハネクリボーは出てねぇよ!」

「じゃあ他に誰だって言うんです!?」

「目の前だ。」

万丈目のそのセリフに、十代とエドは前を向く。煙が立ち上っている中に物影が見える。
煙が晴れたそこには、ひどくカラフルな色とりどりの『クリボー』が5体いた。





                                          <続>






あとがきという名の懺悔

たまにはヒーローっぽく、と思って書いてみました。
でも敵が『クリバビロン』じゃあまりヒーローっぽくありませんね。
つーか敵サイドも早く書きたいのにまだ大分掛かりますね。
まだヒーローが揃ってないんだ、だから出せないんだ・・!
流れは出来てるのにイレギュラーな事態で予想以上に長くなるのが私の癖ですね。
クリボーは長くないですから。次で終わらせますから。