
頭が割れるように痛い。
腹も、定期的な痛みに苛まれている。
あぁ、身体が重い。くそッ…忌ま忌ましいウィルスめ、さっさと俺の体内で殲滅されろ。
熱さと寒さは紙一重
「くぅっ……」
『アニキ〜ッ、大丈夫ぅ?』
『アニキっ、水は飲む?平気?』
『アニキぃ〜死んじゃやだァ〜ッ!』
「えぇいッ!誰が風邪なんぞで死ぬかァ!そこまで話を飛躍させるなこの雑魚ども!」
近くで煩い三匹を怒鳴り散らすと、万丈目はくたりとベッドに沈んだ。
「ぅ、くうぅ…」
『アニキぃ…』
「ッるせ…平気だと言って……ッ」
『オレ、誰か呼んでくるから!』
そう言い残してグリーンが飛んで行った。
残ったイエローとブラックはひたすら万丈目の側で『大丈夫?』と繰り返す。
『アタシたちも何か出来ると良いんだけど…』
『ごめんよアニキ…』
「…ッ…痛ッ…いィ…」
ガチャリ、とドアの開く音。グリーンが『連れて来たよ!』と得意げに話す。
…いや、ちょっと待て?グリーンが呼びに行ったということは、
来れる奴は『グリーン(つまり精霊)が見える奴』というのが最低条件な訳で。
……ということはまさかアレか?この状況でヤツが来ると、そういう事か?
「万丈目〜ッ!だ、大丈夫か?!」
その声が聞こえた瞬間、万丈目は残り二匹に褒められているグリーンを三匹まとめて掴み。
「何故この状況でヤツを呼ぶんだ、握り潰されたいのかキサマらは?」
低いテノールボイスを更に低くし、万丈目は精霊たちに怒りを表した。
『何で怒られるの?!』
『アタシ達何か気に障る事した?!』
「つぅかキサマらの存在自体が不愉快だ。」
『酷いわアニキ〜ッ!アニキなんて大ッ嫌いよォ〜!』
さらりと存在否定された三匹は、メロドラマみたいな台詞を叫びながら出て行った。
「うおッ?!何だあれ…今おジャマが飛んで…あ、万丈目また喧嘩したのか?ダメだぞ、精霊は大切にしなきゃ。」
「アレのどこが精霊だ。ジメジメした日に大量発生しそうな半妖怪的外見のキモい奴らが。」
「ダメだろ、そんな事言っちゃ…ほら、お前を心配したからグリーンはオレを呼びに来てくれたんだから。」
「お前がここにいることが一番不愉快だ。」
「仕方ないじゃんか。グリーンが、オレにしか見えなかったんだから。」
「大体キサマ、何しに来たんだ?」
「う―ん…お医者さんごっ……あ、いや、看病。」
「今、何を言いかけたんだ?オイ言ってみろ、ん?」
「あぁ、いや、すいません。つか、万丈目思ったより元気じゃん…」
「フンッ、当たり前だ。この俺様が風邪なんぞに負ける訳がないだろう。」
「『目に涙を浮かべながらベッドの中で痛いってアニキが言ってる』
ってグリーンが必死に言うから来たのに…」
「(あのカス帰って来たら捻り潰してやる…)」
「えっと…とりあえず熱とかあんのか?」
「熱はない。may be...」
「…なんか今、余計なのついてなかったか?まぁ良いや、とりあえず計ろう。えと…体温計は?」
「棚の下から2番目、薬箱の中。」
「え〜と…あ、あった。ほら万丈目、起き上がれるか?
熱計る時は布団の中で計っちゃいけないんだぞ、熱上がるから。」
「起き上がるくらい一人で出来る…うッく…」
「万丈目っ…大丈夫か?」
「平気に決まってるだろうが、触るな馬鹿。」
「でも…」
「Don't touch me!!」
「うッ…いきなり英語かよ…」
「知ってるか?『Don't』で始まる命令文は否定を強めるんだぞ。」
「知らねぇよ…いや、英語は今度また二人でゆっくりと勉強するとして、熱、計ってて。氷、下からもらってくるから。」
「あぁ。」
体温計を、腋の下に挟みながら思う。
こんな常夏の離れ小島のボロ寮の一室で、何故風邪を引いてしまったんだ、と。
「健康には気を使っているハズだ…夜にも出歩かないし、
布団被って寝てるから寝冷えはない…じゃあ何か他に…?」
ピピッ
「あ、鳴った…38度5分…。結構高熱…だな、あ、意識したら熱さが…」
パタッとベッドに倒れる。頭がぼーっとしてきた、気がする。
「あ―…何故風邪を引いてしまったんだろう…」
「ニンジン食わないからじゃねぇ?」
「……あぁそうか、あの人工的に作られたとしか思えない色をしている変な味の野菜…ってうわッ?!」
「…どうしたんだ?」
「キッ…キサマいつの間に戻ってきたんだ!」
「今だけど。ほらッ、氷もらってきたぜ。うっわ冷てぇ―ッ!」
そう言いながら、持っていた大きいビニール袋から手づかみで氷を取り出し、
小さいビニールに入れる。きっとビニールはもらってきたんだろう。
「うあ―…も―無理だ…冷てぇ…」
チラリと小さいビニールを見たら、10個ほどしか入っていない。
普段から温かい手だ、余計冷たく感じるのだろう。
「…流しの右横の引き出し、2段目。」
「ん?」
「ピッチが、入っている。」
「…あッ!あの、パンとかはさむヤツか!分かった、取ってくる。」
そうして引き出しの中を覗き込み、少しゴソゴソやってから戻ってきた。
「コレだろ?なんかすげぇな、万丈目の部屋。色んな物が揃ってる。」
「当前だな!俺を誰だと思っているんだ?」
「万丈目。」
「"さん"を付けろッ!」
…全くコイツは…いつものことながら遠慮を知らんな…!俺の熱が上がったらキサマの所偽だ。
「ほら、万丈目。」
氷が入った小さいビニールを首筋に当てる。
「ひゃぁッ!?」
「…………。」
あまりの冷たさに声を出してしまった…恥だ、恥。
「万丈目…」
「…何だ。」
あれ…?この展開、まさか……
「愛してるぜ万丈目ぇ―ッvvv」
「ぎゃぁぁあああ?!」
いつもより重く感じるのはきっと体力低下の所偽。
頬に触れた手を振り払えないのは熱で身体が重いから。
いつもより口付けが優しく感じるのはきっと…
「今日は、これだけで我慢するから…元気になったら続き。な?」
降ってくる優しい口付けに心地良さを感じながら、俺はゆっくりと意識を手放した。
おまけ
「あ〜もうッ!ドアからじゃ何してるか見えないよアニキっ、そこ邪魔!」
「いやいや丸藤先輩、むしろ邪魔者はオレ達だと思うドン…」
「ダメよ翔くん、こういうときの為に監視カメラがあるんでしょ?きっとあの角
度ならバッチリよ♪」
「あっ、そうか…そうだね明日香さん。」
「(……この学園にはもっとマトモな人はいないザウルス…?)」
<完>
あとがきという名の懺悔
風邪ネタ。しかも自分が風邪引いてるときに思い付いた(ぇ
いやいや、十代は最後まどいかない気がするんだよな…吹雪は…どっちもかと(笑)
最初は優しく「これだけで我慢するから、ね?」とか言ってるんだけど、
最終的に我慢できなくなって最後までいっちゃいそう…うん。
それでは私的好みを述べたところで…この辺で。