「古典講読」 での取り組み

 

 「古典講読」は二年選択科目(一単位)の一つであるが、ある生徒から「三単位の『古典』と『古典講読』の内容に違いがない」不満を聴いていたので、「古典講読」の担当が決まった時から教科書にとらわれず授業を進めるつもりだった。東日本大震災や福島の原発事故を念頭に置き、教材として、中世の災害を詳細に記録している鴨長明の『方丈記』所収の「大地震(おおない)」を探りあげた。「古典」は科学と相容れないように一般的に思われるが、古典の記述を現代の科学の知見をもとに読み解くことは十分に可能である。

 

 授業の流れ(概要)としては次のようになる。

@『方丈記』所収「大地震(おほなゐ)」 の内容理解の授業を行う。

A『方丈記』所収「飢渇(けかつ)」の現代語訳を課題と宿題として出す。「飢渇」にある「その思ひまさりて深き者、必ず、先立ちて死ぬ」という表現に沿った事例を震災関連の新聞記事から探し出して提出させる。

B 関連する「徒然草」第一四四段(栂尾の上人)及び阿字観の説明を行う。

 

C 八つの班に分かれ「大地震」より「現代と似ているところ」「疑問と仮説」を一つずつ出す。「死体や崩壊した建物の処理は誰がどのように行ったのか」「被災地以外からの支援はあったのか」「避難所はあったのか。路上で死ぬしかなかったのでは」「災害孤児はどう過ごしていたのか」「義援金のようなものはあったのか」「被災地以外からの支援はあったのか」「復興にどれくらいかかったのか」「死者の数の算出方法は」といった疑問が出された。

D『平家物語』所収の「大地震(だいぢしん)」と比較して読む。

E各班に分かれインターネットで仮説の検証を行い「津波はどこで起きたか」「どの程度のマグニチュードか」調べる。

 

F「文献で見る中世の災害(人々の意識と対策)」と題するプリント(『方丈記』所収「大火」「辻風」「遷都」、『玉葉』『源平盛衰記』『山根記』『書記』から災害にまつわる文章を掲載)を配布して、Cの疑問に対して説明を加える。中世の、災害への社会的取り組みも教えた。                                    

G京都教育大学の地震学研究者である谷口慶祐さんを招き、方丈記に措かれている一一八五年(元歴二年)の畿内を襲った大震度を現代の地震学の知見で読み解き、当時の地震が現在発生している地震とどのような関係にあるか、「古典を科学する〜中世の災害にまつわる古文を現代の地震学から読み解く」と題してコラボ授業を九月一二日に実施した。一方的な講義形式ではなく、入社に分かれ、谷口氏の四つの問いかけに班でその都度考え、紙に書いて一斉に出すという双方向の授業になるよう心掛けた。