
社長室に通されたオレ(正確にはオレ達と表すべきだが)が見たものは。 高そうなデスク、ノートパソコンをイライラとしながら打ち込む海馬。 そして、デスクの上に乗っている明らかに不自然な光り輝く千年ロッドだった。 「これを送りつけてきたあの女に言っておけ、貴様いずれ殺しに行くとな。」 ヤバイ、本気だ。俺と相棒は顔を見合わせながら、相変わらずの海馬の姿に苦笑した。 かいごう。 「か、海馬くん、それはちょっと・・・」 「今は時間がないが、そのうち殺しに行く。」 『海馬のヤツ、マジだぜ相棒。』 「だね、もう一人の僕。」 「何をコソコソと話し込んでいる?何の用だか知らんが、重要でないなら帰ってもらおうか。」 「あ、いや、重要だよ!」 拳を握って主張する相棒に、海馬はチラリと視線を向ける。 次いで、少し驚いたように目を見開いてから、視線を外した。 「貴様も、そのオカルトグッズを持っていたのか。」 「送られてきたんだよ、僕のところにも。」 「そんなことは言わなくとも分かっている。ついでにコレも返しに行け。」 胡散臭そうに千年ロッドを顎で差して言う海馬。あぁ、オカルト嫌いなんだったっけ。 (恐らく、自分の理解の範疇を超えるものが嫌いなのだろうが。) なんでそこまで毛嫌いするのかは分からないが、相棒は落ち着いて言う。 「ねぇ、海馬くん。」 「なんだ。」 「もう一人の僕に、会いたい?」 「・・・・・。」 途端に、無口になる海馬。キーボードを打つ手を止め、左下に視線を彷徨わせる。 何か言おうとして口を開くも、衝撃が大きすぎるのか無言のままで。 「な、にをほざいているか知らんが。アレはもう、いないのだろう。」 この世には。と続けるはずの言葉を海馬は無理矢理切った。 あぁ、驚いている。この先の展開が予想できるようで。 「いるよ。僕の中に、いる。」 「ふざけ、るな。貴様の中にいたのは、とうに昔の・・・」 「いるよ。この千年パズルの中に、いる。今も、君と僕の会話を、聞いてるよ。」 「ハッ、頭まで、おかしくなったというのか遊戯。そんな、はずが、」 『変わってくれ、相棒。』 「うん、いいよ。」 千年パズルが目映く光る。久しぶりの感覚だ。ハッとしてこちらを見る海馬。 こいつの前で一番浮かべたであろう、意地の悪そうな笑みを浮かべて。 「久しぶりだな、海馬。お前は相変わらず忙しそうだ。」 「・・・遊、戯・・・」 ガタッ、と音を立てて椅子から立ち上がる。その姿に苦笑して。 いつもならば笑うなだの何が可笑しいだの文句が返ってくるのだがそんな気配はない。 ただただ目を見開いてこちらを穴の開くほど凝視する海馬。 「貴様、本当に・・・」 「戻ってきたぜ、海馬。」 「ッ・・・・!」 一瞬、何とも言えない泣きそうな、情けない顔をして、喜んでしまった自分に舌打ちして。 海馬はいじけたように勢いよく自分の椅子に座りなおす。あぁ、これはもう決定だな。 『賭けは僕の勝ちみたいだね、もう一人の僕?』 「あぁ、オレも鈍ったもんだ。」 『フフッ、そんなことないよ。』 「いや、まさか海馬が喜んでくれるなんて思わなかったしな。」 まったく、相変わらず素直じゃないぜ、と続ければ、こちらを睨みつけてくる。 「貴様、俺が喜んでいるとでも・・・」 「あぁ。文句の一つも言えないほど、な。」 「貴様・・・ッ!?」 文句を言おうとして口を開き、けれど突然、側頭部を押さえだす海馬。 後ろで相棒が慌てている。正直オレも慌てている。何もやってないぞ、オレは。 『な、何かやったのもう一人の僕!?』 「オレは何も知らないぜ?!」 「貴様ッ・・・何者だっ・・・!」 「へ?」 「うるさい、貴様話すなら勝手に、違うやめろ、俺の身体にッ・・・!」 意味の分からない言葉を吐く海馬。そして忌々しげに千年ロッドを掴む。 その瞬間だった、千年ロッドが光り輝いたのは。思わず目を閉じる。 海馬はどうなったんだろう、もしかして、まさか、いやそんなはずは・・。 色々と考え込んでいるうちに、その「まさか」が現実になってしまったことを知った。 「ファラオ!ご無事でなによりです!」 顔を上げたら、優しい笑顔をこちらに向ける海馬・・・否、これは。 「セト・・・か?」 「はい!あぁ良かった、あなたが突然居なくなったので皆で心配していたのですよ。」 気持ち悪い。何より敬語の海馬が気持ち悪い。どうしてくれようか、この状況。 千年ロッドを海馬に送ったイシズに、今一瞬殺意が沸いた。 「セト・・・その身体、は。」 「はい、私の生まれ変わり・・もとい海馬瀬人では?」 「いや、確かにそうだが。」 違うんだ、いや確かにそうなんだがでもこう、違和感が、うん。 とにかく敬語をやめてほしい、傲慢な海馬を見慣れているから。 「マハードやマナも、こちらに来ていることと思いますよ。」 「本当かそれは・・・。」 「はい。」 何とも言えずもはや唖然として、自分のデッキケースに入ったデッキを見やる。 しばらく無言で見つめていたのだが、相棒が首を傾げる。 『セットしてあげないの、もう一人の僕?』 「いや・・・なんだか・・・」 「どうしたのです、ファラオ?」 どうして腕に決闘盤がついているんだろう。外してくればよかった。 まさか、海馬との再会がこんなものになるなんて夢にも思わなかった。 というか、どうして、何故セトはこちらに出てくることができたんだ。 だって、相手はあの海馬だぞ。屈強な精神力を抑え乗っ取ってセトは今ここにいる。 「マハードもマナも、きっと会いたがっていますよ?」 「・・・セト。」 「はい、何でしょうか。」 「海馬はどこにいる?」 「今は、心の中に。」 「・・・・・・だよな。」 「何故そのようなことを?」 「いや、なんでもない・・・。」 オレにはブラック・マジシャンとブラック・マジジャン・ガールを出す以外に選択肢はないようだ。 この2体(2人?)を決闘盤にセットするのに、これほど勇気を要したことはない。 「・・・召喚。」 ぺしぺしっ、とやる気のない音と共に、決闘盤にカードがセットされた。 ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが召喚される。 こちらに背を向けた状態で召喚された2人は、くるりとこちらを向いた。 「ファラオ!良かった、ご無事で・・・。」 「王子!!」 「マハード、それはさっきセトにも聞いたぞ。」 「ですがファラオ、本当に心配したんですよ?」 昔なじみの友達は眉をハの字にして情けなくオレにすがりつく。 「お願いですから、突然消えるのはやめてくださいませ。」 「うん、なるべく。」 「なるべくではありません!」 「・・・わかった。」 可能な限りは、などとあやふやな言葉を続けたら、また顔を顰めるマハード。 いつの間に、幼馴染はおカタい教育係になってしまったのだろう。 「とりあえずセト、海馬はオカルトが嫌いなんだ。元に戻ってくれないか?」 精神的にもそのほうがありがたい、とは心の中でだけ付け足しておこう。 「わかりました。何かあったら気軽にお呼びくださいね」 笑みを浮かべ、そう返答するセト。正直、もう敬語で笑顔の海馬は見たくない。 もう一度千年ロッドが光ると、海馬は元の人格に戻ったようだ。 何が起こったのかわからないようで、困惑した表情を浮かべている。 「・・・何が、起こった?そもそもこれは、というか全て説明しろそこの古代人。」 腰に手をあて、こちらを人差し指で差す傲岸不遜な態度。 そうそう、それが海馬・・ちょっと待て、なんかオレ散々なこと言われてないか? 確かに、口悪いし人相も悪いしでも最高のライバルだし・・あれ? 最終的に褒めているだけのような気がしなくもないがまあいいか。 「オレが帰ってきたんだ、古代にオレが一緒に居た奴らも、 千年アイテムに人格が宿っていたとしても何もおかしくないだろう?」 「辻褄は合うな。そこの2体も人格が宿っているのだろう?」 「あぁ、そうだ」 「マハード、にマナ・・・だったか?ブルーアイズにも宿っているのか?」 確か、キサラとかいう女がブルーアイズだったような気がしたが。 そう続けて考え込む海馬。まさか、キサラになってくれたほうが嬉しいのだろうか。 「マハードとマナはまぁ、精霊の形が割とそのままだからな・・。 キサラについては、まぁ・・それは出してみてのお楽しみってことだな」 「今の白龍の方が、美しいような気がするんだが・・・」 ・・・そんなわけがなかった。そうだよな、それが海馬だよな。 女とかいても、仕事はいったらどっか置いて行きそうな雰囲気だもんな。 まぁ、海馬がブルーアイズにひどく執着する理由は、セトとキサラにあるのだろうが。 「ところで遊戯、獏良の手にもこれは渡っているのか?」 「・・・・・・・」 胡散臭そうに海馬は持ったままの千年ロッドを振る。 そうだった。何故今まで思い出さなかったのだろう。 セトやマハード、マナなんかよりも問題な闇バクラがいた。 アレは戻っているのだろうか、というか獏良の元に送られているのだろうか。 「・・・行ってみなきゃ、それはわからないな・・・」 「行きたければ勝手に行け、俺はごめんだ。」 「オレだって行きたくない。」 「では行かなければいいだろう。」 「それだと問題が起こったときに対処できないだろうが。」 「では行けばいい。」 「行きたくない。」 行くか行かないかの根本的な論争になってしまった。 本音を言うと行きたくない。マハードとバクラが一触即発状態になりそうで嫌だ。 しかも千年アイテムを持っていくなど、エサをばらまくようなものだ。 「まぁ、バクラが来てるんならどっちにしろここにくるんだろうけどな。」 「・・・どういう意味だ?」 「バクラの千年アイテムは、他の千年アイテムの場所が分かるんだ。」 「そうか、」 俺の元に来たら盛大に出迎えてやろう、と意地の悪い笑みを浮かべる海馬。 係わりたくない。この笑顔は以前DEATH−Tのときに見た笑みだ。 「それじゃ海馬、オレは行くぜ。」 「あぁ、今は忙しいが、決闘くらいなら付き合ってやる。」 「あぁ。また今度な。」 マハードとマナをデッキに戻し、セトによろしく、と告げると海馬は顔を顰めた。 久しぶりに見た海馬は、やはり忙しそうだったがなんだかイキイキして見えた。 やはり、ライバルが居るというのは良いものだな、なんて思いながら、オレ達は帰路に就いた。 <完> あとがきという名の懺悔 なんか色々すごいことになってますね・・・うん。 バクラは復活しているのか、そして社長はブルーアイズを召喚するのか? ・・・色々と書きたい事はあるのですが、まず社長出したかったので。 宿命のライバル再会編、見たいな感じでしたー。 マハードとマナのキャラがいまいち掴めません。 セトのキャラもいまいち掴めません。キサラも。 古代編をあまり見ていない所為で古代編キャラが書けない罠。