「ごめんね」

突然の謝罪に、俺は本のページを繰る手を止めて顔を上げた。
テーブルを一つ挟んだ向かい側のソファーには、苦笑する吹雪が座っている。

「・・・何がだ?」

「なんとなく」

「おかしなやつだな、謝られることなんて何一つないぞ」

「うん、でも」

「でも、なんだ」

「・・・そっち、行ってもいい?」

「・・構わないが」

突然の軌道修正に首を傾げながらも、中心から少し横にずれてやる。
向かい側のソファーが形を戻すのをぼんやりと眺めていたら、
隣に人の気配とソファーがゆっくりと沈んでいく感覚がした。

「亮くん」

「なんだ、吹雪」

「大好き」

えへ、と笑って、吹雪は横から俺に抱きついてきた。
慌てて、本に栞を挟んでテーブルに置く。
(いつものパターンでいくと、何かされたら流されるに決まってるんだ。)

「大好き大好き大好きだーい好きだよ、亮くん」

「・・・それは知ってる、突然なんだ?」

「なんとなく」

「・・・おかしなやつだな、本当に」

肩口にそっと頬を摺り寄せてくる吹雪の頭に自分の頭を乗せながら、
まぁ、こんな穏やかな休日もいいか、とぼんやりと思うのだった。









[mild(まるで微温湯のような心地良さ)]