幼き結晶雪

 

 

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 幼き結晶雪 --


 

「レティさん、春ですよー!」
 

ああ、もうそんな時期だっけ?と欠伸をしながら話す。


「だからその…レティさん…」
 

春を告げる妖精、リリー・ホワイトが困った表情を浮かべる。


「分かった分かった、消えるわよ」

「でも、今年の冬は短かったわね……」

「き、きっと来年は冬が長いですよ!」
 

フフッと私は微笑み、リリー・ホワイトに背を向けた。
 

「それじゃ」

「はい」 

「また来年ね」

 

そうしてリリーに手を振られているなか、私は雪の粉の様に消えた。

 

……次の冬が待ち遠しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は冬が待ち遠しいなんて思ったことが無かった。

冬が来れば目覚め、春になれば消える。

ある時はボーっとして冬を過ごしたこともある。 

冬に起きてきたって、楽しいものが何もなかった。

 

 

そう、彼女と出会うまでは── 

 

 

彼女のお陰で私はこの循環から『楽しみ』を見つける事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは二ヶ月前に遡る。

 

 

 

 

 

私はいつもの様に大きな氷の塊の上に座って空を眺めていた。

 
「今日は曇りか」
 

冬はほとんど曇りだ。だから空を眺めたっていつも曇りって事ぐらい心の中では分かっていた。

なんとなく言ってみただけ、そう、退屈を紛らわせる為に。
 

「……少し歩こうかな」

 

独り言を言って私は白い地面に足跡を付ける。

昔は雪遊びが楽しかったがだんだん飽きてきた。

 だって、目が覚めては同じ風景。同じ遊び。そんなのつまらないじゃない。

 

「何か無いかな……」

 

そう思って辺りを見渡す。辺りは雪原となり、妖精や人間の子が少しだが遊んでいた。 

 

「……ぁ」

 

見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタの負けよ、次の試合するわよっ」

「チルノちゃん強いー、少し手加減しなよ」

 

妖精達で雪合戦。

皆、手加減しないチルノに負けては痛い思いをしていた。

 

「あたいは最強なのよっ!最強は手加減しないの!」



と、威張るチルノ。

弱いものいじめにしか見えないのは気のせいか。

 

「チルノちゃん、強く投げてくるから雪合戦やめるー」

 

妖精の一人が疲れ切った表情で話す。 

それを見て、他の妖精も頷く。

  

「んじゃ帰るー」

「私も」

「ぇ、ぁ、私もっ」

「また明日ー」

 

帰っていく妖精達。 

 

「よーし、次は皆でかかってきなさい!最強は負けないんだ……か、ら?」

 

さっきまでいた妖精がいないことに気付くチルノ。 

皆帰っちゃった……。

 

雪合戦で使った雪の壁の上に乗る。

寺子屋の慧音先生がまた怒るのかな。

 

「ぁー、雪合戦やりたいなー」

 

やはり楽しみたいという気持ちが強い。

ぁー退屈だわ。

 

 

 

 

 

 

 

後ろから足音が聞こえる。誰かしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と雪合戦してくれるのかしら?」

 
チルノがその声の主の方に振り返る。

 

 


ベチ

 

 

振り向いた瞬間、小さな雪の玉に当たった。痛い。

 

 

 

 

フフッと笑う少女。

 

 

「冷たっ!  ……ぁ、あんた……誰?」

 

 

 

 

 

──それがチルノとの出会いだった。

 

 

 

 

「教えて欲しいのかしら?」

 

そういうとチルノはイライラしながら。

 

「とっとと教えなさいよー!」


と、言葉を荒げる。

一方の私は冷静だった。
 

「雪合戦に勝ったら教えてあげる」


と涼しい顔で話す。

 

「最強のこのあたいに勝負なんて良い度胸ね!」

 
そう言ってチルノと私の一対一の雪合戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「避けるなー!!」

 

そんなチルノは何個作ったか分からないくらいの量の雪玉を作っており。

それを私に向かって力まかせに何度も投げつける。 

無論、私はそれを避け続けている。

  

「あたれーっ!!」

 

妖精の何処に力があるのかと言う程、雪玉の勢いが強くなった。

 

「名残惜しいけど終わりにしようかしら」

 

そういって懐に隠していた雪玉一つを手に持つ。

 

 

 

そして相手目掛け投げる。

 

 

 

 

案の定、一発でチルノに直撃した。

 

 

 

 

 

「うぐっ」

 

ちょうどチルノの顔面ど真ん中に雪玉が当たった

 

「大丈夫?」

「あたいが負けた…」

 

どうやらへこんでる様だ。 

ふとチルノが顔をあげる。

 

「名前。…名前は?」

「レティ。レティ・ホワイトロックよ」

「私はチルノ!」

 

と威張る。 

威張るとこじゃないんだけど…。まあ、そこは突っ込まないでおいた。

 

「よろしくねチルノ」

「レティ」

 

そういってチルノは私に指を指す。
 

「次は負けないんだからっ!」

 

クスッと私が笑う
 

「頑張ってね」 

「な、何がおかしいのよっ!」

「秘密よ秘密」

「教えなさいよっ!」

 

 

「…ぁ」

「ん?」

 

 

空はもう夜だった。 

 

黒い空に飲み込まれないように白い雪が降ってきた。

──何度も見た、真っ白で純粋な結晶。 

 

「雪降ってきたね」 

「仕方ない、レティ!明日勝負よ!」

「へ? ……まあ暇だし、いいわ」

「じゃ、また明日!」

 

そういってチルノは手を振って帰っていった。

 元気が取柄のような、快活な妖精。 

 

「ふふ…面白い妖精ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……」

 

雪山の麓の洞穴で目が覚める。

普段はまだ寝てる時間。 

だけど、今日はチルノと遊ぶ日だ。 

だからかな、早く起きたのは……。 

 

今日も太陽は出ていない。 

なのに少し暖かい気がする。

  

「もう3月かぁ」

 

よく見たら雪の量が少ない。

 

 

(冬も終わりね…)



 

そんな事を考えながら、昨日チルノがいた場所に着く。

 

 

「おそーい!」

 

そこにはチルノの姿。

もちろん私は遅刻してないんだけどなぁ。

 

「きょ、今日こそ負けないんだからっ」

「頑張ってね」

「うん、がんばる!」

 

 

面白いわ、この娘。

 

 

「んで何で勝負するのかしら?」

 
私が訊くとチルノが懐から札の様なものをだす
 

「弾幕ごっこよ!」

 

「ぁ、あなた妖精よね?」


吃驚した。

妖精でもスペルカードが使えるとは。

どうやら私の常識は一年で変わるようだ。

 

「あたいは氷精よっ!」

 

まぁ、氷精でも妖精でも変わらないような気がするのだけれど。 

 

「んじゃ準備はいい?」

 

コクリと私は頷く。

片手にスペルカードの感触を確かめる。

うん、大丈夫。

 

 

 

二人同時に自分のスペルカードを出した。

 

 

 

「凍符『パーフェクトフリーズ』!!」

「白符『アンデュレイションレイ』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘…あたいの弾幕を避けるなんて」

 

呆然とするチルノ。

 

「チルノの負けね」


私がクスッと笑い、続ける。
 

「むやみに弾幕はっても当たらないわ、相手をみなさい」

「むー…」

 

私のアドバイスに混乱するチルノ。

 

「…んじゃ

 んじゃ、ぁ、あたいを弟子にして!」

 

 

 

「してください。…でしょ?」 

「弟子にしてくださいっ」





 

 

 

チルノは目を輝かして私を見る。

 

 

 

 

 

「無理よ」 

「そ、そんなぁ」

「仕方ない…だったら条件があるわ」

「ぇ?」

 

「弱いものには優しくすること。

 …それが守れなかったら弟子にしてあげない」

「そ、それくらいあたいだって出来るわ!」

「次の冬

 次の冬まであなたが変わっていたら」

 

 

 

 

「その時は…」

「弟子っ!」

 

チルノが割り込む。 

 

「楽しみにしてるわ」
 

そういって私は帰る。


「次の冬にまた会いましょ」

 

 

 

 

 

 

 

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次の日、春を告げる妖精がやってきた。
 

「レティさん、春でーす」 


陽気に答える彼女。私にとっては鬱の原因なのだけど
 

「はぁ…今回の冬はもうちょっと満喫したかったなぁ」

「ぇ、ぁ、ごめんなさい…」

 

 

困惑する春の妖精。少しくらい自信を持てばいいのに。
 

 

「まぁいいわ、今回の冬は面白い妖精に会えたし」

「はぁ…」

 

ふふっと笑う。 

 

「んじゃ、消えるわよ?」 

「ぁ、お願いします」

  

 

 

 

 

 

 

私の手が、段々雪になる

 

 

その雪の粉が風にさらわれる。

 

 

「次の冬にまた会いましょ」

 

 

そう言って妖怪は消えた。

 

 

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幼き結晶雪 --

 

 

気付いたらもう冬だった。 

あの妖精は変わっただろうか?

そう考えるだけで楽しみだ。

……そういや弟子とるんだっけ。

 

弟子、か。

 

 

私が気付いた時には辺りはもう夜だった。 

半年以上体を動かしていないので体を慣らすためにも、少し歩く。 

 

「流石に一年じゃ何も変わらないか…」

 

辺りを見渡す。

いつものように同じ風景が広がっている。

 

  

「…ぁ」

 

 

いつもの癖で夜空を眺める。

そしたら、雪が降ってきた

夜空を『白』に染めようとする雪。

何者にも交じる、いや混じることが無い純粋な『白』

 

私にとっては雪が降るときはいつも曇りだったから珍しかった。

 

「綺麗…」 

 

月はちょうど三日月だった

 レティは手を差し出して、降ってくる雪の感触を確かめる。

 

「積もるかな」

 

そんな予測をしながら、久しぶりの幻想卿を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…あちこち見てきたけど変わらないか。

 

(つまんないなぁ…)

 

 

 

ふと気付くと太陽が山のふもとから出てきた

 

久々の日の光。

 

(まぶしい…)

 

 

…ぁ

 

 

そうだ、チルノに会ってみよう。 

そう思い、チルノと初めて会った場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昨年の冬にチルノと出会った場所に来た。

さっき『朝』がきたばかりだから人影はまだ、無い。

仕方なく私は雪のクッションに倒れ込む。

 

「ふぅ…」

 

空を見上げる。

透き通った青空。

無垢で純粋な…空。

 

 

 

まるでチルノみたいだ。

 

 

そんな下らない事を考えると、自然に笑みが溢れた。

 

 

それにしても、ここは居心地が良い。

……思わず眠りそうなくらい。

 

「ふぁ…」

 

欠伸をする。 

そして、目を閉じて風を感じる。

 

 

 

 

 

 

「師匠、師匠ー!」

 

どこかで聞いた声。

純粋で無垢なこの声。

この空のような心を持った少女。

 

「……」

 

静かに目を開く

 

「チルノ…?」

 

そう言った瞬間、チルノに抱き締められた。

  

「…ぇ、ぁ、あれ?」

 

 

起きたら突然抱き締められた。

あまりの出来事に驚く

 

「チルノ…?」

「あたい…約束守った…」

 

すると、チルノは抱く体制から立ち上がる。

 

「だからっ、弟子にしてくれる?」

 

ニイッとチルノは威張る。

全く、この子は──

 

 

 

 

「いいわ」

 

退屈な冬はもう終わりなのかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ししょー、何か教えてー」

 

……だけど、喋り方は変わらない訳で。

 

「んじゃ………って何教えれば良いのよ」

「弾幕ごっこ!」

「仕方ないわね……」

 

飽きれ顔の私は懐からスペルカードを取り出し構える。

チルノはニヤニヤしながらスペルカードを出す。

 

「次は負けないんだからっ!」

 

 

そして、二人の一年ぶりの弾幕ごっこが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また負けた…。」

 

あれから三回引き続けに弾幕ごっこをした。 

流石に『力』を使いすぎて疲れた。

 

「次は負けないんだから!」

 「ちょ、休憩っ!」

 

チルノがえーっ、と言いながら頬を膨らます。

全く…どこにそんな力が…。

  

「ふぅ…」

 

力を抜いて雪の上に倒れる。

 チルノも真似して一緒に雪の上に倒れる。

 

 

 

……

 

 

 

ふとチルノが私の胸に指を指して喋る。

 

「そういや、レティが付けてる…それ、なぁに?」

 

もう師匠と呼ばないのね…。 

苦笑いしながらも質問に答える。

 

「これは氷の結晶で作られたブローチよ、寒気を操る私の力を増幅してくれるの」

「へぇー、かっこいい!」

 

目を輝かせるチルノ

 

「貸しt」 

「駄目よ」

 

また頬を膨らませるチルノ

 

――そんなこんなで日が沈む頃。

 

 

 

「今日は疲れたわ…、また明日」

「ぇーっ、もう一回!」

「もう弾幕ごっこしてあげないわよ?」

「むー、仕方な……」 

「さよなら、また会いましょ」

「じゃーね、レティ!」

 

 

 

そんな日々が毎日続いた。

 

楽しい日々。

彼女の笑顔を見ると私もつられて笑顔になる。

 

人はそれを『幸せ』というのかな

 

とにかく私は幸せだった。

 

嫌なこともあったけど、次の日には笑っていけた。

 

 

 

 

 

 

 

……ぇ?なんでしんみりしてるかって?

 

 

 

 

 

私には分かるの。

 

 

次の『春』が近いということを。

 

 

 

 

 

チルノにはまだ言っていない。

 

私は冬の妖怪で、春になったら消えるということを───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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幼き結晶雪 -最終章-

 

 

いくとて冬は廻る。

 

 

それは春にも言えることだ。

 

 

一年を通して平等に廻る。

 

 

それは無情にも過ぎていく。

 

 

季節によって喜ぶ者がいれば当然妬む者もいる。

 

 

そして気付く。

 

 

時間は平等であり、いかにしてその時間を有効に使う、かを。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは無情にも過ぎ行く時

 

 

 

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春を告げる妖精、リリー・ホワイトはとある山で目を覚ました。

 

 

「ふぁ……、私が起きたということは…」

 

春を告げなくてはならない。

  

 

昔から私はいつものように春を告げていた。

苦もなく、伝えることが私に課せられた仕事。

 

春が来たと喜ばせる。

それが私の生き甲斐。 

 

だが、春が来て悲しむ者もいる。

最初は仕方ない、で済ましていた。

 

 

しかし、毎年暗い顔を見ると心を動かされる。

 

 

 

だからといって、なにも出来るわけがなく。

 

 

 

「はぁ……鬱になっちゃうなぁ…」

 

 

妖精がため息。 

ふふ、これが俗にいう五月病かな。

 

そう思いながら白い羽根を広げ、大空に向かって羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはチルノと遊んでる時だった。

  

「どうしたのレティ?弾幕が薄かった気がするけど」

 「そ、そうだった?」

  

と言い返した時。

最も聞きたくない声を遥か上空から聞こえた。

 

「レティさーん」

 

 白の衣を羽織った春の妖精。

  

 

リリー・ホワイト

 

 

 

「レティさん」

 
地面に降り立ち、私に目線を合わして話しかける。


 「春です」

 

春を告げる妖精は淡々と話す。

用件だけを。

 

 

「レティさんには消えてもらわないと春が来ないんです」

 

 

後ろから私が消えることを知らない、チルノの声がする

 

「…ぇ、消えるってどういうこと?レティは……消えないよね…?」

 

普段強気な発言も、今のチルノには強気の発言が何一つ無かった。

困惑だけだ。

 

 

「私は……まだ、冬を終わらせたくない」

 

 

私の思いを、覚悟を───

 

 

「そうですか…、レティさんならいつか言うと思ってました

 ですが……、私がはいそうですかと言えるほど簡単にはいかないのは分かってますよね?」

 

多少、俯き加減の春の妖精が話す。

  

「だからって潔くやめる私では無いけどね」

 

覚悟はしてる。

  

「仕方ありませんね……」

 

リリーは残念そうに話す。

 

 

 

 

 

 

「レティさん、貴女には…」

 

 

また、リリーは私に目を合わせる。

今度はさっきと違い、明らかな殺意を放つ。 

 

「力づくでも消えてもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリーは羽を広げ、すぐに弾幕をはれるように準備する。

私はというとスペルを使うタイミングを測っている

 

  

先に口を開いたのは私だった

 

「消えるのは貴女よ、リリー」

 

そう言って弾幕を放つ。 

相手が本気と察したのだろうか、リリーも勢いのある弾幕を放った。

両者、弾幕をスレスレに避け、弾幕を放つ。
 

その光景にチルノは言葉が出なかった。

両者の存在を掛ける戦いだった

 

「く……、やはり春の妖精は一筋縄にはいかないか」

「そこまでして、貴女は…?」

 

ふとリリーの攻撃が止まる。

 

「死んだら、冬になっても此処に戻ってこられない。そこまでして、貴女は何を…?」

 

 

その言葉にレティの攻撃も止まる。 

空中に漂う二人の影。

  

 

そして、レティがクスッと笑う

 

 

「どうしてかな……、いつも従ってる事に嫌気がさしたからかな」

 

 

いや、違うか

 

 

 

「私だって、わがままの一つくらい」

 

 

 

 

 

────スペルカード、セット

 

 

 

 

 

 

聞いてくれても……

 

 

 

「冬符」

 

 

 

 

いいじゃない──

 

 

 

 

「ノーザンウィナー!」

 

ありったけの力を注いで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な……っ」

 

その言葉を出したのはリリーでもチルノでもなかった

紛れも無い、スペルを発動した私

 

「ありったけの力を注いだのに…」

 

レティのスペルはスペルというよりただの弾幕に近い攻撃だった。

呆気にとらわれてる私にリリーが話す。

 

「レティさん、重大な事一つ忘れています。私たちは四季の恵によって強くなる 

 あなたの力の源である冬の恩恵はもう無いに等しい」

 

 

───そして、長い間言わなかったことを。

 

 

 

「私を倒しても何れ、春はやって来ます。必然的に

 レティさんのやってることは…」

「無駄なんかじゃ……」

「やったって覆すことが出来ない。無駄なんです」

 

 

 

 

「……そう」

 

力無く、レティは空中から雪の地面に落下した。

それを見たリリーが助ける。

 

 

 

「ねぇ、リリー」

「なんでしょうか」 

「雪の上で寝させて」

 

 

消えてもらう一番の近道と悟り、従う。

 

 

「はぁ…また、次の冬まで待たなきゃいけないのかな」

 

 

するとチルノが寄ってきた。

 

「レティ……消えちゃうの…?」

「大丈夫よ、私は、消えない」

「本当?」

「うん、本当よ」

 

 

 

私を慰めに来たのだろうか?雪が降ってきた。

 

 

 

 

「…嘘」

「嘘じゃないよ、次の冬には…」

「それまであたいは…」

「あら、泣いてるの?」

 

 

 

体を起こし、小さなチルノをそっと抱く。

 

 

 

「これ、チルノが持ってて。」

「でも、これって」

 

 

レティの結晶のブローチ。

レティはそれをチルノに付ける。

 

 

「いいのよ、次の冬には返してもらうんだから」

 

そう言ってクスッと笑う

 

 

チルノにも笑顔が戻る

 

 

 

「ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

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その光景を遠くからリリーは見ていた。

 

 

 

……私の一言でレティさんは戦意を無くした。

 

 

それも、一本の糸がポツリと切れたように。

 

 

最初から負けることを知っていた、或いは……。

 

 

レティの言葉を思い出す。

 

 

 

「わがまま……ですか

 私だってわがままの一つくらい…」

 

 

 

私は……、

 

春を告げる事で消えていく。

 

 

羨ましいのは…

 

 

レティさん、私はあなたが羨ましい…。

 

 

 

あなたには友達がいる。泣いてくれる友達が。

 

 

 

 

(出来ることなら、私だって季節という螺旋から抜け出したい)

 

 

 

だけど、それは無理な話。

 

 

 

 

――春を告げる妖精は一人静かに涙をこぼした。

 

 

 

 

 

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……そろそろ時が来た。

 

消える ……時。

 

 

 

「れ、……レティ?」

 

 

チルノが恐る恐る聞く。

 

 

「そろそろお別れね」

 

 

チルノの真っ直ぐな目を見ないで言う

 

 

「そんな…レティが消えるなんて」

 

 

 

チルノに背をむける。

だってチルノを見たら泣きそうだから。

 

 

「前の冬は待ってくれたよね」

 「ぁ、あれは…」

 「次の冬」

 

続ける。

 

「次の冬まで私を待ってくれる」

「ししょーの言うことくらい聞きなさい。」

 

 ふふっ、と笑う。 

それにつられて涙目のチルノは笑う。

寂しいながらも幸せな時が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

自然に零れた涙を拭うとそこにはレティとチルノが私の前にいた。

 

「今回の冬に未練は無いわ」

 

キッパリとした口調でレティは話す。

 

「いいですか…?」 

「うん、いいわ」

 

 

彼女は覚悟を決めた。

なら私はそれに応えなければならない。

 

  

「なにか、言い残す事は?」

「強いて言うなら、チルノ」

 

横にいるチルノに顔を向ける。

 

「次の冬になるまで待っててね。」

 

ニカッと笑うレティ。

 

「あたいは心が広いから次の冬くらい余裕よっ!」

 

二人の間に和やかな雰囲気が出る。

 

 

 

が、それも長くは続かない訳で。

 

 

 

 

「リリー。お願い。」

「…分かりました。」

 

 

 

すーっと深呼吸をする。 

まだ空気は冷たい。

 

 

 

 

 

 

 

「レティさん」

 

 

 

 

 

太陽が雲の間から覗く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「春が来ましたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「春ね……、次の冬こそは長いといいなぁ」

 

と徐々に消えていく体と裏腹にレティは最後まで微笑んでいた。

 

 「また、次の冬に会いましょ」

 

そう言い残し、レティは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

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チルノはずっと空を見上げていた。

そこにレティがいるかのように。

 私も空を見上げた。

 

 

いつの間にか雲は消え、雲一つ無い青空が広がっていた。

 

 

 

「では、私は春を告げないといけないので、失礼しますね」

「うん、頑張ってねリリー」

 

返事を聞き、白い羽根を広げ飛び立つ。

 

 

  

 

これが私の使命。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幻想郷に春が来ましたよーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼き結晶雪

-Fin-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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幼き結晶雪 -あとがき-

 

 

 

 

ぇー、その先に謝っておきます。

ごめんなさい。 

 

紫「グダグダだわ…」

 (´・ω・`)


まず、謝る事がいっぱい。

タイトルを完全にミスってるとことか

最後らへん、チルノが空気だし。 

リリーの性格が(ry

  

紫「無計画すぎるわ」

 

サーセン(・ω・`)

  

紫「直さないの?」

 

めんd(ry

また設定とかがめn(ry

 

紫「これだから進歩しないのよ」

 

 

そうそう、実はチルノとレティが別れた次の冬が妖々夢編になるんですね。

 そこに巫女や魔法使いやらメイドが弾幕しかけてくる訳で

 そんな感じの事を小説の方で書きたかったけど書けなかったという。

  

精進せねば(・ω・`)

 

        

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