不完全な満月 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 最終幕 『不完全な満月』

 

 

 



湖の畔で悪魔と人間がたたずみ、二人は夜空を見上げる。

 

「満月が綺麗ですねお嬢様」

「あれは満月じゃないわよ…………でも綺麗ね」

「……?じゃああれは──」

 

 

見上げたまま私はその質問を流して、銀髪の少女に訊いた。

 

 

「貴女は……どうやってここに来たの?」

 

 

 

 

メイドが月から私に驚きの目を向ける、けれど私は月を見続ける。満月でも無いその月を。

 

「ぇ……」

「この世界、幻想郷は博麗大結界によって外界からの干渉を受けない筈」

「貴女は……。貴女は、何を捨てて此処に来た?」

「────」

 

メイドが頭を抑えながら俯き低いうなるような声で──

 

「……っ」

 

辺りの風景が歪み、湖や森の風景が捩れていく。

きっとこれも彼女の力だろう、でもそんなの構わない。私は戻らない。

 

「貴女は何を捨てて……」

「やめて……!」

 

言い放った瞬間私は吹き飛ばされた。

そして見えない壁にぶつかる。なんてあべこべな力だ。

 

「痛っ」

 

ふと見回すと私は結界の中に閉じ込められてるのが分かった

それも特殊な何か、博麗の巫女や大結界のようなモノじゃない。

 

 

周りには大きな、壊れて針のスピードが狂った時計が何個もある。

きっと、これが彼女の心象風景。私の悪夢の原因──

 

周りの背景は何もなく、空間として存在している

 

「ここら辺一体を食ったか」

 

私は少し目眩がするが立ち上がる 改めて異様な風景だと認識する。

 

 

 

「悪夢は覚まさなきゃ──」

 

 

紅い悪魔は微かに笑った。

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

一方、紅魔館。

 

「あれは……」

美鈴は湖の畔の光ってるところに目を凝らす。

まさか、さっきお嬢様と人間のメイドが行った場所?

 

だとしたら、やばい

杞憂……じゃない、そんな事を考えてるより、その前にパチュリー様に伝えないと!

そう思い美鈴は図書館に向かう

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

私は…………

 

何を捨てて……

 

心? 力? 人格?

 

 

 

 

懐中時計を握り締める

 

 

ぁ……

 

 

 

なんだ

 

 

 

 

 

私は『  』を捨てたんだ。 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 


───バリバリッ

 

凄い衝撃音が鳴る。

「レミィ、聞こえる?」

パチュリーの声が背後からした。しかし背後を振り返ってみても何も無かった。

 

「……私は結界の外よ」

「あーなるほど」

 

魔女がため息をつく。

 

「どうやら貴女との間にタイムラグがあるらしいわ、そこで聞いてほしいことがあるわ」
 

魔女の声はいつものような落ち着いてるような声では無かった。

どちらかといえば感情を押し殺して、冷静になろうとしてるような、そんな感じ。

 

「この結界は時空が捻じ曲がってるの、いわば彼女の世界。多分貴女が見てる風景もきっと彼女の心の中の世界よ」

 

改めて、見渡す。

 

「寂しかったのかな────」

 

 

「その世界では彼女が絶対的、いわば神よ。 だからもしかしたら時空の狭間に落ちて戻って来れなくなるかもしれないわ」

「そりゃ大変ね」

「レミィ、ちゃんと聞いて!」

「もしかしたら、とか、そんな事考えるよりもね私は、彼女を救いたいの」

「……ッ、救えなかったら? 救えずに貴女は死より怖い恐怖を味わうのよ?」

「ククク……」

「何がおかしいのよ?」

「恐怖なんて、彼女に比べたら遥かにいいわ。それに」

「……それに?」

「私は誰かしら?スカーレットデビル!紅き悪魔!ツェペシュの末裔のレミリア・スカーレットよ。

 こんな事で死ぬなんてごめんだわ」

 「……やっぱり、行くのね。彼女の元に」

 「ああ」

 「分かった、私はこの結界を破壊してみる」

 「外は任せた」

 「彼女は任せたわ」

 

 

 

さてと、これからが本番かしら。

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

ふと顔見上げると そこにはお嬢様がいた。

 

「何してるの、帰るわよ」

 

「お嬢様、私は……、私は過去を捨てました。気付いたら……私が何処から来たのか、

 この懐中時計は誰から貰ったのか……忘れてしまった。まだ“感覚”として残ってるものもあるけど、いつか忘れてしまう」

 

「私は過去を捨てました……!」

 

レミリアに話す、ありったけの思いを、

 

「そう……」

 

そういって私を抱き締める、お嬢様の腕の中は温かった。

私の冷えた芯を温めるくらい、それは心地よかった。

 

「お嬢様……っ」

 

自然と目から雫が落ちる

 

「辛かったわね……」

「うん……」

「私は……ここにいていいの……?」

「当たり前じゃない」

 

涙で言葉が途切れ途切れになる

 

「私、は…………掃除しか……でき、ないっ」

「それでもいいわ」

「そ…れに、私は……人間、よ?」

「人間でも仕事は出来るわ」

「私はっ……」

 

顔が涙でぐしゃぐしゃになる。

 

 

 

 

 

 

「こんなに……幸せでいいの?」

「当たり前じゃない」

 

……お嬢様らしい。

 

 

 

 

──―空間が歪みだす

 

 

 

 

 

今度はお嬢様が話す。

 

「貴女が新しい時を刻めるように、銘を刻むわ」

 

周りの結界が崩れ去っていく

 

「咲夜……」

 

崩壊した壁から月が見える

 

「十六夜 咲夜」

 

 

私が最も美しいと感じた十六夜の月、

満月なんかじゃない、私のなかの、いや二人の間の特別な『月』

 

 

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

「十六夜……咲夜……?」

 

自分の名前を確かめるように言う

 

「そうね、私からも言うことがあったわ」

「今まで通り、貴女に……紅魔館の、いや、私のメイドをやってくれる?」

「当たり前じゃないですか……っ!」

「ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜」

「なんでしょうか?」

 

私の声はまだ涙声だが気にしない。

 

 

「ふふ……呼んでみただけ」

 

何時の間にか周りは元に戻っていた。

私とお嬢様は笑ってた。

塞がっていた何かが消えたように。

 

 

 

 

 

 

 

花の咲く夜に 十六夜の月が私たちを照らす

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

遠くには美鈴とパチュリー様がいた

「んじゃ、改めて」

 

お嬢様が紅魔館を背に私に手を差し出す

 

 

「ようこそ、紅魔館へ」

 

 

 

「はい……!」

 

 

 

私も手を差し出す、

なんだか……懐かしい気がする。

 

 

 

 

 

お嬢様と手を繋ぐ。

 

 

 

「咲夜、紅魔館に帰りましょ」

「そうですね」

 

 

駆けつけた美鈴とパチュリー様と合流し四人で帰る。

 

私はお嬢様に会えて良かった

 

 

私の握る手は温かく、

     

 

そして、力強かった。

 

 

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

――次の日、紅魔館にて

 

「お嬢様、紅茶です」

 

人間のメイド、十六夜咲夜が紅茶を乗せたトレイを持ってきた。

 

レミリアとパチュリーが紅茶を楽しみにしている

 

「どうぞ」

 

紅茶が入っているカップをお嬢様とパチュリー様の前に置く

 

「どれどれ……」

 

そう言ってお嬢様は紅茶の薫りを嗅ぐ

 

「ぉ、いい香り」

「あら、良い香りだわ」

 

二人が言葉を洩らす スゥー、と紅茶を飲む

 

「美味しい……」

「ありがとうございます、気に入っていただけましたでしょうか?」

「咲夜、今度また作って!」

 

お嬢様が目を輝かせる。よほど美味しかったのだろうか

 

「わかりました」

 

咲夜は自然に微笑む

誉められたのが初めてだからかもしれない

 

「さーくーやー!」

 

お嬢様が私の名前を呼ぶ。

 

「なんでしょうかお嬢様?」

 

 

 

 

そして、紅魔館に人間のメイドが加わり、いつもの日常が始まる―────…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐ fin ‐

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

あとがき

さて、はじめて東方のSSを書いたわけですが、やはり文才が無いせいかちょっと薄いなーとか(´・ω・`)

というのも、これ中学時代に書いたものでして、PC版はいくつか添削したり書き加えたりしてますが、携帯のはひどいひどい。

ともあれ、私の紅魔館の話は一つに繋がっています。

これを読んで、他のを読めば気になった台詞とかの意味が分かるかもしれません。

 

全ては元一つ。 始まりがあれば終わりもある。

東方という世界観は自由でいて、自由じゃない、

もしかしたら私達は幻想を追い続けているのかもしれません。



   

>> Novel


◆ブラウザの[戻る]でお戻りください。