紅き月と壊れた懐中時計

 

 

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 紅き月と壊れた懐中時計 --

 

 

あれから何十年が経っただろうか。

咲夜と出会う前の500年は無意味とも思える程、咲夜との生活は楽しくて仕方なかった。

そして、咲夜と出会って100年が経った。

……だから、分かるのかもしれない。

人間の寿命というものが、どれだけ儚いか…。

 

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咲夜は今私の側近だ。限りある時間、一秒でも私の側にいてほしいから。

だから、私は咲夜にメイド長を辞めさせた。

 

……と言っても、私の世話係なものだから仕事量は減っていない。

 

だけど最近、咲夜に負担をかけない為にもある程度の事は自分でやるようにしている。

 

 

「おはようございます。お嬢様」

「あら、早いのね。おはよう咲夜」

 

いつの間にか咲夜は私の部屋にいた。

こんな日常は何十年も続けば慣れる。

慣れる……という言い方はおかしいわね、咲夜が毎日来てくれるのが嬉しいって言えばいいのかな。

 

 

「今日は天気も良いし、日傘を刺して散歩でもどうかな?」

「良いですね。ピクニックなんてのはどうでしょうか」



咲夜が微笑みながら話す。

 

「ピクニックかぁ、パチェや美鈴も誘って皆でさ…!」

「私もそう思って誘ったのですが…、用事があるそうです。」

「まぁ、仕方ないわ二人で楽しみましょ」

 

そう言って私は寝巻きのままベッドから降りる。

 

「んじゃ、着替えてくるからちょっと待ってて」

「はい、お嬢様」

 

 

 

 

いつもの服に袖を通す。
 

いつも見慣れた光景。

だが、徐々に変わりつつある光景に私は薄々気付いてた。

 



 

 

咲夜は大人の女性になった。

人間でいう20代後半くらいの容姿、といえばいいのだろうか。

だけど、私と出会ってから何十年も経っている。

……咲夜の体内時計を時間を操る能力で止めてるとしか思えない。

だが、咲夜からそんな話は聞かないから推測でしかないのだけど。

 

『私の血を飲めば咲夜といつまでも一緒にいられるわ』

 

いつか言った言葉。

 

『いいえ、私は人間のままお嬢様と共に───』

 

私の血、永久的に生きる事を咲夜は拒んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えてるうちに、ドアのノック音がが聞こえた。

ノックの主はきっと、支度をすませた咲夜だろう。

「ぁー、はやく着替えないと…。」

 

 

……ああっ

 

 

「─────!」

 

服のボタンを掛け間違えていた。

普段なら……しない筈。

そして響き渡るノックの音。

 

 

それがドアノブに手が掛かる音に変わる。

 

 

 

「お嬢様入りますよー……って、あれ?」

 

咲夜が見たのは主が服のボタンにしどろもどろしてる光景。

 

「ぁ、その咲夜、これは根本から問題があってだな…」

「私が服を着替えさせてあげますから…。」

「ごめん」

 

どうやら時を操ったらしく、一瞬で服のボタンが直された。

 

「それじゃあ、行きましょうかお嬢様」

 

ニコッと笑う咲夜

 

「さ、咲夜」

「なんでしょうか?」

「その、大丈夫なのか?」

「はい…?」

「咲夜だってもう能力とか使ったら…その…」

「お嬢様の心配には及びません」

「うん……」

「ではいきましょうか、お嬢様」

 

 

 

 

 

楽しそうな咲夜。

 

 

一緒にいられる時間を考えると虚しくなってくる。

 

その時が一瞬で崩れそうで…。

 

 

 

 

 

「お嬢様?はやく行きましょう」

「ぇ、ぁ……そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗…」

 

咲夜の日傘のお陰で思いっきり空を見上げることは出来なかったが。

…澄みわたる青い空

そよ風が気持ちいい。

 

「絶好のピクニック日和ね、咲夜」

「はい、折角ですから散歩しながら話しましょうか」

 

私が歩くとそれに合わせて咲夜が私の歩きに合わせて歩く。

 

「そういや、新しいメイド長はどうなの?」

「美鈴ですか…?メイド長になったのはいいものの、細かい所は…」

 

咲夜の話を聞く。

新しいメイド長の美鈴の事を話す咲夜。なんだか楽しそうだ。




「…でも、やはりそこが良いかもしれませんね」

 

 

話を聞いてるうちに大分歩いた。

 

 

「ぁ、お嬢様、あそこに行きませんか?」

 

咲夜が指を指したのは

 

「あそこは…」

 

 

咲夜と私が初めて出会った場所

あの時もこんな綺麗な空が広がっていて……。

まぁ、あの時は夜だったから青空というより星空なんだけど。

 

「いいわ、そういや咲夜何作ってきたの?」

 

そう言って咲夜の持っているランチボックスに目を向ける。

 

「ぁ、これですか?秘密です」

「もー、はやくいくわよ咲夜っ!」

 

 

はいはい、と言って私の早歩きに付いていく咲夜

 

 

 

二人とも楽しくて、どこか懐かしい気分に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、はやく開けて咲夜」

 

目を輝かせる。

湖の景色よりも咲夜のランチボックスが楽しみだった。

 

「はいはい、今開けますよ」

 

そういって咲夜はランチボックスを開く。



「わーっ、これはサンドイッチかしら?」

 

ハムとレタスが挟まれたサンドイッチを手に取る。

 

「咲夜の手作り?」

「はい、お嬢様」

 

確かに見た目も綺麗に整っている。それがいかにも咲夜らしい

 

「食べていい?」

 

咲夜に聞く。

普段少食の私だが、今日は違う。

 

「そうですね、食べましょうか」

 

そう言って咲夜もサンドイッチを手に取る。

 

「それじゃ」

 

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい…」

「私の手作りですから」

 

そう言って二人はフフッと笑う。

 

「そういえば…」



咲夜が湖を見ながら話をする。



「お嬢様と初めて会った場所ってここでしたね」

「そうね、懐かしいわね…」

「あれから何年経ったのでしょうか」

 

咲夜は空を眺める。

私も空を眺める。

 

「90年かしら…?」

「もう少しいくと思いますよ」

「そうかな?」

「はい」

 

そんな会話をしながらサインドイッチを頬張る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜」

「なんでしょう?」

「日射しがキツいから帰りましょ」

「そうですね」

「ねえ、咲夜」

「なんでしょう?」

「またサンドイッチ作ってね」

「はい」

 

 

 

 

 

 

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美鈴がメイド長になったため門番は名も無き妖精が努めている。

 

「お嬢様、門を開けてみてください」

 

咲夜にせかされながらも門を開ける私。

 

 

 

「「誕生日おめでとうございます!」」

 

 

紅魔館のホールには数えきれない妖精メイドとパチュリーと小悪魔、そして美鈴がいた

…そうだった、私の誕生日だったんだ

 

しかも

 

「600歳、おめでとうございます」

 

側にいた咲夜がいつの間にか片手にケーキを持ちながら話す。

 

「ありがと、咲夜」

 

 

 

 

「さ、行こ」

 

咲夜のケーキの持ってない方の手を握ってホールの真ん中に向かう。

真ん中にはパチュリー達がいる。

 

「レミィ、600歳の誕生日おめでとう」

「おめでとうございますっ」

「お嬢様、おめでとうございます」

 

 

「ありがと。……それにしても」

 

皆を見渡す。

 

「…月日は早いわね」

 

改めてみると、皆大人になった気がする。

 

「ってことで、お祝いするために全員呼んだんだけど」

 

パチュリーが話す。

 

「皆、仕事あるから帰らせていい?」

「ぁ、ああ…いいけど」

「お嬢様、はやくケーキ食べましょう!」

 

と言う美鈴。

 

「特別に図書館でやりましょ、誕生日祝い」

 

それを聞いてさわぐ美鈴と小悪魔。

それを見て呆れる咲夜。

 

 

「パチェ」

「何?」

「ありがと」

「何よ突然…?」

 

突然の言葉に顔がひきつるパチュリー

 

「いや、なんとなく」

「さ、行きましょうお嬢様」

 

美鈴が急かす。

 

「そうね」

 

 

 

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図書館はこの百年間、何も変わっていない。

ただ言うなら本を強奪する魔法使いが来なくなったので図書館の本はきれいに整理されている。

 

「吸血鬼が自分の誕生日にケーキって……。吸血鬼も墜ちたものだな」

 

そんな事を昔言っていた気がする。

だが、今は今だ。

 

「ケーキ切るの、咲夜さんお願いしますっ」

 

はいはい、と咲夜は包丁を片手にケーキを均等に切る。

その光景を見ている私たち。

この光景は……、

いつまで見ていられるのだろうか。

 

 

「お嬢様?」

「ぇ?」

「その、ケーキ切りましたよ」

「ぁ、あぁ、ありがと咲夜」

 

 

駄目だ、そんな事考えたら。

只、悲しくなるだけ。

 

 

「美味しいですー!」

と美鈴の歓喜の声。

 

「あら美味しい…」

「私が作ったんですよ」

 

そんな、パチュリーと咲夜のやりとり

 

それを眺めながら紅茶を啜る。

 

「ぁ…」

 

懐かしい味……。

 

「これも、咲夜が作ったの?」

「はい」

 

ニコッと微笑む。

私もつられて微笑む。

 

「なんだか懐かしいわね」 

「あれから百年が経ったなんて信じられませんね」

「……そうね」

 

 

信じたく無い。

出来ることなら、

出来ることなら、この時間が永遠だと願いたい。

 

 

 

 

 

 

あれから小悪魔が焼いたクッキーを食べたり咲夜の紅茶を飲みながら話をした。

途中から私がフランを呼んで六人で話した。

フランは久々のデザートなのか、美鈴以上に騒いでいた。

 

「さて、私は仕事があるので抜けますね」

 

新メイド長の美鈴が席を立つ。

 

「仕事、さぼら無いようにね」 

「や、やだなぁ仕事さぼりませんよー」

 

そういって、美鈴は仕事に戻った。

 

「んじゃ、私も魔法の研究に戻ろうかしら」

「ぇー、パチュリーも?」


フランが頬を膨らませる。

最近、という表現はおかしいが

数十年前にフランは地下の部屋から紅魔館の部屋に住むことになった。

百年過ぎ、フランの破壊衝動は制御出来るようになり、今では普通に紅魔館の中を散歩してることが多い。
 

「うーん、妹様も本読みましょうか?」

「うん!」

 

そんなこんなで、じゃあねと言って二人はパチェの書斎に行った。

 

小悪魔と咲夜と私。

 

 

 

───気まずい空気。

 

 

「ぁ、そ、その私も行きますねっ」

 

そう言って、小悪魔は本来の仕事に戻った。

 

「……みんな行っちゃいましたね」

「そうね…」

「ぁ、私の部屋にいかない?」

「いいですよ」

 

そういって、二人は席を立つ。

 

咲夜に聞こう

 

いつまで、こうして居られるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下の窓から外を見たら、もう夜だった。

……ちょうど満月だった。
 

部屋のドアノブに手をかける

いつの間にか私の部屋は妖精メイドが掃除したらしい。

座るものはあまり無いのでフカフカのベッドに座る。

 

「咲夜、隣座って」

「はい」

 

 

 

 

「ねぇ、咲夜…」

「なんでしょうか?」

「咲夜…」

 

咲夜の袖を掴む

 

駄目だ、言えない───

でも、言わなければ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつまで、咲夜と一緒にいられるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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紅き月と壊れた懐中時計 --

 

 

いつまで……いられるの? 

また…

また、つまらない日々を送るなんて考えたくない。

一緒に、百年も千年も貴女といたい………

 

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「そう・・・長くはないと思います」

 

咲夜が俯きながら答える。

ずっとこの答えが出ることが怖かった。

だが、心の中の片隅ではこう言われることが分かっていたのかもしれない。

 

「そんな…咲夜といられないなんて…」

 

咲夜を抱き締める。

 

「私だって出来ることならお嬢様と居たいです」

 

咲夜が涙を浮かべる

 

「咲夜……。」

 

ただ、そう言うことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあと、咲夜と色々話をした。

春を取り戻した時のことや、満月の事を解決したこと。

それらの話は昔のことだが記憶が鮮明に覚えていた。

懐かしい。あれから百年よ。霊夢も魔理沙も、もういないのよ───

 

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(咲夜がいなくなったら……私はどうなるんだ…)

 

そう思いながら天井をぼーっと見つめる。

なんとか、咲夜を

 

………、そうだ

 

その手があったか

 

 

 

 

 

 

 

『蓬莱の薬』

 

 

 

 

 

 

 

それを飲めば死ぬことは無くなる。

何年も何十年も何百年も何千年も。


だが、それは最終手段でしか無い。

急かして咲夜に飲ませたら、永遠に生きることになる

そんなことしたら、精神が廃れるだろう。

そんな咲夜は見たくない。

 

 

なら、何の方法がある?

 

 

冥界は霊魂が減った今、冥界の姫以外に霊魂が住むことは無い筈。

なら、神に頼むか?

八坂の神はそんな事を出来るわけがない。

巫女は・・・

駄目だ霊夢はもういないんだった。

隙間妖怪はたかが知れてる。

 

 

 

 

 

……やはり、蓬莱の薬しかないのか……?

 

 

 

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「お嬢様ー、朝ですよー」

 

カーテンから漏れる朝日が注ぐ

夜型の私にとって朝日は苦痛でしか無いのだが

何年もこんな生活してると慣れてしまうようだ

 

…まぁ、傘無しでは外出出来ないが。

 

って、そんなことはどうでもいい。

昨日は考えていたら眠ってしまったようだ。

 

  

「お嬢様ー?」

 

咲夜の声が聞こえる

  

「まだ寝かせてー」

 「…まぁ、仕方ないですね。昨日は色々ありましたから」

 「起きたら一声かけて下さいね」

 

と、言って咲夜は帰っていった。

 

「ふぁ……」

 

伸びをする。

 

 

 

今日は…何をしようか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に眠いのでもういちど寝る。

 いっそ、夕方まで寝てしまおうか。

 …いやでも、咲夜と一緒にいた方が。

 

 

 

違う……そんな事より大切なことがある。

 ……咲夜を医者に見せた方がいいのだろうか。 

あの医者なら分かる筈だ。 

そうと決まったらやることは只一つ

 

月の頭脳とまで言われた八意永琳に診てもらう。

  

それしかない 

 

───今日の夜、出発しよう。

 

だが問題は咲夜をどうやって医者に見せるか、だ

それに、あの医者は何を考えるのかわからない。

いや、ここは正直に咲夜に言った方がいいのか?

 

天井を仰ぐ。

耳を澄ませば妖精たちの話声が聞こえる。

 

「さて・・・着替えるか」

 

また紅魔館の1日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

あれから最善の方法を考えた。

お陰で食事が喉を通らない。

困ったものだ。 

だが、その分頭が冴えた。

 方法は決まった。

 

 

やはり、咲夜に言って永琳の元へ。

でも、咲夜が断ったらどうする?

 いやそれでも、無理矢理でも連れていくしかない…。

 そう、決心がつくと私は咲夜の部屋に向かい始めた。

 

 時刻は爾鉢修隆

つまり、夜が始まった後。

 辺りは静けさの波に包まれる。

 決心はついた。

 そして咲夜の部屋の前に着く

 軽く深呼吸をする。

 

 

600年生きてるが、こういうことは慣れてない。

どちらかというと、力でねじ伏せてきたからだ。

 

 

 

コンコンとドアをノックする

 

部屋の中からどうぞ、という咲夜の声が聞こえた。

 

「入るわよ、咲夜」

 

咲夜は本を手に紅茶を飲んでいた。

 

「お嬢様、どうなされましたか?」

「いや、ちょっとね」

 

咲夜が座ってる反対の椅子に座る。

  

「ねぇ、咲夜」

「なんでしょうか?」

「私は……、不安なの」

「お嬢様…?」

「いつか、咲夜が消えてしまうって考えると──」

「お嬢様、私は大丈夫です」

 

そういって、主人に向けた最高の笑顔をする。

 レミリアにとって、それは寂しくなるだけだった。

  

「そうだ、手品をしましょうか?」

「う、うん」

 

  

───そう言って咲夜が立ち上がる時だった。

 

 

「─────!」

 

 

 

 

咲夜が崩れ去るように倒れた。

 

 

 

 

 

「咲夜?……咲夜っ!?」

 

どうやら気を失っているようだ。 

……あまりに唐突の出来事。



 

だが、当初の目的である永琳にみせる事が出来る。

いや、そんなこと考える自分に腹が立った。

 

  

咲夜をお姫様抱っこする。

肝心の咲夜は笑わない、目を閉じて気を失っている。

 

 

 

「咲夜…」

  

絶対に

  

私は………――

 

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時刻は針が修魏瓩た辺り。

夜雀や蛍が活動する時間帯。

 

……悪魔にとっては真の夜はまだだ。

 が、悪魔は従者を抱え医者の元へ向かう。

  

普段は空を飛べばあっという間に着く永遠亭も

咲夜を抱えながら空を飛ぶわけには行かないので走る。

 

  

走った。

 

  

走りながら、ふと思う。

 

  

咲夜に助けられっぱなしだった、と

 

 

 今度は私が助ける番。

 

 

 

……月は半月だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

弾幕ごっこを最近やっていないせいか少しキツい。

だが、こんな所で休むわけにもいかない。

前方に目を凝らすと村が見えた。

月を取り戻すために途中通った場所でもある。

だが、あの時は隠されてしまったが。

 

 

 

そうこうしてるうちに、村に着いた。

 

 

辺りは眠ってるかのように静かだった。

村全体が眠ってる、そう言っても過言ではない。

 

だが、甘くは無かった。

 

 

「待て」

 

 律する声。その声には明らかな敵意があった。

 

「待て、…と言われて待つとでも?」

「村を守るのが私の役目なんでな」

  

半妖である上白沢慧音が明らかに敵意のこもった眼で私を睨む。

 

「視えないのか?抱えてる人間を」

「視えるさ」

「だが、あんたは“見えて”るのか?」

「…はっ、何を言うと思ったら」

 

  

腹が立つ。

あんたは私の何を知っている?

  

 

咲夜を片手で抱く。

もう片方の手を夜空に真っ直ぐと伸ばす。

 時間が無いんだ。

 

 

「邪魔だ」

 

 

[神槍 スピア・ザ・グングニル]

 

 

 

神槍を勢いよく投げる。 

生死を見届けるほど暇では無い。

 

 

村を駆け抜ける。

 

  

追っ手は……来なかった。

 

 

 

 

 

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「行ったか…」

 

上白沢慧音が呟く

神槍は"無かった事"にした。

 いや、"そんな事"はどうでもいい。

 

「忠告はしたぞ、紅魔館の主よ」

  

レミリアがいた場所に向かって話す。

 しばらくした後、慧音は音を立てずに村に戻った。

 

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竹林を突き進む。

 突き進んだせいか、所々に切り傷が目立ってきた。

 

 

「まだか…?永遠亭はっ…」

 

 

いっそ、焼き付くしてしまおうか?

そんな考えが過る。

私は、前に進まなければならない。 

 

 

畜生

 

痛い、痛い、痛い

 

 

だが、咲夜を守るには私が痛い目に会わなければならない。

竹林を掻き分けて進む。

 

 

 月が照らす。

 

 

ふと竹林が無い所に出た。

辺りを見回すと永遠亭がそこにあった。

 

  

「辿り着いた…」

 

 

改めて自分の体を見る。

 ボロボロだ。

 咲夜が見たら何て言うかな…?

 

 

 

 

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紅き月と壊れた懐中時計 --

 

 

叶わない願いを願うことはいけない事ですか?

 

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「師匠!何者かが侵入してきたみたいです」

「こんな夜遅くに誰かしら…」

  

村人なら妖怪に襲われてしまうため夜は滅多に来ない。

八意永琳は考えた。

 

「私が見てくるわ」

 「師匠、いいんですか?」

「大丈夫よ、きっと」

 

 そう弟子に返事をすると玄関に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来たのに…」

 

視界が朦朧とする。

神槍を放ったエネルギーと竹林のせいでレミリアの体はいつしか咲夜を抱えるだけで精一杯だった。

 

「情けないな…」

 

 

一歩ずつ、進む

土を踏む音がやけに聞こえる。

やっとの思いで永遠亭の玄関に辿り着く。

 

 

玄関を開けようとしたとき

内側から玄関は開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「あら……、いつぞやの悪魔。」

 

永琳はレミリアの抱えてるヒトに視線を落とす。

 

「そして、メイド」

「永琳、単刀直入に言う」

「なあに?」

「咲夜を診てくれ」

「診ないと言ったら?」

「手段は選ばないつもりだ」

「私は死なないわよ」 

「……ッ」

 

 

軽く舌打ちをする。

それを見た永琳はクスッと笑う。

  

「まぁいいわ、診てやるからこっちに来なさい」

  

永琳は弟子である鈴仙を呼ぶと咲夜を運ぶように命令した。

  

「あなたも傷だらけね」

「私の事はどうでもいい、咲夜を早く!」

「…………。分かったわ」

 

 

 

 

 

 

悪魔を隣部屋で待つよう指示すると永琳は悪魔のメイドを診る準備をする。

 

「いいんですか?礼儀もない奴に」

 

鈴仙が嫌悪感を露に話しかける。

 

「仕方ないわ、お気に入りのメイドが倒れたんですもの」

 

気が動転するのは当たり前だわ、と付け足す。

 

 「し、しかし」

「優曇華、少し黙ってて」

  

師匠の真剣な目を見て、すみませんと呟く鈴仙

 

  

布団の上で気を失ってる咲夜を見る。

なんら、"眠ってる"表現の方が正しいのかもしれない。

永琳は咲夜の診察を始める。

 

 

 

 

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隣部屋で咲夜の診察を行っているなかレミリアは咲夜の身を案じていた。

 

 

今更になって不安が一気に膨らんでいく。

……最も、前々から不安だったが

 静かに待つ中、永遠亭の"姫様"が部屋に入ってきた。

 

 

「あら、いつぞやの悪魔」

 「……」

 「無視?……良い度胸ね」

 

そう言って輝夜は懐からスペルカードを出す。

 

 「今はそれどころじゃない」

「どういうこと?」

 

疑問と微笑が混じった声

 レミリアの服装に気付いたか事態を悟る。

  

「……そういう事ね」

 

 

 

しばしの沈黙。 

だが、沈黙を破ったのはレミリアだった。 

 

 

「……なぁ、輝夜」

「なに?」

「一つ聞きたいことがある」

 

輝夜と目が合う。

 

「蓬莱の薬について教えてくれ」

「なっ、……何を言い出すかと思えば」

 

驚いた、半永久的に生き続ける悪魔も不老不死に興味があるのか?

……いや、違う

この緊迫とした空気。

 

 

……そういうことか。

そう輝夜は考えた。

 

そして

 

「貴女らしくないわね、何があったの?」

 

あえて知らないフリをする。

いや、まだ"知ってる"訳ではないが。

 

 

「……咲夜が」

  

咲夜? あぁ、時を操るあのメイド

いつもレミリアの側にいたあのメイド

 

 

「咲夜が倒れた」

「倒れた……だけ?」

「……」

 

 

輝夜の疑問に嫌悪を感じたのか口を閉ざすレミリア

一方、倒れた"だけ"なのに緊迫してる状況に困惑する輝夜

 

  

……更に緊迫とした沈黙。

 

 

 

 

「ごめんなさい、話変えちゃったわね」

 

今度は輝夜が沈黙を破る。

俯いていたレミリアが顔を上げる。

 

 

「蓬莱の薬は飲むと不老不死になるわ」

  

私や永琳のように、と話続ける

 

「飲めば体の成長は止まる

 そして……永遠にこの世を彷徨うことになる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女は蓬莱の薬の事を知ってどうするつもり?」

 「そんなことはどうでもいい」

 「―――――まさか」

  

ふと気付く

  

「まさか、あのメイドに飲ませるつもり?」

「なっ」

 

図星ね

 

「なら、やめた方がいいわ、彼女の為にも」

「それにもう蓬莱の薬は無いわ」

「……」

  

三度目の沈黙。

だが、破る者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

少し経つと面白く無くなったのか、輝夜は静かに部屋を出ていった。

 

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一方、永琳がいる部屋。
 

「百年、よくこの体を維持してたわね…」

「どういうことですか?」

「彼女は人間よ。その人間の寿命は60から80歳と聞く

 ……その人間が百年も生き、20代後半くらいの若さを保つことは凄いことよ」

「ってことは……?」

「考えられることは一つ。

 彼女の能力で体内時計の時間を止めている」

「でもそれだと…」

「えぇ分かってるわ、……時間は止まっている。

 けど、体内時計は完全に時間が止まっている訳ではないわ」

「はぁ……」

「だからよ」

「だから百年も生きられたのが不思議なの」

「ぇ…?師匠、逆では?」

「逆じゃないわ、時間を止めている。

 それは能力を使うことによって止めている。

 能力を四六時中使うことは自身の破滅、又は精神崩壊する可能性がある

 けど、彼女にはそれらが及ぼされていない

 ───ひょっとすると彼女。」

 

 

咲夜を見つめる永琳

 

「彼女も……月の人間なのかもしれないわね」

 

 

 

 

 

「月人……姫様や師匠と同じ、ということですか?」


驚く鈴仙。 
 

「まぁ、推測でしかないけどね」

 

その根拠は一つある。

幻想卿の人間が能力を使う事が出来るのは稀だからだ

ただ、それだけ。


 

 

 

 

「まぁ、いいわ診察するから鈴仙手伝いなさい」

 「え、ぁ……は、はいっ」

 

いきなりの話の転換に戸惑う鈴仙

どうやら師匠は鈴仙に話す気は無いらしい。

 

「心臓が止まっている……?」

 

いや、そんな筈はない

 

「そんな、とまっ」

「静かに」

 

耳を澄ます。

 

 

「本当に微弱ね……」

 

 

まさか彼女

"これ"を何十年間も…。

正直、これは医者が解決出来るような問題なのか?

そう永琳は思った。

 

そして

 

「優雲華、彼女を見てて」

「は、はい」

 

 

それを聞くと永琳は隣部屋のレミリアの元へ向かった。

 

 

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体育座りのような座り方をしてるレミリア

 あれから何分たったか何時間経ったか分からない。

 一秒が長く感じられた。

 

 

 

 

 

……すると、永琳がこっちに向かってきた。

何があったのだろうか

  

「レミリア、貴方のメイドの事何か知ってる?」

 

知ってるなら話して、と付け加える。

  

「いや、私は……知らない…」

  

正直、何も知らない…。

 

「貴方、本当に知らないの?」

「……、どういうことだ?」

「貴方は

……貴方は百年もあのメイドど一緒にいたくせに何も知らないのね」

「なっ……」


 

どういう意味で言ってるんだ?

咲夜を一番知ってるのは私の筈だ。

 

 

「彼女……咲夜は……」

 

永琳が静かに話す

  

「自分の体内時計、そして体の成長を止めていた」

 

 

……薄々、感づいていた。

 

 

「だが、それは彼女の能力で出来た術。

その能力を使うことによって体のエネルギーを消費する」

 

 

永琳の言ってる意味に気付いた。

ただ、恐ろしくて言えない。

 

 

「彼女の成長をや体の時計を止めてる訳だから、能力を使うエネルギーが精製されることはない。

だから彼女は少しの間だけ時間を動かしエネルギーを貯めた。」

 

 永琳は真剣な眼差しでレミリアを見つめる。

  

「当然、そうする事で"蓬莱の薬モドキ"が完成する

 ただ、それには欠点がある。

  エネルギーの消費、そして時間の能力の衰退」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エネルギーの消費は言ったわよね」

「……衰退ってどういうことだ?」

「今から話すわ」

 

 

 

 

 

「衰退ってのは文字どうり能力や身体の衰退を表すわ

 一見、半永久的な寿命を手に入れた咲夜には衰退なんて関係無いように思える」

 

 

 が、それは違った

 

 

咲夜の体は止まっていても完全には止まっていなかった

その止まっていない部分が体の促進、そして衰退を司る細胞だった……、と考えられるわ

 結果、彼女は軽い貧血、や目眩が起こるでしょうね

  

だけど、それは30年前から始まった事

……分かる?この意味」

  

「100年も生きれば本来の寿命を越える。

寿命が越えた体は衰退を通り越して……」

「そうよ、体が衰退を通り越せばなんとか"死"を近づかせるためにある事が始まる」

「能力の低下……いや、消滅」

「そう、30年も体が危険信号を発してるんだから能力にも影響が生じる。

彼女、あんまり時間を操らなかったんじゃない?」

 

 

……いや

 

いや……咲夜は普通に…

 

 

 

 

「咲夜は普通に使っていた…」

 「……」

  

驚きで永琳は言葉を無くした。

  

「よく、耐えたわね…」

 

また永琳が静かに話す。

 

「いい?レミリア

危険なのに能力を使うのよ、それこそ自分で首を絞めるようなもの

能力を使いすぎたら身体や精神の崩壊のリスクが高くなる

よって必然的に死が訪れるわ」

 「……そんな」

 

 

 

レミリアは涙を浮かべていた

主が気付かなかった責任を感じてるのだろうか

永琳はレミリアの答を待つ

 

 

 

 

 

 

 

「…永琳」

 

顔をあげる

 

「咲夜は助かるのか……?」

 

 すると永琳はクルリとレミリアに背を向けた。

  

 

「…無理よ」

 

 

 

 

 

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紅き月と壊れた懐中時計 --

 

 

 

 

 

「少なくとも、今は」

 

そう言ってまたレミリアの方に向く

 

「来なさい」

 

咲夜の居る部屋へ案内する。

レミリアはただ無言のまま永琳の後ろを付いていく。

 隣部屋までの一歩一歩が重たかった。

自分でも分からない。

ただ、部屋を開けたときに私の咲夜じゃなかったら……、そんなことを思ってしまった。

  

 

「開けるわよ、優雲華」

 

永琳の声でハッとする。

 

受け止めなきゃ

 

全てを─────

 

 

 

 

 

 

「彼女は眠ってるわ」

 

いつ覚ますか分からないけど、と後味の悪い言葉を残す。

 

「咲夜っ!」

  

ただ、私は咲夜の傍で泣くことしか出来なかった。

 

 何で泣くの?

  

それすらも分からない

  

悲しいから?

 

 ……私らしくない。

 

 

 

  

 

だけど、私は今咲夜の傍にいたかった。

それは私の本当の想い 。

 

 

 

 

 

 

何時までそこに居ただろうか。

覚えていない。

気付けば、永琳と鈴仙はいなくなっていて

気付けば、朝を迎えていた。

 

そう、何時の間にか私は寝ていた。

丁寧にも誰かが私の為に毛布を掛けてくれたようだ。

気付いたらこの部屋には私一人しかいなかった。

 

 

 

………私一人?

 

 

 

咲夜の布団がきれいに畳んである。

この毛布は咲夜の布団の一部だということに気付く。

驚く、そして困惑。

 

 

 

気付いたら、私は部屋を飛び出した。

 

 

永遠亭の廊下を走る。

 

 

「咲夜、咲夜、咲夜っ!」

「どうしました、お嬢様?」

 

 

いつもと変わらない、咲夜の落ち着いた声

私を安心させるには十分過ぎた。

  

「咲夜っ……!」

 

 思わず咲夜を抱き締める。

 咲夜は最初驚いた様子を見せたが、それを受け止めた。

 

 

「私は大丈夫ですよ…お嬢様」

 

 

 

永琳が居る部屋にレミリアと咲夜が入る。

 

 

「咲夜が起きたんだ!」 

「知ってるわ、貴女が寝ちゃった後、彼女が目を覚ましたもの」 

「昨日はありがとうございました…」

 

咲夜がお辞儀をする。

レミリアは寝てた事に頬を赤らめる。

 

 

「……で、これからどうするの?」

 

永琳が二人を見つめる。

  

「咲夜と一緒に紅魔館に帰るわ」

 

 

そう永琳に告げる。

永琳はその答を予測してたかの様な顔をする。

 

 

「駄目よ」

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、何で駄目なのよ」
 

永琳に抗議する。 

その永琳がため息をする。

 

「少しは考えなさい、レミリア

病み上がりの人をすぐ帰すわけには行かないの。……でも、まぁ、少し経てば帰らせるから」

 「お嬢様、早く帰れるようにしますので…」

 

仕方ない───

 

「……分かった、無理しないでね咲夜」

  

 

 

 

仕方ない、少し経てば咲夜に会えるんだ。

 

 

 

「んじゃ、私は帰るわ。咲夜、待ってるわ

 あと永琳、ありがと」

「はい、お嬢様」

「どういたしまして」

 

それを聞くとレミリアは背を向け帰っていった。

 

 

 

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「帰ったか…」

 

永琳が言葉を漏らす

  

「貴女…、本当に異常が無いのかしら?」

 「はい…」

 

 

 

――――― 昨日 ―――――

 

 

 

目を覚ます

そして辺りを見回す

  

畳、障子、布団。

紅魔館の洋風な部屋ではなく、落ち着いた和風の部屋だった。

和風となると、白玉楼か永遠亭しか無い。

博麗の神社もふと思ったがその可能性は低い。

  

とりあえず起き上がる

  

「って、お嬢様!?」

 

 

そこにはスースーと寝ているレミリア

お嬢様が死ぬ訳ないから……ここは永遠亭かな

 

 

しかし、何故永遠亭…?

ふと目を覚ます前の直前の記憶を呼び出す

 

  

「ぁ……」

  

 

そうか、私は倒れたのか。

心配させてしまって、お嬢様に申し訳ない…。

  

お嬢様に視線を写す

  

 

「お嬢様…、お体が冷えますよ…」

  

そう言って毛布をお嬢様にかける。

 

「永遠亭、ということはあの人達がいるのかしら」

 

 

 

 

 

 

 

懐中時計を見る。

時刻は既に兇魏鵑辰討い襦

深夜の廊下、紅魔館の静けさと少し違う静けさが辺りに漂う。

 

 私は永琳の居る部屋を目指す

……が、その部屋が何処にあるか分からない

  

 

とりあえず適当な部屋に入ろうかな

トントン、とノックをする

はーい、という声がした。

 

聞き覚えのある声、この声は─── 

 

扉を開く

 

 

「ぁ…」 

「こんな夜遅くに……って、ぇぁ…」

 

部屋には鈴仙がいた。

 

「もうお目覚めになったんですね、大丈夫ですか?」
 

最初に口を開いたのは鈴仙だった

 

「ええ、大丈夫よ

 ところで永琳に話したいことがあるんだけど」

 

案内してくれる?と鈴仙に頼む。

 

「師匠の所ですか?いいですよ。…行きましょうか」

 

 

  

廊下を歩く

久々に永遠亭に来た気がする。

  

「咲夜さんって、好かれてるんですね

 レミリアさんに」

 

羨ましそうに笑顔で話す

 

「そ、そうかな…?」 

「ぁ、久々に堅くない咲夜さんですねっ」 

「いつも堅くないわよっ、それに久々と言っても……」

 

 

そんな会話、和やかな空気が続く

  

 

「……着きました、ここが師匠の部屋です」 

「案内、ありがとね」 

「んじゃ、私は帰りますね

 流石に眠いので」

 

そう言って欠伸をする

 

「悪かったわね、おやすみなさい」 

「いえいえ、ではおやすみなさいー」

  

鈴仙が帰るところを見送った後

私は永琳の部屋にノックをする。

 

 

 

「入っていいわよ」

 

扉越しに永琳の声が聞こえた

その声を確認し、扉を開ける。

 

「失礼します」

「夜遅くに……あら」

 

部屋は薬品の臭いで充満していた。

さっきいた和風の部屋とは違う雰囲気だ。

 

……懐かしいような気がする。

 

 

 

 

 

「具合は大丈夫なの?」

「はい、お陰様で」 

「良かった、あなたの主人が血相変えて来たときはびっくりしたわ」

「そう…、ですか」 

「まぁいいわ

 ぁ、一つだけ約束してくれる?」

 「なんでしょうか」

 「一日でもいいから少しの間、この永遠亭にいなさい」

  
意表を突かれた

そもそも、何で?

  

「あの、何で…?」

「貴女、体内時計を止めてるでしょ?」

「……!」

  

お嬢様にも言ってないことを。

やはり、医者には見抜かれたか…。

  

 

「正直言って、貴女には休息が必要なの」

「休息ですか…?私はちゃんと休んでますよ」

「違う、体のことじゃない。精神面の事で言ってるの」

  

黙って私は話を聞く

 

 

「今、貴女の体は危険な状態だわ

 至るところに死が満ちている」

  

死 という単語に反応してしまう

  

「また、詳しく診ないと貴女がいつまで生きられるのか分からない

 何時に死ぬと分かればやり残した事も出来るでしょ?」

 「……はい」

 

 

永琳の言ってることはもっともだった。 

自分自身、いつ死ぬのか分からなくて怖かった。 

 

 

「……残ってくれる?」

 

永琳が確認する。

 

 「分かりました、…残ります」

 

 

 

―――――───―――――

 

 

 

 

 

 

「そういえば……貴女とは昔何処かで会わなかったかしら?」

 

不意に永琳が思い付いたように話す

 

「永琳さんと対峙した時も言ってましたが……、私は会ったことが無いと思うのですが」

 

そう、お嬢様と月を取り戻す時に言われた

  

「いや……、幻想郷の"外"でなにか思い当たることは無い?」

 

 

幻想郷の外の世界

つまり、私がいた世界 

しかし今の私にはその記憶がキレイに消えていた。

 

 

「すみません、無いです」

「そう……」

  

少し残念そうに呟く

 

「んじゃ、診るからこっちに来て」

「…分かりました」

 

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紅き月と壊れた懐中時計 --

 

 

 

ふと気付く

あの面影

だけど彼女の記憶にそれが無かった

懐中時計はまた、時を刻み続ける……

  

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「咲夜……」

 

竹林を空を飛びながら突き進む

 少しの間だが、咲夜のいない生活が始まる

 そう考えるだけで胸が苦しくなる

  

「少し経てば咲夜は帰ってくる」

  

そう自分に言い聞かせる

 

 

 

夜の竹林。

昨日は必死で気付かなかったが、初めて咲夜と異変解決に向かった時に通った道

 

懐かしいな。

竹林で迷いそうになったんだっけ

  

 

長かった竹林を抜ける

 

目の前には人里がある

妖怪が活発になる夜の為か外には人の気配が無い 

いや、一人いた。

 

 

 

飛ぶのを止めて歩き出す

 「……上白沢慧音」

 

 

 

 

「どうだった?」

 

慧音が落ち着いた声で尋ねた

 

「今はなんとも言えない

 ただ、本人は大丈夫と言ってる」

 「そうか、なら良かったな」

 

慧音が安堵し微笑む

 

「……一緒じゃないのか?」

 「あぁ、永琳が少しこっちで安静させてあげて、っ言われた

 だから咲夜は永琳の所にいるわ」

「そうか」 

「そろそろ通らせてくれない?」

 「ぁ、…すまない

 しないと思うが、里の人間を襲うなよ?」 

「襲うわけないじゃない」

  

 

そう言って里を越えて紅魔館を目指す。

途中、夜雀が屋台をやってる所を見かけた。

だが、夜雀と馴れ合うのもなんだか嫌だから通りすぎた。

 

 

 

(静かな夜ね…)

 

 

 

湖が見えてきた。

紅魔舘はもうすぐだ。

私は速度を上げた 。

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の門の前に降り立つ。

 

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 

門番の妖精がお辞儀する

 

普段なら一瞥するだけだ

だが

 

「ただいま」

 

なぜか言ってしまった。

 

……、寂しいのかな。 

 

 

 

主人の様子に妖精が少し驚いた顔を見せたが、すぐ仕事に戻った。

 

 

門が開く

 

 

 

紅魔舘は静かだった。

……ぁ、そうか無断で抜け出したんだった。

心配してるだろうしパチェの所に行かないとね。 

そう思い図書館に向かう。

 

静かな廊下

 

 

普段なら落ち着くだろう

 

 

…今の私には寂しさを感じた。

  

 

(少しの間よ、少しの間)

 

自分に言い聞かせる

 

ぁ……、図書館の扉が見えてきた。

 

 

 

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図書館の扉をノックして入る

 

パチュリーの姿が見えないので小悪魔の司書に聞いてみる 

  

「パチェはいる?」

 「パチュリー様はご自分の書斎にいらっしゃいます」

「そう…、ありがと」

  

パチュリーの書斎に向かう。

辺りを見渡すが、やはりここは変わらないな

 

 

書斎の扉をノックする

するとパチュリーの声が聞こえた。

 

「入るわよ、パチェ」

 「あら、レミィ」

  

相変わらずパチェは本を読んでいた

  

「昨日から咲夜といなかったけどどうしたの?」

 「その……」

 

 やはり言わないと───

 

 「咲夜が倒れたんだ」

 

パチュリーの眉がピクッと動く

 

「本当…?」

「ああ、だから昨日永遠亭に行ってたんだ」

「咲夜は…、見ないけどどうだったの?」

「あっちで少しの間、安静にさせたわ」

 

パチュリーに昨日からの事を話した。

  

「レミィがいいならそれでいいんじゃない?」

  

話を聞いたパチュリーが最後に言った。

  

「あぁ…」

 

 

そう返事してしまった。

 

 

私は…

 

 

 

それで……本当にいいのだろうか───

 

 

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あれから私は自分の寝室に入った。

部屋に向かう途中も何故か力が入らなかった。

 

 

 

「……疲れてるのかしら」

 

ベッドに倒れる。

はぁ…、と溜め息をつく

 

 

胸にポッカリとあいた穴

ふとレミリアは気付く

 

 

 

 

私は咲夜の事が───

……そう、表現するならば、この表現が一番合ってる

 

 

 

私は咲夜の事が好きなのだろう

 

 

昔から

 

 

そして

 

 

未来永劫……。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

 

二回目の溜め息。

 好き という気持ち

 それが、今の状況において追い討ちをかける。

 

  「咲夜…」

 

 試しに呼んでみた

  が、帰ってくる筈もなく。

 

  

いつしか私は眠ってしまった。

  

 

 

…深い眠りに誘われて

  

本当に疲れていたのだろう

  

…夢は見なかった。

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 「師匠……今なんて……?」

 

鈴仙が震える声で話す

 

「仕方ないわ……、でも彼女に言わなきゃならない……」

 「しかし───」

 

涙声。

だが鈴仙の言おうとしたことは永琳も理解出来た。

  

 

――冷えた医務室に薬品の匂いが漂う

  

 

身を翻し、部屋を出ようとする永琳

  

「師匠っ、言うんですか……?」

 

 

永琳は振り返らない

 

 

「だってそれが……医者であって

 彼女を見ていた者だから」

  

なら、なおさらよ

そう言って永琳は部屋を出た

  

 

鈴仙は永琳が出た部屋の扉を見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜が待っている部屋に向かう

……鈴仙は付いてこなかった。

はぁ…、と溜め息。

そして深呼吸。

 

 

長い廊下を歩く。

部屋はもうすぐだ

 

 

昔は楽しかったのに……、と今思う。

姫様と満月を隠した後、私たちは幻想郷に迎えられた

 

皆、楽しかった。

逃げる日々が終わったと実感した。

 

 

しかし"時"はやってくる

 

 

百年はこうも人を、妖怪を

 

「変えちゃうなんてね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜の居る部屋の前で止まる。

深呼吸。

 

  

扉を開ける。

 

 「咲夜……、ってあれ」

 

壁に寄りかかってスースーと寝ている咲夜

  

「仕方ないか」

 

 

もう夜が終わりかけているのだから……。

 

 

「体冷えるわよ…」

 

部屋に畳んである毛布を咲夜にかける。

そして、おやすみと言って永琳は部屋を出た。

廊下には涙目の鈴仙がいた。

 

 

「どう…でした?」

「寝てたわ」 

「そう…ですか」 

「今日は遅いわ、寝ましょう」

「はい…」

 

二人は自分の部屋に向かった。

鈴仙は永琳の後ろをついていき

永琳はなにかに堪えながら。

  

「おやすみなさい、優雲華」

「おやすみなさい、師匠…」

 

 

夜は静かに明けていった…。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

「……」

 

誰も起こしてはくれない。 

カーテンの隙間から溢れる光が眩しい

  

「やっぱり……いないか」

 

今日は何をしようか

  

「図書館に行くか…」

 

 

ベッドから出て服を着替える。

 咲夜がいないと寂しい。

 

 

 

 

「レミィがいいならそれでいいんじゃない?」

この言葉が繰り返される。

廊下を歩き、図書館をノックし入る。

パチュリーは本がたくさん積んである机で本を読んでいる

 

 

「あら……レミィじゃない」

「おはよう、パチェ」

「おはよう…って、もう昼過ぎよ?」

「あれ、もう昼過ぎなのか」

 

ふと時計に目をやる

時針が兇鉢靴隆屬鮗┐靴討い襦

結構寝ていたのか


「なぁ、パチェ」

「なによ、改まっちゃって」

「私は……」

「好きにやってみたらいいじゃない」

「……ぇ?」

「お見通しよ、貴女が咲夜を連れて帰るなんて」

 

図星

やはりパチェは凄いな

 

「その顔は……、やっぱり行く気だったんでしょ?」

「あぁ…」

「気を付けてね、何時出発するの?」

 

そんな事言われても考えて無かったわけで

でも、早く咲夜に会いたい

 

だから咄嗟に

 

「今日の夜」

 

と、言った

 

「彼女……、咲夜をはやく連れて帰りなさいよ」

「あぁ、分かってるわ」

「……話はそれだけ?」

「うん」

「そう…」

 

「レミィ」

諭すような落ち着いた声

「なに?」

「……やっぱりいいわ」

「……?」

 

 

それからパチュリーと紅茶を飲みながら夕方まで話した。

 

 

…落ち着かなかった。

 

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あれから永琳はタイミングが掴めず昼が過ぎ

辺りは少し暗くなってきている。

 咲夜は永琳から安静と言われているため布団の中だ

 

 ……仕方無い

今から咲夜に言わないと

 これ以上、躊躇してる訳にはいかない。

 

 

 

ふと外を覗く

 夕日が綺麗だった。

沈みかけの夕日が空をオレンジ色に染める。

 

  

扉を開ける。

咲夜は起きていた。

 

「どう調子は?」

「大丈夫です」

「そう……」

 

 沈黙

 

 

最初に口を開いたのは咲夜だった

  

 

「私は…いつまで生きられるのでしょうか…?」

 

 

いきなりの本題。

  

「咲夜、落ち着いて聞いてね…」

「もう一度診断した所…」

「はい…」

「貴女の命は…」

  

 

声が震えてしまう

咲夜は真剣な眼差しで私を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜、貴女の命は……あと一週間よ」

 

 

 

一瞬、時が止まったように感じた。

 

 

「一週間……ですか」

  

布団から体を起こしてる咲夜が目を閉じる

それは少しの時間だったが咲夜にとって長かった

私は咲夜の言葉を待つしか無かった

 

 

「良かった、一週間も生きられるのね」

「……ぇ?」

 

なんでこんなに彼女は…。

 

「永琳、ありがと」

 

彼女が微笑む

気付いたら私は彼女を抱き締めていた

 

 

「……どうしました?」

「……っ」

 

 

自分でも何で泣いてるか分からない

もしかしたら……。 

彼女の前向きな心が───

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

そっと離れる

 

 

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」

 

落ち着いた声で咲夜が訊いた。

 

「何?」

 

「体内を止めてる力を解いてもいいかしら…?」

 

「だけど、貴女の体力じゃまた体内の時計を止めることは出来ないわ

 …それでもいいの?」

 「私は…力を使うことに疲れたわ

 最後くらい、…いいでしょ?」

 「貴女がそれでいいのなら」

 「…それでもいいわ」

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

空を仰ぐ

太陽が沈み、夕焼けが広がる。

夜まで待つつもりは無い。

光によって痛む体に鞭を打ち、翼を広げる。

 

 

「咲夜……今いくから」

 

  

そう言ってレミリアは飛び立ち彼方に消えた。

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

「大丈夫?」

 

長年もの枷が外れていく

その為か咲夜に激痛が走る

 

「……ッ」

 

 

 

周りの空間が歪む

体内時計の枷を外すだけでもこんなに力が溢れ出すとは

永琳は驚く。

咲夜の能力は蓬莱の薬と対なす力に成りうるだろう

  

 

咲夜の空間が収束していく。

 

 「……大丈夫?」

 

さっきと同じ言葉をかける

  

「……、大丈夫です

 少し疲れた……」

 

 

そう言って咲夜は倒れた

大丈夫、心臓は動いている。

 

 

「師匠!」

 

ふいに、鈴仙が部屋に飛び出してきた

 

「侵入者です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「侵入者って、誰?」

「顔は見てませんが…」

 

駄目じゃない…。

 

「とりあえず、姫を」

「はい」

 

 

と、廊下に出た時だった。

 

 

「咲夜を返してもらいに来たわ」

 

 そこには紅魔館の主、レミリア・スカーレットが立っていた。

  

「侵入者ってのは貴女かしら?」

 

 フフッと笑うレミリア

 

 「私は堂々と玄関から入ったんだけど」

 「優雲華」

 「は、はいっ」

 「紛らわしい事はしないで頂戴」

 「はい……」

 

 

 

レミリアが寝ている咲夜に近付く

 

 

「咲夜は…、何時までもつんだ?」

 

 

私たちに背を向けながらレミリアが尋ねた

 

 

「……一週間よ」

 

 

沈黙、そこには微かな緊張があった

 

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜は連れて帰る、いいわね?」

「…いいわ」

 

 

 

レミリアはその後咲夜を背負った。

背丈が伸びたせいか、咲夜と変わらない

 

 

「世話になったわ、ありがとう

 ……永琳」

「…どういたしまして」

 

 

そう言ってレミリアと咲夜は永遠亭を出た。

 

 

……永琳と鈴仙は竹林の中に消えてゆく背中を見届けた。

 

 

もう二度と会えないかもしれないのだから。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

太陽は沈んだ為か辺りは薄暗い

 

「………あれ……お嬢様?」

 

咲夜が目を覚ました。

 

「ぁ……咲夜、起きたのね」

 「あの、お嬢様……、は、恥ずかしいので下ろしてくれませんか…?」

 

 第一声がこれか…

もう少し咲夜をおんぶしたかったわ

  

「…分かったわ」

 

ゆっくりと咲夜をおろす

  

「……、大丈夫?」

 「……大丈夫です」

 

 といいながらも咲夜の足がおぼつかない。

 

「仕方ないわね」

 

そう言って肩をかす

 

「……ぁ」

  

咲夜が頬を赤らめる。

 

 「すみません…お嬢様…」

 

 

 

 

 

レミリアが咲夜に肩をかしながら薄暗い竹林を歩いていく

 

  

「ねぇ、咲夜」

 

足が止まる

 

「なんでしょうか?」

 「……星が綺麗ね」

 

夜空を見上げる

幾千もの星が輝いている。

 

 

「……綺麗、ですね」

  

見とれてしまったのか咲夜は星空を見上げている

  

私ももう一度見上げる

……それはとても幻想的で───

 

 

 

 

「さ、行くわよ

 夜が明ける前に着かなきゃ」

 「そうですね」

 

 

 

「…お嬢様」

  

しばらく歩くと咲夜が口を開く

  

「どうしたの?」

「あの……私、実は…」

 

分かってるよ、咲夜の言いたいコト

  

「…言わなくていいわ」

「しかし、私は…」

 

 

「いいの、……知ってるから」

 

 

一週間までの命、そんなコト咲夜の口から聞きたくない

私は今ある"時"を大切にしたい

せめて最後まで私も咲夜も悲しい思いはさせたくないから

 

 

だから、この一週間を大切にしたい…… 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか…」

「ねぇ咲夜」

「なんでしょうか…?」

「帰ったら……何したい?」 

 

「私は……お嬢様の傍にずっと居たいです」

 

そう言って、クスッと笑う咲夜

  

「咲夜…」

  

私とずっと居たい

それを何度も心の中で復唱する。

  

「私も咲夜と一緒に居たいわ」

 

 

私もクスッと笑う

 

 

 

 

 

満天の星空の下

 

二人は楽しそうに道を歩く

一週間の命である人間

そして、半永久に生き続ける吸血鬼

二人にとってこれからの一週間はとても長くて

 

とても儚くて……

 

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紅き月と壊れた懐中時計 -最終章-

 

 

今でも鮮明に覚えてる。

貴女と初めて会った時

貴女と一緒に月を取り戻した時

そして、貴女が初めて笑った時

 

懐中時計は止まることなく、世界は変わることなく

 

残された私は足掻いていく

そして消えていく

 

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紅魔館に帰ってきた。

綺麗だった星空も、今や太陽が昇り始めようとしている。

 

「ふー、やっと帰ってきたわね」

「そうですね」

 

門番の妖精が壁にもたれて寝ている。

仕方ない自分で開けるか

そう思い紅魔館の扉を開ける。

 

 

紅魔館の中は静かだった

それもその筈、普通は寝てる時間だからだ

 

「お嬢様、……お休みになりませんか?」

 「そうね、そうしましょ」

  

廊下を二人並んで歩く

 

扉を開いて部屋に入る

 

「お嬢様」

「なに?」

「私の部屋で寝るんですか?」

「駄目?」

「いや、逆に嬉しいです…」

  

服を着替える。

竹林を歩いたせいか泥がついている。

 

「咲夜、……って着替えるの早いわね」

「…寝巻きですからね」

 

と笑顔を見せる。

私もつられてしまう。

 

「お嬢様、ボタン付けましょうか?」

「こ、これくらい出来るわ」

 

焦ってボタンをかけ間違える

 

「付けましょうか…?」

「…咲夜、お願い」

 

咲夜がボタンを付ける

一つ一つ丁寧に。

 

 

「さ、終わりましたよ」

「ありがと、咲夜」

 

 

二人はベッドに入る

咲夜がいるから温かい

 

だが、やはり睡魔には勝てない

針はもう犬魏瓩ようとしてたから

 

二人はスヤスヤと深い眠りに落ちた。

安らかな笑みを浮かべて……。

 

 

 

 

 

 

久々に夢を見た。

咲夜と私がずっと過ごす夢を

楽しい生活が永遠と続く。

 

目を覚ましたら私は泣いていたことに気付いた。

そっと目を擦る。……やっぱり泣いていた。

 

 

静かに寝返りをうつと、隣には咲夜がいなかった。

一瞬戸惑ったが、ベッドから起き上がると咲夜が紅茶を淹れていた。

 

 

「おはよう、早いのね咲夜」

「ぁ、お嬢様おはようございます

 紅茶を淹れておきましたわ」

 

無理しなくていいのにと思ったがそれは言わなかった。

 

「ありがと、咲夜」

 

 

ベッドから出て椅子に座る。

向かいには咲夜が座っている。

テーブルには咲夜が入れたばかりの温かい紅茶。

 

針は昼を過ぎた兇鮗┐靴討い拭

 

 

 

――――残り六日――――

 

 

 

「やっぱり咲夜の紅茶は美味しいわね」

「ありがとうございます」

二人とも笑みをこぼす。

 

その時間はゆっくりと流れていく

 

「ねぇ咲夜

 何処か行きたい所とかある?」

「行きたい所ですか…?」
 

うーん、と悩む咲夜

 

「花見…なんてどうでしょうか?」

「花見か……そういうば今年は行ってないわね

 白玉楼に夜桜なんてのもいいわね」

「何か料理でも作っていきましょうか?」

「うん、私も手伝おうかしら?」

「お願いします」

 

 

夕方になるまで私は咲夜の料理と支度を手伝った。

……こういうことは馴れてない為か、足を引っ張る形になってしまった。

 

「つ、次は出来るわ」

「頑張って下さいお嬢様」

料理も結局、咲夜が一人でやることになった。

 

 

……情けないわね、私。

 

 

そんなこんなで時は過ぎていく

私には決めていたことがあった。

 

咲夜と二人だけで行く

 

……フランやパチェ、美鈴を連れていくと五月蝿くなるし

亡霊の姫と庭師が敵だと思われるしね

 

それに私自身、咲夜と二人だけが良いから

 

 

 

「お嬢様、支度出来ましたよ」

 

時計の針は困鮖悗靴討い襦

私が足を引っ張ったせいで時間がかかってしまった。

 

「んじゃ、行くわよ咲夜!」

 

 

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桜花結界を抜け、長い階段を飛ぶ

ここには桜の木は無いが桜の花びらが舞っている。

 

「お嬢様、綺麗ですね」

「うん、でも白玉楼はもっと綺麗な筈よ」

 

 

と心弾ませながら二人は話した。

……やっと階段の終わりが見えた

 

 

「もう少しよ、咲夜」

「はい」

 

近づくにつれ桜の花びらも多くなってくる

 

 

「……着きましたね、お嬢様」

「綺麗ね…」

「はい…」

 

 

 

 

私達はその美しい桜の木に見惚れていた。 

 

見渡す限りの桜の木

桜吹雪がとても綺麗で美しくて…。

 

 

 

 

「さ、奥に行ってみましょうか」

と、咲夜の声でハッと気付く

「そうね、行きましょ」

 

そう言って歩き出す。

 

「………ぁ」

「どうなさいました?」

「咲夜」

「……はい?」

「その……手、繋いで」

 

その言葉に咲夜は一瞬時が止まったように感じた

そしてにっこりと微笑む。

 

「はい、喜んで」

 

咲夜が先に手を差し出す。

それを私がそっと握る。

 

  

二人は少し頬を赤らめながらも桜が舞う道を歩いていく

 

 

 

 

満開にならない西行妖は百年経っても未だ満開にはならない

つまり、亡霊の姫がまだいるわけで。

 

「あら、珍しい」

 

その姫が屋敷から顔を覗かせる

 

「たまにはいいかなってね」

「ふーん、まぁいいわ」

 

そう言って幽々子は帰っていった。

夕食でも食べにいったのだろうか。

 

「さ、咲夜。ねぇ、あそこで食べない?」

「いいですね、行きましょうか」

 

私が指さしたのはある桜の木の下

料理を食べながら桜を見るにはもってこいだ。

咲夜の手を引っ張りながら走る

 

 

「ぁ、お待ちくださいっ」

「咲夜、遅いわよっ!」

  

 距離はあまり無かったため、息切れすることは無かった。

  

「はい、お嬢様」

 

咲夜が持ってるランチボックスの中に入っているサンドイッチを手渡す。

 

「ありがと」

 

桜の木に寄りかかる形で座る。

咲夜もサンドイッチを手に取り座る。

 

「さ、食べましょうか」

 

 

 

「「いただきます」」

 

 

……静かに二人の夜桜の宴は始まる

 

 

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「どうなさいましたか、幽々子様」

 

庭師である妖夢が夕食を運びながら訊いてきた

 

「久々にあの人逹を見たから、懐かしいなーって」

 

そう言って障子の向こうを指す

 

「あの人達……ですか?」

「開けてみなさい」

 

妖夢が障子を開いて外を見る

 

「……ぁ、紅魔館の人達ですね」

「そうだ妖夢、ワインあったかしら?」

「幽々子様がワイン……ですか?」

「違うわ、あの人達に贈ってあげるのよ」

「……はぁ」

 

内心、そこまで必要なのかと思ったけど

……そこは訊かないでおいた

 

 

 

「……いただきまーす」

 

妖夢が作った料理を食べる

 

果たしてあのメイドは何時までもつのだろうか……。

 

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「咲夜の料理はやっぱり美味しいわ」

「ありがとうございます」

 

夜桜を見ながら咲夜の料理を頬張る

……なんて幸せなんだろうか

 

  

「お嬢様、……あれ」

「あら、あれは…」

 

咲夜が向いた方向を見る

 

そこには銀髪で刀を腰に提げている少女がいた。 

少女、妖夢は両手でワインを持ちながらやって来た

  

「お久しぶりです

 あの、幽々子様がこれを…」

 

ワインを咲夜に渡す

 

「ぁ、ありがと」

 

戸惑いながらも咲夜は返事をする。

ワインは赤ワインだった

 

「あの、私はこれにて失礼します」

 

そう言って妖夢はすたすたと帰っていった

  

「お嬢様、これ……どうしましょ?」

「折角だし飲みましょ」

「そうですね」

 

  

グラスにワインを注ぐ

 

  

「「乾杯」」

 

桜を見ながらワインを口に注ぐ

 

  

ああ、やっぱり綺麗だ

いや、綺麗というより美しいという表現があってるのかな

これが、咲夜と最後の花見という事に後悔した

 

また…、また咲夜と行きたいのにね……。

 

 

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残り六日だが、1〜2日は咲夜の体は衰弱してしまうだろう

 

その前に私は

 

私と咲夜との思い出を作りたい

 

出来る限り多くの思い出を…。

 

 

 

「―――――」

 

 

 

 

ああ、駄目だな私

 

 

 

こんなに永く生きているのに

 

 

 

 

 

咲夜の事を考えると涙が出てくる……。

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

咲夜に気付かれないようにそっと涙を拭う

桜を見ながら咲夜に訊く

  

「ねぇ咲夜

 私は貴女に何をしてあげられるかしら……?」

 

咲夜がそっと私の手を握る

そして咲夜もまた、桜を見ながら応える

 

「何もしなくていいですよ

 お嬢様が傍にいるだけで、笑ってるだけで私は幸せです」

 「咲夜…」

 

 

そうか、そうだった

 

私が泣いてどうする

 

私が明るくならないと───

 

 

「ねぇ咲夜」

「なんでしょうか」

「ちょっと……散歩してみない?」

「はい、でも遠くまでは行かないで下さいね」

「分かったわ」

 

 

立ち上がる

 

私は咲夜の手を握ったまま、夜の暗がりの中歩き始めた

桜が黒を白に染める。

 

 

 

「ねぇ、咲夜

 貴女と初めて会った時の事を覚えてる?」

「はい」

「初めは面白い人間だなって思ってた」

「面白い人間ですか」

 

咲夜がクスッと笑う

 

「貴女が"十六夜咲夜"になって、紅魔館のメイド長になって…

 私は……」

 

 

咲夜に顔を向く

 

 

「咲夜がいることで安心出来た」

「私もですよ、お嬢様」

 

一時の沈黙

決心を決めたように私は口を開く

 

 

 「私は咲夜の事が……」

 

 

 

ああ、言おうと思ったけど駄目だ

やっぱり、恥ずかしくて言えない……。

 

 

 

「さ、咲夜!」

「は、はい?」

「そろそろ帰るわよ!」

「ぇ、ぁ、あれ?」

「日付も変わるわ、さっ帰りましょ!」

「わ、分かりました、帰りましょうか」

 

苦笑いの咲夜

顔が真っ赤な私

 

 

 

言えるわけないじゃない

"好き"だなんて

 

 

 

だけど、言わなかったことにすこし後悔した。

 

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―――あれから私達は

紅魔館で皆でパーティーをしたり

湖の畔でゆっくりしたりした

いつも咲夜は私の傍にいてくれた

 

 

楽しい思い出が増えていく

 

ただ、"好き"とは言っていない…

 

 

 

 

それは、残り2日になった頃だ

 

 

咲夜の体が急変した

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

「咲夜……?」

 

それは図書館に向かう時だった

廊下で咲夜と歩きながら話していた。

不意に咲夜は倒れた。

 

 

 

 

唐突の出来事に頭が真っ白になる

 

 

咲夜を抱え、図書館へ向かう

ノックなんてしてられない

 

「パチェ!!咲夜が…」

「一体何の…、……!」

 

読んでいた本を置く

 

「私の書斎にベッドがあるわ

 使いなさい」

「分かった」

 

 

パチュリーと小悪魔が協力してベッドに咲夜を寝かせる。

 

 

咲夜の手を握る

少し、冷たい気が……した。

 

 

「咲夜……、咲夜……」

 

名前を何度も復唱する

 

 

「レミィ、大丈夫よ

 今は寝てるわ」

 

落ち着いた声でパチュリーが話す

どこか寂しげで、余計に私を不安にさせる

 

「それに───」

 

 

「───まだ2日あるわ」

 

これだけは言いたくなかったけど、と呟く

 

 

 

 

 

 

 

「もう、2日しか無いわ……」

 

そう……私は呟いた 。

 

 

 

 

 

 

 

「咲夜さん…!」

 

美鈴が勢いよく書斎に入ってきた

 

 

「ぁ、あの倒れたと聞いて」

 

ここに来た理由を話す

 

「ねぇ、美鈴」

「な、なんでしょうか?」

「二人にしてあげましょ」

 

美鈴が咲夜とレミリアを一瞥する

 

 

「……そうですね」

 

そう言って二人は部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

「咲夜…」

 

頬を撫でる

…綺麗な白い肌。

 

白い、雪のようで…。

 

 

咲夜の心音に耳を澄ませる。

 

…微かに聞こえる、休むことなく動き続ける心臓

 

 

 

 

時は過ぎていく…。

 

 

 

 

チッ……チッ……チッ……チッ…。

 

 

銀の懐中時計の音が部屋に響き渡る

 

 

小さい音だけど、確かに聞こえる音。

 

 

時間を分割して、一秒が無限にへと変える……。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

「ねぇ、優雲華。咲夜がここまで生きられたのは何でだと思う?」

「体内の時計を止めていたから……じゃないんですか?」

「それもあるけど。普通は百年も無理よ」

「うーん………私には分かりません」

「まぁ、いいわ。今の忘れて頂戴」

「はぁ……」

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

咲夜の手をぎゅっと握る。

少し……冷たかった。

 

  

「もう咲夜が起きるまで寝ないんだから…」

 

  

咲夜の顔を見る

安らかな顔だ。

少し、微笑んでるように見えた。

 

  

「咲夜……」

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

今、私は夢を見てる。

 

何故?

だって、これは有り得ない事だから。

 

 

 お嬢様と私が永遠に居ること

 笑い合って、そして、紅魔館の皆でパーティーを開くの

 そんな楽しい日々が続く

 

  

だから、私はそれを"夢"だと分かった。

  

 

だけど

 

  

少しは…

 

  

少しは、この夢を見ていていいよね……?

  

 

 

 

 

 

――だがその時、私の手が暖かい手に握られた感じがした

 

 

 

 

誰かが言った。

 

  

永遠では無いから

 

だから

 

人は生きていくのだと

 

 

 最後まで人間で在り続ける事が……

 

 

 

永遠の二人を一瞥する

 

  

私は、……やはり夢なんて見ていられない

 

  

永遠は偶像にしか過ぎない

 

 

さぁ、帰らなきゃ

 

 

 

私は瞼を閉じて

 

 

 

温かいその"手"をしっかりと握る。

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何時間経っただろうか

 

いや、もしかしたら数分なのかもしれない

 

そんなのはどうでもいい

 

 

咲夜の手をもう一度握る

 

 

そしたら握り返してきた。

 

ぇ……?

 

 

 

「さ、咲夜?」

「お嬢様……」

 

以前、咲夜の瞼は閉じたままだが、咲夜は確かに言った

 

 

「良かった…咲夜…」

 

思った事を思わず口にしてしまった

 

「お嬢様……」

 

 

咲夜が静かに瞼を開ける

いつもと変わらない咲夜がそこにいた

  

 

咲夜が起き上がろうとする、が

 

「……ッ」

「無理しないで、咲夜」

「……はい」

 

私は咲夜のベッドに座る

 

「お嬢様、まさか、ずっと傍に…?」

「そのまさかよ」

「ありがとうございます」

「…当たり前じゃない、咲夜の傍に居たかったしね」

 

 

「そうだ、パチェに咲夜が起きたって言ってくるわ

 ついでに茶菓子持ってくるわね」

 

そう言って私は部屋を出た。

 

 

咲夜の部屋に戻るまでの時間が、辛くて

一秒たりとも無駄には出来なかった。

 

 

 

 

 

茶菓子と紅茶をトレイに乗せ、部屋に戻る

 

咲夜は体だけ起き上がっていた

 

「ありがとうございます、お嬢様」

「体は大丈夫なの?」

「少し痛みますが……心配には及びません」

「そう……」

 

 

テーブルにトレイを置く

 

 

「咲夜、飲む?」

「はい」

 

 

トレイから2つ、紅茶を淹れたカップを持ち、片方を咲夜に渡す

 

 

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

 

淹れて間もない温かい紅茶を口にする

 

 

「……熱いわね」

「……そうですね」

 

 

フーッ、フーッ、と紅茶を冷ます咲夜

それを見て、私も咲夜の真似をする

 

 

「……フフ」

 

その光景を見て、笑みが溢れる

 

 

 

また、いつもの光景だ。

あと何回、この光景を見ることが出来るだろうか……?

 

 

 

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あれから私達は思い出話にふけった

 

途中からパチェや美鈴が来て話は盛り上がった

 

咲夜は途中から皆の話を聞いて笑っていた

 

終始私はそれを見て安堵した

 

 

 

「咲夜さん…大丈夫ですか?」

「少し、疲れたかな」

「んじゃあ、夜も遅いし寝た方がいいわ」

 

美鈴がパチェの提案にそうした方がいいですねと話す

 

 

あれ、引っ掛かったことがある

 

 

 

夜遅い……だと?

 

 

 

記憶を辿る

 

 

 

残り二日の夜に咲夜が倒れた

 

あれから1日経ったのか…。

 

 

そして、数時間後には………

 

 

 

おやすみ、という二人の声が聞こえる

 

 

 

……私は……

 

 

 

「お嬢様…?」

 

 

私は……!

 

 

「…咲夜」

「お嬢様、おやすみなさい」

 

咲夜の優しい声

 

「…おやすみ、咲夜」

 

 

 

 

私は本当にどうしようもないのかもしれない

 

 

私は咲夜のいた部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女、それでいいの?」

「……パチェ」

 

部屋から出ようとしたとき、目の前にパチュリーがいた

 

……やりとりを聞いていたのだろう

 

「言いたくないけど、残り1日なのよ…?」

「ああ、分かってるわ」

「だったら……!」

 

 

 

「分かってる……分かってるわ」

 

 

 

「パチェ、運命ってなんなんだろうね」

「……運命?」

 

 

 

レミリアの背を見るパチュリー

私は図書館の窓から見える星を見ていた

 

 

 

「これも運命なら、私は変えたい」

 

私は話を続けた

 

「意図的に、しかも大きな事象を変えられない私が憎いわ」

「レミリア……」

 

 

 

「やっぱり……部屋に戻るわ」

 

 

その時、私は知らず知らずに笑った気がした

 

 

「パチュリー、皆を頼む」

「……分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

扉をガチャリと開ける

 

「あ、お嬢様」

「あれ、起きてたの?」

 

咲夜は起きていた

手には懐中時計

 

「なかなか寝付けなくて…」

「そう……」

「もうすぐ、ですね……」

 

咲夜が突然呟く

 

「……」

「お嬢様」

「……ん?」

「私は……後悔していません」

「……うん」

「だから、自分も死のうなんて考えないで下さいね」

「し、死なないわよ!」

「……良かった」

 

 

 

……図星だった

 

 

 

「……何で分かったの?」

「やっぱり死ぬつもりだったんですね」

「……」

「約束です、はい」

 

そう言って咲夜は小指を差し出す

 

私も小指を差し出して約束をする

 

 

「何で分かったの?」

「百年もお嬢様の傍にいるんです、簡単なことですよ」

 

 

そうだ、咲夜と私はいつも傍にいたんだ……

そんなことを考えたら泣きたくなった

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、咲夜」

「なんでしょうか?」

「楽しかったわ」

「私もです、お嬢様」

 

優しい笑顔

 

思えば、いつも咲夜は私の前では笑顔だった

 

そこに、どんな事があろうが

 

咲夜はいつも笑顔で私の傍にいてくれた

 

 

 

「ねぇ、咲夜」

「なんでしょう?」

 

私は天井を見上げる

 

今、咲夜を見たら

 

私、どうかしちゃうかもしれないから

 

 

 

「私は………泣き虫だわ」

「お嬢様…」

「私は……何も気付いていなかったのかもしれない」

 

 

「下らないプライドに縛られて、孤独が嫌だから咲夜の傍にいて

だけど………、孤独が嫌だから咲夜の傍にいたんじゃなかった」

 

 

 

何故だか涙が溢れてきた

 

 

 

「お嬢様……」

 

 

 

泣いたなら咲夜の方に向いたって同じだわ

 

 

「だって、私は」

 

咲夜の方に体を向ける。

咲夜と目が合う

 

 

 

「咲夜の事が好きだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私もお嬢様の事が大好きです」

 

「……えっ」

 

驚いて声をあげてしまった

 

まずい、頭が真っ白になりそう……。

 

「…本当?」

「本当です」

 

 

 

「咲夜っ!」

 

ベッドにいる咲夜を抱き締める

強く、優しく、咲夜を抱き締めた

 

 

……咲夜はとっても温かった

 

 

 

「咲夜…」

「なんでしょうか…?」

 

抱き締めたまま、私は涙声で話す

 

 

 

「もう少し、早く言っていたら……」

「気に、しないで下さい」

 

ベッドに入る二人

涙は収まったみたいだ

 

「咲夜、手、繋いでいい?」

 

コクリと頷く咲夜

 

そっと手を繋ぐ

咲夜の手は温かった

 

さっきの倒れていた時の咲夜とは別人みたい

 

 

「お嬢様の手、暖かい…」

「ありがと」

 

 

 

「お嬢様」

「どうしたの?」

 

咲夜が俯く

 

 

 

「私……もう少しでいいから生きたかったなぁ…」

 

咲夜の手が私の手をぎゅっと握る

 

「……咲夜」

 

 

私は咲夜を見ていることしか出来なかった

 

 

 

そうだ、方法がある

私の吸血鬼の血を飲めば咲夜は生きることが出来る

 

何故今まで気が付かなかったんだ

 

「ねぇ咲夜、私の血を飲めば…」

 

泣きそうな咲夜がこっちを向いた

 

「お嬢様……、お気持ちだけ受けとりますね」

 

咲夜が続ける

 

「私は……、最後まで人間で在りたいんです

 私は生きたい…、でも叶わない我が儘だって事は分かる」

 

 

 

そして咲夜は笑顔で主人にこう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう私は時間がないのかもしれません……」

 

 

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今、咲夜はなんて言ったの……?

 

 

「咲夜…、どういうことなの?」

「お嬢様、最後に連れて行って欲しい所が…」

 

"最後"という言葉に反応する

 

 

咲夜の懐中時計を見る

既に時針は将兇魏瓩ていた、つまり最後の日だ。

 

 

 

「……いいわ、咲夜の行きたいところについてくわ」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

「…立てる?」

 

手を差し出す

 

「……なんとか」

 

咲夜の足はフラフラで

体はもう衰弱している

 

「これで大丈夫かしら」

 

肩を貸すレミリア

 

 

 

 

部屋から出たらパチュリーがいた

 

「どうしたの、二人とも……?」

「その、咲夜が…」

「最後に生きたい場所があるんです」

 

ハッキリと話す

その言葉には威厳があった

 

 

「……咲夜」

「はい」

「もしかしたら……、これが最後かもしれない」

「パチェ…!」

「レミィ……分かってるわ私だって望みたくない」

 

「咲夜、最後かもしれないから言っておくわ」

 

 

魔女は静かな声で話す

その声は少し震えていた

 

 

「今までありがとう

 

 

 

 ……楽しかったわ」

 

「どういたしまして」

 

咲夜が静かにお辞儀をする
 

「それと──

 こ、紅茶……美味しかったわ……」

 

 

 

震える声で魔女は滅多に見せない涙を見せた。

 

 

 

「さ、行きなさい…

 時間は少ないわ…、そうでしょう?」

 

「……はい」

「パチュリー様」

「……何?」

「今までありがとうございました」

 

 

 

 

 

その後、司書さんにも咲夜は"お別れ"を告げた

やり取りを聞いていると、もう少しで……、と気付いた

 

もう会うことが無いから

 

会うことが無いから咲夜は……

 

 

 

一人一人の顔を記憶に焼き付ける

 

そう、最後の最期まで……。

 

 

「今までありがとう、司書さん」

「そんな、咲夜さん……

 "ありがとう"は私の方です

 咲夜さん…今までありがとうございました」

 

 

司書も涙声で、いや、既に涙を目に溜めながら震える声で話す

 

 

その光景を見ていると、私もつられて泣きそうになった

 

 

「ありがとう」

 

そう言って、司書と別れる

 

 

 

 

図書館の扉の前で立ち止まり、後ろを振り向く

大量の本がある紅魔館、いや幻想卿一を誇る図書館

 

 

「やっぱり、凄いわね…」

「ええ……」

 

  

咲夜は図書館を

 

図書館との思い出を、その目に焼き付けた

 

 

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図書館を出て廊下を歩く 

一歩一歩、歩く度に紅魔館の思い出が甦る

 

 

 

「あーっ!お姉様と咲夜!」

「……フラン」

「……? どうしたのお姉様、元気ないよ?」

「あのね、フラン…」

「妹様」

 

咲夜が遮る

 

「少しの間旅に出ようと思います」

「……そうなの?」

「はい」

「とてもそうには見えないけど……?」

 

咲夜はレミリアの肩を借りて立っている状態だ

誰だって旅に行くとは思わない

 

 

「……まぁいいわ、気を付けてね」

「……はい」

 

 

「あの、妹様」

「ん?」

「今までありがとうございます

 妹様とあまり遊べなくてごめんなさいね…」

「いいのよ、"ありがと"って言うのは私の方だしね」

「……ぇ?」

「ありがと、"咲夜"」

 

 

にぃ、と笑うフラン

咲夜もそれに応え、お辞儀した

 

 

「じゃあねー、咲夜ー」

 

そう言って手を振る

 

「さ、行きましょうかお嬢様」

「…そうね」

 

 

廊下を歩き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………嘘つき」

 

 

 

二人を見送り、フランはそう呟いた

 

自分の部屋に向かい、廊下を歩く

  

 

 

「咲夜の……ばか……」

 

 

 

 

 

 

そう言って、一人廊下で泣き崩れた

 

 

 

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紅魔館のメイド妖精達にも別れの言葉を告げる

 

妖精達は驚き、悲しんだ

そうして、紅魔館の入口に着く

 

 

後ろを振り返り紅魔館を見渡す

 

メイド長としての思い出が

レミリアと一緒に居た思い出が

 

そして"皆"との思い出が

 

 

忘れないように目に焼き付ける

 

 

 

 

 

「咲夜さーん!」

「……美鈴?」

「妖精から聞きましたよ、私を忘れないで下さいっ!」

「ごめんなさいね」

 

 

 

 

 

「やっぱり……これが最後なんでしょうか…?」

「……えぇ」

 

俯く美鈴

それを見て咲夜は美鈴の頭を撫でる

 

 

「さ、咲夜さん…?」

「美鈴」

「は、はいっ」

「メイド長は大変だけど……、頑張ってね」

 

 

 

「……はいっ!」

 

 

 

涙脆いせいか、涙を流しながら美鈴らしく、元気に返事をした

 

 

 

「美鈴、今までありがとう」

 

 

 

「……っ、……はい!」

 

 

咲夜は手を振り、美鈴と紅魔館に別れを告げた

 

 

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「星が綺麗ですね…」

「綺麗だわ…」

 

夜空は雲一つ無く、満天の星空だった

 

「風が気持ち良いですね…」

「…そうね」

 

 

 

空を見上げる

 

 

 

十六夜の月だった

 

 

 

「お嬢様、行きましょうか

 "私達が初めて出会った場所"へ」

 

 

 

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「……ッ」

「さ、咲夜大丈夫?」

「大丈夫…です」

 

 

"時"が迫ってるせいか、咲夜の体にも異変が起きたのだ

 

 

突如来る目眩

  

咲夜の時間が刻々と失っていくことが分かる

 

それでも私達は一歩ずつしっかりと歩き出した

 

 私達の始まりの場所

 

私達の終わりの場所へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたよ、咲夜」

「はい」

 

湖の畔

 

咲夜が話始める

 

「ここから私は変わった

 幸せでした、皆優しい人で」

「……咲夜」

「メイドになって、メイド長になって……色んな人達と会って

 そして、お嬢様と会えて…」

 

  

咲夜が私の方に向く

肩を貸しているため、咲夜の表情が見えた

 

 「お嬢様と会えて…………、本当に良かった」

 

 

 

「私もよ咲夜

 貴女に会えて幸せだった」

 

 

 二人とも声が震えてることが分かる

 

  

「お嬢様…!」

「咲夜……」

 

抱き締める

咲夜の体は冷たかった

 

 

 

「………」

 

今まで堪えてきた涙が溢れ出す

 

それは咲夜も同じだった

 

 「嫌だ、咲夜がいなくなるなんて…!そんなの…そんなの……嫌…!」

  

私の最後の我が儘

だけどそれは叶わない願い

 

「お嬢様」

「……」

 

抱き締めたまま、レミリアの耳元でいつもの優しい声で咲夜はこう言った

 

 

 

「いつでも、私はお嬢様の傍にいます

 私がいなくなっても……、私はお嬢様の傍にいますよ」

 

 

 

 

 

「……咲夜?」

 

クスッと笑う咲夜

 

「……ここに私はいます」

 

そう言ってレミリアの心臓のあるところに手を置く

 

「……そうだ、お嬢様」

「……?」

「この懐中時計、お嬢様に差し上げます」

「……いいの?」

「はい」

 

咲夜がいつも持っていた懐中時計

咲夜との思い出が刻まれた懐中時計

 

 

それを……私にくれるというのだ

 

 

「はい、お嬢様」

「ありがと、咲夜」

「いいえ」

 

 

懐中時計を私に手渡す

銀の懐中時計は今もなお時を刻んでいた

 

 

 

「………」

「どうしたの咲夜……?」

「……ぁ」

 

口に手を当てていた手を見る咲夜

 

 

手には血が付いていた

 

 

「さ、咲夜……!」

「お嬢様…、ここに…」

「うん…」

 

ゆっくりと咲夜を草原に寝かせる。

 

 

「……ありがとうございます」

「……うん」

 

 

 

私は草原に座り、咲夜の方に体を向ける。

 

 

 

「お嬢様」

「咲夜?」

「最後に言っておきたい事あります」

 

涙が頬を伝う

 

 

「……なぁに?」

 

私も震える声でそう応える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お嬢様の下に居られて幸せでした

 ありがとう……お嬢様」

 

 

 

 

 

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「………ッ」

「咲夜っ!」

 

咲夜が血を吐く

 

「お嬢様……」

「何も言わないで……」

 

 

 

そして私は

 

咲夜の顔に近づく

 

そっと咲夜の血が付いた口を手で拭う

 

「お…嬢様………?」 

 

 

咲夜に近づく

 

 

 

 

 

私は

 

 

 

………

 

 

 

……咲夜に口づけした

 

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「……」

「……」

 

刹那の時間、だがその時間が長く感じられた

 

 

「お嬢様……」

「ごめん、最後に……」

「謝らないで下さい…」

 

 

 

 

咲夜が目を閉じる

 

 

 

 

 

 

「ありがとう…ございます……レミリア……お嬢様……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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もう最期が迫っている

 

さっき血を吐いてしまった

 

 

 

でも、お嬢様を安心させないと……

 

 

 

「最後に言っておきたい事あります」

 

 

駄目だな私

こんな震えた声じゃ、お嬢様を安心させられない……

だけど、私の想いを言わなきゃ

 

 

 

「……お嬢様の下に居られて幸せでした

 ありがとう……お嬢様」

 

 

涙を拭う

 

 

体が震えてきた

 

 

もう死がそこまで来てる

 

 

 

ふいに、お嬢様が私の口に付いた血を手で拭う

 

 

 

「お嬢様……?」

 

 

 

突然、私にキスをした

 

 

 

驚いたけど、嬉しかった

 

 

 

涙が止まらない

 

 

 

ごめんなさいお嬢様

 

 

 

私は最後に力を振り絞って、時間を止めた

 

 

 

私のこの力が続く限り、こうしていたいから…

 

 

 

それくらい……いいよね?

 

 

一分もてばいい、いや、数秒でいいから

 

 

お嬢様の温もりを感じていたい

 

 

 

 

 

涙が止まらない

 

 

 

ああ……、力が抜けていく

 

 

 

 

「お嬢……様」

 

 

止まったお嬢様に語りかける

 

 

 

 

 

 

 

 

「大……好き…です」

 

 

 

 

 

そして、時間は動き出した……

 

 

 

 

 

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「咲夜ーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 咲夜は静かに、眠った───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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紅き月と壊れた懐中時計 -Ending-

 

 

咲夜の葬儀は静かに行われた

 

 

棺桶の中にいる咲夜は穏やかな表情だった

 

 

でも私は泣かなかった

 

咲夜は私の傍にいるから……。

 

 

あれから数ヵ月が経った

 

咲夜からもらった懐中時計は"あの日"以来時を刻むのをやめてしまった

 

 

そして私は日課にしてることがある

 

 

 

「あら、また来たの?」

「これが私の日課なんだ」

 

白玉楼に行くこと

 

 

 

 

桜並木を咲夜と手を繋いだあの頃を思い出しながら歩く

 

 

 

霊魂がさ迷う場所に来て私は手を合わせた

 

 

 

「おはよう、咲夜」

 

 

返事はない

 

 

「今日も見守っていてね」

 

 

 

 

 

 

一人、白玉楼の景色を眺める

 

 

 

すーっ、はーっと深呼吸する

 

 

 

今日も1日が始まる

 

 

 

咲夜は傍にいる

 

 

きっと今も私の傍にいる

 

 

 

「じゃあね、咲夜」

 

 

振り返って来た道を歩き始める

 

 

 

 

その時声がした

 

優しくて、私を安心させるその声───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅き月と壊れた懐中時計

-Fin-

 

 

 

 

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紅き月と壊れた懐中時計 -あとがき-

 

 

 

紫「そういえば、この小説の主人公誰なの?」

 

視点が度々変わりますからね

私はレミリアを主人公に書きました

でも、きっと真の主人公は咲夜ですよね

 

紫「そういえば、読んでて気になった事があるんだけど、伏線だっけ? それについて教えて」

 

永琳と咲夜についてまず

 

無理矢理ですが、不完全な満月と少しリンクさせました

 

不完全な満月の咲夜のいた世界を月と考え

連れ去られた、研究所で永琳の母がそこで研究してるという設定でした

 

つまり、咲夜に懐中時計を渡したのは永琳の母

 

あそこで一年間過ごしている為、幼い永琳と咲夜は会話はしませんが"見たこと"がある

 

そして、幻想卿に住み

永夜抄で気付く訳です

 

本家でも、確か意味深なセリフがありますしね

 

まぁ、そんなこんなで

咲夜を診察した時、確信したんですね

 

そこから、咲夜月人説が出たわけで

 

あ、これは二次設定なんで

 

紫「長い」

ごめんなさい(・ω・`)

紫「そういや、今回の話で気に入ってるとことかある?」

 

全部!

 

一番はやはり最終章の咲夜が"お別れ"するシーンですね

 

中でも妹様のシーンは気に入っています

 

勿論、レミリアと咲夜のシーンが一番大好きですねw

 

紫「正直、泣いた?」

 

えぇ、泣きましたよ当然

 

作者が泣かずして誰が泣くんですかっ

書いてるときにBGM流すんですが

丁度、SYNC,ART'Sの猩々緋が流れるからもう、ね?(;ω;`)

 

紫「そういや、永琳が言ってた意味深なセリフがあったけどあれは?」

 

何で咲夜は時間を止めたとしてもこんなに長く生きられる筈がない

 

そう永琳は考えていました

本来なら、咲夜が永遠亭についた時点で死ぬ運命でした

 

しかし、死ななかった

 

最後にレミリアは運命を変えられない私が憎い、と言ってましたが

 

実は変えていた。という

 

つまり、最後に見た月が十六夜なのも頷けますよね

 

 

つまりは、レミリアと咲夜の七日間

レミリアが創り出した最後の延長

 

だから邪魔が入らず、幸せな七日間を過ごせた訳ですね

 

        

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