紅葉舞う、秋の訪れ 


 

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 紅葉舞う、秋の訪れ -上-


 

 

「姉さん、遂に私達の季節がやってきましたね!」

「ええそうね、昨年はあの巫女のお陰で散々だったけど」

「姉さん暗い!」

「はいはい、 ……そう言ってる貴女も早く炬燵から出なさい」

「うー、もう少し」

「それ三回目、ほら山の散策をするんだから」

「そうだ、帰ったら薩摩芋で何か作らない?」

「薩摩芋ねぇ……」

「デザートとか出来たらいいのになぁ」

「んじゃ散策のついでに天狗に聞いてみましょ」

「賛成!」

 

「……分かったなら、早く炬燵から出なさい」

 

 

「わぁ、この紅葉綺麗ね」

「今年は張り切ったからね」

「私も頑張ったから村の人達にお供え物貰っちゃった」

「あらいいわねぇ」

「収穫したお米なんだけどね、ほら昨日食べた炊き込みご飯。あれが貰った米なんだよね」

「通りでいつもより美味しいと思ったわ」

「ふふ、来年も張り切っちゃうかな」

「私達神様は、幸せを糧にするからね。きっと山の神様も喜んでるでしょうね」

「あ、あの神様なら宴会開くみたいだよ?」

「あら賑やかになりそうね」

「私達も招待されてるよ?」

「そう言うことは早く言いなさいよ……」

「えへへ、姉さんを驚かせたくって」

「んでどうするの?」

「折角招待されたんだから……」

 

「「いくしかないよね!」」

 

 

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「あら椛、ここにいたのね」

「休日は山を散歩して紅葉を楽しもうかなと。 ……文様はどうなされましたか?」

「んー、ほらこれ、上の神社の神様から宴会開くから来てくれって言われちゃってね」

「宴会ですか、楽しそうですね」

「昨年は宴会出来なかったしね」

「昨年……、ああ巫女が神社に殴り込みにいったアレですね」

「そうそうアレよアレ。 椛は来週あたり休み取れるかしら?」

「他の白狼天狗に警備を変わってもらえば──」

「よし決まり。椛、宴会にいくわよ」

 

 

「は、はいっ」

 

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「おや、神社の巫女さんじゃないか」

「河城……にとりさんですか?」

「覚えてくれたんだ、ありがとう。 ところで山の中を一人で歩いてるなんて珍しいね」

「神奈子様におつかいを頼まれまして……、 ついでだから紅葉を楽しもうかなと」

「そういやもう秋なんだねぇ」

「月日は早いものですね」

「ははっ、私達まだ若いよ?」

「そうですね」

 

 

 

「そうだ、来週神社で宴会するんですが来ませんか?」

「お、宴会か、いいねぇ」

「昨年はお騒がせしたので今年こそは、と張り切ってるみたいなんです」

「ふむ、んじゃ来週の予定明けておくね」

「本当ですか、ありがとうございますっ」

「期待してるね、早苗ちゃん」

「名前、覚えててくれたんですね……ぐすっ」

「ちょ泣かないで早苗ちゃん、ってか何で!?」

「私は緑の人じゃないです……」

 

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「あら、賽銭でも入れてくれるのかしら?」

「いえ今回はこれを……」

「チラシ?……山の神社で宴会ねぇ、全く、こっちのお客さんが減るじゃない」

「霊夢さんは行かないんですか?」

「まあでも、暇だし行くわ。……文はどうなの?」

「私も行きます、そのせいで宴会の広報活動を頼まれまして……」

「あら今回は張り切ってるのね」

「みたいですね」

「ふふっ、楽しみだわ」

 

 

 

 

 

 

「お、文じゃないか」

「これはこれは霧雨魔理沙さん。 この沢山の本は──」

「お、これか?図書館から借りてきたんだ」

「ちょ、卓袱台の上に置かないでよ! 下に置きなさい、下に」

「仕方ないなぁ、 ……しょっと」

「そうだ、魔理沙さんも来週の宴会に来ますか?」

 

「ん、宴会ってなんだ?」

 

「来週、山の神社で宴会を行うみたいですが、 魔理沙さんも来ますか?」

「あっちの神社で宴会か! 私も勿論いくぜ」

「魔理沙さん追加……っと。 来週が楽しみですね」

 

 

 

 

「そういや酒癖悪い誰かさんが暴れないかしら……」

「霊夢よんだー?」

「萃香さんお久しぶりです」

「おろ、魔理沙に文じゃない、 皆そろってどうしたの?」

「来週、山の方の神社で宴会をするのですが、 萃香さんも来ませんか?」

「宴会かあ、楽しみだねぇ」

「とりあえず萃香さんもこれる……と」

「萃、また巨大化して神社を壊さないでよね」

「あれ、巨大化して壊したことあったけ?」

「ああー、地雷踏んだなこりゃ」

「んじゃ、私はおいとましますね」

「え、ええっ!? 霊夢なんで震えてるの?ま、魔理沙もなんで遠ざかるのさ!」

 

「が、頑張れ!」

 

 

 

「れ、霊夢こわ──

 

 うわあああああっっ!?」

 

 

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「早苗ちゃん頑張ってるみたいだよ?」

「私達二人も頑張らないと、 ところで宴会の料理はどうする?」

「ぁ、私紅葉天ぷら食べてみたい」

「薩摩芋とか米酒とかいいねぇ」

「神奈子は酒飲むと絡んでくるからなぁ」

「そういう諏訪子だって悪酔いして早苗を襲うとしたじゃない」

「う、あ、あれは……」

 

 

 

 

「早苗もこの生活に慣れてきたのかな」

「やっとゆっくり出来るよね」

「一番頑張ってたのは早苗だしな」

「未練はないのかなぁ……?」

「私は……、あると思うよ」

「んじゃ、なんで"此処"に来たのさ? 未練を無くなるまで待ってあげればよかったじゃない」

「未練なんて、無くならないよ。 問題は、少しでも──」

「神奈子」

「ん」

「早苗は未練はあると思うけど、 後悔は、してないと思うんだ」

「そんなもんかねぇ……」

「そんなもんだと思うよ …………あ、早苗おかえりー」

「おかえりなさい、早苗」

 

 

 

 

 

「神奈子様、諏訪子様、 ただいま帰りました!!」

 

 

 

 

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「早苗」

「神奈子様、なんでしょうか?」

「どうだい、宴会の方は?」

「えと、里の方で収穫した一部の収穫物を譲ってくれるそうで……。きっと神奈子様の好きな米酒もありますよ!」

「良かったねぇ神奈子、 久しぶりの米酒じゃない?」

「だねぇ。人数に関しては天狗に任せたし、うん大丈夫だな」

「楽しみですね、宴会」

「ああ、そうだな」

「早苗ちゃんには頑張って貰わないとね?」

 

「ふえっ、まだ何か……?」

 

「ほら、宴会にはつまみが……」

「わ、私一人で?」

「任せた!」

「私も手伝うよ」

「諏訪子様が手伝ってくれるなら……してもいいですが」

「よーし、決定。 週末が楽しみだな!!」

 

「神奈子、あんたも仕事しなよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

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紅葉舞う、秋の訪れ -下-

 

 

 

 

 

 

宴会当日───

 

 

 

 

 

山に位置する神社。

夕暮れ刻にも関わらず、妖怪や人間で一杯だった。

 

「いっぱい来たねぇ」

 

と境内の石階段から諏訪子は宴会に来た妖怪達を見て呟く。

普段、山の中で暮らしてる天狗や河童達も少なからず来ていた。

珍しいねぇ、と思いながら立ち上がり夕日に目を細め深呼吸する。

 

 

 

──さて、そろそろ始まるかな

 

──神社、もとい会場は人間や妖怪の種族に関係なく賑わっていた。

 

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まあそれもそうかと、神奈子は思った。

 

麓の人間の里には妖怪も通っていたりするから驚きだ。

居酒屋では人間と妖怪が一緒に酒を飲んだりするという噂も聞いた。

始めは、人間と妖怪誰構わずに誘っていた早苗を見て内心不安に思っていたが、この様子じゃあ大丈夫だろう。

相容れぬ存在、だと思ってたが杞憂に過ぎなかった。

 

ふふ、と微かに笑い、

 

 

「早苗、これ揚げていいかい?」

 

 

そう言って、私は皆の喜ぶ顔が見たいが為に。

 

 

──いや、違うな

 

 

「神奈子様、焦がさないようにお願いしますね?」

 

 

早苗の笑顔が見たくなったから、

 

 

 

だから、

 

 

 

宴会を開いたのかもしれない──

 

 

 

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「早苗ちゃんはお酒飲まないの?」

 

「いえ私は未成年ですし……」

 

 

 

神奈子様の開催宣言で乾杯した後、いよいよ宴会が始まった。

早苗は料理やお酒が無くなるのでは無いかと思ったが、宴会に各々がつまみやお酒を持ち寄ったりしていたため安心した。

神社の冷たくなった縁側に座り、お茶を片手に眺めていた。

 

そこに諏訪子がひょいとやってきて早苗の隣に座る。

足をばたつかせながら、諏訪子も宴会の様子を眺めていた。

 

 

 

「幻想郷に来て一年だねぇ」

「そうですね」

 

 

あっという間でしたね、と早苗が付け加える。

 

 

「しっかし、人が集まったねぇ」
 

「こんなに集まるとは思いませんでした。 これも信仰なのですかね」

 

「それは違うと思うよ」
 

「……?」

 

「早苗ちゃんの頑張ってる姿を見た人、その期待に応えてあげたい人、

 早苗の頑張りが、こんなに人を呼び寄せたんだと思うよ」

 

「そんな、私は───」
 

「だからさ、早苗ちゃんはリラックスしていいと思うんだ」

 

「それでも、私は風祝として……」
 

「私達も頑張らなきゃいけない、 早苗一人に任せちゃいけない」

 

 

 

 

 

 

「だからさ」

 

 

諏訪子がいきなりお酒の入ったグラスを早苗の口におしあてた。

 

 

「ちょ、諏訪子さ──」

 

 

抵抗も虚しく、お酒を飲んでしまった早苗。

にぃ、と笑う諏訪子。

 

 

「な、何するんですか!?」

「たまにはさ」

 

 

 

賑やかで、楽しげな人間と妖怪の声が聞こえる。

 

 

 

「もっと楽しんでもいいんじゃないかな?」

 

 

 

 

「…………、いいんですか?」

 

 

 

早苗が俯きながら、訊ねた。

 

 

「……ねぇ、神奈子はなんで宴会なんか開いたと思う?」

 

 

 

「宴会を、開いた理由……ですか?」

 

「うん」

 

 

少しの沈黙が訪れる。

きっと早苗には分からないだろう、いや、結論にいかないだろうね、

そう諏訪子は思った。

 

 

「……分かりません」

 

 

小さく、言った。

 

 

 

 

 

 

 

「……神奈子はね、」

 

 

 

縁側から降りて、宴会を眺める。

 

 

 

「早苗の、心の底からの笑顔が見たかったんだと思うんだ」

 

「私の……、ですか?」

 

「心配してたよ、神奈子。 幻想郷に来て後悔してるんじゃないか、とか心残りとか……ね」

 

「神奈子様が……」

 

 

 

 

 

 

「早苗!!」

 

諏訪子が叫ぶ。

 

「は、はいっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「行きなよ、"皆"の所に」

 

 

 

 

にい、と笑い、

 

諏訪子は片手を差し出す。

 

 

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 

その片手を、早苗は握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪子が走り、それにつられて早苗も走り出す。

 

 

 

 

 

 

「諏訪子様っ、はや──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の"宴"はまだ始まったばかり───

 

- fin -

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あとがき

 

私の幻想郷の続編的サイドストーリー。だからって本編はありませんが。
多分この後、文に宴会の人達と一緒に(酔いながらも)記念撮影したと思います。

珍しく、すぐ読み終わるような短編。

 

ちなみに、上だけ会話文なのは仕様です。

こう、遠く離れたところから人物の会話が聞こえてくるような、そんなアングルを出したかったんです。

遠くからみていて、人物達がぼやけて見えるようなそんな感覚。

 

なんだかんだで早苗は良い子。

2008/11/22 記

 

        

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